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ちまちま中間手続56

2025-04-09 21:16:28 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続56

拒絶理由
 刊行物1には、本願発明の方法と類似の、炭化水素原料から油を生産する方法が記載されている。同1には、接触脱パラフィン触媒に含まれる分子篩として、ZSM-48等が記載されているのに対し、本願発明ではZBM-30、EU-2、EU-11を用いる点で相違している。
 ところで、EU-2は当該技術分野において、線状パラフィンの選択的クラッキング触媒として知られており(刊行物2の特許請求の範囲、4頁左下欄下から3行~最下行参照)、この触媒が接触脱パラフィン触媒として有用であることは自明であるから、同1における接触脱パラフィン触媒にEU-2を含有させることは当業者が容易になし得る事項である。
 刊行物3には、脱ろう触媒(接触脱パラフィン触媒と実質的に同じである)として、ZSM-48の存在下で炭化水素原料を脱ろうする方法が記載されている。同3には脱ろう触媒としてEU-2,EU-11,ZBM-30を用いることについて記載されていないが、刊行物4には、ZSM-48がEU-2,EU-11,ZBM-30とトポロジーが一致することが記載されており(2頁右下欄)、トポロジーが一致するゼオライトが同等の触媒活性を有することはよくあることからすると、EU-2、EU-11、ZBM-30を脱ろう触媒として用いることは当業者が容易になし得る事項である。また、同3には、脱ろう処理前に仕込み原料の水素化異性化転換することについて記載されていないが、刊行物1には、水素化異性化転換後に水素化脱ろうを行うことが記載されていることからすると、同3においてもそのようにすることは当業者が容易になし得る事項である。
 さらにその他の発明特定事項は同1もしくは同3に全て記載されている。
 また、本願請求項8の発明特定事項である、水素化異性化触媒中で、2nm未満のサイズをもつ貴金属粒子の分率が、触媒上に担持された貴金属の多くとも2%であることについて、同1には、「2nm未満の大きさの貴金属粒子部分が、触媒に沈着した貴金属の少なくとも2重量%を占める。」と記載されており(【0041】)2重量%の点で両記載は一致するが、触媒活性成分は分散性が良い方、すなわち粒子の大きさが小さい方が好ましいことは周知であることからすると、本願発明のように「2nm未満のサイズをもつ貴金属粒子の分率が、触媒上に担持された貴金属の多くとも2%であること」とすることにより格別予想外の効果が奏されるとは認められないので、「2nm未満のサイズをもつ貴金属粒子の分率」を好適値にすることは当業者が容易になし得る事項にすぎない。

意見書
 引用文献1には、炭化水素原料から油を生産する本願発明と類似の方法が記載されている。引用文献1には、接触脱パラフィン触媒に含まれる分子篩として、ZSM-48等が記載されている。これに対して、本願発明の方法において接触脱パラフィンを行う工程b)では、分子篩としてZBM-30、EU-2および/またはEU-11を用いており、この点で両者は相違している。
 引用文献2には、EU-2等のテクトメタロシリケートの存在下に線状パラフィンを選択的にクラッキングすることによって、直鎖および分枝鎖状パラフィンの混合物からなる供給原料を不飽和炭化水素、すなわち、オレフィンを製造する方法が開示されている。
 引用文献2は、具体的には、軽質ナフサ等の鎖状および分枝状アルカンを含む本質的にパラフィン性の炭化水素の混合物から不飽和炭化水素、すなわち、オレフィンを製造することを目的としている。引用文献2で製造されているのは不飽和炭化水素であり、これに対して、本願発明は、基油を製造する方法に関するものである。また、引用文献2では、線状パラフィンの選択的クラッキングを行っているが、これに対して、本願発明において行っているのは、接触脱ろうである。接触脱ろうは、パラフィンを除去することを意味し、線状パラフィンの選択的クラッキングによって直鎖または分枝鎖炭化水素を含む炭化水素混合物から不飽和炭化水素、すなわちオレフィンを製造することを示唆している引用文献2の反応と本願の接触脱ろうとは全く異なっている。
 したがって、当業者は、引用文献2に記載された線状パラフィンの選択的クラッキングを行うためのEU-2を引用文献1の接触脱パラフィンに用いることの動機付けを有しない。
 引用文献3には、炭化水素原料を脱ろうする方法が開示されている。この方法は、第1の工程で、ゼオライトY等の大気孔の結晶性ゼオライトを用い、第2の工程で、ZSM-48等の中気孔ゼオライトを用いて、炭化水素原料を脱ろうするカスケード式の脱ろう法である。
 しかしながら、引用文献3には、本願発明の工程b)において用いられているZBM-30、EU-2およびEU11のゼオライトを用いることが開示されておらず、それを示唆する記載もない。
 引用文献4には、具体的には、ZSM-48ゼオライトを合成する方法が開示されている。
 しかしながら、引用文献4には、合成されたZSM-48を脱ろう工程に用いることができることが開示も示唆もされていない。
 したがって、当業者が引用文献4の記載を参照しても、引用文献1~4を組み合わせて、接触脱ろうに用いることができることを予期する動機付けは有しない。

