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地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

地球の裏から日本頑張れ!の応援BLOGです。
証券関係の話題について、証券マンとしての意見を述べていきます

なんだよ、消えちゃったよ

2005-12-16 06:02:15 | マスコミ、企業
せっかく今日もJ-COMにて吼えたのに全部消えちゃったよ~~。
どうしてくれよう!
もう一回ポイントをアップしてみよう、だって書いたことなんて書いてる先から忘れちゃうし、バックアップなんていちいち取ってないし・・・とほほ。

利益返上ですか

2005-12-15 04:51:25 | マスコミ、企業
それにしてもJ-COM株、本日はストップ高でしたか。
どっちかって言うとみずほの立会外分売がどの辺の顧客に入ったのかが私は興味深々ではあるが。

さて、拙日記にてもまたちょろっと吼えさせていただいたが、結局全額利益返上だって?

あほか?

6社が揃いも揃って全額利益返上なんて、これはどう考えても別の大きな力が働いたとしか思えないね。敵に塩を送るどころか、敵に武器やら果ては兵員まで送って、今回の戦いにおいての相手の消耗分をみんなで補ってあげましょうよ、なんてことがあり得るのか?

昨日は「相手の隙に付け込むのはこの世界では当たり前じゃ!」と吼えさせていただいたが、もう一歩話を進めてみると・・
拙日記にちらりと触れたように、アービトラージ的手法を考えてみればまたこの出来事を違う視点で眺めることが出来る。
つまり、市場の歪みをどう捉えるか、って事である。
今回のJ-COMに関しては、私はバリュエーション等の数字は詳しく見ていないが、見る人が見ればあの上場時の株価が何故かストップ安に一瞬ではあるかも知れないが放置されて居た、と言うのは「正しい歪み」であったはずだ。
つまりアービトラージャーのみならず、普通に市場に対峙している人は「ストップ安は、安い!」と思ったとしても不思議ではないはずであった。
従って証券の自己運用部門、或いはネット投資家の方々の何パーセントかは、今回の誤発注が大元であることを知らずに買い向かったかもしれない。
つまり誤発注による強烈な歪みは後付けであったと言う投資家が居ても私は不思議では無いと思う。

仮に私が自己運用部門に居て、それじゃあ百歩譲ってこれはどうも何かミスが裏にあるらしい、と感づいたら、果たして私なら覚悟を決めて買い向かえたかどうか、それも実は甚だ疑問なのである。
それほど強烈な信念(これは明らかに歪んでいる!)等が無ければ、実はいくらサラリーマン自己運用部門とは言え、簡単にはいかないはずなのであるね。
それを思い切ってやった連中は、きちんとリスクを取った訳である。
確かに後から見れば、ミスに乗じて大儲けしやがって・・と思える。しかし私は当事者達の立場に立ってみた場合、どうしても上のようなことに考えが及ぶ。
後から批判するのは簡単だ。しかしながらその瞬間瞬間で切り取ってみれば、そこには強烈な、本当に心臓が爆発しそうなリスクを取った連中が勝った結果であるのだね。

それをもっともらしく、世間やら世論やらの何となく解せないなぁ、と言う雰囲気を巧みに取り込んだ与謝野さんは、まあ操作上手なのかもしれないが、やはり当事者達から見れば、結局最後は圧力ですか、って感じに映ってしまう。
6社が6社、みんなで一斉に返還を決めた、なんてのはどう考えても何らかのパワーが働いたとしか考えられないじゃない。
コメント欄にある方が書いてくださったように、(昨日のチケット売り場の例で)「何故他のチケット売り場の人達はその儲けを返す必要があるのでしょう」と。
私も全く同感で、何故?なのである。

私がさらにこの問題に関連して危惧しているのは、以下のニュース。
『東京証券取引所の天野富夫常務は14日朝、自民党の企業会計に関する小委員会(委員長・渡辺喜美衆院議員)に出席し、8日に起きたジェイコム株の誤発注のような異常な売買が行われた際には、売買契約そのものを無効とする制度の導入を検討していることを明らかにした。
 東証の天野常務は欧州の一部では、発行済み株式数を大幅に上回るなど異常な売買が成立し、かつ影響が重大な場合は、取引所の判断で売買を強制的に無効とする規定があることに言及、今後の検討課題だと述べた。大手証券会社がジェイコム株を大量に取得した問題では、証券会社の自己売買のあり方などについて規定する考えも示した。』

例え欧州のしかも一部にそのような制度があるとしても、基本は『Done is Done』なのである。
それをそんな何処の国でやってるか分からないような制度を引っ張り出してきて(だってもしきちんとした国でやっているなら、その国名を開示すべきでしょう。欧州の一部、なんて、もしかしたら普段碌な商いも無い国かもしれんし、東欧だって欧州だぞ)、あたかもそれが世界の常識のような言い方をして、この常務もほんと世間におもねることしか考えてないね。

さらに、その後が問題だ。「証券会社の自己売買のあり方についても規定」するだと??そしたら市場の自由競争なんて何処へ行っちゃうの?
市場って言うのは如何に自由であるか?が大きなポイントでしょうが。
政府は小さな政府を目指しているのではないのかね?小さな政府っつーのは我々の言葉に言い換えれば、くだらない規則でがんじがらめにするのはやめて、もっと自主性に任せましょうよ、って事でしょうが。
それが東証の役員がそんな態度でどうすんの?

ライブドア、楽天、そして村上ファンド・・・世間では、さらにBLOG等で上位ランキングの非常に世の中をお分かりになった方々は口々に罵っているけれど、でもね、彼らはやっぱり大きな意味での市場の歪みを矯正している一種のアービトラージャーなんだよね、私からみれば。
東証の役員がその程度で、また金融相もその程度であれば、まだまだ日本市場の歪みは矯正されないから、きっとこれからも世の中をお騒がせするような方達がハッスルするだろうね。
そのたびに踊っていなさい。
また、何たって外人投資家は歪みの矯正が大好きだからね。
って事はまだまだ日本株は勢いが衰えないかもしれないね、とっても逆説的だけれども(笑)。。。
 

J-COM、その後

2005-12-14 06:39:23 | マスコミ、企業
さてJ-COMの続きである。
結局伝家の宝刀である「強制決済」を持ち出すことになった訳であるが、確かにこんなのは私が証券界に入ってからは聞いたことが無かった。随分昔にあったようだが、それにしてもこんな方法もありかよ・・と言うのが私の第一印象であるね。
だってこのような例外を設けることを何よりも嫌う東証である。しかしながらまあそれしか方法が無いわなぁ、何たって実在株数の40倍だしね・・・

一応拙日記からの読者の方も居ると思うので、もう一度簡単に今回の出来事を例えるならどのような事だったのかをここに書いておく。

例えるならサッカーの観戦券を考えてみる。
今回の券、合計15000枚が売り出されることになった。15000人しか収容できないスタジアムでの好カードなのだ。
(但しもっと正確に言うならば、そのうち12000枚は既に来賓用に取ってあり、実際普通のお客さんに売られるべき枚数は3000枚であった・・)
買えなかった人たちはそれを持っている人に「ねえねえお願いだから私にその券を売ってよ、買値より高い値段を払うから」なんてやり取りが始まった最中、ある売り場の売り子さんが間違えてなんと60万枚のチケットを売ってしまった訳だ。
それでなくても買いたい人がわんさか居る所に60万枚が一気に売り出されたらしい、との噂は一瞬にしてサッカー観戦券市場に出回った。
「何だよあんなにプレミアムが付いていたのに、実は60万枚もあるのならそんなのは当初の売り出し値段より安くても買わないなぁ」と言う人が一瞬続出、これが公開後ストップ安した、と言う事であるね。
ところが冷静に考えてみれば、あのスタジアムは確か15000人しか入れないジャン、と言う事に気付いた人間が居た。彼らはこれはあの売り場の売り子さんのミスだと瞬時に判断し、その誰もが見向きもしない値段で売られているチケットを買い漁った。
さてその売り場の売り子さん「あれ、これってあたしの間違いジャン、まずいすぐに取り消さないと!」と慌てふためき、この売り子さんがチケット販売の元締め会社にすぐに取り消しのインプットをしたが、なぜかそれが上手くインプットされなかった。
あせった売り場主任は「それじゃあ仕方がない、とりあえず今売っちゃったチケットを買い戻せるだけ買い戻せ!」との指示を出した。
結果50万枚くらいは何とか買い戻せたけれど、残り10万枚くらいは買い戻せなかった。。ああかわいそう・・

