地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

地球の裏から日本頑張れ!の応援BLOGです。
証券関係の話題について、証券マンとしての意見を述べていきます

スイスと言う国

2006-02-10 02:35:53 | その他よん
昨今の拙記事に対してのたくさんのコメント、本当に有難うございます。
いやぁ、こうやって色々な方々のご意見を伺えるのは本当に貴重な事ですぜ。

通常は拙日記を先に書くのだが、どうも帰りの電車の中で考えていた内容がとても1000文字で収まらないと思い、まずはこちらから書く。
ネットによって日本の方々との距離はほんとに近くなったように感じているけれど、やはり物理的距離ってのは変わらない。今日はちょっと寄り道をしてスイスの現状とか印象とかを書いてみたい。
これは拙コメント欄にお寄せいただいた、通りすがり様のコメントである。通りすがり様、どうもありがとうございます!

『そうは言っても、日本では大半の人がスイスの口座は胡散臭いとみているわけで、不正はすべて過去のものと言われてもにわかに信じがたい。スイスで稼いでいる金融マンの一方的な言い分だけを鵜呑みにするわけにもいかないし。
マネロン疑惑を払拭すべく、スイス金融業界の問題点や改善策までも指摘していただければ、説得力を増すのですが? (もちろんセールストークは割り引いて読ませていただきます)』

私はスイスに来て以来、ずっと日本株のブローカレージビジネスをやってきているので、実はPB(PRIVATE BANK)業務には余り詳しくない。とそういう言い訳はここでは置いておいて。
私が初めてスイスに来た1991年当時はスイスの銀行も色々な意味で強気だった。覚えているあるPBマンのコメント。
「もし今ヒットラーご自身が我が銀行の窓口に現れれば、お預かりしている全ての資産を即座にお渡ししますよ」
と言うものだ。これが如何に傲慢なコメントかは、結局昨今のユダヤ人資産の返還問題からも良く分かろう。
スイスの著名PBを私も色々と訪問しているが(もちろん自分の鼻くそのような資産を預けるためでは無く、日本株のお客様としてだけど)、かつて松本清張の小説にもあったように、大手を除く中小のしかも歴史の古いPBってのは派手に看板を出していない。しかし一歩中に入ると結構高そうな絵とかが飾ってあるし、中の防犯設備とかは凄いね。
丸の内や大手町の金融機関の入っている立派なビル、入り口にはガードマンが一杯居るけど一歩中に入ったらザル状態。あれはまずいなぁ、と出張のたびに思う。

私が考えるに、やはりスイスのPBなんかを理解する鍵は「鍵」ではなかろうか、と。鍵はキー、キーは鍵なのである。

スイスってのはすっごくこの鍵にうるさい。
我が家のアパート、全部で8世帯が入っているが、メインの入り口は当然1つ。そのメインの鍵はどの世帯のドアの鍵でも開く。つまり我が家の鍵でまずメインを開けて、それでその鍵で自分の家の鍵を開ける。お隣の家も同じ。
これはどういうことかと言うと、万が一私が自分の鍵を盗まれたとすると、その盗んだ奴は少なくとも我がアパートのメインドアは突破出来ると言うことであるので、万が一鍵を紛失したら全世帯の鍵を全て交換させられる羽目になるのだ。
各世帯4-5の鍵をもらっているから、その数だけでも40前後、そして費用はもちろん私が払う。
さらに、スイスにもMr.Minitみたいのが一杯あるけど、家の鍵の合鍵は簡単に作れない。それなりの書類を揃えないと作ってくれない。

良くスーツを着た人がポケットに手を突っ込んでジャラジャラやっているけど、それは日本の場合は小銭の音だけど、スイスの場合は鍵束の音、これほんと。
私だけでも、家、会社のエレベーター、会社の防犯システム、ロッカー、引き出し、これだけは絶対に毎日持っていないとどうしようもない。しかもどれも見た目は同じような形。
会社に行ってエレベーターに乗って自分のオフィスへ行く鍵を探すのに、やっぱりジャラジャラとポケットを探ってしまう訳だ。
別に電子ロックとかそんな気の利いた鍵には見えないのだけれどね。
会社の例えロッカーの鍵でも重要視されていて、全てのナンバーをバックオフィスが控えていて、例えば転勤だなんだで会社を去るときには全てにサインをして返却する。新しく来た時も同じ。家も同じ。鍵の授受には必ずサインが伴う。