 本願発明に開示されているEU-2、EU-11、ZBM-30と引用文献1~4に開示された各分子篩についてさらに検討する。
 小野嘉夫、八嶋建明編,「ゼオライトの科学と工学」,講談社サイエンティフィック,p.172-175によると、「脱ろうは、流動点、ワックスの析出、粘度等の低温流動性を悪化させる要因となる直鎖あるいはわずかに側鎖のあるアルカン類を除去するために行われる処理である。脱ろうには、遠心分離や溶剤抽出などの多くの方法が知られているが、1970年代に入り、ZSM-5に代表される10員環のゼオライトの形状選択性と高い分解活性が認められて以来、ゼオライトを触媒とした水素化脱ろう法が開発された。
 これに対して、1990年代になると、より高粘度指数を有しながら流動点の低い潤滑油基油の要求が高まり、脱ろうと異性化を同時に行う水素化異性化脱ろう法が開発されるに至っている。」ことが記載されている。
 本願発明は、その明細書の段落[0001]において、「本発明は、高品質の基油、すなわち粘度指数(VI)が高く、UV安定性が良好で、流動点の低い基油を、・・・製造するための改良された方法に関するものである」と記載されている通り、パラフィン類を単に除去するだけの脱ろうを提供することを目的としておらず、1990年代以降に開発された水素化異性化脱ろうに類する方法を提供するものである。そして、そのような目的を達成するために、段落[0008]において、「酸性機能と水素化機能との両者の間の平衡は、触媒の活性および選択性を決定する基本パラメータである。・・・それゆえ、それらの機能の各々を適切に選択することによって、触媒の活性/選択性の組合せを調節することが可能である」との技術常識に基づいて、請求項1に記載されるような
 (a)非晶質酸性支持体上に担持させられた少なくとも1つの貴金属を分散度20%未満で含む触媒の存在下での所定のn-パラフィンの少なくとも一部分の同時異性化を伴う転化段階、および
 (b)少なくとも1つの水素化-脱水素化元素及びZBM-30、EU-2およびEU-11から成る群の中から選択された少なくとも1つの分子篩を含む触媒の存在下での、段階(a)からの流出物の少なくとも一部の接触脱パラフィン段階を行うことにより、高い粘度指数(VI)、低い揮発度、良好なUV安定性および低い流動点を有する基油を製造することができるという格別顕著な効果が得られることを見出すに至ったものである。
 これに対して、引用文献1の方法は、接触脱パラフィンに含まれる分子篩としてZSM-48等が記載されている。しかしながら、引用文献1には、本願発明のZBM-30、EU-2およびEU-11は記載されておらず、示唆する記載もない。
 引用文献2には、EU-2が記載されている。しかしながら、引用文献2では、これを線状パラフィンの選択的クラッキング触媒として使用している。ここでの選択的クラッキングは、パラフィン類からオレフィン類を製造することを意味しており、本願発明において企図している接触脱ろうとは全く異なっている。まして、最終的に高い粘度指数、低い揮発度、良好なUV安定性および低い流動点を有する基油を得るために特定の分子篩を用いることは、引用文献2の記載から想到することはできないものである。
 引用文献3には、脱ろう触媒としてZSM-48が記載されている。しかしながら、引用文献3には、本願発明において用いられているZBM-30、EU-2およびEU-11が記載されておらず、それらを示唆する記載もない。
 引用文献4には、ZSM-48を合成する方法が記載され、さらに、ZSM―48がEU-2、EU-11、ZBM-30とトポロジーが一致することが記載されている。しかしながら、本願発明は、上記のように、EU-2、EU-11またはZBM-30を段階(a)に続く段階(b)の接触脱パラフィン工程に用いれば、分子篩が持つ酸性機能と水素化機能との機能が適切に選択されて、このことにより、触媒の活性/選択性の組合せが調節されて、最終的に高い粘度指数、低い揮発度、良好なUV安定性および低い流動点を有する基油を得るに至ったものである。引用文献4には、ZSM-48とEU-1等のトポロジーが一致することが記載されているのみであり、トポロジーが一致するとの記載だけでは、ZSM-48が本願発明に関するEU-2等と同様の活性/選択性の組合せを有することに想到することはできない。
 以上のように、引用文献1の接触脱パラフィンの分子篩に代えて引用文献2~4に記載された分子篩を用いることは容易に想到することはできないし、そのように組み合わせることによって、本願発明のような極めて良好な性質の潤滑油を得ることができるという効果に想到することも容易ではない。
 なお、引用文献1の段落[0041]に「少なくとも2重量%」とあるのは、「多くとも2重量%」の誤記である。

拒絶理由
36条6項2号

補正書

特許査定
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ちまちま中間手続55

2025-04-06 21:54:21 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続55

拒絶理由
 刊行物1には、本願発明の方法と類似の、炭化水素原料から油を生産する方法が記載されている。同1には、接触脱パラフィン触媒に含まれる分子篩として、ZSM-48等が記載されているのに対し、本願発明ではZBM-30、EU-2、EU-11を用いる点で相違している。
 ところで、EU-2は当該技術分野において、線状パラフィンの選択的クラッキング触媒として知られており(刊行物2の特許請求の範囲、4頁左下欄下から3行~最下行参照)、この触媒が接触脱パラフィン触媒として有用であることは自明であるから、同1における接触脱パラフィン触媒にEU-2を含有させることは当業者が容易になし得る事項である。
 刊行物3には、脱ろう触媒(接触脱パラフィン触媒と実質的に同じである)として、ZSM-48の存在下で炭化水素原料を脱ろうする方法が記載されている。同3には脱ろう触媒としてEU-2,EU-11,ZBM-30を用いることについて記載されていないが、刊行物4には、ZSM-48がEU-2,EU-11,ZBM-30とトポロジーが一致することが記載されており(2頁右下)、トポロジーが一致するゼオライトが同等の触媒活性を有することはよくあることからすると、EU-2、EU-11、ZBM-30を脱ろう触媒として用いてみることは当業者が容易になし得る事項である。また、同3には、脱ろう処理前に仕込み原料の水素化異性化転換することについて記載されていないが、刊行物1には、水素化異性化転換後に水素化脱ろうを行うことが記載されていることからすると、同3においてもそのようにすることは当業者が容易になし得る事項である。
 さらにその他の発明特定事項は同1もしくは同3に全て記載されている。