さて、このサッカーの試合日はチケット売り出し日を含めて4日後。売り出し日に買った人は代金を4日後までに指定口座に振り込んで、同時にチケットが4日後に送られてきて、その日に試合が開かれる。。ところが元々15000席しか無い場所で差し引き(つまり慌てて買い戻した50万枚を除いた)10万枚のチケットが売られちゃっている訳で、今更席数を増やせず、スタジアムを変更出来ず、それじゃあどうしましょうか、と言う事で、10万枚買った人達に、強制的に現金を、しかもみんなの買値よりも高い金額で振り込み直して、「チャラ」にしてもらった。。(強制決済)
その後結果的に差っ引いてみれば、結局その売り場には約1000枚のチケットが残って居ることになった・・
それじゃああらためてこの残った1000枚のチケットを明日にでも売り出しましょう、(この例では試合の翌日、ってことになってしまうが、まあ夜行われる試合の直前を明日、と捉えてくださいな)と言う事になったのが、言われている「立会外分売(たちあいがいぶんばい)」の事である。
実際15000席あるものの、本来12000席は既に来賓等で占められており、一般の観客用チケットは3000枚しかなくて、一旦ほとんどをチャラにしちゃったので、あらためてその1/3の1000枚を一斉に売り出したらパニックになっちゃうでしょう、と言う配慮での行為であるね。

と言うのが事の真相である。
分ったかなぁ?誰がみずほで誰が東証で誰が与謝野大臣から『美しくない』と言われた人達か。

さて明日の立会外分売の結果どうなるかは私より皆さんの方が早く知れるわけで、興味津々で見てみてくださいな、と。

今回の件で気になることが2つばかりある。
1つは、東証が何だかすごく弱気なこと。
ある記事の抜粋はこうだ。
『今回の証券事故に対するみずほ証や東証のかかわり度合いなどに基づき、みずほ側の損失を東証が一部負担するのかなどが焦点となる。
東証は当初、取り消しができなかったのは、みずほ証が入力方法を間違えたためとしていたが、東証のシステムの不具合が原因だったことが判明した。東証の鶴島琢夫社長は12日、報告に訪れた金融庁で記者団に対し「損害がみずほに出た場合、取引所のシステム障害との関係はどうなるのかの解明が今後の問題だ」と述べた。』

個人的には私は東証のシステム障害なんて物が本当にあったのかどうか疑問だと思っている。世間の風向きを考えた場合、一見みずほの単純なミスで本来は済みそうな気がするが、やはり発行済み株数を大幅に上回る注文を簡単に東証のシステムがアクセプトしてしまった事は看過出来ない事態であるのは事実だ。これが本当だとすれば、やはり世界的な信頼を東証は失いかねないシステムにて今まで運営して来たことになり、そうなると将来的な上場を視野に入れている東証も洒落にならない。
ゆえにここは耐え難きを耐え、忍び難きを忍んで、あえてシステム障害と言う大義名分を作り上げ、損失の一部を負担する方が、長い目で見た場合得策と考えたのではあるまいか。

実はこの「システム障害」、我々もたまに使う手なのですな。
大きなミスはもちろんそんなのでは済まないけれど、でもちょいとした事にはこのシステム障害を理由にする事がある。
かつて私がやっていた転換社債のマーケットメイク。ポジションがどっさりあるCBの株が例えば暴落しちゃった場合、果てどうしようか、とりあえずオープニングは「システム障害により弊社の取引開始を30分遅らせます」的なアナウンスを他社にしておいて、その間に方策を考える、なんてのはたまに使った奥の手だ。
何らかの理由によって、本日のお客さんの株の注文の約定連絡が遅れたとき、「すみません、ちょっとしたシステムトラブルがございまして・・・」

要はシステム障害ってのは外部には全く分らないのである。ゆえに何か起こればとりあえずそのせいで、と言うことにしてしまうと、結局外部の人は文句を言えない。百歩譲って我々がマーケットメイクでやってた「障害」なんてのは、実は相手も百も承知の助なのであるが、そうやって面タン切られちゃうと「嘘つけ!」とは言えないのである。何せ彼らに我々のシステム障害を確かめる術が無いのだから。


次に私が許せないのが与謝野のおっさんの発言。これは前述の拙日記にて吼えさせて頂いた。

ふたを開けてみれば(つまり5%ルール報告を見てみれば)、
『米モルガン・スタンレー証券が4522株(31.19%)、野村証券は1000株(6.9%)、日興コーディアルグループが3455株(23.83%)、リーマン・ブラザーズ証券は3150株(21.72%)取得していた。』
さらに今日のスイス時間の夕刻、私も正直噴出してしまったが、あのUBS証券なんて、なんと3万8千株あまりも保有していることが分った訳である。

先ほどの例で言うと、あるチケット売り場で間違って売ってしまった大半のチケットを実は他のチケット売り場の連中がどっさり買っていた、って訳であるね。
実はこのチケット売り場同士では日頃熾烈な販売競争があったとすれば、結局その売り場の単純ミスである、と言う嗅覚は誰よりも他のチケット売り場の連中の方が優れている訳であるから、連中がそのミスに付けこんで利益を上げようとしたわけである。

さてこの行為、本当に責められますか?

与謝野さんは、
『誤発注ということを認識しながら、他の証券会社がその間隙をぬって、顧客の注文を取り次ぐのではなく、自己売買部門で株を取得するということは、美しい話ではない、証券会社も経営者は行動の美学を持つべきだろう』
とのたまったそうで。

???????

確かに美しい、友情に溢れ愛情に溢れる話ではないわな。がしかし、そんなことを金融相が言っちゃうことが何よりも美しくないのだよ。
人命救助とは訳が違うんだよ、大臣。ここは言ってみればアフリカのサバンナなのですよ、大臣。
食うか食われるか、それしかない。それが資本主義でしょう。
証券マンだって普通の人達と同じような心は持っていますよ。持っていますけれどもこの話、誉められこそすれ、グチャグチャ言われる筋合いの話ではないのである。
弱いところ、いや弱みを見せればありんこだってライオンを食い尽くすのですな。

野生動物で恐いことの一つは、その動物が虫歯になることである、と言う話を聞いたことがある。仮にライオンが虫歯になってしまったら、もう肉は食えない、そうなると待っていることはただ一つ。
虫歯になったライオンは結局他のライオンに食われてしまう訳であるね。
ライオン歯磨・・・なんて冗談はさておいて。。

スポーツだってそうでしょう。
あのタイガーウッズのお父さん、彼がタイガーにゴルフを教えるとき、例えばタイガーがパットをする瞬間にわざと音を立てたりしていたそうだけど、それでミスしちゃうのはタイガーの責任なのだね。その程度の事でミスをするようなことが無いように、との訓練でしょう。

もっと言えば日本のマスコミだって、結局はあらの探しあいで食ってる訳でしょう。それを何故にこの問題に限って「行動の美学」が求められるのか?
もちろん尋常ではない金額の金が動いてしまっている訳だから、一般常識とはちょっとかけ離れているよね、って感じはするだろう。
この業界に身を置くに当たって新人の頃に飽きるほど教えられることがある。それは「自分の財布と仕事はきっちり分けて考えろ」って事だ。
つまり我々はそういう天文学的な金額に、全うな意識で触れる訓練を受けているのであるよ。

パラシュート部隊やら消防レンジャーの方々のやっていることが我々には考えられないように、或いはお医者さんが毎日真っ赤な血と対峙していることが小心者の私には理解できないように、普通の人から見ればこの問題は別世界でのお金が動いているように見える、よって与謝野さんは行動の美学うんたらかんたら、と言っているのであろうが、我々から見れば片腹痛いね。
だって業界の内側から見れば千載一遇のチャンスだったもん。
正直UBSの約4万株に関しては、ちょっとやりすぎちゃうの?って気がしたけれど、それでも私は「アッパレ!」と叫びたいね。

皆様が、何だか小鬼ってのは実は血も涙も無い冷血動物なんじゃねーの?とお思いになるだろうことも想像出来る。
しかしながら、僭越ではあるが、もし私のこの記事を読んでそう思われている方がデイトレとかをやられているのなら、それはすぐにお止めになった方が良いですよ、と言っておこう。
株ってのは貴殿が買った値段で必ず売った人が居るから売買が成立しているのですからね。その逆もまた真なり、ですからね、念のため。
その意図するところがお分かりになりますよね??












