地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

地球の裏から日本頑張れ!の応援BLOGです。
証券関係の話題について、証券マンとしての意見を述べていきます

最近のCB市場

2005-09-14 05:28:09 | CB教室
いやはや、決して忙しさを理由に更新のサボり具合の言い訳をするつもりは無いのだが、何たって毎晩9時ご就寝であるので、そりゃあBLOGも日記も更新できないわなぁ。
と言いつつも一挙にまじめモードに入る。

ここもとのCB市場をご覧になっていらっしゃるだろうか?
8月31日のSALA(サーラ)を筆頭に・・・

8月31日 SALA(2734)、アルパイン円、35億+5億=40億
9月01日 三菱製鋼(5632)、アルパイン円、70億+10億=80億
9月06日 シーフォーテク(2355)、MPO、30億
9月06日 イーシステム(4322)、MPO、20億
9月07日 アビリット(6423)、アルパイン円、85億+15億=100億
9月07日 福山通運(9075)、アルパイン円、約250億
9月08日 明治機械(6334)、MPO、10億
9月09日 ドリテク(4840)、MPO、50億
9月12日 荏原(6361)、MPO、400億
9月13日 新日本建物(8893)、MPO、12億
9月13日 スルガ(1880)、MPO、40億
9月13日 ソフマップ(2690)、MPO、5億
9月13日 モリテックス(7714)、MPO、8億

いやはや、である。
今回は、MPOを除いて、ようやくまともなCBが出てきたので、その辺についてご説明しようと思う。

CB全体のボラティリティーの低下のその最悪期が大体今年の5月とか6月くらいだったのは記憶に新しい。ゆえに巨大CBファンド等の危機説がずいぶんとマーケットに出回った。
ある具体名が挙がっていた会社は、確かに巨大だ。とにかく何でも買う。それも半端な買い方はしない。一時は彼らのマーケットニュートラルファンド自体のパフォーマンスの具体的数字まで出回ったものだったが、そしてその数字を持って「いよいよ危ない」みたいなことがまことしやかにささやかれて居たのを思うと、ちょいと隔世の感がある・・
相場の契機はやはり衆議院解散だったと思う。そこからマーケットは暴騰し、同時にCB市場のボラティリティーも上昇を始め、一気に彼らのパフォーマンスが改善された訳だ。
上手くそのタイミングにてローンチして来たのが、三菱によるSALAであった。
このCB、某掲示板では例の如く「これは下方修正が2回付いているからMSCBだ、ああ、主幹事は下限まで株価をいじるだろう、いや上限まで買ってくるかな」のような、もう反吐が出るほど私が繰り返してきている「あり得ない!」事を、さもありなんと言う感じで煽っていたが(笑)、賢い読者諸氏はもうそんなつまらない意見に惑わされないよね。
4年満期で下方修正が2回あるというのは、もちろん野村証券の用語集ではMSCBとか言っているかも知れないけれど、その野村の連中ですらこれをMSCBとは呼びませんので念のため。
仮に連中がそう言っているとしたら、私が思いっきり笑ってやります。
これらのCBにおける下方修正と言うのは、あくまでもCB投資家にとっての「保険」である。これによってCBのバリュエーションが上がる大切な要素だ。
第三者割り当てMPOの、例の如くの下方修正条項とは、そもそも前提が違う。
大体、そのCB自体の販売先が根本的に異なるわけで、通常のモノは徹底的にCB投資家に販売されるけれど、MPOの場合はあくまでも主幹事による一種の「純投資」であることは、だいぶ前に述べたとおり。

まあいい。

さて、そのSALAであるが、オファープライスが102.50、下方修正2回、当初のコンバーションプレミアムは5%程度、130%のアクセレレーション・クローズ(130%CALL条項)、PUT無し・・・
と言う条件だった。
会社自体は中部地方を中心としたエナジーソリューション(と言えば聞こえも良いが、要はプロパンガス販売会社であるね)で、株価は割りと地味目。
しかしながら、ずっとあのMPOばかりで辟易していた投資家にとっては朗報だった。ようやくまともなCBが出てきた!とばかりに、聞くところによるとその応募倍率は軽く20倍を超え(つまり総額40億の起債に対して、800億円以上の応募があった)、起債自体は大成功だった。
ちなみにこれらの条件をインプットしたあるモデルの試算によれば、このCBのフェアバリューは大体106-107程度であったそうで、実際ローンチ後のスイスでの値段はその辺で付いていた。最後は108近辺まで行って、今日現在もその辺の値段での推移になっている。