意見書
 引用文献1には、炭化水素原料から油を生産する本願発明と類似の方法が記載されている。引用文献1には、接触脱パラフィン触媒に含まれる分子篩として、ZSM-48等が記載されているのに対して、本願発明の方法において接触脱パラフィンを行う工程b)では、分子篩としてZBM-30、EU-2、EU-11を用いており、この点で両者は相違している。
 引用文献2には、EU-2等のテクトメタロシリケートの存在下に線状パラフィンを選択的にクラッキングすることによって、直鎖および分枝鎖状パラフィンの混合物からなる供給原料を不飽和炭化水素、すなわち、オレフィンを製造する方法が開示されている。
 引用文献2は、具体的には、軽質ナフサ等の鎖状および分枝鎖状アルカンを含む本質的にパラフィン性の炭化水素の混合物から不飽和炭化水素、すなわち、オレフィンを製造することを目的としている。引用文献2で製造されているのは不飽和炭化水素であり、これに対して、本願発明は、基油を製造する方法に関するものである。また、引用文献2では、線状パラフィンの選択的クラッキングを行っているが、これに対して、本願発明において行っているのは、接触脱ろうである。接触脱ろうは、パラフィンを除去することを意味し、線状パラフィンの選択的クラッキングによって直鎖または分枝鎖炭化水素を含む炭化水素混合物から不飽和炭化水素、すなわちオレフィンを製造することを示唆している引用文献2の反応と本願の接触脱ろうとは全く異なっている。
 したがって、当業者は、引用文献2に記載された線状パラフィンの選択的クラッキングを行うためのEU-2を引用文献1の接触脱パラフィンに用いることの動機付けを有しない。
 引用文献3には、炭化水素原料を脱ろうする方法が開示されている。この方法は、第1の工程で、ゼオライトY等の大気孔の結晶性ゼオライトを用い、第2の工程で、ZSM-48等の中気孔ゼオライトを用いて、炭化水素原料を脱ろうするカスケード式の脱ろう法が開示されている。
 しかしながら、引用文献3には、本願発明の工程b)において用いられているZBM-30、EU-2およびEU11のゼオライトを用いることが開示されておらず、それを示唆する記載もない。
 引用文献4には、具体的には、ZSM-48ゼオライトを合成する方法が開示されている。
 しかしながら、引用文献4には、合成されたZSM-48を脱ろう工程に用いることができることが開示も示唆もされていない。
 したがって、当業者が引用文献4の記載を参照しても、引用文献1~4を組み合わせて、接触脱ろうに用いることができることを予期する動機付けは有しない。

 本願発明に開示されているEU-2、EU-11、ZBM-30と引用文献1~4に開示された各分子篩についてさらに検討する。
 小野嘉夫、八嶋建明編,「ゼオライトの科学と工学」,講談社サイエンティフィック,p.172-175によると、「脱ろうは、流動点、ワックスの析出、粘度等の低温流動性を悪化させる要因となる直鎖あるいはわずかに側鎖のあるアルカン類を除去するために行われる処理である。脱ろうには、遠心分離や溶剤抽出などの多くの方法が知られているが、1970年代に入り、ZSM-5に代表される10員環のゼオライトの形状選択性と高い分解活性が認められて以来、ゼオライトを触媒とした水素化脱ろう法が開発された。
 これに対して、1990年代になると、より高粘度指数を有しながら流動点の低い潤滑油基油の要求が高まり、脱ろうと異性化を同時に行う水素化異性化脱ろう法が開発されるに至っている。」ことが記載されている。
 本願発明は、その明細書の段落[0001]において、「本発明は、高品質の基油、すなわち粘度指数(VI)が高く、UV安定性が良好で、流動点の低い基油を、・・・製造するための改良された方法に関するものである」と記載されている通り、パラフィン類を単に除去するだけの脱ろうを提供することを目的としておらず、1990年代に開発された水素化異性化脱ろうに類する方法を提供するものである。そして、そのような目的を達成するために、段落[0008]において、「酸性機能と水素化機能との両者の間の平衡は、触媒の活性および選択性を決定する基本パラメータである。・・・それゆえ、それらの機能の各々を適切に選択することによって、触媒の活性/選択性の組合せを調節することが可能である」との従来からの技術常識に基づいて、請求項1に記載されるような
 (a)原料装入物の転化および該原料装入物の少なくともn-パラフィン類の一部の同時水素化異性化および
 (b)工程(a)からの流出物の少なくとも一部の、水素化・脱水素元素とZBM-30、EU-2およびEU-11からなる群から選ばれた少なくとも1種の分子篩とを含有する接触による接触脱パラフィンを行うことにより、高い粘度指数(VI)、低い揮発度、良好なUV安定性および低い流動点を有する基油を製造することができるという格別顕著な効果が得られることを見出すに至ったものである。
 これに対して、引用文献1の方法は、接触脱パラフィンに含まれる分子篩としてZSM-48等が記載されている。しかしながら、引用文献1には、本願発明のZBM-30、EU-2およびEU-11は記載されておらず、示唆する記載もない。
 引用文献2には、EU-2が記載されている。しかしながら、引用文献2では、これを線状パラフィンの選択的クラッキング触媒として使用している。ここでの選択的クラッキングは、パラフィン類からオレフィン類を製造することを意味しており、本願発明において企図している接触脱ろうとは全く異なっている。まして、最終的に高い粘度指数、低い揮発度、良好なUV安定性および低い流動点を有する基油を得るために用いることは、引用文献2の記載から想到することはできないものである。
 引用文献3には、脱ろう触媒としてZSM-48が記載されている。しかしながら、引用文献3には、本願発明において用いられているZBM-30、EU-2およびEU-11が記載されておらず、それらを示唆する記載もない。
 引用文献4には、ZSM-48を合成する方法が記載され、さらに、ZSM―48がEU-2、EU-11、ZBM-30とトポロジーが一致することが記載されている。しかしながら、本願発明は、上記のように、EU-2、EU-11またはZBM-30を工程(a)に続く工程(b)の接触脱パラフィン工程に用いれば、分子篩が持つ酸性機能と水素化機能との機能が適切に選択されて、このことにより、触媒の活性/選択性の組合せが調節されて、最終的に高い粘度指数、低い揮発度、良好なUV安定性および低い流動点を有する基油を得るに至ったものである。引用文献4には、ZSM-48とEU-1等のトポロジーが一致することが記載されているのみであり、トポロジーが一致するとの記載だけでは、ZSM-48が本願発明に関するEU-2等と同様の活性/選択性の組合せを有するとまではいうことはできない。
 以上のように、引用文献1の接触脱パラフィンの分子篩に代えて引用文献2~4に記載された分子篩を用いることは容易に想到することはできないし、そのように組み合わせることによって、本願発明のような極めて良好な性質の潤滑油を得ることができるという効果に想到することも容易ではない。