みずほ証券大ちょんぼ

2005-12-09 05:49:17 | マスコミ、企業
いやはや読者の方々の暖かいお言葉に甘えつつ、ついついこんなに間が開いてしまいました、ごめんなさい。
その間小鬼は決してぐーたらしていたわけでも無いので、どうぞお許し下さい。
先週は東京、先々週はロンドンにジュネーブ、そして今週末からまたジュネーブ、ってな具合に移動ばかりしております。。
「お前、移動や出張ばっかりで全然稼いどらんやんけ~」とかローカルの外人にまで言われている始末ですが、まあそれは置いておいて・・
相場も非常に良いので余計大変だったりする訳ですなぁ。。
日常の基本的なことは、拙日記にアップしておりますので、基本はそちらをご覧あれ~~

さて、しかしながら本日のみずほの大ちょんぼを書かないわけには参りますまい。
みずほは私自身関わっていた会社ですから(汗)。

事の経緯の細かい内容はここの読者の方であればもう徹底的にご存知であろうと思う訳ですが、一応簡単に書いておきましょう。

J-COMと言う会社(人材派遣の会社ですな)が本日初めて上場しました。東証マザーズ、まあ東証に上場したと考えるのが簡単です。
この上場の意味は、要は当該会社の株価に初めて値段が付く、って事です。
ちなみに世の中に出回るであろう総株数は約1万5千株。1株あたりだいたい50-60万円の株でございます。
つまりあなたが1株買おうとすると、それに払う金額は60万円くらい、と言う事になりますな。

さて、9時にマーケットが始まり値段はある意味順調に推移していたのですが、9時半ごろ突如値段が下がり始めます。
ある証券会社からなんと約60万株の売り注文が出たのですな。
ちょっと考えても分る通り、世の中には1万5千株しかないのです、しかしそれに対して60万株の売りが出れば、一体何が起こったのかなんて考える隙すら無く、値段はあっという間にストップ安。。
そしてストップ安を付けた瞬間からあれよあれよと値段は上昇に転じ、最後はストップ高で終了。。
ニュースを総合すると、要はみずほがこの注文、本来「1株売り@60万円」を単純に「1円で60万株売り」と入力、それが通ってさらに東証でも簡単にアクセプトされて、執行されてしまった訳ですな。

どの段階でみずほが間違いに気付いたのか現在は不明ですが、ストップ安を付けた時点からみずほがひたすらバイバックに走ったのは、そのティックを見れば一目瞭然、それに提灯が付いてストップ高になったのは誰でも分かる所。

大方の予想は、1株当たり20万やられたとして50万株であればその損失たるや約1000億円!
現在のみずほの発表によれば、現時点での損失は約270億、今後1000億程度まで膨らむ可能性とか。

~~~~~
この時点でのポイントを幾つかあげましょうか。

まずは東証は約定を無しにする、とは考えていないこと。つまり証券用語で言うところの『全てにケツを入れる』と言う事。
世の中に1万5千株しかないものを、要は60万株の空売りをしてしまった訳で、当然それら売った株全てを買い手に渡す義務が生じるわけです。
しかしながら60万株のショート、一体いつになったら全部買えるのですか?と。
東証の言葉をそのまま受け取れば、みずほは全株揃うまでひたすら買わねばならず、そうなるとホルダーは決して売らず・・と言う事が考えられるわけで、下手すれば1000億でも済まなくなる可能性があるわけです。

次に問題なのはそんな単純ないわゆる有り得ない注文をみずほのシステムが簡単にアクセプトしたこと、そしてそれを東証のシステムが当たり前のようにやはりアクセプトしてしまったこと。
ここは実は非常に重要な箇所で、今後みずほは東証になるべく責任の一端をかぶせようとするだろうし、東証はそんなものは頑としてはねつけるだろうけれど、でも自分も大きいことを言えない、と言う状況が出てくるでしょう。
これは世界的に大笑いの的になるわけで、百歩譲ってそれで済めばむしろラッキー、例えば外人なんかは「そんな取引所が杜撰ならもう日本株はいいや」と考えるとも限らないわけで、そうなると相場全体への影響がまじで懸念される訳です。

さらにここからは余り大きな声では言えませんが(笑)、最近みずほ内部が非常にがたついていたのですな。
あそこは元N証券で固めています、さらに外資系顔負けのような給与体系になっている訳で、人の出入りが物凄い激しいのです。個人的な感想をいえば、とんなに優秀でも元Nであるか、もしくはみずほ生成前の旧銀行系出身でないと結局居ずらくなるのですな。
しかしながら内部で大規模な抗争があったようで、大物役員の更迭やら元N軍団の要所を固めていた方々がはずされたり、って事が起きていたようで、要は社内がガタガタになっていたと推察されます。
そこへ来てこの大問題ですから、まあ推して知るべし、ですな。

さて今後の展開ですが、要は旧銀行系が元N軍団の存在を面白くないと感じていたのは明白なので、ここで証券存亡の危機になっているのでとりあえず銀行本体なりホールディングがとりあえず救済に行くことはほぼ間違いないと思われ、でもそうなると「やっぱり証券マンには任せておけね~」と銀行は言い出すに決まっていて、そうなるとせっかくのあの会社の良い意味でのダイナミズムみたいなものが徹底的に失われる可能性が大、と考えているわけですな。

そうなると他社はどうするか?
決まっています、生き馬の目を抜く世界です。徹底的に(我々も含めて)証券は草刈場になるでしょうね。
つまり優秀な人材の徹底的な引抜きのゴングが鳴ったわけですよ。トレーダーやらアナリストやらなんやらかんやら・・・
我々ももちろんアクションを起こすでしょうね、それがこの世界の掟ですから。。

この内容はくれぐれもあなた限りにして下さいね。一切の責任は負いかねますので・・・

企業の海外IR活動に関して

2005-06-28 01:30:48 | マスコミ、企業
いつもCB絡みの話題なので、ここで企業のIR活動に関してちょいと触れてみたい。
拙日記の方で書いたのだが、先週金曜日に久々にある企業の海外IRのアテンドをした。
この会社、約1年前に新興市場に上場したばかりの極めて新しく元気な会社だ。
社長と海外IR担当の日本語ペラペラの外人さんのお2人で、ロンドン、エジンバラ、チューリッヒ、パリ、フランクフルト、と回って歩いており、その中のチューリッヒは我々の担当となった。
ディーラーになってからはこの手の仕事にはとんとご無沙汰だったのだが、この度はいつもそれを引き受けている同僚が出張中のため、急遽私にお鉢が回ってきた。
チューリッヒの投資家数件を一緒に回って、ミーティング最初のイントロを私が行って、その後はお2人がプレゼンをする、と言う感じであった。
外人さんはさすがに金融市場の専門用語に関しては日本語と英語が上手くマッチしないため、所々で私もヘルプしながら、まあつつがなく終了した。
その後空港までお2人をお送りして私のミッションは終わったのだが、その後に発熱してしまったのは、拙日記に書いたとおり(笑)。

この度のこの会社の目的は、多くの外人投資家に自社を知ってもらう事であり、また出来れば長期保有を前提に株を買って頂きたい、と言う目的があった。
ちょいと不思議に感じたのは、やはりこの社長もヘッジファンドは毛嫌いしている、と言う事だった。
幸いスイスにおいての訪問先は全てがプライベートバンクであり、投信会社であったために、お互いが変な思いをすると言う事が無かったので、まあそれは良しとしよう。

