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ちまちま中間手続71

2025-05-21 21:48:09 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続71

拒絶理由 新規性・進歩性
 例えば、引用文献1-4に記載されているように、水中に好気性細菌を保持した流動担体を含み、底部に脱窒細菌を保持した脱窒固定床を具備した生物的硝化・脱窒一体型装置および同装置を用いた水処理方法は周知技術と認められる。
 そして、上記周知技術と本願請求項1,6に記載された発明との間に差違は認められない。
 なお、水槽等の水処理を生物学的に行うことは周知技術と認められる。

意見書
 引用文献1~4には、同一の槽内に好気性細菌を保持する好気性ゾーンと嫌気性細菌を保持する嫌気性ゾーンとを具備した生物的脱硝化・脱窒一体型装置が記載されている。
 しかしながら、引用文献1~4には、「脱窒固定床内部に炭素源を直接供給する」ことは記載されておらず、それを示唆するような記載もない。
 したがって、本願発明は引用文献1~4に記載された発明でなく、新規性を有している。
 また、本願発明では、「脱窒固定床内部に炭素源を直接供給する」ことにより、有機炭素源溶液中の炭素が窒素ガス曝気等により人為的に排除・拡散されることがなく、脱窒に不可欠な嫌気状態を効果的に維持することができ、さらに、炭素源が処理槽に拡散して無駄になることもなく、最小限の炭素源の供給で効果的に脱窒させることができる。
 引用文献1~4には、このようなことは記載されておらず、示唆するような記載もないので、本願発明は、進歩性も有する。
 引用文献5には、槽内に脱窒細菌フロックを収容した脱窒槽を具備する生物的硝化・脱窒一体型装置が記載されている。
 しかしながら、本意見書と同時提出した手続補正書による補正により、旧請求項2は削除したので、引用文献5に基づく拒絶理由は解消した。

拒絶理由 進歩性
 引用文献1には、充填槽を用いた下水処理装置が記載されており、充填槽側の上段部には比重が比較的小さい粒子を充填するとともに散気配管を設けて好気槽を形成し、充填槽側の下段部には比重が比較的大きい粒子を充填するとともにメタノール注入管を設けて嫌気槽を形成する旨が開示されている。また、充填槽の底部には、充填槽を洗浄するための散気管が設けられている旨も記載されている(【請求項1】、段落番号【0001】、【0008】、【0009】、【図1】等参照)。
 したがって、本願の請求項1、2に係る発明は、水族館や陸上養殖施設の循環水あるいは飼育排水を処理対象としている点で、引用文献1に記載された発明と相違する。
 しかしながら、水族館や魚等の飼育に関する産業分野からの排水を好気槽と嫌気槽において硝化・脱窒処理する技術は、公知である(要すれば、引用文献2参照)。
 したがって、引用文献1記載の下水処理装置において、処理対象として周知の排水を選択することは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
 よって、本願の請求項1、2に係る発明は、進歩性を有さない。
 なお、同様のことが、請求項3においても認められる。