特許査定
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ちまちま中間手続54

2025-04-05 21:15:48 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続54

拒絶理由 新規性・進歩性
 引用文献1には、アルミナにW、Pt、Pdを担持したリーンバーンエンジンのNOx浄化触媒が記載されている。W等の担持量は、本願請求項5~8の規定と重複している(引用文献1:[0032]段落、実施例5等参照)。

 引用文献3には、タングステン担持ジルコニアに白金、パラジウム、ロジウム及びイリジウムから成る群より選ばれる少なくとも1種が担持された、酸素過剰雰囲気下でのNOx浄化触媒が記載されている(引用文献3:請求項1、[0001]段落等参照)。
 引用文献4には、タングステン担持ジルコニアとPt,Rh,Pdの1種又は複数種の貴金属を含む、過剰な酸素が含まれた排ガス中のNOx浄化触媒が記載されている(引用文献4:請求項1、[0001]、[0022]段落等参照)。
 一方、引用文献3、4には、担持する貴金属としてPt及びPdを用いた実施例が記載されていない。しかし、酸素過剰雰囲気下でのNOx浄化触媒において、Pt及びPdを担持した触媒は公知であるから(引用文献5:請求項1参照)、引用文献3、4記載の触媒において、担持する貴金属としてPt及びPdを選択することは当業者ならば適宜なし得る。そしてその効果も、引用文献に比して格別とは認められない。
 (本願明細書には、ジルコニア担体にW、Pt及びPdを担持した触媒が、メタンを還元剤とした酸素過剰雰囲気下でのNOx浄化に効果があることが具体的に示されている。しかし、本願請求項1、2においては担体がジルコニアに限定されておらず、また還元剤がメタンに限定されていないから、明細書に記載された当該効果を請求項1、2に係る発明の効果とすることはできない)

意見書
 引用文献1には、アルミナにW、Pt、Pdを担持したリーンバーンエンジンのNOx浄化触媒が記載されている。
 しかしながら、本願発明の触媒は、ジルコニアを担体とし、これにパラジウムおよび/または白金を担持させ、さらに、タングステンをこれに添加または担持させたものであり、触媒の構成成分が全く異なっている。したがって、本願発明は、引用文献1に対して新規性を有している。
 また、引用文献1の触媒およびそれを用いた排ガスの浄化方法は、特にその段落[0028]に、「本発明の触媒は、排ガスを燃料過剰状態(リッチ)或いは理論空燃比状態(ストイキ)にし、このようにしてできた還元雰囲気の排ガスを触媒に接触させることによって再活性化することができる」と記載されているように、還元雰囲気下に窒素酸化物を分解する反応を行っており、本願発明のように、「酸素過剰雰囲気下においてメタンを還元剤とし窒素酸化物を分解する」ことは開示されておらず示唆する記載もない。したがって、引用文献1には、酸素過剰雰囲気下で窒素酸化物を分解する、という思想はなく、引用文献1の記載に基づいて、本願発明のような触媒およびそれを用いた排ガス浄化方法に想到することはできない。

 引用文献2には、触媒担体としてセラミックス繊維からなるプレフォーム板状体が記載されている。
 しかしながら、上記(3)で説明したように本願発明は引用文献1に対して進歩性を有するものであるから、引用文献1と引用文献2とを組み合わせたとしても本願発明に想到することはできない。