さて、翌日の三菱製鋼、これも三菱からの起債であったが、会社の格がSALAと比べれば遥かに良いにも関わらず、三菱は唯一オファープライスを103に設定した以外は、SALAと同じ条件でローンチして来た。
これはSALAを遥かに凌ぐ応募が集まったのは明らかであろう。
同じモデルでの試算結果は約111程度!
ローンチ後の値段は最終的にはその辺に収束した。但しチャートを見ると株価は結構な高値圏にあるため、今日現在のCB値段は110-111をはさんだ展開となっている。
いきなりこのような高い値段が付いてしまうと、さすがに「ミスプライシングだ」と叩かれる懸念もあるが、結果的にこれがその次に出てきた、アビリットや福山通運には追い風となった。

アビリットの100億は驚いた。チャートをご覧になれば分かるが、この会社の株価は年初から約4倍!パチスロの何たら、と言う機種が爆発的人気になって株が暴騰したようだが、確かに仮に私がアビリットの財務担当だったら、株価がここまで来たらファイナンスをしたいだろうなぁ、と思う(笑)。
これも結果的には成功ディールとなり、グレーでは102.50のオファープライスに対して104-105近辺の値段が付いた。

同日の福山通運。
これは少々スキームが難しいかった。何たって久々に見る「割引債」スタイル。
ディープディスカウントで発行し、しかも満期が20年、最後は100で償還になると言うモノ。ゆえに上では「約」250億と言う書き方になったのだね。
これは噂によれば、このようなスキームを欲していた巨大投資家の存在があって、そこと共同で進めた起債だったようだ。ゆえにその投資家が1/3程度を買った、と言われている。
確かになじみが余り無いし、しかしながらまともなCBであることには変わりは無いので、これもきちんとした値段がグレーでは付いていた。

ちなみにこのCB、クーポンが0.01%付いている・・
ほとんどタダのようなクーポンであるが、これがついて居る理由をご説明できる方はいらっしゃいますか??

これは、割債スタイルでゼロクーポンだと、償還時にそのキャピタルゲイン部分が源泉課税の対象になってしまうそうで、ゆえにタダ同然のクーポンを付けて、課税はクーポン部分にして、償還差益部分の課税を回避したがゆえ、との事だったそうだ。
まあ引き受け担当者ってのはその辺もつくづく良く考えているものだなぁ、と感心した(笑)。

ある在ロンドンの引受担当者君から、以下のような電話があった。
「小鬼さん、このアビリットと福山についての簡単なレポートを書かねばならないのですが、何か教えてくださいな」

私は引受は素人ながら、CBに関しては割りと注意してその動きをウォッチしていたのでこう答えた。
「世が世ならさ、アビリットのような起債は結構厳しかったと思うし、福山も余りにもスキームが面倒そうで、少なくともスイスの投資家はほとんど参加していないと思うのね。でもこれらがきちんと成功したのはさ、紛れも無く三菱のSALAと三菱製鋼のお陰だと思うよ。これらが先鞭を付けなかったら、現段階では一体CB市場のレベルがどの辺にあるのか、誰も分からなかったし、だからまずは三菱の2銘柄がきちんと道を掃除しておいたから、これらの2銘柄が難なく受け入れられたと思うよ」
とね。
つまり私が上で「結果的に・・・」と言っていた理由がこれであるね。

ようやくアルパイン円なりユーロ円CB市場に明るさが戻ってきた、と言う感触があるので、私自身は非常に嬉しい。
やはりエクイティー市場と言うのは、MPOのような関係者のみでの完結型ではなくて、広く一般投資家をも良い意味できちんとした形で巻き込んで行かなければ面白くないのだね。

次回は、特にこのアルパイン円CBのローンチから値段が付いて行くまで、をきっちり観察していると、物事の「値段が付く」と言う原理を理解できるのさ、と言うお話をしようと思うので、みなさん、頑張って色々と宣伝するように(笑)。









5 コメント

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ローンチから値がつくまで (yuragi)
2005-09-14 23:04:08
そのフローと値が決まるメカニズム、ぜひ知りたいです。楽しみにしております。

ちなみに、このCBの取引状況などを個人がリアルタイムで確認できるHPなんてあるのでしょうか?