意見書
 本願発明の目的は、本願明細書の段落[0003]および[0004]に記載されているように、よりコンパクトかつ単純に、好気的な硝化処理と嫌気的な脱窒処理を同一槽内で行う一体型の硝化・脱窒装置を提供することにある。
 ここで、本願発明の処理対象は、水族館および陸上養殖施設からの飼育排水中のアンモニア態窒素、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素であるが、これらのうち、硝酸態窒素は他の態様の窒素ほどには魚類に対する毒性が高くない上、定期的な飼育水の交換の際に希釈されるため大きな問題にならない(段落[0002]の7~8行)。また、従来の好気的条件下での硝化処理に続いて嫌気的条件下で脱窒処理を行う方式では、硝酸が除去された後の処理水が嫌気的であるため、魚の飼育水槽に戻す前に曝気等を行い、これを好気的な状態に戻す必要があり(段落[0003]の5~7行)、装置のコンパクトの妨げとなっていた。
 本願発明は、以上のような問題を解消するために、まず、「脱窒固定床内部に炭素源を直接供給する」ことにした。これにより、有機炭素源溶液中の炭素が窒素ガス曝気等により人為的に排除・拡散されることがなく、脱窒に不可欠な嫌気状態を効果的に維持することができ、さらに、炭素源が処理槽に拡散して無駄になることもなく、最小限の炭素源の供給で効果的に脱窒させることができる。
 また、上記のように各態様の窒素のうち、硝化処理により生じた硝酸態窒素はそれほど大きな問題にならないことから、本願発明では、「底部の一部の領域に脱窒細菌を保持した脱窒固定床を、底部の他の領域に散気装置が具備される」ようにした。これにより、硝化処理を行った処理水の全てを次の脱窒処理に付すのではなく、同一槽内において好気的条件下での硝化処理と、嫌気的条件下での脱窒処理とを並行して行うようにし、槽内の水は散気装置による曝気により十分に好気的な状態になっていることから、従来のように処理後の水を魚の飼育水槽に戻す前に曝気等を別途行う必要がなく、よりコンパクトかつ単純な構成にすることができる。
 また、明細書の段落[0015]に「硝酸の毒性は低く200~300mg/リットル程度でも特に支障は起こらない。また、担体容積あたりの窒素処理効率は硝化の約3倍であることから、よりコンパクトな容量で硝酸濃度は安全な濃度で維持することが可能である」と記載されているように、本願発明では、該脱窒固定床を、硝化担体1m3に対して0.1~0.3m3にすることができ、このような点でも、本願発明は、よりコンパクトかつ単純な構成になっている。

 拒絶理由について
 引用文献1には、充填槽を用いた下水処理装置が記載されており、充填槽側の上段部には比重が比較的小さい粒子を充填するとともに散気配管を設けて好気槽を形成し、充填槽型の下段部には比重が比較的大きい粒子を充填するとともにメタノール注入管を設けて嫌気槽を形成する旨および充填槽の底部には、充填槽を洗浄するための散気管が設けられている旨が記載されている。
 また、引用文献2には、水族館や魚等の飼育に関する産業分野からの排水を好気槽と嫌気槽において硝化・脱窒処理する技術が記載されている。
 引用文献1の装置では、その図1において示されるように、散気配管(6)による好気条件下での好気層(7)における硝化処理後の水は、その全てが、メタノール注入管(9)から供給されるメタノールを炭素源とする嫌気条件下での嫌気層(8)における窒化処理を経、窒化処理後の水は、オゾンまたは空気の供給器(10)による処理を経た後に排出されている。
 このように、引用文献1の装置では、嫌気層(8)での処理後の水は嫌気状態にあり、下水を処理対象とする引用文献1の装置を、本願発明のような水族館等からの飼育排水に適用するためには、処理後の水に対して空気を供給する手段(オゾンまたは空気の供給器(10))が必須であり、コンパクトかつ単純な構成にはならない。
 これに対して、本願発明では、底部の他の部分に設置された散気装置により曝気が行われているので、処理後の水に対して空気を供給する手段(オゾンまたは空気の供給器(10))を別途設ける必要がない。
 さらに、引用文献1には、本願発明において規定される「脱窒固定床は硝化担体1m3に対して0.1~0.3m3である」ことは一切記載されていないので、この点でも、引用文献1の装置では、よりコンパクトかつ単純な構成の装置とすることはできない。
 また、引用文献2は、硝化菌を保持した硝化ろ材の製造方法に係わる発明であって、本願発明のような構成は全く記載されていない。
 したがって、下水処理のための引用文献1の装置を、そのままで水族館等からの飼育排水の処理に適用してもコンパクトかつ単純な構成のものにはならないので、引用文献1および2の記載から、本願発明に想到することは容易ではなく、本願発明は進歩性を有している。

特許査定
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ちまちま中間手続70

2025-05-18 21:20:34 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続70

拒絶理由
新規性・進歩性
 引用文献1の請求項5、図2には、好気性独立栄養細菌(硝化菌)の懸濁液に有機ポリマーを加えて、有機ポリマーによって表面をコーティングしてなる担体であって、その比重が1以下のものが記載されている。そして、同文献の段落0002-0007および図8の記載から、この担体は底部に散気装置を備える生物的硝化装置によって使用されると認められる。
 そうすると、本願請求項1,3に係る発明と引用文献1に記載された発明との間に、物の発明としての差違は認められない。
 なお、硝化槽を用いて水槽等の水処理を行うことは周知技術と認められる。