 引用文献3には、タングステン担持ジルコニアに白金、パラジウム、ロジウムおよびイリジウムから成る群より選ばれる少なくとも1種が担持された、酸素過剰雰囲気下でのNOx浄化触媒が記載されている。
 引用文献4には、タングステン担持ジルコニアとPt、Rh、Pdの1種または複数種の貴金属を含む、過剰な酸素が含まれた排ガス中のNOx浄化触媒が記載されている。
 しかし、引用文献3および4の実施例には、白金およびパラジウムの両方が担持された触媒は記載されていない。
 これらの文献の実施例では、単一種貴金属を担持した種々の触媒を用いた場合の窒素酸化物の分解性能の結果が記載されているが、本願発明のように、長期間にわたって安定的に高いNox分解性能を有するか否かについては、全く明らかにされていない。
 引用文献5には、PtおよびPdを担持した触媒が開示されている。
 しかしながら、引用文献5の触媒は、本願発明のようにタングステンを担持したものではない。引用文献5の触媒のNOx転化率を示す図1では、時間の経過と共に明らかにNOxの転化率が低下している。これは、本願明細書の段落[0014]~[0017]において説明されているように、触媒中の硫酸根が時間の経過と共に脱離していくことに起因している。
 したがって、引用文献3~5の発明を組み合わせたとしても、長期間にわたって安定的に高いNOx分解性能を得るという本願発明の効果は容易に想到することができない。
 また、引用文献3および4では、ストイキ状態やリッチ雰囲気のガスに曝されることによってNOx浄化性能が向上または回復することを利用している(引用文献3の段落[0039]、引用文献4の段落[0016])。
 さらに詳細に引用文献3および4の記載内容を検討すると、引用文献3の段落[0033]に「触媒中の前記貴金属の含有量は、NOx吸収能とストイキ時の三元触媒性能が十分得られれば・・・」と記載されている。また、引用文献4では、「リーン側ではNOxがアルカリ土類金属(NOx吸蔵体)に吸蔵され、それがストイキ~リッチ側でHCやCOなどの還元性成分と反応して浄化されるため、リーンバーンにおいてもNOxを効率良く浄化することができる」(段落[0005])、「リッチ雰囲気において・・・還元される。・・・・NOx吸蔵能が容易に回復する」(段落「0016」)と記載されている。
 そして、それらの触媒の性能評価は、引用文献3では段落[0072]に記載のようにストイキ状態からリーン雰囲気に切り換えて、また引用文献4では段落[0057]に記載のようにリッチモデルガスとリーンモデルガスを切り換えながら行っている。
 したがって、引用文献3および4の発明は、ストイキ状態やリッチ状態と、リーン状態とを繰り返すリーンバーンエンジンの排気ガス処理を想定したものであり、酸素過剰雰囲気下であるリーン雰囲気で触媒にNOxを吸収させ、その後のストイキ状態あるいはリッチ雰囲気下に触媒に吸着されたNOxを還元する二段階の工程でNOxを浄化しているのであって、酸素過剰雰囲気下に一段階でNOxの分解まで行っている本発明とは全く異なっている。

特許査定

不必要に長文になった嫌いがある


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ちまちま中間手続53

2025-04-04 21:57:21 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続53

拒絶理由 進歩性
 引用例1には、本願所定の壁厚、多孔率(気孔率)、孔径を有する炭化珪素製多孔質透過成型体が記載されている(特許請求の範囲、第1頁右欄第8行~第20行、第3頁右上欄第3行~第11行、第4頁右下欄第4行~第5頁左上欄第1 2行)。
 ここで、引用例1には明記されていないものの、比透過率は壁厚や多孔率によって一義的に決定されると認められるので、引用例1記載の多孔質透過成型体も、本願所定の比透過率を有するものと認められる。
 仮に、引用例1記載の多孔質透過成型体が本願所定の比透過率を有するとまではいえないとしても、圧力損失等考慮して、多孔質透過成型体の比透過率を所望の値に調節することは、当業者が適宜なし得る事項にすぎず(必要ならば引用例2等参照)、かかる数値限定による臨界的な効果も、本願明細書からは何ら認め られない。
 さらに、抵抗値を調節するために、多孔質透過成型体にホウ素等の添加剤を加えることも公知であり(引用例3:請求項3、【0019】【0034】)、所望の抵抗値を実現するために、引用例1記載の多孔質透過成型体にホウ素等の添加剤を適当量添加することは、当業者が容易になし得ることである。

意見書
 補正により旧請求項1~5は削除された。これにより、引用文献1~3に基づく進歩性の拒絶理由は本願に該当しなくなった。

拒絶理由 進歩性
 引用例2には、出発粉体を炭化後、窒素雰囲気下1400~2000℃で焼成する炭化ケイ素製多孔質透過成形体の製造方法が記載されており、焼成時に窒素を添加することで比抵抗を調節することも記載されている(特許請求の範囲、第3頁右上欄第15行~第4頁左上欄第9行等)。
 ここで、引用例2には「再結晶焼成」については明記されないものの、本願における「再結晶焼成」温度と上記引用例2の焼成温度とは重複しており(2000℃)、また本願明細書には「再結晶焼成」の具体的な定義づけや焼成条件は何ら規定されない、言い換えれば「再結晶焼成」であるか否かはその焼成温度のみに依存すると認められるので、本願発明は引用例2に記載された発明である(仮に上記「再結晶焼成」が焼成温度以外の条件を必要とするのであれば、本願明細書には焼成温度以外の条件については何ら記載されておらず、また「再結晶焼成」なる記載から具体的な焼成条件が自明に導かれるとも認められないので、本願明細書は、「再結晶焼成」を実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず、本願請求項の「再結晶焼成」なる記載は不明瞭である)。
 また引用例4には、出発粉体を炭化後、窒素雰囲気下本願所定の温度範囲で2段階焼成する炭化ケイ素製多孔質透過成形体の製造方法が記載されており、該2段階焼成の一方、若しくは双方がそれぞれ本願における「反応焼成」「再結晶焼成」に相当する(特許請求の範囲、第2頁左下欄第4行~第10行、第2頁右下欄第1行~第12行、第3頁左下欄第7行~第4頁左上欄第18行)。
 さらに、引用例3,5~8には、出発粉体を炭化後、不活性雰囲気下、本願所定の「再結晶焼成」温度で焼成する炭化ケイ素製多孔質透過成形体の製造方法が記載されている一方(引用例3:特許請求の範囲、【0026】【0034】【0035】/引用例5:特許請求の範囲、第3頁右上欄第10行~右下欄第9行、第4頁右下欄第1行~第7頁左下欄第4行/引用例6:特許請求の範囲、第2頁左上欄第19行~左下欄第18行/引用例7:特許請求の範囲、第4頁右上欄第17行~第5頁左上欄第4行/引用例8:特許請求の範囲、第3頁右上欄第18行~右下欄第9行、第4頁左上欄第1行第9行、第5頁左上欄第9行~右上欄第14行)、引用例2,4等に記載されるように、比抵抗の調節のため焼成に用いる不活性ガスを窒素とすることは、当業者が容易になし得ることである。
 加えて、炭化ケイ素製多孔質透過成形体の原料としてシリカ及び炭素前駆体材料のみを用いることも一般的な技術でしかなく(引用例9等)、所望の物性や作業性を得るために、原料の組成比、粒径等を好適に定めることも、必要に応じて当業者が適宜なし得る事項でしかない。
 そして、本願明細書の記載からは、本願発明が所定の構成をとることで顕著に有利な効果を示すとまでは認められない。

