徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

柄前の調整

2011-02-04 17:55:00 | 拵工作
柄糸の巻き換えでお預かりしていた柄前が完成しました。



当該拵は、以前に当工房にて製作したもので、オーナー様が居合にお使いになっていらっしゃいます。

以前の工作の様子はこちらから。
http://blog.goo.ne.jp/kosiraeshi/e/f8403ab4ccef1de9d5627f87e026decd

この度のご依頼では、柄の形状をもっと薄くし、刃方と峰方を幅広に整形する旨のご要望をいただきました。

柄の形状を薄くするためには、柄下地に加工を施す必要があります。つまり、完全にバラバラに分解した上で調整を行わなければなりません。これは簡単な様で最も難しい工作の一つです。
本来、柄下地を再加工するということは、行いません。柄成りを変更する場合は、柄下地を新しく製作します(鮫皮は再利用可能な場合もございます)。
なぜならば、柄下地は刀剣にとってもっとも力が加わる部位であるため、分解や組み立てを繰り返すとそれだけ故障の頻度が上がり、危険性が増すからです。

特に鮫皮の形状が一枚巻きである場合(当工房では、特別にご指定がない場合、一枚巻きにて作成)、鮫皮をはずすために水で鮫皮をふやかして柄下地から外します。
この時点で、柄下地にも水分が浸透し、割れが生じたり強度が極端に劣化します。
(*短冊の場合は、微調整が可能なため、それほど難しい作業ではございません。)

この度のご依頼は、柄前だけをお預かりしているため、やむなく柄下地を再利用します。お客様の中には、同一の職人なら同じものを作り出せるとお思いの方が少なからずいらっしゃいますが、職人も万能ではございませんので工作のたびに刀身をお預かりしたいところです。

この度のご依頼もかなりの難問でした。
ご依頼内容は、柄糸が汚れ・ほつれたことからの巻き換え依頼ですが、縁頭金具の探索依頼および出来れば交換も・・・というご依頼でした。



ご要望の銀磨き地の肥後金具の縁頭は入手できたものの、刀身なしにしかも柄下地再利用でどのように柄に仕立てるか?など、職人からすると頭の痛いご依頼でした。

そこで、出来る限りの方策として、現状の金具で柄成を整形し巻き直しを施しました。
金具は別途ご相談ということで、今回の工作は終了いたします。

さあ、休憩!