進歩性
 引用文献2の段落0011および図2に記載された発明は、粒径の下限が0.1である点で本願請求項1,2に係る発明と相違し、その余の点で一致する。しかし、粒径の細かな値は、当業者が必要に応じて適宜に設定する事項と認められ、請求項2に記載された値を境にして格別な効果が奏されるとは認められない。
 したがって、本願請求項1,2に係る発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである(「水族館・・・低減するため」に用いることは可能と認められる)。
 なお、硝化槽を用いて水槽等の水処理を行うことは周知技術と認められる。

意見書
 新規性
 新請求項1は旧請求項1に旧請求項2に記載された規定を加えたものである。旧請求項2は拒絶理由1に該当していない。したがって、新請求項1も当然拒絶理由1に該当しない。

 進歩性
 引用文献2に記載された温水浄化装置の好ましい担体粒子として、活性炭(段落[[0009]~[0011])、ポリウレタンスポンジ(段落[0012])、含水ポリエチレングリコールゲル(段落[0013])、ポリビニルアルコールゲル(段落[0014])、アセタール化ポリビニルアルコールゲル(段落[0019])が挙げられている。
 しかしながら、引用文献2には、本願のような天然軽石も発泡コンクリート軽石は記載されていない。
 硝化細菌は超好気性の完全独立栄養細菌であり、このため、有機物の存在は同細菌の増殖に律速要因として働くことが知られている。この種の細菌の増殖に律速要因となる有機物として本願明細書には浮遊懸濁物質(SS)を挙げている(段落[0005])が、引用文献2において例示されたような上記の担体粒子としての有機物も硝化細菌増殖の律速要因になる。この点で、鉱物系(無機系)の軽石を担体として使用している本願請求項1では担体粒子が細菌の律速要因とはならず、引用文献2の担体粒子よりも優れている。
 また、付着性の同細菌にとっては多孔質の軽石の方が容易に付着することができる上、有機ポリマー製の担体表面よりも菌体が剥離しにくいという効果を本願請求項1では得ることができる。
 さらに、本願請求項1の担体は比重が1以下であり浮遊性のものであるが、このような担体を用いることにより、バブリング流動に対する強度や単価の点で優れているという効果も有する。
 以上に説明したように、本願請求項1は引用文献2と比べて格段に優れた効果を有するものであり、また、有機物を用いている引用文献2の記載に基づいて、本願発明のような無機物である天然軽石または発泡コンクリート軽石に想到することはない。
 なお、本願請求項2では、有機ポリマーを担体表面にコーティングしており、これも硝化細菌増殖の律速要因となり得る。しかしながら、請求項2の場合であっても、担体自体は無機物であり、コーティングに用いられる有機物による有機炭素源の絶対量は、引用文献2のような担体粒子自体が有機物であるよりも少なく、本願のほうがより優れている。
 本願発明の生物的硝化装置の好気性独立栄養細菌付担体を製造するために十分な時間をとることができる場合には、有機ポリマーを介さずに、軽石担体等に直接、硝化菌を増殖させることが可能である。
 他方、担体製造のための十分な時間がとれない場合であっても、別途培養しておいた硝化菌の懸濁液を濃縮し、そこに軽石担体を浸漬させれば、迅速に硝化活性のある担体を製造することが可能である。
 いずれの場合も、軽石担体が多孔質であるため、微生物を付着・担持させることが容易であるという特徴に起因している。この場合、ほぼ完全に無機担体となる。

拒絶理由 進歩性
 請求項1
 引用文献1には、微生物を保持した粒状担体を用いて廃水を処理する方法が記載されており、散気管を有する硝化槽内において、比重が1より小さく、1mm~数cmの粒径を有する軽石等を微生物固定化担体として用いることが出来る旨が記されている(段落番号【0001】、【0009】、【0016】等参照)。
 したがって、本願の請求項1に係る発明は、「水族館や陸上養殖施設の循環水あるいは飼育排水」を対象としている点で、引用文献1に記載された発明と相違する。
 しかしながら、軽石等を用いた微生物担体を利用して硝化処理する排水として、「水族館や陸上養殖施設の循環水あるいは飼育排水」は一般的である(要すれば、引用文献2参照)。また、硝化が行われる好気濾床に用いる担体として、発泡コンクリートは、公知である(要すれば、引用文献3参照)。
 よって、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1と周知技術から、当業者が容易に想到し得るものであるため、進歩性を有さない。