意見書
 最初に、本発明の特徴である「反応焼成」と「再結晶焼成」の二段階の工程について詳細に説明する。
 本願の出願当初の明細書の段落[0003]に記載されているように、ケイ素と炭素の混合物に対して反応焼成(1400~1900℃)を行うことにより、炭化ケイ素が形成されるが、この場合に形成されるのは、β-炭化ケイ素である。本願明細書および平成18年12月25日に提出された意見書において説明されるように、β-炭化ケイ素は非常に緻密であり、フィルタの壁厚を非常に薄くした場合であってもディーゼルエンジンの排ガスをろ過するのに適していない。壁厚を薄くすると、ろ過体が不安定になる。その結果、1400~1900℃の温度に未焼成体をコーキングすることのみによって製造された排ガスフィルタは、不安定なフィルタをもたらす。
 本発明の特徴は、反応焼成後に、第二の工程として、少なくとも2100℃に昇温させられる「再結晶焼成」工程を行うことである。「再結晶焼成」の温度領域では、「反応焼成」工程により形成されたβ-炭化ケイ素をα-炭化ケイ素に転換する再結晶が起こる。α-炭化ケイ素に転換することによって、多孔度が大幅に向上し、その結果、焼成体が、大幅に薄い壁を有し、その結果として、より良好な機械的安定性を有し得るという利点を有する。したがって、ろ過体は、良好なろ過効果、低い流れ抵抗およびそれにもかかわらず良好な機械的安定性を有する。上述の方法によって得られたろ過体は、本出願の前に知られたSiCからの全てのろ過体と比較して大きな利点を有する。
 (a)引用文献2について
 引用文献2には、出発粉体を炭化後、窒素雰囲気下1400~2000℃で焼成する炭化ケイ素多孔質透過成形体の製造方法が記載されている。
 しかしながら、新請求項1における「反応焼成」は1400~1900℃で行われ、「再結晶焼成」は少なくとも2100℃で行われているので、引用文献2では、本願の「再結晶焼成」に該当する工程はなされていない。さらに、引用文献2の第2頁右下欄27行に「材料のβ炭化珪素成分が本体の電気抵抗に好ましい影響を与える」と記載されているように、引用文献2では、β-炭化珪素を形成することが目的となっているため、引用文献2には、本願の「再結晶焼成」を行ってβ-炭化珪素をα-炭化ケイ素に転換することの動機付けになるような記載はない。
 (b)引用文献4について
 引用文献4には、出発粉体を炭化後、窒素雰囲気下所定の温度範囲で2段階焼成する炭化ケイ素製多孔質透過成形体の製造方法が記載されている。
 しかしながら、引用文献4と本願発明では、その出発物質と実施される焼成の工程の内容が全く異なっている。すなわち、引用文献4では、その第2頁左上欄8~9行に「フィルタ材料としては炭化珪素の多孔質焼結体が選択される」と記載されているように、出発物質が炭化ケイ素であり、ケイ素および炭素の混合物を出発粉体とする本願発明とは全く異なっている。また、引用文献4では、第1の焼成工程が1900~2300℃の温度範囲でなされており、これでは、用いられる温度に応じて、2100℃未満ではβ-炭化ケイ素が形成され2100℃以上ではα-炭化ケイ素が形成され、しかも、第2の焼成工程が1600~2100℃のβ-炭化ケイ素が形成される温度範囲で行われており、本願のように「反応焼成」と「再結晶焼成」の二段階で焼成を行っていない。したがって、引用文献4の方法によってα-炭化ケイ素を一部に含むものが得られるとしても、本願発明のように二段階で焼成することにより透過特性に優れたものが得られることに想到することはできない。
(c)引用文献3について
 引用文献3には、内燃機関の排気ガスを精製するためのフィルタを製造する方法が記載されている。
 しかしながら、引用文献3では、フィルタは、α-炭化ケイ素およびβ-炭化ケイ素粉体および添加物(炭化ケイ素を除く炭化物)の開始混合物から製造されているのに対し、本願発明では、ケイ素と炭素の混合物を反応焼成(1400~1900℃)することによってβ-炭化ケイ素を形成し、次いで、再結晶焼成(少なくとも2100℃)することによって、α-炭化珪素を生じさせている。
 また、引用文献3では、1800~2200℃の焼成温度で焼成工程を行っており、本願発明で規定する「再結晶焼成」の温度範囲を含んでいる。しかしながら、引用文献3では、一段階の焼成工程である。本願発明では、β-炭化ケイ素を形成するための「反応焼成」の段階、β-炭化ケイ素をα-炭化ケイ素に転換させる「再結晶焼成」の段階の二段階を順次に行うことによって、明確に孔を成長させ、透過特性が事実上改良された状態の多孔性透過成形体を製造することができる。一段階で焼成する引用文献3の方法により、フィルタ中のα-炭化ケイ素を含むものが得られるとしても、本願発明のように二段階で焼成することにより透過特性に優れたものが得られることに想到することはできない。
(d)引用文献5について
 引用文献5には炭化珪素質ハニカム状フィルタの製造方法が開示されている。
 しかしながら、引用文献5の方法では、炭化ケイ素粉末を主体とする出発原料からフィルタが製造されており、ケイ素と炭素の混合物を反応焼成(1400~1900℃)することによってβ-炭化ケイ素を形成し、次いで、再結晶焼成(少なくとも2100℃)することによって、α-炭化珪素を生じさせている本願発明とは異なっている。
 また、引用文献5では、2000~2500℃の焼成温度で焼成工程を行っており、本願発明で規定する「再結晶焼成」の温度範囲を含んでいる。しかしながら、引用文献5では、一段階の焼成工程である。本願発明では、β-炭化ケイ素を形成するための「反応焼成」の段階、β-炭化ケイ素をα-炭化ケイ素に転換させる「再結晶焼成」の段階の二段階を順次に行うことによって、明確に孔を成長させ、透過特性が事実上改良された状態の多孔性透過成形体を製造することができる。一段階で焼成する引用文献5の方法により、フィルタ中のα-炭化ケイ素を含むものが得られるとしても、本願発明のように二段階で焼成することにより透過特性に優れたものが得られることに想到することはできない。
(e)引用文献6について
 引用文献6には均質で多孔性の再結晶炭化珪素体の製造方法が開示されている。
 しかしながら、引用文献6の方法では、炭化珪素粉と場合による炭素粉と炭素バインダーとからなる混合物からフィルタが製造されており、ケイ素と炭素の混合物を反応焼成(1400~1900℃)することによってβ-炭化ケイ素を形成し、次いで、再結晶焼成(少なくとも2100℃)することによって、α-炭化珪素を生じさせている本願発明とは異なっている。
 また、引用文献6では、1900~2400℃の焼成温度で焼成工程を行っており、本願発明で規定する「再結晶焼成」の温度範囲を含んでいる。しかしながら、引用文献6では、一段階の焼成工程である。本願発明では、β-炭化ケイ素を形成するための「反応焼成」の段階、β-炭化ケイ素をα-炭化ケイ素に転換させる「再結晶焼成」の段階の二段階を順次に行うことによって、明確に孔を成長させ、透過特性が事実上改良された状態の多孔性透過成形体を製造することができる。一段階で焼成する引用文献6の方法により、フィルタ中のα-炭化ケイ素を含むものが得られるとしても、本願発明のように二段階で焼成することにより透過特性に優れたものが得られることに想到することはできない。
(f)引用文献7について
 引用文献7には導電性炭化ケイ素焼結多孔体の製造方法が開示されている。
 しかしながら、引用文献7の方法では、炭化ケイ素粉末を出発原料としており、ケイ素と炭素の混合物を反応焼成(1400~1900℃)することによってβ-炭化ケイ素を形成し、次いで、再結晶焼成(少なくとも2100℃)することによって、α-炭化ケイ素を生じさせている本願発明とは異なっている。
(g)引用文献8について
 引用文献8には炭化珪素質焼結体で構成されたフィルタが開示されている。
 しかしながら、引用文献8に記載された方法では、少なくとも60重量%のβ型炭化珪素よりなる炭化珪素を出発原料としており(第2頁左下欄10行)、ケイ素と炭素の混合物を反応焼成(1400~1900℃)することによってβ-炭化ケイ素を形成し、次いで、再結晶焼成(少なくとも2100℃)することによって、α-炭化珪素を生じさせている本願発明とは異なっている。
 また、引用文献8では、1700~2200℃の焼成温度で焼成工程を行っており(第4頁左上欄2~3行)、本願発明で規定する「再結晶焼成」の温度範囲を含んでいる。しかしながら、引用文献8では、一段階の焼成工程である。本願発明では、β-炭化ケイ素 を形成するための「反応焼成」の段階、β-炭化ケイ素をα-炭化ケイ素に転換させる「再結晶焼成」の段階の二段階を順次に行うことによって、明確に孔を成長させ、透過特性が事実上改良された状態の多孔性透過成形体を製造することができる。一段階で焼成する引用文献8の方法により、フィルタ中のα-炭化ケイ素を含むものが得られるとしても、本願発明のように二段階で焼成することにより透過特性に優れたものが得られることに想到することはできない。
(h)引用文献9について
 引用文献9には、炭化ケイ素製多孔質透過成形体の原料としてシリカ及び炭素前駆体材料のみを用いることが開示されている。
 しかしながら、補正後の本願発明は、ケイ素および炭素の混合物を出発物質としており、引用文献9とは異なっている。

