goo blog サービス終了のお知らせ 

バイクも仕事も走ります。

バイクででかける。美味いものを食べる。は継続。弁理士の仕事のはなしを加えていきます。

ちまちま中間手続91

2025-06-18 21:05:42 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続91

拒絶理由
新規性
 上記引用文献1には、ガスからNOxおよびSOx、ならびに他の不純物を吸着することの可能な、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびこれらの混合物よりなるグループから選択した、約1ないし20重量%の量で存在する金属の活性成分を有するアルミナ粒子なる吸着剤(【請求項1】)が記載されており、除去可能な他の不純物として塩化物、HClを吸着することができること(段落【0015】、実施例3(段落【0054】)にはナトリウム含浸後に650℃でか焼したこと、吸着剤の使用サイクル後に表面積は最終的には70m2/gの程度であったこと(段落【0062】)が記載されている。

 上記引用文献2には、接触改質によるガソリン留分よりの高オクタン価プロセスで発生するHClを除去する吸着剤として、アルミナ担体にアルカリ金属塩を担持したもの(【請求項1】【請求項2】、段落【0002】)が記載され、その製造方法として、アルカリ金属含浸後に焼成する方法も使用可能であること(段落【0015】)、焼成温度は通常約300℃~約900℃であること(段落【0012】)、実施例として、BET表面積が69m2/g、131m2/g(段落【0020】実施例2、段落【0023】実施例5)が記載されている。一方、本願明細書の【表1】【表2】の結果を見る限り、焼成温度「少なくとも600℃(または500℃)」、及び、比表面積「大きくとも110m2/g(または140m2/g)」という数値限定自体に臨界的意義があるものとは認められない。(すなわち、試料3(焼成温度400℃)と試料4(焼成温度800℃)で、HCl吸着量が僅か0.4%しか違わないので、600℃の前後で「緑油」の生成の点で、顕著な差違が生じるものとは認められない。また、比表面積についても、110m2/gの前後で顕著な差違が生じるものとも認められない。)従って、引用文献2に記載される酸性吸着剤を使用する方法と、本願請求項1~17の方法とは格別差違があるものとは認められない。

意見書
 引用文献1には、NOxおよびSOxならびにHCl等の他の不純物を吸着するための吸着剤が開示されている(段落[0015])。この吸着剤は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である活性成分を含む安定化したアルミナである(段落[0030])。吸着剤は乾燥させられ、か焼されている(段落[0030])。実施例3には、か焼が650℃で行われることが示され、この実施例で得られた吸着剤は、254または210m2/gの表面積を示している。そして、引用文献1では、このようにして得られた吸着剤を232回サイクルすると表面積は最終的には70m2/gに減少したことが記載されている(段落[0062])
 これに対して、本願発明の請求項1または2では、「表面積大きくとも110または140m2/gを有する組成物とを接触させる」と規定されている通り、本願発明の請求項1または2では新鮮な吸着剤を意味しており、引用文献1においてこれに対応するのは、使い古されたことにより性能が劣化し表面積が70m2/gまで減少したものではなく、新鮮な状態の吸着剤である。引用文献1におけるこのような新鮮な吸着剤の表面積の値は254または210m2/gであり、これは、本願発明の請求項1または2の表面積より大きい。
 さらに、引用文献1には、3~15バールで操作される接触リフォーミングに由来するガスまたは液体に含まれ得る多様な化合物を除去等する方法は全く開示しも示唆もされていない。接触リフォーミングに由来する流出物には、水素、軽質飽和炭化水素、痕跡量の塩素化化合物(特にHCl)および水に加えて、例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等のような不飽和炭化水素の痕跡が含まれることは知られてない(本願明細書の段落[0010])。
 引用文献2には、接触改質によるガソリン留分よりの高オクタン価プロセスで発生するHClを除去する吸着剤として、アルミナ担体にアルカリ金属塩を担持したものが記載され、その製造方法として、アルカリ金属含浸後に焼成する方法も使用可能であること、焼成温度は通常約300℃~約900℃であることが記載されている。
 しかしながら、引用文献2の段落[0012]~[0015]の記載を参照すると、約300℃~約900℃で焼成しているのは、アルカリ金属を担持する前の担体であって、アルカリ金属を担持後の焼成についての具体的な焼成温度は示されていない。引用文献2の実施例を参照すると、アルカリ金属担持後の焼成は380℃(実施例1)、120℃(実施例2)程度である。
 したがって、引用文献2には、アルカリ類から選ばれる少なくとも1つの元素を含む化合物をアルミナ上に担持した後に少なくとも600℃の温度で焼成することは記載されていない。
 拒絶理由通知には、本願明細書の段落[0086]の表2の試料3と試料4の結果においてHCl吸着量が僅かに0.4%しか違わないことを根拠に、600℃前後でグリーン・オイルの生成に顕著な差異が生じないことが指摘されているが、グリーン・オイルの生成の有無とHClの吸着とは、それぞれ、別の実験により評価されている。グリーン・オイルの生成に関しては、段落[0077]~[0080]に記載されているように、2-クロロプロパンの検出により評価され、本願発明に合致する試料4~7では、塩素含有炭化水素の生成が認められないことが確認されている。
 本願明細書の段落[0012]に示されるように、グリーン・オイルの形成は、吸着剤の寿命期間の重大な短縮につながり、設備装置の詰まりを引き起こす。したがって、グリーン・オイルの形成は、防止されなければならず、600℃超の焼成温度から、グリーン・オイルが形成されないことは、大きな技術的意義を有するものである。