あと、このCB関連の基礎知識が得られるような書籍など、もし有ればお教えいただけると有り難いです。

ぶしつけな質問ばかりで恐縮です。
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Unknown (小鬼)
2005-09-15 07:01:54
YURAGIさま



残念ながらそのCBの取引状況を知るHP等は無いと思います。本当にリアルタイムである程度の気配値がお知りになりたいようでしたら、ご一報下さい。次回に何かあった時に、業者から刻々と来る値段をメールで流してあげます。ただそれだけ見てもあまり面白くないかも知れませんが・・・もしご興味があるのでしたらどうぞ遠慮なく!!



書籍はなかなかありませんね。私も東京出張をするたびに専門書店をのぞきますが、CBって何故か記述がすごく少ないのですね。

それならあっしが書こうかぁ!なんて思うのですが(笑)、出版社の人とか全然知らないので、もしご存知でしたらご紹介下さい!

あるいはお知り合いのお知り合いとか(笑)。もしその暁には私はきちんと書くことを宣言いたします!ちなみにロンドンの知り合いの私にとっての教授さんが間違いなくその監修をやってくれると思います(笑)。

宜しくお願いします!!
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ありがとうございます (yuragi)
2005-09-21 06:55:05
>・・・メールで流してあげます。

ありがとうございます。

ここぞというときにはお世話になりますm(_ _)m



CBがわかりやすく解説された本、見当たらないですよね。逆に言えばCBを発行する経営者は、どの程度理解した上でCB発行を決定するのでしょうね。証券会社の営業パンフ(こんなものがあるかどうかもわかりませんが)には「サルでもわかるCB」的な解説があるのでしょうか。

自分も含め生半可な知識しかない投資家はCBが発行されると条件反射的に「売り」「買い控え」となります。「大株主である経営者が貸し株料で私腹を肥やすための発行だ」とか、いろんな憶測が飛び交います。銀行借入れ、第3者割当、公募等の手法がある中で、なぜCBあるいはMSCB、MPOを選択したのか理由が明確でないケースも多いです。

日経あたりが経営者向け、個人投資家向けに解説本を出してもいいんじゃないかと思うんですけどね。



「サルでもわかる」的な本を作られる際にはサル代わりのモニターとしてお手伝いさせてくださいね(笑)

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Unknown (小鬼)
2005-09-23 06:51:42
yuragiさま



確かに、昔は証券会社の店頭に「転換社債」に関するパンフはあったと記憶してますが、今は無さそうですね。。

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Unknown (小鬼)
2005-09-23 06:55:38
yuragiさま



確かに、昔は証券会社の店頭に「転換社債」に関するパンフはあったと記憶してますが、今は無さそうですね。。

ただ、某掲示板なんかを拝見する限りでは、みなさん、さるでも分かる、、程度の知識はありますね。CBの基本的なことはかなり理解されているな、と感じます。ただ世の中にMPOだのMSCBだの、ってのが出回るようになって、コンフューズしている嫌いはあると思いますね。

あの発行概要、結構書き方が法律にのっとってるので、言い回しが複雑だし、ってのはあるのですが、でも彼ら彼女らは一度じっくり読んでみれば良いのになぁ、といつも思います。何回かの起債に関して読んでみれば、きっと何がポイントで何がポイントじゃないか、さらに何をどう取り繕おうとしているか、なんてのが見えてくると思うのです。



そっかぁ、そういう解説本、やっぱり書いてみようかなぁ!!(笑)。

その節は、モニタープラス宣伝、宜しくお願いしますね!!
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