 以上において説明したように、本願発明は、引用文献2~9に記載された発明と同一ではなく、また、引用文献2~9に基づいて容易に想到することができるものでもない。したがって、本願発明は、引用文献2~9に対して、新規性および進歩性を有している。

特許査定

2回の拒絶理由までは、ぼろくそにやられてた。通常は、この段階でギブアップでも仕方ないかな。。最後の意見書で総力を挙げて仕上げたところ権利化に成功した。

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ちまちま中間手続52

2025-04-02 21:55:49 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続52

拒絶理由
 刊行物1には、軽油を水素化脱硫する方法であって、触媒に触媒の2倍量のカーボランダムを組み合わせて接触させることが記載されている(実施例1)。これは実質的に本願発明の固体粒子S1と固体粒子S2に相当し、それぞれの好適な粒径は当業者が適宜規定する事項であるし、同1では向流で軽油と水素を接触させることについて明記されたいないが、水素化反応を向流で行うか並流で行うかは当業者が適宜規定する事項である。
 そして反応系に含有させる触媒等固体粒子の形態は当業者が適宜規定する事項である。
 また軽油の水素化脱硫技術をケロシン留分や減圧軽油やホワイトオイルの脱硫に適用することはよく行われることであるので、同1の方法をこれらの原料油に適用することは当業者が容易になし得る事項である。

