地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

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マーケットは食傷気味??

2005-03-30 02:22:07 | ライブドア問題
さすがにこの一連の問題においてはマーケットは既に食傷気味と言われている。
確かに誰もが最も重要視するであろう『事実』が、SBIの参戦と言うビッグニュースを最後に一旦止まった感がある。
しかしながら相変らず各界各紙各誌各氏のご意見やらは留まるところを知らない。
はっきり言って私に言わせれば、どうしてこれがニュース記事になるの?と言うモノが散見される。故に私もまだまだ乗せられてしまう。

まずはこの記事にご注目。
『ニッポン放送株の議決権総数の過半数を取得したライブドア(東証マザーズ)の株式のうち102万8278株(発行済み株数の約0・12%)が29日の東京証券取引所の夕方の時間外取引で売買されたことがわかった。
売買価格は同日終値(335円)を6・9%上回る1株358円だった。
市場では、売り手について「ライブドアの800億円分のMSCB(転換価格の修正条項付き転換社債型新株予約権付社債)を引き受けたリーマン・ブラザーズ証券」(準大手証券)とする見方が出ている。
一方、市場の通常取引の終値より高値で取得した買い手についても「だれが買ったのか」と憶測を呼んでいる。』

私は何故これが新聞記事になるのか理解できない。ライブドア株100万株がTostnetで売買されただけの話である。恐らくこの記事の味噌は「6.9%上回る価格」で取引された、って事であろうか。
ちなみに東証のHPによれば、単一銘柄のTostnetにおける売買においては、直近の基準値の上下7%までは認められている。
東証のHPのTostnetの箇所
つまり6.9%は全然問題ないし、また売り手についてはリーマンと言う憶測を書きながらも買い手については闇の中、って、それって新聞記事としてどうなのか。

私はまた、この記事の内容に嫌悪感を覚える。
『3月29日:大和証券SMBCが保有するフジテレジョンの株式3万5588株(発行済み株式総数の1.40%)を市場外取引で25日に売却していたことが明らかになった。関東財務局に28日夕に提出した大量保有報告書(変更報告書)で判明した。株式売却は買収を未然に防ぐための株主安定工作の一環とみられる。
大量保有報告書によると、大和証SMBCの株式売却価格は1株28万1000円で、売却額は約100億円になる。大和証SMBCはフジテレビ株を25日時点で19万242株を保有している。
大和証SMBCは直近の報告書(同28日提出の変更報告書NO2)に記載された株式保有割合8.95%から7.55%に減少している。
大和証SMBCは、フジテレビの株式をニッポン放送から22万株、2人の機関投資家2人から319株、1人の個人投資家から200株と計22万519株を貸借契約により借り受けており、この借株の一部などを売却したことになる。
25日の権利付最終売買日にフジサンケイグループ側の大和証SMBCがフジテレビ株を市場外で売却したことになる。このため、株式はフジテレビの株主安定化工作の一環としてフジサンケイグループを支援する企業か投資家に買収された公算が大きい。
大和証SMBCは、フジテレビのニッポン放送株のTOB(株式公開買い付け)で代理人を務めている。』

この記者の方の憶測(赤字部分)が正しいとするとこれは何を意味するか、賢明な読者諸氏は気付かれるだろう。
そう、これが本当なら、この商いは「事前に相手が分かっていてやったこと」でしょう。
だとすると、あの日のライブドアの時間外取引において、事前に相手が分かっていようがいまいがそれ自体は全く問題なし、って事でしょうが。
大和がやっていて(もっとも確証は無いが)ライブドアなりリーマンが駄目と言うのは、やはりマーケットに携わる人間としては捨て置けないのである。

もっと言おうか。
時間外取引は既にさるさるの方で書いたが、相手が前もって分かっている「クロス取引」がガンガンある、と言っておこう。

また、転換社債に関してもまだまだ若干の勘違い等が散見されるので、これもきちんとここで書いておく。
(詳細はさるさるにも書いてある)
一般企業がお金を必要としている時、彼らの資金調達方法には大きく2つあるのはご存知のこと。
銀行借入による間接金融と、自ら市場から調達を行う直接金融である。
さらに直接金融には大きく2つあって、1つは社債とかストレートとかデッドとか言われる、いわゆる新株発行等を伴わないモノと、もう1つはエクイティーファイナンスと言われる転換社債だワラント債だと言われる、新株発行を伴うモノとがある。
転換社債を発行した場合、これは株価がきちんと上昇すればやがてそれらは株式に転換されるので、償還時に企業は調達資金を返済する必要は無い。しかし残存期間中株価が思うように上昇せず、結局償還時まで転換社債が残ってしまうと、それを最後は返済する必要がある。
さて、それをアレンジする業者(引受業者)にとってのリスクは何か。
現在は一括して総額を発行会社から業者が買い取り、それを投資家に販売する、と言うやり方が主流である。つまり引受業者としてはある程度売れる見込みのモノで無いと、総額引き受けをしたけれど売れずに大量に在庫が残るというリスクが発生する。
800億円を引き受けてそれが全額残ったとなるとそのリスクは甚大である。1%の値動きで8億円が動く。証券会社は常に変動商品に対しては毎日マークトゥマーケット、すなわち時価で値洗いをしているので、それらがすぐに評価損として計上されてしまう。

それらのリスクを極力軽減しつつ、稼ぐのが引受業者である。
リーマンのライブドア800億も大和のフジテレビ800億も、本来ならば発行体は簡単に首を縦に振るような条件ではない。しかしながら両社ともそれでも出したい、と言う事であったから引受業者は最大限のリスクヘッジをしつつ発行にこぎつけた訳である。これを否定されたら今後どの証券会社も引き受け活動を極端に制限されることになる。

しつこいけれど、リーマンとライブドア連合だけでなく、大和とCX連合も同じ転換社債を出している事をきちんと認識して欲しい。
借株に関しても、堀江氏はリーマンに、そしてニッポン放送は大和に、それぞれ借株契約をきちんと結んで居る事も認識して欲しい。
決してリーマンの一人勝ちでも何でも無いのである。