~~~~~~
私がD社時代ここチューリッヒに赴任した90年代初頭、企業の海外IR活動はかなり活発であった。
私自身その頃は下っ端だったと言う事もあり、ほとんどのこのIRに伴うアテンドをさせられた。
企業によっては今回のように個別に投資家を訪問するスタイルと、会場を決めそこに投資家を集めて行うプレゼンテーションスタイルとに分かれる。後者の場合は大抵ランチョン、つまり昼飯付きのプレゼンになるのが通常である。
最近は個別スタイルが多いように感じるが、その頃はほとんどが会場型であったので、下っ端のIR係の仕事はまずは会場を押さえ、下見に行き、ホテルを取り、スケジュールを組み、晩飯やらの予約をし、云々かんぬん、そして当日はずっと付いて回る、と言う、まあ行ってみれば旅行会社の予約係り兼添乗員、って感じであった。
これが来ると自分の仕事はおろか、特に当日は朝から会社に行けないのでなんとも不便であった思いがあるが、悪い事ばかりでは無かった。
それは今をときめく大会社のトップの方々と名刺を交換し、そしてじかにお話が出来ること、であった。

その当時は幹事関係によって海外IRを引き受ける事も大きな意味を持った時代であった。その頃はまだ事業法人部(いわゆる”事法”)がまだまだ元気な頃で、ここが相手の事業会社との商売やら果ては幹事関係を握る大切な部署であったため、ここはとにかく1社でも多く色々とお世話したい・・そこでまだ食い込めていない企業に対して例えば「海外IRのご提案」みたいのを出して、よっしゃぁ、A社、アメリカと日本と英国は野村がやるけど、スイスとドイツは我々がIRをやる事になったから粗相の無い様に後はヨロシク!的な指示が飛んでくる時代であった。

今でもIRの進行やらアテンドの仕方の基本的な線は変わっていないが、IRを取る意味が大きく変わってきている。
スイスはまだほとんど無いが、東京やロンドン、ニューヨークにおいては、訪問を受ける投資家サイドが、「Dは今年は何社のIRを持ってきてくれたから何点」みたいなように、このIRの件数や投資家自身が望んでいる企業のIRを持ってきた証券会社に対して点数を付ける様になってきたのである。
IRのアレンジが各証券会社の「ブローカーズランキング」の変動要因に組み込まれる事になってきたのである。
その投資家に取って魅力的な企業、投資をしてみたい、或いは投資をしているがその会社の現状を知りたい、と言った欲求をこのIR活動で引っ張ってくれば、その証券会社のランキングが上がり、それによりその投資家から出るであろう株式売買手数料なりが変動する、という事だ。

いまや大手機関投資家は年間で証券会社に支払う手数料を、そのような様々なファクターにてランク付けて、そしてじゃあ野村は今年は3位だから我が社が各証券会社に支払うであろう年間総手数料の約15%分のオーダーが行くでしょう、みたいになっているのである。
そこにこのIRも重要な意味を持つようになってきて、今度は幹事どうのと言う事業法人からの要請ではなく、営業部隊(特に機関投資家営業や海外店での海外投資家営業)からの要請で、再び活発化しているのである。

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今回私がアテンドした社長さんにも最後に一言言わせて頂いたのだが、
「社長、御社は今年が発足以来最初の海外IRですが、どうか毎年必ず続けられてください。私も沢山の海外IRを担当してきましたが、それを愚直なまでに毎年続けている会社と、その時の流行で1-2回やってもう良いや、と言う会社と大きく2種類に分かれるのを見て参りましたが、どちらが良いかなんて言わずもがなですよね。」

社長はがっちりと「もちろん毎年参りますのでヨロシクお願いします」
とおっしゃって、次なるパリへ旅立たれたのである。

カネボウ上場廃止は当然だって

2005-05-18 02:05:26 | マスコミ、企業
本日の本題に行く前に・・・
さるさる(出来ればそれをお読みいただくと話が早い)には既に書いたが、ヒノキ新薬のお話。
会社が非喫煙運動を推進して、現在約200名居る全社員が「非喫煙宣言」をしているそうだが、そこに私は紛れもないニッポンの会社像を見るわけである。
社長さんがおっしゃるとおり、禁煙の風潮は確かに強い。どこのオフィスもいまどきは大体禁煙で、喫煙者は会社のお炊事場だとか喫煙室だとかでせいぜいタバコが吸える程度、さらには路上禁煙が当たり前の一歩寸前までその風潮は浸透しているわけだ。
本当に全社員がタバコが嫌いで嫌いで仕方が無いから素晴らしい会社に勤務できてよかった、って事であればそれで良いのだろうけれど、でもそれだからと言って、喫煙したら退職もしくは解雇、ってすごい話だと思うのですが。(そして残念ながらそういう社員が居たから問題になっている訳で・・)

もちろんお肌の大敵である喫煙をまずは従業員から止めて、そして皆様のお肌を守るために我々は日夜頑張っています!ってメッセージが伝わって来なくも無いけれど、健康診断をして喫煙を見つけて、そして退職を迫るってのはどうなの?
往々にしてどの会社もこういった事はある。それを端的に非常に残念な形ではあったけれど、示したのがJR西のボーリングであり、コンパであろう。またニッポン放送の全社員の血判状、果てまたポニーキャニオンによるアンケート、FNS関連27だか28社によるフジテレビへの同調、ETCETC・・・
こういったことはマスコミ全般にも当てはまる気がする。とにかく各社一丸となって(苦笑)、ターゲットを叩き潰すなり攻撃するなり。

さて、カネボウである。
BLOG仲間(とお呼びして良いですか?)のHBIKIさんが送ってくださったTBには素晴らしいご意見が書かれているので、私のこの記事はその後追いめいてしまうが、是非彼の記事もお読みいただきたい。

東証のカネボウ株上場廃止に対して、その監督官庁のお上がガタガタ言い出したようだ。
情報ベンダーのニュースがまとまっているので、まずは以下の記事。

『金融庁の五味廣文長官は16日午後の定例記者会見で、東京証券取引所が産業再生機構のもとで経営を再建中のカネボウ株式の上場廃止を決めたことに関連して「企業再生の手法やあり方が多様化しており、上場廃止基準は大きな環境変化に十分に対応しているのかどうか」と述べ、必要に応じて基準を見直すべきとの考えを示した。
金融庁は13日、東証に対して上場廃止基準についての報告書の提出を求めた。虚偽記載にかかる上場廃止のルールが制定されたのが1970年であることから、現在の市場環境の変化に対応していないのであれば「ルールのより精緻(せいち)化や改廃を検討することは時宜にかなったやり方で行わなければならない」(五味長官)との判断が背景にある。
五味長官は一般論として、産業再生機構のような再生を支援する組織ができ、再生過程で積極的に過去の不正を解明した場合、粉飾という事実を重視するのか、それとも粉飾解明の経緯や事業再生を目指すうえでの影響に重きを置くのかについては様々な議論があると指摘。そのうえで、「現行の基準と現実の市場のあり方との間にかい離がないかと議論されていることから、時を置かずにしっかりと議論を深める」と述べた。
金融庁では東証に対して、上場基準のほか、カネボウ株という個別株式の取り扱いに関する情報が、東証の機関決定前に報道されたことから、情報管理体制のあり方や、自身が株式上場を予定している東証の自主規制機能の適切な組織体制についての考え方についても同時に報告を求めた。』