意見書
 ここで、出願当初の明細書の記載を参照しながら、上記本願発明の請求項1の構成に至った経緯について概略的に説明する。
1)従来のこの種の炭化水素処理方法においては、仕込原料が水素に富むガスと混合されて水素化処理反応器を通過する並流式が一般的であった(段落[0013])
2)炭化水素の水素化処理方法においては、固定床方法を用いることが一般的であるが、上記1)の並流式で処理を行う場合、ガス相および液相が、反応器の軸方向に沿って同一線速度で流れることに起因して、いくつかの問題が生じていた(段落[0020])。
3)上記2)の問題点を回避するために、並流ではなく向流式で水素化処理を行うことが提案されている(段落[0021]~[0022])。
4)しかしながら、向流式で水素化処理を行う場合にあっては、触媒床を通過し得る相の各々の可能な流量範囲を制限するフラッディング現象が生じるおそれがあるという問題があった(段落[0008])。
5)このフラッディング現象が生じるリスクを制限するために、触媒床の内部での圧力損失を最小にすることが検討され、小サイズの触媒が大きな圧力損失を引き起こすことは公知であったことから、固定床の担持触媒のサイズを増大させることが考えられた(段落[0008])。
 ところが、触媒粒子のサイズが大きくなると、大きなサイズの粒子中の圧力の、制限される粒子内拡散に起因して、反応床の内部で触媒活性の低下が引き起こされるという問題があった(段落[0008])。
 このように、「向流式」での水素化処理方法においては、フラッディング現象を制限するために大サイズの触媒が求められる反面で、触媒活性の低下を回避するために小サイズの触媒が求められるという問題点を有していた。
 本願発明の請求項1は、このような問題点を解消するために、上記B)に示すように、粒径の小さい(平均直径0.5~5mm)固体粒子S1と、これよりも平均直径が大きい固体粒子S2との2種の均質な混合物を固定床に用いることを提案した。本発明では、以上のような構成を有することにより、向流式の水素化処理方法においても、触媒活性を低下させることなくフラッディング現象の問題を解消することができる。

 引用文献1には、触媒とこの触媒の2倍量のカーボンランダムとを組み合わせた床を軽油が通過するようにさせることにより軽油を水素化脱硫する方法が開示されている。
 しかしながら、引用文献1の段落[0015]の「この原料軽油を・・・第1反応器1へ水素ガスと共に・・・供給する」および「第1気液分離器3で・・・留分は第2反応器4へ新たな水素ガスと共に供給される」および図1の記載を参照すれば明らかなように、引用文献1では、並流式により水素化処理を行っている。引用文献1には、向流式で水素化処理を行ってよい旨の記載はなく、それを示唆するような記載もない。
 引用文献2には、担体がフッ素を含有する水素化脱硫方法が開示されている。
 しかしながら、引用文献2の段落[0007]の「・・・ここでは、該軽油留分と水素とをして、・・・・を含む触媒上を通過せしめる」の記載から明らかなように、引用文献2の方法は、並流式による方法である。引用文献2は、向流式で水素化処理を行ってよい旨の記載はなく、それを示唆するような記載もない。
(3)本出願人が以上の本願発明の請求項1と引用文献1および2とを比較検討した結果、以下の3つの主要な理由により、本出願人は拒絶理由1に同意することはできない。
 1)引用文献1および2を組み合わせても本発明に想到することはできない。なぜならば、引用文献1および2には、向流式(これは工業的に通常の様式ではない)を用いることに至るような記載も示唆もないからである。
 2)向流式が周知の様式であったとしても、これを引用文献1の方法に組み合わせることにつながるような何らの理由および何らの教示も引用文献1にはない。引用文献1の方法は、その段落[0015]の該当箇所の記載および図1に記載されるように、工業的に通常の技術である並流式に限られており、向流式との組合せによってもたらされる技術的効果を教示するような記載が何もない。
 3)たとえ、引用文献1と向流式との組合せに想到することができたとしても、本願発明の請求項1のように特定の小さな粒径の固体粒子S1およびこれより大きな粒径の固体粒子S2との混合物を用いることに想到するのは困難である。引用文献1は「並流式」により処理を行うものであり、「向流式」で行うことによって生じる上記(2)の4)および5)の問題点は生じ得ず、異なる粒径の固体粒子を用いることの動機付けが引用文献1の方法では存在しないからである。
 以上のように、本願発明は、従来一般的方法であった「並流式」の処理方法から生じる問題点を考慮して、一般的でなかった「向流式」により処理することを選択し、さらに、「向流式」で処理を行った場合に生じる、フラッディング現象の問題を克服するために、異なる粒径の固体粒子を用いることとして、請求項1の構成を完成するに至ったものである。
 すなわち、本願発明は、「向流式で処理を行うこと」と、「特定の小さな粒径の固体粒子S1およびこれより大きな粒径の固体粒子S2との混合物を用いること」との組合せを特徴とするものであり、これにより向流処理においても圧力損失を最小化し床における触媒活性を保持することができる(段落[0009]~[0011])。
 したがって、本願発明の請求項1の構成は、「並流式」で処理を行っている引用文献1の記載に基づいて適宜規定することができたものではない。
 引用文献1の記載に基づいて本願請求項1を適宜規定し得るという拒絶理由1は、「帰納的」分析もしくは事後的分析によるものであり、引用文献1に基づいて本願請求項1の発明の進歩性を否定することは妥当性に欠けるものである。

拒絶理由
36条6項2号

補正書
上記を解消するための補正

特許査定

比較的まとまったかたちで反論できたと思っている件。
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