弁理士近藤充紀のちまちま中間手続48
拒絶理由通知書
新規性
引用例1~3には、元素周期表の第VI族または第VIII族の少なくとも1つの金属を含む炭化水素の転換用触媒を、現場外で水素の存在下および硫黄または硫黄化合物の存在下に硫化することに関して記載されている(引用例1、2の明細書全体、引用例3の第2頁左下欄第18行~第3頁左上欄第18行等参照)。
本願請求項1に係る発明と引用例1~3に記載された発明との間に実質的な差異は認められない。
意見書
新請求項1の記載のうち、「該触媒は、硫黄の組込み帯域における触媒床の形態で用いられ、該床中を該触媒は移動し」は旧請求項6、「硫化水素、または硫黄化合物であって水素の存在下に硫化水素に分解され得るもののいずれかの存在下」は、旧請求項2および8、「80~450℃の温度の単一の工程」は、明細書の段落[0039]の「本方法は、例えば80~450℃、・・・例えば単一工程で実施されうる」の記載、「2工程で実施され、ここで、硫化水素の形成、次いで、触媒の金属酸化物と生じた硫化水素と間の反応を引き起こすために、第一工程は、元素状硫黄、および/または、硫化水素以外の硫黄化合物を、水素の不存在下に混合することからなり、第二工程は、第一工程の間に硫黄が組込まれて存在している触媒物質を水素と接触させることからなり」は旧請求項11、「第一工程の触媒床は動いており」は、旧請求項16、「第二工程の触媒床は動いている」は旧請求項21の各記載に基づいている。
新規性
引用文献1には、触媒床が動いていることが記載されていない。引用文献1の実施例1から、第一工程に関しては動いている触媒床を用いていることが推測され得るが、第二工程に関しては実施例を含めて明細書のどこにも動いている触媒床を用いることが記載されていない。さらに、引用文献の4頁左上欄18行~同頁右上欄第9行の記載を考慮すると、第二工程は、現場内の反応のために用いられる反応器において行われ得るので、触媒床は、水素化処理のために用いられる時には固定された床の形態であることが推測され得る。
以上により、引用文献1には、単一工程の処理が開示されておらず、かつ2工程により実施される場合に、第二工程における触媒床が動くものではなく、これらの点で、引用文献1は本願請求項1と異なっており、本願請求項1は新規性を有する。
進歩性
引用文献1~3には、
(i)単一の工程で実施されること、および
(ii)2工程で実施される場合に、第二工程において触媒床が動くものであること
が開示されていない点で、本願請求項1と相違している。
次に、上記相違点(i)および(ii)に基づいて、本願請求項1が進歩性を有することについて説明する。
・単一の工程法について
引用文献1~3のいずれにも、当業者が単一工程で硫化することについての動機付けになるような記載はなく、また、示唆するような記載もない。また、単一工程で硫化を実施することにより、操作が簡単になり、また、費用を低下させることができるという効果を得ることができる。
・二工程法について
引用文献1~3では、方法は、現場外で行われる硫黄化合物の触媒物質への組込からなり、次いで、処理された触媒は保存され、触媒反応(水素化処理)の使用者に送られる。
触媒は、反応器(固定床)に装填され、水素によって活性化することによって硫化された触媒が生じさせられる。このような従来の方法では、本出願の発明に比べて経済的であるかもしれない。
しかしながら、本願出願人は、本願請求項のような2工程法を実施することにより、本出願人が行った侵出テストにおいて、溶液中に放出された硫黄の量は、予備硫化された触媒により見出された量より少なくなることから、硫化された触媒において、硫黄が活性金属に強く結合することを観察した。
結論として、本願の請求項1の方法により硫化された触媒は、最小の注意により保存されかつ移され得、その取り扱いは、予備硫化された触媒より極めて容易である。引用文献1~3にはこのような改良を示唆するような記載はない。
したがって、当業者が現場外で2工程で触媒を硫化することについて動機付けとなるような記載はない。また、本願請求項1により得られた触媒は、本願請求項1の方法を用いない触媒に比べて、より均一な硫化を可能にするという効果を有している。
以上のように、本願請求項1は、引用文献1~3に基づいて容易に想到することができるものでないので、本願請求項1は進歩性を有する。また、請求項1が進歩性を有するので、請求項1を引用する請求項2~22も当然に進歩性を有する。
特許査定
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