goo blog サービス終了のお知らせ 

バイクも仕事も走ります。

バイクででかける。美味いものを食べる。は継続。弁理士の仕事のはなしを加えていきます。

ちまちま中間手続87

2025-06-12 21:28:48 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続87

拒絶理由 進歩性
 引用例1には、アルミニウム酸化物や珪素酸化物等の担体とVIII族金属とモリブデンやタングステン等の金属からなる触媒により、25~500℃、0.1~10MPaの条件下で炭化水素組成物中のブタジエンを水素化することが記載されている。
 本願発明は被処理物が分解ガソリンであり、スチレン化合物も同時に処理されるのに対し、引用例1記載の発明はそうでない点で相違するが、引用例2には熱分解ガソリンをパラジウム触媒による処理と、続くVIB属元素による処理により水添を行うことにより該ガソリン中のジオレフィンやスチレンを水素化することが記載されている。
 そうすると、引用例1記載の発明において、炭化水素組成物としてガソリンを採用すること、及びそれによりスチレンも水素化することは当業者が容易になし得ることに過ぎない。

意見書
 引用文献1には、アルミニウム酸化物や珪素酸化物等の担体とVIII族金属とモリブデンやタングステン等の金属からなる触媒により、25~500℃、0.1~10MPaの条件下で炭化水素組成物中のブタジエンを水素化することが記載されている。
 一方、引用文献2には、パラジウム触媒による一次水添処理と、続くVIB族元素による二次水添処理とによって熱分解ガソリン中のジオレフィンやスチレンを水素化することが記載されている。
 当該拒絶理由は、引用文献1に記載の発明において、炭化水素組成物としてガソリンを採用すること、及びそれによりスチレンも水素化することは当業者が容易になし得ることに過ぎない、との認定を趣旨とするものである。
 しかしながら、本願発明は、本意見書と同時に提出した手続補正書による補正により上記の拒絶理由を解消した。
 すなわち、本願発明は、ジオレフィン化合物とスチレン化合物と「メルカプタン」とを含むガソリン留分を処理する方法を提供するものであり、当該メルカプタンをも含むガソリン留分の処理のために、特定の触媒活性金属を含む触媒を用いている。本願発明において用いられる触媒を用いれば、本願明細書の段落[0009]に記載されているように、単一工程で、ジオレフィン、スチレン化合物の水素化およびメルカプタンの転換を行うことが可能である。
 これに対して、引用文献1には、所定の触媒を用いてブタジエンを水素化することのみが記載されており、ジオレフィン性の化合物およびスチレン性化合物の両方を含有するガソリン留分を処理する方法は記載されていない。さらには、引用文献1にはガソリン留分中に含まれるメルカプタンを処理することは一切記載されていない。
 また、引用文献2の方法には、その明細書の第2頁右下欄第17行~第3頁19行に記載されるように、一次水添によりジオレフィンおよびスチレン類を除去し、さらに、二次水添により含有される有機イオウ化合物を硫化水素に転換する、二段階の水素化処理方法が記載されている。
 引用文献1および2には、単一種の触媒を用いる単一工程により、上記3種の物質を同時に処理することは記載されておらず示唆する記載もなく、ブタジエン(ジオレフィン)のみを水素化している引用文献1および上記3種の物質を除去するのに2段階を要する引用文献2の記載からでは、本願発明のような単一工程により上記3種の物質を同時に処理することに想到することはできない。
 以上において説明したように補正後の請求項1は、引用文献1および2に基づいて容易に想到することができるものではないので、進歩性を有する。
 新請求項2~16は、進歩性を有する新請求項1の従属項であるので、当然、これらも進歩性を有している。
 したがって、本願発明の拒絶理由は解消した。

拒絶理由2 進歩性
 引用文献3及び4に記載されているように分解ガソリンにはメルカプタンが含有されていることは周知である。
 そうすると、引用例2記載の熱分解ガソリンもまたメルカプタンを含有するものと認められるから、引用例1記載の発明において、炭化水素組成物として分解ガソリンを採用した際には、その炭化水素組成物は結果的にメルカプタンを含有するものと認められる。
 よって、本願発明は引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められる。