と、まずは金融庁の五味長官が16日にブツブツ言い出し、そして・・・

『伊藤達也金融担当相は17日午前の閣議後会見で、東京証券取引所の上場廃止基準に関してついて「企業再生の在り方が多様化するなか、昭和45年(1970年)2月に規定された廃止基準がどのように対応していくのか、議論の時期に差し掛かっている」と述べ、基準見直しの検討が必要との考えを示した。
東証は12日にカネボウの上場廃止を発表したが、金融庁は13日、東証に対し、上場廃止基準に関する報告書の提出を求めた。企業の再建を進める過程で過去の不正が発覚した場合、過去の粉飾に重きを置くばかりでなく、事業再生に与える影響も考慮の必要があるとの考え方が背景にある。
東証は2004年10月から、有価証券報告書の虚偽記載が発覚したカネボウ株を監理ポストに割り当て、上場廃止にするのか検討を続けてきた。虚偽記載を長期間続けたカネボウが投資家の判断を誤らせ、証券市場に対する信頼を損なったと判断し、12日には同社を6月13日付けで上場廃止にすると決めた。
また、カネボウ株の上場廃止に関する情報が、東証の機関決定前に一部で報道されたことから、金融庁は東証の情報管理体制や自主規制機能についても報告を求めている。』

翌日、金融担当大臣もそれに同調してきた。

それに対して何となく各社勇ましい意見、すなわちカネボウの上場廃止は当然だ!と息巻いていた新聞各社の意見も若干軌道修正されたように感じる。
朝日の社説は、
『長年にわたる粉飾は、適切で迅速な情報開示を大前提とする証券市場を裏切る行為である。(上場廃止は)当然の結論だ。』
としながらも、
『例えば、正直に申告した場合には、重い課徴金を課す一方で、上場そのものは認めるといった第三の道もあるのではないか。』
と書いている。

読売の社説はどうもどっちつかずの当たり障りの無い事を書いており、しかし
『約11万人もの株主にとって痛手は大きいが、証券会社の店頭での相対取引は続けられる。上場廃止処分となっても、カネボウの企業価値がゼロになるわけではない。』
とカネボウが上場廃止になってもみんな大丈夫だよ、的な事をも書いているのはちょっと見逃せない。

私の結論は数日前に書いたとおり、これは妥当な判断だと思うので、東証にはくれぐれも腰が引けないようにお願いしたいと思う。
繰り返しになるが、犯人を捕まえました、よくよく調べてみると過去にもそいつは悪い事をしてました、でもそれは進んで自主的に犯人が言った事なので、それは見逃してやったらどうか、、ってのと全く変わらないと私は思う。
大体お上のお偉いさん方が1970年に制定されたルールだからどうのこうの、って言うけれど、どの世界を見ても半分カビが生えたような法律なりルールによって縛っているのは一体どこのどちらさんなのでしょうか、って事だ。
悪い事をして来たのはその会社の一種の社風でもあったわけで、いくら経営陣がそう入れ替えされてそして炙り出したぞぉ!なんてヒーロー面されても、悪いものは悪いはずだ。
それを朝日の社説のように妥協案を示してみたり(実際そういう議論があるそうでトホホであるが)なんてのは、またまた得意の対症療法であって、根本治療ではない。
この先送り的なやり方が今色々な局面で非難ゴーゴーなのはご存知でしょうが。

読売の「企業価値がゼロになる訳ではないから、仮にそうなってもみんな大丈夫だから」的な論調も、正直ライブドア問題の時から比べて読売の社説子さんも成長したもんだなぁ、と感慨深いものすら私にはあるよ、全く。
ニッポン放送が上場廃止の危機にさらされたときにもこの程度のモノを出していただきたかったね。
あの時の無用な煽動を今度は立場も何もかも全部ひっくり返して行うなんざぁ、たいしたものだ。

大体11万人の株主株主って言うけれど、この問題が発覚したのは4月13日。それ以降善意の投資家は売ってるはずである。そこを買ったり、或いは売り買いしたりってのは「投資家」ではなくて「投機家」だと判断して私は差し支えないと思う。
確かに長期投資で保有されていた向きで、4月のそのニュースにて売らざるを得なくなったであろう投資家には心から市場関係者として同情する。ただ再生機構入りが決まったのは昨年の5月31日だからね、一応念のため。
まあその時点では上場廃止と言うトピックは無かったのだろうが、本当に長期保有目的の投資家ならもうその時点で触らなかっただろう。

万に一つでも、東証が前言を翻すような事になったら、知らないよ~。
もっともお上はこの決定に関してはもう宜しい、と言っているようだからそれは無いと思うけれど。
私はこの際だからお上はもっと徹底したお掃除でも奨励したら、それこそお上の株も上がるのに、って思っていたのだが、それだけに非常に残念な物言いであり、それにこそこそ同調し始めたマスコミにあらためて不信感を募らせて居る。トホホ。


カネボウ上場廃止

2005-05-13 05:53:10 | マスコミ、企業
カネボウの上場廃止が決定された。
4月13日に過去の粉飾決算の総額が2000億円にものぼることが明らかになり、その段階から株価は下落の道をまっしぐらに走っている。
産業再生機構が昨年5月31日に支援を決定し、そして過去の財務まで調査して大きな粉飾が明らかになった訳だが、それが東証の上場廃止基準に抵触していた事は何回か前の記事に書いた。
再生機構は東証に対して上場廃止の撤回を求めていたのであるが、東証は本日上場廃止を決定した訳だ。東証がそれを特例として認めてしまったら後々収拾がつかなくなる事は誰もが思うところであったと思うので、カネボウと再生機構には気の毒だが、東証の判断は私は正しいと思う。

『産業再生機構は東証の判断に先立ち、「過去の誤りを理由に上場廃止にするのは適切ではない」などと上場維持を要請していた。』
と言うのが再生機構のダイジェスト意見であるが、例え過去でも、ましてや当時の経営陣が既に誰も居なくても、やはり組織としてルール違反が明確であった以上、それはきちんと償うべきであろう。
過去の膿を自ら出したのに・・・と言う論理が通じるほど市場は甘くは無い。
過去の膿を自ら出すなんて当たり前の事だし、正直それは誉められた事では無いだろう。
犯罪者を捕まえたら実は過去の犯罪も明るみになったけど、でも過去の事はまあ仕方がないか、と言っているのと同じであろう事くらい誰でも分かる。
ちなみに4月13日のニュースの出る前日の株価は1491円、その後一時盛り返す時もあったが、本日の終値は453円ストップ安売り気配、って奴で、売り物を約1230万株残している。
明日もストップ安になるだろう。

この本日のニュースの出るちょっと前に日経にかなりまともなコラムがあった。
「一目均衡」と言うのがそれで、「上場廃止もっと容易に」と言うものである。
要はある企業が上場廃止になるとその株のホルダーが容易に株を売却できなくなるばかりか、譲渡所得への税率も2倍掛かり、さらに確定申告の必要が出、また配当も20%の税率で源泉徴収をされた上に、住民税はどんなに少額配当でも申告して納税の義務があり、非常に善意の株主に不利である。
この善意の株主を困らせる度合いが小さければ、上場廃止を取引所はもっと決めやすくなる、と言うものであり、これは私も賛成する。

『甘すぎるといわれる現行の上場廃止基準を強化しても良い。企業統治が不備な企業、投資家向けIRに不熱心な企業、過剰な買収防衛策を導入した企業、株価が一定基準を下回った企業などにもっと厳しく対処出来れば、企業経営に緊張感が生まれ、真に魅力的な証券市場が築けるのではないか』