 請求項2
 上記(1)参照。また、本願の請求項2に係る発明においては、「好気性独立栄養細菌付着担体が、有機ポリマーの溶液に種菌を懸濁させ、該有機ポリマーを担体表面にコーティングしてゲル化させることで担体上へ細菌を接種・固定化させたものである」点で、引用文献1に記載された発明と相違する。
 しかしながら、硝化菌を担体に接種・固定化させること及びその方法は周知であり(要すれば、引用文献4参照)、排水処理工程の立ち上がりを早めるために、予め担体に菌を接種・固定化しておくことは、当業者が必要に応じて適宜行うことである。
 よって、本願の請求項2に係る発明は、進歩性を有さない。

意見書
 引用文献1には、微生物を保持した粒状担体を用いて廃水を処理する方法が記載されており、散気管を有する硝化槽内において、比重が1より小さく、1mm~数cmの粒径を有する軽石等を微生物固定化担体として用いることが出来る旨が記載されている。
 引用文献1には、その段落[0009]において粒状担体の1つとして軽石が例示されている。しかしながら、引用文献1には、本願発明のように、有機ポリマーを軽石担体表面にコーティングしてゲル化させることで担体上へ細菌を接種・固定化させることは開示されていない。
 引用文献2には、軽石等を用いた微生物担体を利用して「水族館や陸上養殖施設の循環水あるいは飼育排水」を硝化処理することが記載されている。
 引用文献2には、その段落[0009]において担体の1つとして軽石が例示されており、段落[0010]において担体に硝化菌を保持させる方法が記載されている。しかしながら、引用文献2には、本願発明のように、有機ポリマーを軽石担体表面にコーティングしてゲル化させることで担体上へ細菌を接種・固定化させることは開示されていない。
 引用文献3には、硝化が行われる好気濾床に発泡コンクリートを担体として用いることが記載されている(段落[0019])。
 しかしながら、引用文献3には、本願発明のように、有機ポリマーを軽石担体表面にコーティングしてゲル化させることで担体上へ細菌を接種・固定化させることは開示されていない。
 引用文献4には、排水処理工程の立ち上がりを早めるために、予め担体に菌を接種・固定化しておくことが記載されている。
 引用文献4には、その段落[0008]において担体の1つとして多孔質無機担体が例示されており、また、その段落[0013]には、好ましい担体として高分子含水ゲル(さらに好ましくは含水ポリエチレンゲル)が開示されている。
 しかしながら、引用文献4の記載では、例示された高分子含水ゲル自体が担体であって、本願発明のように、有機ポリマーを軽石担体にコーティングしてゲル化させることにより得られるものではない。
 さらに、平成19年1月30日付けで発送された拒絶理由通知において引用されていた特開平9-252771号公報には、その段落[0010]において、冷凍法による生物担体の製造方法が開示されている。
 しかしながら、この引用文献においても、合成樹脂の粒体を用いて生物担体を製造しており、本願発明のように担体として軽石担体を用いることは一切記載されていない。
 以上に説明したように、上記のいずれの文献にも、本願発明のように無機物である軽石担体に有機物をコーティングしてゲル化させることで軽石担体に細菌を接種・固定化させることは記載されていない。
 本願の明細書の段落[0005]に記載されているように、硝化細菌は有機物に依存する従属栄養細菌と共存することで、より高い硝化能を示す。本願発明による好気性独立栄養細菌付着担体は、軽石担体からなる無機相とコーティングによる有機相との両方を有しており、無機相において硝化細菌が繁殖し得、有機相に従属栄養細菌が繁殖し得る構成となっている。したがって、本願発明による担体は、より高い硝化能を有するものを供給し得るものである。引用文献1~4および特開平9-252771号公報に記載された担体は、無機相または有機相のいずれか1つのみからなるものであるため、同一担体上に無機相および有機相の両方を有する本願発明の担体のような高い硝化能を示すことができない。
 したがって、本願発明は、上記引用文献に比し進歩性を有している。