意見書
 引用文献3および4には、分解ガソリンがメルカプタンを含有するものであることが記載されている。
 しかしながら、引用文献3および4の記載から引用文献2の熱分解ガソリンもメルカプタンを含む可能性が高いとしても、引用文献1~4を組み合わせることは当業者にとって容易に想到することができるものではない。
 引用文献1には、ジオレフィン性またはアセチレン性または芳香族性の原料の選択的水素化方法が記載され(実施例4、5を参照)、ここで用いられている触媒は、少なくとも1つの担体と、白金族からの少なくとも1つの金属と、モリブデンおよびタングステンであり得る少なくとも1つの追加金属とを含む触媒である。
 引用文献2には、第1水素化工程においてはPd触媒を、第2水素化工程においては第VIB族からの少なくとも1つの金属と、第VIII族からの少なくとも1つの金属とを 含有する触媒を用いる、熱分解ガソリンからのC6-C8原料の2工程水素化方法が記載されており、該方法を実施することによって、ジオレフィン性およびスチレン性の化合物の水素化がもたらされ得る。
 しかしながら、引用文献1には、ガソリン留分中に含まれるメルカプタンを処理することは一切記載されていない。
 また、引用文献2の方法は、その明細書の第2頁右下欄第17行~第3頁19行に記載されるように、一次水添によりジオレフィンおよびスチレン類を除去し、さらに、二次水 添により含有される有機イオウ化合物を硫化水素に転換するものであって、メルカプタン の処理と、ジオレフィンおよびスチレン化合物の処理とは別々に実施しているのであって、単一の工程にて同時に両処理を行っているものではない。すなわち、引用文献1および2には、単一種の触媒を用いる単一工程により、上記3種の物質を同時に処理することは記載されておらず示唆する記載もなく、ブタジエン(ジオレフィン)のみを水素化している引用文献1および上記3種の物質を除去するのに2段階を要する引用文献2の記載からでは、本願発明のような単一工程により上記3種の物質を同時に処理することに想到することはできない。
 さらに、引用文献3および4にも、用いる単一工程により、上記3種の物質を同時に処理することは記載されておらず示唆する記載がない。
 したがって、引用文献1~4の全部を組み合わせても、本願発明に想到することは容易ではない。

拒絶理由3 新規性・進歩性
 引用例5の特許請求の範囲、第3頁右上欄及び実施例には、共役ジオレフィンや有機硫黄化合物を含有する熱分解ガソリンを水素化パラジウムとモリブデンやタングステンをアルミナに担持した触媒により、本願発明中の条件と同様の条件下で水素化精製して、ジオレフィンや有機硫黄化合物の濃度を減少させることが記載されている。
 そして、石油留分にはメルカプタンが含有されることは、引用例6及び7に記載されているように周知であるから、引用例5記載の発明における有機硫黄化合物はメルカプタンを含有するものと認められる。

 引用例5記載の発明において、パラジウムの担体への含浸の程度、水素化条件を本願発明中の毎時空間速度比や圧力下にて行うことは当業者が必要に応じて適宜なし得ることに過ぎない。

意見書
 引用文献5には、共役ジオレフィンや有機硫黄化合物を含有する熱ガソリンをパラジウムとモリブデンやタングステンをアルミナに担持した触媒により水素化精製して、ジオレフィンや有機硫黄化合物の濃度を減少させることが記載されている。
 しかしながら、引用文献5には、ジオレフィンとスチレン化合物の両方を含有するガソリン留分を処理する方法が開示されていない。
 これに対して、本願発明の請求項1では、ジオレフィンとスチレン化合物の両方を含むガソリン留分を単一工程で同時に処理することができる。
 さらに、引用文献5には、本願発明の請求項1のような「球体または円筒状押出物形態であり、第VIII族貴金属が、前記球体または前記円筒の半径の80%未満の深さで周辺層内に浸透して球体または円筒状押出物の表面に担持された」触媒は開示されていない。
 したがって、本願発明の請求項1と引用文献1とは同一ではないので本願発明の請求項1は新規性を有している。
 請求項1以外の他の請求項は、請求項1を引用しているので、当然、これらも新規性を有している。
 また、本願発明の請求項1では、上記のようにスチレン化合物をも含む留分を処理することができ、また、「球体または円筒状押出物形態であり、第VIII族貴金属が、前記球体または前記円筒の半径の80%未満の深さで周辺層内に浸透して球体または円筒状押出物の表面に担持された」と規定されるような特定の触媒を用いている。このようなことは、引用文献5の記載に基づいて当業者が容易に想到することができることではない。また、石油留分にはメルカプタンが含有されることが記載されている引用文献6および7と引用文献5とを組み合わせても、本願請求項1に想到することは容易ではない。

拒絶査定
 出願人は意見書において、a.引用例5には処理されるガソリン留分がスチレンを含有することが記載されていない旨、及びb.引用例5には触媒単体の形状及び金属の浸透深さが記載されていない旨を主張する。
 しかしながら、上記aの点に関しては引用例5の例えば実施例には処理対象のガソリン留分が、沸点範囲65~149℃であることが記載され、この留分はスチレンの沸点である142℃を含むので、この留分にもスチレンが含有されるものと認められる。また、上記bの点に関しては、引用例5には触媒の金属を担体に含浸させることが記載されているが、この含浸の程度を本願発明の深さと同程度の深さとすること、さらに触媒担体一般の形状として周知の球状等の形状の担体を選択することに特に創意工夫を要するとは認められない。
 そうすると出願人の上記主張は採用できず、本願発明は依然として特許を受けることができない。

 なお、補正等の際には、本願明細書の実施例には、触媒担体への含浸深さが記載されていないので、これらの実施例は本願発明の実施例であるとは認められないし、また本願発明は実施例の記載により十分に説明がなされたものではないことに留意されたい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ちまちま中間手続86 | トップ | ちまちま中間手続88 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。

仕事日記」カテゴリの最新記事