まさにその通りである。ただその通りであるが、例えばカネボウの件に関してはどこもその粉飾を見抜けなかった。西武鉄道の虚偽記載に関してもそうである。過去にそういう不正を誰も見抜けずに、結果として大損をした投資家がどれだけ居るのだろうか。
これを見抜くべきだったのは一体誰であったのだろうか。
監査法人にも非があろう、また東証にも責任の一端は確実にある。さらにカネボウの業界の監督官庁にもその責任はあって良い。
ただ人を騙すと言う事は、誰もそれを見抜けないからみんな騙されるわけで、まあその辺の責任のなすりあいを今さらしても何も進歩的な事は生まれない。
ただ、東証は、上場企業の管理をするのが仕事である訳だから、今後東証も株式会社になったならばその辺の脇の甘さが全て株価に反映されるであろう事をきちんと意識するべきだ。
東証が出した過度の買収防衛策に関しては私もそれは正しいと思う。それはまっとうな投資家を保護する良い方策だ。ただ同時にこのような会社の不正を見抜けず結果として東証自身が介錯の役割となって上場廃止を決めるのであるから、今回のカネボウにおいて損失を被ったであろう「善意」の投資家に対する思いを忘れてはいけない。

しかしながらちょっと付け加えておくと、4月13日以降に売買に参加した向きは基本的に「投機色」が強い、と言わざるを得ない。
その段階で上場廃止基準に抵触していたわけで、それを承知で取引に参加して大やられをしても責められるべきは自分のみである。いわゆる自己責任って奴だ。
ゆえにそういう向きまでも「善意の株主」とするかどうか、その辺に正直疑問が残ったりする。


ちなみに我々の業界の監督役は金融庁であろうが、同時に日本版SECなんて気取った言い方をされている証券取引等監視委員会もそろそろ力をつけて欲しいね。
ようやくここの権限の強化が取り沙汰されているが、遅きに逸した感があるのも事実だ。
アメリカなり英国なりのSECってのは本当におっかないそうだから、それくらいの権限をきちっと持たせないと、企業側ばかりを縛り付けるのでは真の意味での健全な市場になんてならない。
管理が強化されればそれだけ自由度も減りそうではあるが、それがきちんとしたものであれば無用の混乱を防止するであろう事は想像できる。
まあSECの場合はその管理下に我々が置かれるわけで、それはそれで実務上負担が増えるのは目に見えているし、またそういった事にことさら敏感な銀行系証券会社がここもとの金融再編で増えているから、何だか本末転倒になりそうな気配もあるが(笑)。

PS
そうは言っても、政府の鳴り物入りで始まった再生機構の言い分が実は通るんじゃないか、って思ってた向きもかなりあると思う。ダイエーに関してあれだけ譲らなかった、ある意味立派な筋の通った組織である。
そこがこれだけ上場維持に意地になっていたわけであるからね。
社長はご存知N証券出身のS氏。そのS氏をN時代に知っている私の元ボスAさんは、「まあSさんなら何でもやるだろうなぁ」。
それだけに本日再生機構が発表したコメントには悔しさが滲み出ていた。
上のリンクからも行けるが、
『再生機構は、東京証券取引所に対して、上場維持が相当であるとの考えをお伝えしてきたところであり、本日の決定は誠に残念です。
(中略)
機構としては、こうしたカネボウの再生プロセスの進捗に鑑み、カネボウの再生可能性は引き続き充分にあると考えており、カネボウに対する支援を継続し、機構法に定める3年以内の支援完了に向けて、引き続きカネボウの企業価値の最大化を進めていきます』

どこの市場でも良いから、カネボウの再上場の日を待とう。

ジェイアール西に対する証券市場の見方

2005-05-12 04:34:39 | マスコミ、企業
今回のような大事故の後に、こういう話を書くのは世間一般では余り歓迎されないのは百も承知の上であるが、私のエリアなので書かせてください。
そう、証券市場は今回の件を果たしてどう見ているのか、である。

連日JR西に対する様々は報道が為されている中、その株価動向も一般の報道の中に織り交ぜられていると思う。既にご存知の通り、JR西の株価は事故のあった4月25日以降下落を続けている。
22日に415’000だった株価は事故当日の25日に400’000、そして本日5月10日の東京市場での終値は384’000まで下がっている。事故前から比べて約7.6%の下落となっている。
ちなみにJR西の株式はほとんどの機関投資家なりファンドなりが組み入れている銘柄だと思って良い。
ゆえに証券各社のアナリストもほとんどがカバーしている。

この事故による様々な補償額が全く見えないこと、また福知山線を全線ストップさせていることによる損失額を概ね1日あたり2500~3000万円と見積もっているが、それもあと何日このような状態が続くのか全くわからないことにより、将来の損失額をなかなか確定出来ないがために、各社アナリストの予想は様々だ。但し、公共の鉄道であるがゆえに当然他の路線は毎日通常通り運行されているので、極端な損益の悪化は無いだろう、との見方がほとんどのようだ。
それらをまとめたニュースは以下の通り。

『UFJつばさ証券の磯野雅洋アナリストは、「公共事業のため株価に一定の下方硬直性はあるものの、JR西日本の体質などをマスコミが必要以上に叩いていることもあり、当面株価が反転するきっかけはなく、じりじりと下げ続けるだろう」と指摘している。
 JR西日本が9日発表したゴールデンウィーク(GW)期間中(4月28日-5月8日)の輸送実績は前年同期比1%増の216万8000人。ドル箱の新幹線は4%増の129万1000人だったが、在来線は3%減の87万7000人にとどまった。「福知山線の影響も響いている」(広報担当・高原晃氏)という。
 JR西日本が4月27日に公表した2006年3月期純利益予想は前期比2.4%減の576億円になる見通しとしているが、事故の影響額は含めておらず、「影響額が確定次第業績予想を修正する」(東憲昭・執行役員)方針だ。
 日興シティグループは5月9日付でJR西日本の目標株価を69万円から40万円に引き下げ投資判断を「買い」から「中立」に修正した。松本直子アナリストは同日付リポートで、「遺族・負傷者、破損したマンション住人への補償、事故区間の修繕費用や事故関連費用で250億-300億円程度の特別損失の発生も考えられる」と指摘している。
  一方、事故原因については国土交通省の事故調査委員会の結論を待つべきとしながらも、「メディアを通してJR西日本の利益優先が今回の事故を招いたという論調が作り出されている」として、「行政側の規制や労使関係が影響されることがあれば鉄道事業者への利益圧迫につながる」とも懸念している。』

この記事を読んで気付かれたと思うが、アナリスト達も今回の必要以上のマスコミによるJR西に対するバッシングには、彼らの視点から非常に危惧を抱いていることがお分かりいただけるだろう。
株価に影響を与えるから、だからナンなんだ?とお怒りの方もいらっしゃるかもしれないが、JR西の他の路線の運転手は今日も自分の電車を運転しているのと同様、我々証券マンもこうして相場と対峙しなければならないのであることを、もう一度繰り返しになるが、ご理解いただきたいと思う。
このジリ貧になるだろうと予想されているJR西の株式を空売りして儲けろなどと言うつもりはないが、でも我々の仕事は実はそうする事であるのだ。
国交相の指導により新型ATSの設置が義務付けられそうだ、と言う記事に対しては、3大信号メーカーと呼ばれる、日本信号、大同信号、京三製作所のそれぞれの株価が上昇した。
まあこれなんかは、事故後の将来の国民の安全のための方策が具体化してきたことの表れと取って取れない事は無い。しかしながらきっかけはやはり100名以上もの犠牲者を出した事故であるから、私と言う一個人から見れば正直釈然としない部分もあるが、それを表には出さないのがプロ意識って奴だと思う。(いやここではこうやって出しちゃっているけれど、会社での顧客との話し合いの中では出さないって事である)