進歩性
 引用文献3には、ハロゲン処理触媒を用いて石油留分を処理するプロセスにおいて、該触媒から流出するハロゲンを吸着除去するのに、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、遷移金属酸化物及び希土類金属酸化物の中から選ばれた少なくとも一種をアルミナ等の耐火性酸化物に担持してなる固体吸着剤と石油留分を接触させることが記載されている。
 しかしながら、引用文献3には、上記の固体吸着剤が焼成される際の温度は全く記載されておらず、また、耐火性酸化物としてアルミナを使用することについては全く記載されていない。
 本願発明の方法においては、アルカリ類の担持後に少なくとも600℃の温度で焼成することにより得られた組成物を用いることによって、HClの吸着およびグリーン・オイルの形成防止の双方について良好な結果を得ることができる点で、「担持後に少なくとも600℃で焼成する」ことには大きな臨界的意義がある。焼成温度について記載のない引用文献3の記載に基づいても、本願発明に使用される組成物のような焼成処理を行うことにより、上記のような優れた効果を得ることができることに想到することは容易ではない。
 引用文献4には、アルカリ土類金属を促進剤として含有するアルミナをHCl捕集剤とするにあたり、アルカリ土類金属塩をアルミナに含浸させた後、約150℃~約500℃で熱処理してアルカリ土類金属塩を対応する酸化物に熱分解させて熱活性化された捕集剤とすることが記載され、引用文献4の実施例1および2には、アルミナにアルカリ土類金属を含浸させ、その後に、400℃で熱処理を行う例が記載されている。
 これに対して、本願発明の方法において用いられる組成物は、アルカリ土類の担持後に少なくとも600℃の温度で焼成して得られるものである。本願発明のように、アルカリ土類の担持後に少なくとも600℃の温度で焼成することにより、HClの吸着およびグリーン・オイルの形成防止の双方について良好な結果を得ることができることは、約500℃以下の温度でしか熱処理を行っていない引用文献4の記載からは容易に想到することはできない。
 以下、本願出願人は、アルカリ土類金属としてカルシウムを含浸させた2種のアルミナについての追加実施例1をさらに提供する。

 以上に説明したように、本願発明は引用文献3~5に基づいて容易に想到することができないものであり、また、これらの引用文献を組み合わせたとしても、本願発明に容易に想到することができないものであるので、本願発明は進歩性を有している。

特許査定
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ちまちま中間手続90 | トップ | ちまちま中間手続92 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。

仕事日記」カテゴリの最新記事