ハリーポッターで、ハリーが両親の残した財産を見に行く箇所があったけど、あの銀行の連中は間違いなく「チューリッヒの小鬼」の風刺であろうって。彼らが器用に指の爪で鍵を合わせて、そして迷路のような中をトロッコで進んで、そしてようやくハリーの財産と対面する訳だが、ヨーロッパでもスイスの銀行家は例外なくあんな感じに思われている。

つまり鍵の管理の厳しさってのが根底にあるからこれだけ秘密めいたPB業務ってのも発展できたのではなかろうか、と愚考していたのが帰りの電車の中だった。
それだけ鍵に厳しければ当然私の財産を何があっても守ってくれるわよね、と。もちろん何があってもお守りします、と。

さて、スイスの銀行法で最も有名なのが「守秘義務」である。
恐らく典型的なPBマンは何があっても顧客名を外部には漏らさない。これを頑なに守っているがために、各国のお金持ちが信頼して財産を預けてくるってのが基本だろうか。
しかしながら一部これが崩れている場面に遭遇する。皆さんのご記憶にもあると思うが、例えばビンラディンの財産とか。五菱会の問題だってあれを預かっていたのはクレディースイスだったし、そういった悪質な犯罪に絡んだモノはスイスの銀行と言えども各国の捜査当局に知らせているって事だ。これも一昔前だったら恐らく知らせていない、と言うか積極的に捜査に協力はしなかったはずだ。

スイスと言う国が実はEUにも加盟せずいまだに頑なに独立を守っているのは、この銀行の力と言う話も多い。一旦EUに入ってしまえばスイスの特に銀行の独立性はまず間違いなく失われる。大手のUBSだCSだってのは今確かにPB業務に再び注力しているけれど、その他の業務を世界中で展開しているから余り問題にはならないだろうと思う。しかしながら昔から細々とやっている中小のPBは間違いなくEU参加に反対しているはずだ。
いまだに国民投票で国の行方を決めている国だけに、この辺は国民も頑固だね。
EUに関してはいまだにドイツ語圏(チューリッヒを中心とした約6割)が反対、逆に国際機関が腐るほどあるジュネーブを中心としたフランス語圏や、ルガノを中心としたイタリア語圏は賛成に回っている。数でまだドイツ語圏が若干有利なため、結局投票で撥ねられる。

この間昔からの知り合いで今はPBをやっているスイス人と昼飯を食ったのだが、彼の会社はとても小さいながらも彼は年に2度は日本へ行って顧客と会っている。
彼曰く「家の会社は小さくて、色々な国にオフィスなんて無いから良いのだよ。だって色々な国にオフィスがあればやっぱり一部の顧客を共有したりってことが出てくるけど、それが無いからね」
ちなみに共有の意味は、お客さん自身がこの銀行のスイスとあとイギリスとかに口座を開いた場合を言うのであって、勝手にスイスの顧客を他国の支店に教えてどうの、って事では無いので念のため。

結局この守秘義務があるためにスイスのPBに資産を預ける各国の金持ちが居るわけだが、同時にこれが崩れた場合には長年培ってきた信頼の1つが崩れるわけで、特にEUの問題と合わせて考えた場合、この帰趨はスイスの銀行業界の将来に大きく関わってくる。しかしながら同時に悪質な犯罪に対してはこの頃は積極的に捜査に協力する姿勢があるので、本当に堀江氏の口座やらがスイスの銀行そのものをも欺くような手法で行われていたとしたら、それは銀行側はもっと積極的になろう。
つまり前に書いたようにその場合の被害者はスイスの銀行であって、では日本のマスコミは何故にあそこまでスイスの銀行は一般的に・・・と言う書き方をするのか、と言うのが私の思っている事なのであるね。

具体的な例なりデータなりを何ら掲げられず申し訳無いが、この辺が私が認識しているスイスの銀行の現状である(って何も分かってないじゃない??ってのは置いておいて)。

スイスの事情を簡単に伝えてくれるのが、これ。
SWISS INFO

さらに、たまたまPBに絡んだ記事を見つけたけど、それがこれ。
プライベート・バンクは今も絶好調



5 コメント

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2/8の記事の事を是非やって下さい。 (一応)
2006-02-10 06:35:33
 2/8の記事の事、英訳してスイスの銀行委員会かなんかに提出して外交問題にしてやろうかしらを是非やって下さい。