そうやって振り返ってみれば、例えば地下鉄サリン事件も阪神大震災も何もかも必ず色々な形で相場に動きが出てくる。サリンの時は毒ガスマスク、震災の時は建設会社、と発想は極めて単純ではあるがそれが証券市場である限り、我々はそこから逃げる訳には行かない。

改めて、合掌。
~~~~~~~~

<おまけ>
今私のやっているCB市場で静かな話題が「Variance Swap」と呼ばれるものらしい、と言う話を東京の知り合いの記者の方から聞いた。
これに関して何か聞いたら教えてください、と言われたので、ロンドンに居る最近お知り合いになった非常に優秀な方にかる~い気持ちで伺ってみた。ちなみに彼はもちろんT大を卒業後、アメリカのMITにてMBAを取って、また日本で別の大学院に入って博士号を取ったと言う、歩く金融工学の権化のような人なのだが、ご本人は至って気さくな方で、私も初めてお会いしてすっかりコロリとなってしまった(笑)。
彼の私のメールに対するお返事がすごかったぁ。

『CBアービトラージはインプライドボラティリティと将来のリアライズドボラティリティの差にベットするものですが、CBのパリティや満期に応じてベガやガンマが大きく変動するため、相場観にあったポジションを組みにくいという欠点があります。それを補う商品がVariance Swapで、リアライズドボラティリティを直接参照します。
 Variance Swapのアイデア自体は90年代後半からあったのですが、参加者が限られている事もあり、その後あまり話を聞かなくなってしまいました。ただし最近リアライズドボラティリティの連動性が高まった事や、CBアービトラージのパフォーマンスが、ファンドのαよりも市場全体のベガ水準に左右されがちな事から、マクロヘッジをかけたいという言うニーズが出てきたのかもしれません。』

実はこの文面自体は私にとってはなるほどぉ、と言う感じなのだが、このメールに添付されていた資料がまたすごかった。全部で4つのファイル、1つあたり7-8枚で、全部英語であった。
最初の段落を読んだだけで正直それ以上を読むのはあと何年掛かるか予想すら付かないので、今はストップ中。
読んでみたい方がいらっしゃったらご一報下さい。



JR西に対するマスコミはあたかも・・・

2005-05-10 05:42:37 | マスコミ、企業
まだお若いながらも金融界の大先輩、超優秀なる木村剛先生のBLOGの『週刊!木村剛』の記事にて拙日記の記事「まったくもう・・」をご紹介いただいた。
木村氏はご存知、日本振興銀行の社長でいらっしゃる、金融界では知らない人が居ないというほどのお方である。
週明け早々(と言ってもご紹介いただいたのは6日であるのだが、私自身が気付いたのが本日であった、まったくもう・・)非常に励みになる出来事に今日は一日ポ~ッとしていた。
木村先生、どうもありがとうございます!今後も微力ながらも我が金融界のために頑張って行きたいと思いますのでご指導のほど、宜しくお願い申し上げます。

さて、
幸か不幸か(いや、このような状況下では”幸”だと思えるのが実は悲しいが)日本のテレビが映らない環境に居るため、JR西に対する過熱バッシングの様子がどれほどのモノか分からなかったのだが、本日日経新聞などを読みつつネットにて記事を拾いつつ、だいぶ様子が分かってきた。
マスコミのその過熱ぶりは、こうしてある種中立な位置から眺めていると非常に不思議に映る。
不謹慎のそしりを免れないかもしれないが、あえて私の率直な感想を述べさせていただくと、
『日本のマスコミはまるで中国で起きた暴動デモのようだ』である。

詳細は私のようなモノが語るに及ばないと思うが、それでもあえて少々書かせていただければ、例えばサンケイの社説などは全従業員十羽一からげである。
『社員一人ひとりの安全に対するプロ意識が欠落しているといわざるを得ない。それがヒューマンエラーの原因につながっていったのではないか。』

この手のネットで入手しうる報道には枚挙にいとまが無いが、さらにさる方からのメールにては、テレビでのコメンテーターだのアナウンサーだのレポーターだの、そして記者だのが、まあよってたかって凄いそうで。そのお方のメールでの非常に秀逸だと思ったのはここ。
『ミスをした運転手を再教育する「日勤教育」で自殺者まで出ていたという話は前にも致しましたが、この教育は「原因の追求ではなく責任の追及」に過ぎず、殆ど「いじめ」のようなものだと言われていました.でも今、マスコミがやっているJR叩きはまさにこれと同質ですね.それだけでなく、勤務に就こうとするJRの運転士をホームで蹴ったり、職員の子供が学校でいじめられたり、陰湿なのは国民的体質なんじゃないでしょうか』

また、毎日新聞のコラムでも、「尻馬に乗るな」と言うものがあった。
毎日はライブドアの時も多少なりともまともな意見を発信する記者氏が居たのであるが、今回も冷静に分析する方が居たのか、と思った。
『報道陣の監視の下でJR社長が土下座し、不祥事が暴かれ、幹部が謝罪を繰り返す。遺族の悲嘆を軽く見るつもりはないが、「劇場化」する事故報道の中で感情を押し殺し、サンドバッグ状態に耐えるJR幹部の映像を見て「これがウチの会社だったら……」と身震いした管理職も多いのではないか。
 国鉄改革とは一体何だったのかと思わせるJR西日本の退廃を厳しく問うのは当然だ。しかし、糾弾調も過ぎればJRを萎縮(いしゅく)させ、例の「日勤教育」同様、効果が疑わしい、とならないか。全国でレールの置き石が相次いでいるという無責任で浮ついた世相だ。JR西日本の運転士をけったり、駅員をなぐった者もいるという。尻馬に乗るなと言いたい。』

どちらも非常に鋭いところを突いているではないか。
ライブドア問題でもさんざん「劇場化」が問題になっていたのは記憶に新しいが、マスコミはその舌の根の乾かぬうちにまた同じ事を繰り返している。

たくさんの優秀な方々が、日中関係、日韓関係、或いは北との関係等を鋭く分析され、ある時は政府の弱腰を糾弾し、ある時は中国韓国北朝鮮の横暴を暴き、そういった努力を私も色々な方のブログから現在学んでいる最中なのだが、このマスコミの過熱ぶりを見るにつけ、その行動そのものが実は中国のデモを扇動する連中、韓国の自傷パフォーマンス抗議の目立ちたがり屋の連中、また北の不気味に統制が取れている行動をする連中と全く重なって見えてしまうのだ。

もちろん何度も言うけれど、今回の事故はJR西が悪い。これは揺るがない。またボーリングやらゴルフやらも、基本的には許容されないだろう。ただ、上司が行くと言えばそれに従わざるを得ないのはサラリーマンのサガであるから、そこへ行った全員を単純に「非道だ」と責めて、JRに処分をさせると言うのは実のところどうなのだろうか、とちょっと思う。
これらの件で処分を受けるのはその当事者たちと言うよりまずはその管理責任者である事は言うまでも無いだろう。そしてその管理責任者を管理する立場の経営陣がきちんとした処罰なりを自らにきちんと課すのが組織のあり方だろうと思う。
ようやく南谷会長は財界団体の副会長の座を辞退したようだが、組織のボスが率先して頭を下げると同時に対応に憔悴しきっている部下をねぎらうのが本来のボスのあり方であろう。
それをJR西の全従業員のプロ意識が欠如しているとか、そういった扇動はナニモノも産まない。

マスコミの本当の役割とは何だろうと思う。
前にさるさるで書いたが、オーバーラン自体をどうこう言うのではなくて、ライブドア問題の時にもさんざん自負していた「取材源に身体を張って取材できる」その能力をきちんと生かして、むしろオーバーラン後のダイヤの遅れとか、それによる歪みなどが観測されれば、ダイヤ改正を働きかけるなりするのが本来の役目ではないか。
メールのお方がおっしゃるように、マスコミは責任の追及は経営陣に求めれば良いと思うし、むしろどっかの宴会の領収書を探してくるような事をする前に、原因の追究、そしてその後それを踏まえたうえで一体どうすればさらに安全な運行が出来るのかの提言などを真正面からやるべきだ。

そしてもう一つ秀逸な意見に出くわしたが、