 特許査定
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ちまちま中間手続69

2025-05-17 21:15:51 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続69

拒絶理由 進歩性
 引用文献1~3には、6B族金属と8族金属とが担体に担持された触媒が記載されており、ケイ素,ホウ素を含有し得ることも記載されているから、請求項1,13の発明は引用文献1~3に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものといえる。

意見書
 引用文献1~3には、6B族金属と8族金属とが担体に担持された触媒が記載されており、ケイ素、ホウ素を含有し得ることも記載されている。
 しかしながら、引用文献1の第6頁左下欄15~20行の「これらの物質(第VIII族金属、ケイ素、リン、ホウ素およびフッ素)を担持する方法としては、特に制限はなく、例えばこれらの物質を前記成型物にふりかけるか、あるいはこれらの物質の水溶液に成型物を浸漬する・・・」、引用文献2の段落[0006]中の12~17行の「ポリア-シリカ-アルミナからなる酸化物触媒担体に、活性金属成分として周期律表第VIa族金属及び第VIII族金属・・・・を担持させ、・・・」、段落[0007]中の1~4行の「・・・触媒担体は、・・・ポリアとシリカの含有量がB2O3として・・・、SiO2として・・・」、引用文献3の段落[0018]中5~9行の「ホウ素またはホウ素含有化合物が第VIII族水素化成分より先に施与され、・・・非常に好ましい結果が得られる」、段落[0020]中の3~6行の「ホウ素化合物を添加するさらに適当な方法は、担体物質(の一部)との共押出またはVIB族金属成分を含有する溶液を用いての同時含浸(co-impregnation)である。」の記載を参照すれば明らかなように、引用文献1~3では、いずれも、担体にホウ素、ケイ素を担持させてから最終工程で金属を担持させるか、または、ホウ素、ケイ素と金属とを同時に担体に担持させるか、のいずれによりホウ素、ケイ素を担体に担持させている。
 これに対して、本願発明では、担体に金属を担持させた後に、ケイ素、ホウ素を担持させている。このような担持方法は引用文献1~3には開示されておらず示唆する記載もない。触媒において活性成分を担持させる順が変われば最終的に得られる触媒の性質および活性も変動するので、引用文献1~3に記載された触媒は、本願発明の触媒とは全く別のものであり、これらの文献の記載に基づいても本願の触媒には容易に想到することはできない。
 したがって、本願発明は、引用文献1~3に基づいて容易になし得たものではなく、進歩性を有する。

特許査定
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ちまちま中間手続68

2025-05-04 21:02:49 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続68

拒絶理由 進歩性
 引用文献1には硫黄と5B族元素であるニオブとを含有する水素化精製用触媒が記載されており、該触媒にさらに6B族元素であるモリブデン,タングステン等の硫化物を含有させることも記載されているから、本願発明は引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものといえる。