 日本のマスコミは自分達に火の粉がふりかからなければ、目が覚めませんから。

 松本サリン事件の際も訴訟になって慌て謝罪に走りました。また、この事件の謝罪でリーク等を鵜呑みにしないと誓ったハズなのに、今はリークを更に肉付けして流しています。

 放送免許剥奪や出版禁止になる事は絶対になく、また自分達マスコミを批判出来、世界的に影響力のある自分達以上の言論機関がない為に、謝罪などしないし平気なのです。

 喉元過ぎればなんとやらの感じです。

 お願いします。



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Unknown (小鬼)
2006-02-10 07:38:47
一応さま

コメント有難うございます!

この海外に居る私ですらもうマスコミのあのやり方には辟易しております。ましていわんや日本にいらっしゃる方々でその雑音ぶりたるや、正直私には既に検討も付きません。

今何をどうしてやろうか、密かに画策中です。私自身ちっとも権威ある機関に対してはコネも無いのですが、一発ガツンとやってやろうと思っております。

何かアクションを起こすときにはまたこの拙BLOGにてご紹介させて頂きたいと思っておりますので、どうぞヨロシクお願い申し上げます!!
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こんばんわ (再就職活動)
2006-02-10 23:52:38
スイスの銀行が悪いような言い方されますが、僕は、悪い人が単にスイスの銀行を利用しているだけであって、スイスの銀行の人は、すごく生真面目に仕事をしているように思うんです。

 生真面目(=プロフェッショナル)に仕事をしすぎると、周りが見えなくなって、周りからの期待(例えば情報公開)との実体との乖離が広がりがちになる。ただ、無理にその開きを是正しようとすると、その生真面目がなくなり、仕事内容の精度が低くなる。

 スイスのPBが生真面目さより政治を優先させたら、スイスの銀行は、衰退するように思ってしまいます。

 2月10日、日経の“大機小機”に「自由な市場は、最も有効な経済組織なのに、その政治基盤は脆弱だから、努力して守らなければならない」ってありました。

 だから、小鬼さんも頑張ってください。
返信する
マスコミ&PB (お会いしたことありますね)
2006-02-11 23:04:22
小鬼さま、



初めてのコメントです。



ブログを読んでいて、小鬼さまマスコミの無知さに対する怒り、ひしひしと感じました。私も昨今のLD関連の記事のレベルの低さには「ちょとな…」と思っております。 しかし、マスコミなんて所詮そんなものでは無いでしょうか。「記事を読んでもらってナンボ」の世界なので、よりショッキングなタイトルや、一般人に同情してもらう記事を書くとか。 それは日本だけではなく、全世界共通だと思います(例えばCNN)。 また、金融業界専門のBloombergですら、まったく何も解っていなと思われるレポートが頻繁に画面に出てますよね。



なので、日本のマスコミのスイスPBに対する無知さを英訳・独訳しても、それで怒るスイス人はさほどいない思いますよ。 以下のリンクは、スイス人の友人から送られてきました。

http://www.facts.ch/dyn/magazin/wirtschaft/590962.html

メールにて彼女のコメントは「また、CSジャパンデスクと日本の裏社会の関連が書かれているよ」との事でした。 ちなみに彼女は香港のスイス銀行で3年ほどプライベートバンク部門を経験しております(結局PBは彼女の肌に合わず、アセットマネージメントに移りましたが)。 スイス人のPBに対する考えだって、その程度です。



またPBの口座ですが、いわゆるトラディショナル中堅PBではどうか解りませんが、世界展開している大手2社での口座開設はさほど難しくありません。 また、香港・シンガポールなど、PB歴史の浅い国にあるスイス銀行支店で口座を開く場合、「アセットが集まって数字が上がれば何でも良い」と思っているので、デューデリジェンスもかなり甘いです。 LDの役員の場合、Bloombergたたけば、会社名&時価総額&直近のインカムステートメントも出るので、コンプライアンスで問題になる事はありえ無いでしょう。