『ライブドア騒動で、裁判所もグローバルスタンダードの立場から、[会社は大株主のものである]という判決を出したばかりだが、もしそれが正しいとすれば、今回の事故にあたって、経営者や従業員関連からではなく、大株主が率先して謝罪を行うべきだ』

確かにライブドア問題の時はマスコミはこぞって株主株主と大合唱していたが、今回の件では大株主から何か意見を取ったマスコミがあるのだろうか?
モノを言う株主の村上氏をマスコミは随分こぞって取り上げていたけれど、そう、株主はドンドン会社にモノを言うべきで、それが経営者の経営判断にも繋がるはずであるが、JR西の大株主たちはどうしていたのだろう??
以下、昨年9月末段階のJR西の大株主である。

株主           株数   %
 1)JAPAN TRUSTEE SE 147,088 7.354
 2)MASTER TRUST BAN 135,848 6.792
 3)MIZUHO CORPORATE 81,000 4.050
 4)SUMITOMO MITSUI   64,000 3.200
 5)EMPLOYEES' STOCK 44,087 2.204
 6)UFJ BANK LTD     42,000 2.100
 7)STATE STREET BAN 34,203 1.710
 8)SUMITOMO TRUST & 32,000 1.600
 9)NIPPON LIFE INSU 30,000 1.500
 10)DAIICHI MUTUAL L 30,000 1.500
 11)CHASE MANHATTAN 27,657 1.383
 12)MIZUHO TRUST & B  24,125  1.206

本日は以上でござる。


認知心理学からのアプローチ

2005-05-03 00:54:55 | マスコミ、企業
私は実は超常現象とかに非常に興味がある。もちろん専門に研究した訳では無いし、今後もそれに割く時間なんて限られていると思うが、前に一度そう言う事に関する日記を書いていて今は止まっているのだが、それを再び書き出そうと思っている。
ただ、私の立場はそういうものを妄信的に信じるものではなく、むしろサイエンスとのバランスの中で色々解き明かしたい、というものである。
その中でも「認知心理学」と言うものに非常に興味がある。この世界で有名なのは本を何冊も出されている信州大学の菊池先生であるが、彼の著書「超常現象をなぜ信じるのか」と言うブルーバックスは私にとっての一種のバイブルであり、もう何度読み返したか分からない。

何故こんな事を書くか、と言うと、我々自身がマスコミに対峙する時、この認知心理学と言うものを是非知っておくべきだ、とずっと考えていたからである。

今回のライブドアの件でもそうだが、あれだけマスコミがこぞってライブドア及び堀江氏を悪者扱いすれば、ほとんど興味の無かった人々は単純にそうだよなぁ、と思ってしまう。もちろんNETなりBLOGの発達によって多少はそういう単純な思い込みも阻止されてきた感が無くは無いが、それでも相当数にのぼるであろう人々が、ライブドアや堀江氏を今でも悪の権化のように思われている気がする。(少なくとも証券マン的アプローチからは、ライブドアなり堀江氏の取った行動は悪くは無いと言う事は今まで何度も書いた)

菊池先生のその著書に「予期にそった情報は記憶に残りやすいと言う記憶バイアス」についての実証例が載っている。
ある人物を「司書」と紹介した場合と「ウエイトレス」として紹介した場合では、彼女の同じ行動を見ても、人々にはそれぞれ違った情報が記憶される事を示している。
彼女の日常の行動を、司書のステレオタイプに一致する特徴を9つ、ウエイトレスのそれを9つを織り交ぜて15分のビデオを作製し、その4日後7日後にビデオの内容を思い出してもらう実験をしたところ、あらかじめ紹介された職業に一致した特徴を思い出した率が遥かに高くなっていた、と言うものである。
つまり、さまざまな情報の中から予期を支持する証拠だけが強く認知される事で、偏見やステレオタイプと行ったものが強化されていく、と言うものである。
また別の実験結果等から、自分の予期の正しさを裏付ける情報が選択的に認知され、逆に反証となるものには注意が払われない、と言う事も言えるそうだ。

「ライブドアは悪い」「堀江氏は悪い」と言う観念を当初に植え付けられた場合、その後の報道からはどうしてもその観念によって選択的な記憶バイアスが働いて、結局当初の観念がますます認知されていってしまう、と言えるだろう。
現在のマスコミは、みんながみんな言うとおり、各社の持論を展開させる上でこのような人間の持つ認知力の偏りのような物を巧みに駆使しているとしたら、怖い。テレビ映像におけるサブリミナル効果とまでは言わないが。

さるさるにも書いたが、事実は一つしかないJRの事故に関しても、報道はもっぱらその矛先をJRの体質を糾弾する事に執心している。もちろんそれはそうなのだろうが、ある方がおっしゃっているが、マスコミは「普段信頼しているJRJR」と言うけれど、本当に我々は普段電車に乗るときにそんな信頼感をJRに寄せているだろうか、と。
無意識に信頼しているのだ、と言えばそれまでだが、少なくとも私は都内で山手線に乗るときにその安全性を心から信頼し、ゆえにJRを選択しているわけでは無い事に気付く。信頼しているのなら、きちんと目的地まで送り届けてもらったらじゃあそれに感謝の気持ちがあるか、と言えばそれも私は少なくとも無い。
いや、間違っても誤解していただきたくないのは、私はだから被害者の方がどうのというのでは全く無い。
被害者の方々の中には常にそういうお気持ちを持って乗車されていた方もいるかもしれないし、またそんな気持ちを持ち合わせていなくても、被害にあった方々をどうこう言うのでは無い。
私が言いたいのは、マスコミはここへ来て「信頼」と言うキーワードを用いることにより、その信頼が裏切られた時のギャップの大きさを充分に知り尽くして、その全てをJRに乗っけてやろう、と言う意図もあるのではないか、と言う事である。
オーバーランからの懲罰で自殺された運転手さんの訴訟問題だって、私は正直今回初めて知った。しかしながらマスコミは当の昔から知っていたはずなのである。もっとそういうところに前々からスポットを当てていればもしかしたら、と言う非難の声がある程度は上がって当然のような気がするのだが、その気配は少なくともマスコミの側からは無い。

中国に対する朝日新聞の論調だってそうだし、たったの1社もライブの件では大和のMSCBをリーマンのそれと同レベルにて扱うところは無かった。
さらに大手企業が過剰とも言える買収防衛策を検討しているのだって、その諸悪の根源はライブドアである、と言う主張をいまだに繰り返している。

さらに菊池先生は言う。
「予期に肯定的な情報は最初の信念を支持するものとして強く認知され、それが信念に対するポジティブフィードバックのループを形成し、そしてその信念に従って現実を見る事でこのループは次第に強化されていく」と。

何故にここまでマスコミはJRの非に執心するのか。ここまで報道において初期認知がなされたら、それでなくても(私も含めた)普通の人々はJRが悪い、と思っているのに、それは完全にポジティブループを形成すると思われるが、ではその目的は何か。

そうか、そのポジティブループに陥っているのは我々では無くて、マスコミ各社なのかもしれない。
そうすると全てのマスコミの態度も、きれいにサイエンスからの説明もつくではないか!?

最後に、私は決してJR西に非が無い、と言っているのでは無い事をご理解いただきたい。
原因はある程度はっきりしているのだから、JR西は今後はきちんとした対応をしていくべきなのは当たり前だ。
ただそれを報道するマスコミもこの事故やライブの件からも、一般の人々の考え方を学んで欲しいと心から思う、と言う事だ。

あらためて、お亡くなりになられた方々への哀悼の意を表しますとともに、怪我をされた多くの方々の一日も早いご回復をお祈り申し上げます。