意見書
 引用文献1には、三硫化ニオブ(NbS3)を含む水素化改質触媒が開示されている。これに対して、本願請求項1の触媒は、少なくとも1種の第VB族金属および第VIB族金属の混合硫化物を含んでいる。すなわち、本願請求項1の触媒は、第VB族金属および第VIB族金属の両方からなる混合硫化物であって、第VB族金属の硫化物と第VIB族金属の硫化物の混合物ではない。それ故に、本願請求項1では、硫化物の相が引用文献1のものとは全く異なっている。引用文献1には、その段落[0020]に「担体上にその他の金属を担持させることもできる。従って、最終触媒中に上記ニオブ以外にも、ニッケル、モリブデン、コバルトもしくはタングステンの硫化物などの水素化精製用触媒として用いられる他の金属硫化物が存在していてもよい。」と記載されており、これは、各種金属の硫化物の混合物を明らかに示しており、本願請求項1のような混合硫化物相の開示は引用文献1中に全く見出すことができない。
 さらに、本願明細書では、請求項1の発明について、段落[0062]および[0063]の表4および表5において、単一種金属の硫化物またはその混合物を、本願請求項1に係わる混合硫化物相と比較している。また、段落[0015]~[0023]には、X線回折により、本願請求項1の特徴である混合硫化物相(Nb0.2Mo0.8S2等)と単独硫化物相(MbS2)とを区別する方法が詳細に説明されている。段落[0024]~[0027]には、混合硫化物の調製方法が説明されている。段落[0079]の実施例11には、調製された各触媒がEXAFS技術によって分析され、単独金属からなる硫化物相が形成されたか混合硫化物相が形成されたかが決定されている。
 段落[0107]の表8には、本願発明による混合硫化物相を有する触媒D1~D6が、モリブデンのみ(A1)またはニオブのみ(B1)の硫化物相を有する触媒よりも活性が高いことが示されている。また、他の表(表6、7、9、11、12、13)にも、本願の混合硫化物相の触媒がより良好な性能を示すことが示されている。
 以上説明したように、本願請求項1は、混合硫化物相を有するものであり、硫化物の混合物を有する引用文献1の触媒とは全く異なっており、また、引用文献1の記載から容易に想到することができないものである。さらに、本願請求項1の触媒が混合硫化物相を有することにより、硫化物相を有する触媒よりも優れた効果を有することも明細書中に示されている。
 したがって、本願請求項1は、引用文献1に基づいて容易に想到することができないものである。

拒絶理由 36条4項
 本願発明の詳細な説明中に記載された実施例などの記載からは本願発明が公知技術に比べてどの程度効果を奏するものであるのかが明瞭でなく技術的意義が明確とは認められない(この点に関し、平成19年4月19日付け意見書第3~4頁の「(3)拒絶理由1について」において、出願人は本願発明の触媒は引用文献1の触媒のような硫化物の混合物ではなく混合硫化物であって、段落[0062]~[0063]の表4,5に示されるように本願発明の混合硫化物と単一金属の硫化物の混合物とを比較すると差があることを主張しているが、本願発明の詳細な説明中の表4,5をみても単一金属の硫化物の混合物についてのデータは見当たらずその点について確認をすることができない。よって、本願発明(混合硫化物)が先の拒絶理由で引用された特開平7-96192号公報の公知技術(硫化物の混合物)に比べてどの程度優れた効果を奏するものであるのかが不明瞭である。意見書を提出してその点について釈明する等されたい。)。

意見書
 当初明細書の段落[0022]には、その7~9行に「第二ピークの最大の位置が金属・金属(ニオブ・ニオブまたはニオブ・モリブデン)の平均距離R2を示し、その平均距離の値は、表3に示されるように混合相の組成に応じて変化する。」と記載され、段落[0023]の表3には、混合相の組成に応じてMo含有量が多くなるほどR2が短くなることが示されており、EXAFS(広域X線吸収微細構造:段落[0015]を参照)によって測定された金属・金属の平均距離R2の値が、単一のニオブ硫化物(R2=3.33)と混合ニオブ-モリブデン相(3.20~3.31)とが同一でなく、これらを明確に区別することができることが示されている。
 このような前提の下で、段落[0062]の表4には、触媒Eが混合硫化物相からなる本発明に合致するものであり、触媒F1およびF2が単一硫化物相の混合物からなる本発明に合致しないものであることが示されているが、このことは、段落[0080]の表7において、ニオブ硫化物相のみを含む触媒B1のR2が3.33であり、触媒EのR2が3.21であり、触媒F1およびF2のR2が3.33であることから明らかである。
 本発明に合致する触媒Eと本発明に合致しない触媒F1およびF2との触媒活性の比較の結果は、段落[0122]の表10(ガスオイルの水素化脱硫における触媒の活性度)、段落[0137]の表11(脱硫済ガスオイル中の芳香族化合物の水素化における触媒の活性度)、段落[0150]の表12(減圧留分の水素化処理におけるNiMo触媒の活性度)、段落[0168]の表13(減圧留分の温和な水素化クラッキングにおける触媒の活性度)および段落[0180]の表14(減圧留分の高圧水素化クラッキングにおける触媒の活性度)に示されている。混合硫化物相を含有する触媒Eが、種々の水素化分解または水素化脱硫試験において、単一のニオブ硫化物相を含有する触媒F1またはF2よりはるかに活性であることがこれらの表を参照することにより理解され得る。触媒Eはまた、ニオブを含まない触媒A0(単一のモリブデン硫化物相)より活性である。
 また、段落[0190]の表15においては、触媒Eよりも、触媒F1およびF2の方が、ガソリンの水素化脱硫における触媒の活性度について、より良好な活性を有するように記載されているが、段落[191]において、触媒Eの活性が、他の全ての触媒A0、F1およびF2の活性よりも良好であることが教示されていることから、表15では、EとF1の値が入れ替わって表記した明らかな誤記があり、実際には、触媒E1の活性度は[,90.0であり、触媒F1の活性度は88.3であり、正しくは、添付の表15’のようになるべきであったものである。
 以上に説明したように、本願の出願当初の明細書には、本願発明が公知技術に比べてどの程度効果を奏するものであるかが明確に記載されており、本願明細書の記載は、当業者が本願発明を実施することができる程度に十分に開示したものであり、特許法第36条第4項の規定を満たしている。