また、小鬼さまのコメントにて

>仮にタックスヘイブンたるジャージーにSPCを設立したとします。それでもってそこがスイスのPBに口座を開く場合、堀江氏なりライブドアの名前が出ますか?…

とありましたが、これは逆です。あまりスキームをばらしたくないのですが。ステップとしては…

1)個人が名義口座&番号を開く

2)銀行が1)の顧客にタックスヘイヴンにてのSPCのスキームを紹介し、設立を助ける。

3)無事SPCが設立された後、そこの口座も開設する。

…と言ったのが、通常の流れで、バンカーがSPC設立も関与してます(書類上は関与しませんが)。



また、もしSPCを先に設立し、そこが初めてPBに口座を開設するのであれば、口座開設書類上&デューデリ書類上、誰がfinal beneficiaryかも明記しないと口座は開きませんので、バンカーは資金の流れ把握できていると言うことになります。



これ以上書くと長くなりそうなので、この辺でとめておきます。 ただ、マスコミの内容の浅さには私も同意ですが、スイス銀行は100%クリーンとは言えないのも事実ではないでしょうか。ただ、世界のアングラマネーの一部は、同時に世界の政界にも繋がっているので、最終的にはスイス銀行は世界からの「本当の意味でのプレッシャーはかからないだろう」とも思っております。



では、同僚の「M君」&1月からそちらにJoinされた「S氏」によろしくお伝えください。 -山の上の運用担当者でした。
返信する
マスコミ&PB (お会いしたことありますね)
2006-02-11 23:04:46
小鬼さま、



初めてのコメントです。



ブログを読んでいて、小鬼さまマスコミの無知さに対する怒り、ひしひしと感じました。私も昨今のLD関連の記事のレベルの低さには「ちょとな…」と思っております。 しかし、マスコミなんて所詮そんなものでは無いでしょうか。「記事を読んでもらってナンボ」の世界なので、よりショッキングなタイトルや、一般人に同情してもらう記事を書くとか。 それは日本だけではなく、全世界共通だと思います(例えばCNN)。 また、金融業界専門のBloombergですら、まったく何も解っていなと思われるレポートが頻繁に画面に出てますよね。



なので、日本のマスコミのスイスPBに対する無知さを英訳・独訳しても、それで怒るスイス人はさほどいない思いますよ。 以下のリンクは、スイス人の友人から送られてきました。

http://www.facts.ch/dyn/magazin/wirtschaft/590962.html

メールにて彼女のコメントは「また、CSジャパンデスクと日本の裏社会の関連が書かれているよ」との事でした。 ちなみに彼女は香港のスイス銀行で3年ほどプライベートバンク部門を経験しております(結局PBは彼女の肌に合わず、アセットマネージメントに移りましたが)。 スイス人のPBに対する考えだって、その程度です。



またPBの口座ですが、いわゆるトラディショナル中堅PBではどうか解りませんが、世界展開している大手2社での口座開設はさほど難しくありません。 また、香港・シンガポールなど、PB歴史の浅い国にあるスイス銀行支店で口座を開く場合、「アセットが集まって数字が上がれば何でも良い」と思っているので、デューデリジェンスもかなり甘いです。 LDの役員の場合、Bloombergたたけば、会社名&時価総額&直近のインカムステートメントも出るので、コンプライアンスで問題になる事はありえ無いでしょう。

また、小鬼さまのコメントにて

>仮にタックスヘイブンたるジャージーにSPCを設立したとします。それでもってそこがスイスのPBに口座を開く場合、堀江氏なりライブドアの名前が出ますか?…

とありましたが、これは逆です。あまりスキームをばらしたくないのですが。ステップとしては…

1)個人が名義口座&番号を開く

2)銀行が1)の顧客にタックスヘイヴンにてのSPCのスキームを紹介し、設立を助ける。

3)無事SPCが設立された後、そこの口座も開設する。

…と言ったのが、通常の流れで、バンカーがSPC設立も関与してます(書類上は関与しませんが)。



また、もしSPCを先に設立し、そこが初めてPBに口座を開設するのであれば、口座開設書類上&デューデリ書類上、誰がfinal beneficiaryかも明記しないと口座は開きませんので、バンカーは資金の流れ把握できていると言うことになります。



これ以上書くと長くなりそうなので、この辺でとめておきます。 ただ、マスコミの内容の浅さには私も同意ですが、スイス銀行は100%クリーンとは言えないのも事実ではないでしょうか。ただ、世界のアングラマネーの一部は、同時に世界の政界にも繋がっているので、最終的にはスイス銀行は世界からの「本当の意味でのプレッシャーはかからないだろう」とも思っております。



では、同僚の「M君」&1月からそちらにJoinされた「S氏」によろしくお伝えください。 -山の上の運用担当者でした。
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