特許査定

 本件「混合硫化物」と引例「硫化物の混合物」との相違点により進歩性を主張。相違している点について厚めに説明しておいたつもりが、すんなり登録とはならず、さらなる拒絶理由が通知されたが、そこもなんとか対処できて登録。
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ちまちま中間手続67

2025-05-02 21:30:33 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続67

拒絶理由 進歩性
 請求項1
 文献1には、サワー炭化水素留分を選択的水素化分解に引き続き酸化触媒、塩基性成分などでスイートニングすることが開示され、サワー炭化水素留分として分解ガソリンも想定している。
 選択的水素化分解では硫化水素等が発生するから、文献1に記載された発明を具体化するにあたっては、ストリッピングなどにより脱ガスすることは周知慣用手段の付加の域を出るものではなく、当業者が容易に想到することである。
 なお、本願各請求項では「安定化」を発明特定事項として含むが、後記の理由2にて指摘するように「安定化」の概念が不明であるため、本願明細書第【0028】欄等の記載から「安定化」とは「脱ガス」と仮に認定して進歩性などを判断している。

意見書
 引用文献1には、選択的水素化およびこれに続く酸化的スイートニングを経て原料油を処理する方法が記載されており、この引用文献1の方法において、水素化は、25~300℃、約6.9~69バール、H2/Sメルカプタン比=0.1~10%モル(請求項6)、VIII族およびVIB族元素(請求項4)を含有する触媒の存在下で行われている。好ましい触媒は、Ru、Pt、Fe、PdおよびNiを有するものであり(第3頁右欄8~10行)、硫化される(第4頁左欄31~32行)。また、全実施例において、アルミナ粘土担体担持の硫化型Ni触媒が用いられている(第8頁左欄5行~同頁右欄7行)。
 引用文献1の方法における選択的水素化工程は、H2が第三メルカプタンと反応するようにさせ、それらを除去可能なH2Sに変換するために行っており、第一または第二メルカプタンはそのままである(第4頁右欄12~19行)。
 これに対して、本願請求項1の方法では、「仕込原料を、・・・工程」(以下、第一工程と称する)において、
(1)ジエンおよび/またはアセチレン系化合物のオレフィンへの水素化
(2)第一および第二オレフィンの第三オレフィンへの異性化、および
(3)メルカプタン含有量の低減
が行われており、引用文献1の水素化工程における「第三メルカプタンからH2Sへの変換」を行っているものではない。また、引用文献1では、硫化触媒を用いているが、第一工程では、「選択的水素化は、0.1~1重量%のパラジウムまたは1~20重量%のニッケルを不活性担体上に担持されて含有する触媒を用いて」と規定されているように、金属形態の触媒を用いている。これらの点で、引用文献1は本願請求項1とは全く異なっている。
 なお、本願の方法でも上記(1)のように第一工程によってメルカプタン含有量が低減しているが、これは、メルカプタンがジオレフィンと反応(付加反応)して硫黄化合物を生じさせることによるものであり(明細書の段落[0011]の7~9行)、引用文献1のようなH2Sの形成は見られない。すなわち、第一工程では、スイートニング反応を伴っている。当然、ここでのH2Sの形成がないということは、形成が全くないことを意味するのではなく、非常に少量のH2Sが生じることをも含む。
 本願請求項1の第一工程は、引用文献1の水素化工程とは異なり、H2Sは全く生じないか、生じ得たとしても非常低量である。引用文献1では、生じたH2Sはスイートニング工程を行う前に流出物から分離されなければならず、引用文献1ではこの目的のためにモレキュラーシーブを用いている。
 これに対して、本願請求項1では、第一工程後の流出物に対して、未使用の残留水素の脱水素ガス化が行われている(以下、この工程を第二工程と称する)。したがって、本願請求項1の第二工程における脱水素ガス化は、引用文献1におけるモレキュラーシーブによるH2S分離とは全く異なっており類似もしていない。モレキュラーシーブは、H2を分離することができないからである。
 以上に説明したように、本願請求項1の方法は、引用文献1の方法とは全く異なっており、引用文献1の方法に基づいて本願請求項1の方法に想到することもできない。
 引用文献2には、0.1~1%Pdを不活性担体上に担持されて含有する触媒を用いる、4~25バールの圧力下、80~200℃、1~10h-1での接触分解法からのガソリンの選択的水素化の方法が記載されている。また、引用文献2には、第一および第二オレフィンの第三オレフィンへの異性化も記載されている。
 しかしながら、上記のように、本願請求項1に記載された第一工程は、引用文献1の選択的水素化は全く異なるものであるので、引用文献2に記載された工程が本願請求項1の第一工程と同種の工程であるからといって、引用文献1の選択的水素化工程に代えて全く目的の異なる引用文献2の工程を組み合わせることの動機付けは生じない。
 したがって、本願請求項1は、引用文献1および2に基づいても容易に想到することができないものである。
 引用文献3には、触媒を用いる酸化的反応によるスイートニング方法が開示されている。
 しかしながら、引用文献3には、本願の第一工程および第二工程に関する記載がない。
 引用文献4には、熱分解ガソリンのスイートニング方法が開示されているが、熱分解ガソリンは、本願の処理対象のガソリンとは異なる組成を示し、特に、そのメルカプタン含有量は非常に低い。用いられる触媒は、VIII族元素を担体上に担持されて含有する周知のものである。しかしながら、Pd触媒は、熱分解ガソリンのメルカプタン含有量を低減させることができない。
 したがって、引用文献4は、本願発明とは関連性のないものである。
 次に、接触クラッキング・ガソリンの精製装置に係る本願請求項10と、各引用文献との相違点および効果について説明する。
 引用文献1では、脱水素ガス化槽は開示されていない。選択的水素化処理後の流出物は、2つのフラクションに分割され、一方は再循環させられ、他方はさらに処理されることが記載されているだけであり、ガス部分を分離していない(第8頁右欄7~11行)。なお、引用文献1では、流出物の水素化反応器への再循環はなく、非脱ガス流出物の再循環が行われている。
 また、引用文献1では、その実施例2、3、4においてモレキュラーシーブを開示するだけであり、これは、本願における脱水素ガス化槽とは同一ではなく類似もしていない。モレキュラーシーブは、H2Sを分離することができるとしても、H2を分離することができない。参考のため、このことは添付書類に詳細に説明している。
 引用文献5には、ストリッピング帯域において水素化処理により生じた硫化水素を除去するための構造が開示されている。
 しかしながら、本願請求項10の装置では、選択的水素化反応器において硫化水素は発生せず、脱水素ガス化槽は、未使用の水素を除くための構造であるので、引用文献5の水素化処理のための構造およびストリッピング帯域とは全く異なっている。
 したがって、引用文献1と引用文献5とを組み合わせても本願請求項10に想到することはできない。
 以上に説明したように、本願請求項1および10およびこれらに従属する他の請求項は、引用文献1~5に基づいて容易に想到することができないものであるので、本願発明は進歩性を有する。

拒絶理由
 36条6項2号

補正・意見書

特許査定

拒絶理由書の指摘は必要以上に囚われず、理論構成はこちらベースとした。そのほうがすっきりしたものが書けるし、結果も良くなったような気がする。
コメント
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