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ちまちま中間手続53

2025-04-04 21:57:21 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続53

拒絶理由 進歩性
 引用例1には、本願所定の壁厚、多孔率(気孔率)、孔径を有する炭化珪素製多孔質透過成型体が記載されている(特許請求の範囲、第1頁右欄第8行~第20行、第3頁右上欄第3行~第11行、第4頁右下欄第4行~第5頁左上欄第1 2行)。
 ここで、引用例1には明記されていないものの、比透過率は壁厚や多孔率によって一義的に決定されると認められるので、引用例1記載の多孔質透過成型体も、本願所定の比透過率を有するものと認められる。
 仮に、引用例1記載の多孔質透過成型体が本願所定の比透過率を有するとまではいえないとしても、圧力損失等考慮して、多孔質透過成型体の比透過率を所望の値に調節することは、当業者が適宜なし得る事項にすぎず(必要ならば引用例2等参照)、かかる数値限定による臨界的な効果も、本願明細書からは何ら認め られない。
 さらに、抵抗値を調節するために、多孔質透過成型体にホウ素等の添加剤を加えることも公知であり(引用例3:請求項3、【0019】【0034】)、所望の抵抗値を実現するために、引用例1記載の多孔質透過成型体にホウ素等の添加剤を適当量添加することは、当業者が容易になし得ることである。

意見書
 補正により旧請求項1~5は削除された。これにより、引用文献1~3に基づく進歩性の拒絶理由は本願に該当しなくなった。

拒絶理由 進歩性
 引用例2には、出発粉体を炭化後、窒素雰囲気下1400~2000℃で焼成する炭化ケイ素製多孔質透過成形体の製造方法が記載されており、焼成時に窒素を添加することで比抵抗を調節することも記載されている(特許請求の範囲、第3頁右上欄第15行~第4頁左上欄第9行等)。
 ここで、引用例2には「再結晶焼成」については明記されないものの、本願における「再結晶焼成」温度と上記引用例2の焼成温度とは重複しており(2000℃)、また本願明細書には「再結晶焼成」の具体的な定義づけや焼成条件は何ら規定されない、言い換えれば「再結晶焼成」であるか否かはその焼成温度のみに依存すると認められるので、本願発明は引用例2に記載された発明である(仮に上記「再結晶焼成」が焼成温度以外の条件を必要とするのであれば、本願明細書には焼成温度以外の条件については何ら記載されておらず、また「再結晶焼成」なる記載から具体的な焼成条件が自明に導かれるとも認められないので、本願明細書は、「再結晶焼成」を実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず、本願請求項の「再結晶焼成」なる記載は不明瞭である)。
 また引用例4には、出発粉体を炭化後、窒素雰囲気下本願所定の温度範囲で2段階焼成する炭化ケイ素製多孔質透過成形体の製造方法が記載されており、該2段階焼成の一方、若しくは双方がそれぞれ本願における「反応焼成」「再結晶焼成」に相当する(特許請求の範囲、第2頁左下欄第4行~第10行、第2頁右下欄第1行~第12行、第3頁左下欄第7行~第4頁左上欄第18行)。
 さらに、引用例3,5~8には、出発粉体を炭化後、不活性雰囲気下、本願所定の「再結晶焼成」温度で焼成する炭化ケイ素製多孔質透過成形体の製造方法が記載されている一方(引用例3:特許請求の範囲、【0026】【0034】【0035】/引用例5:特許請求の範囲、第3頁右上欄第10行~右下欄第9行、第4頁右下欄第1行~第7頁左下欄第4行/引用例6:特許請求の範囲、第2頁左上欄第19行~左下欄第18行/引用例7:特許請求の範囲、第4頁右上欄第17行~第5頁左上欄第4行/引用例8:特許請求の範囲、第3頁右上欄第18行~右下欄第9行、第4頁左上欄第1行第9行、第5頁左上欄第9行~右上欄第14行)、引用例2,4等に記載されるように、比抵抗の調節のため焼成に用いる不活性ガスを窒素とすることは、当業者が容易になし得ることである。
 加えて、炭化ケイ素製多孔質透過成形体の原料としてシリカ及び炭素前駆体材料のみを用いることも一般的な技術でしかなく(引用例9等)、所望の物性や作業性を得るために、原料の組成比、粒径等を好適に定めることも、必要に応じて当業者が適宜なし得る事項でしかない。
 そして、本願明細書の記載からは、本願発明が所定の構成をとることで顕著に有利な効果を示すとまでは認められない。

意見書
 最初に、本発明の特徴である「反応焼成」と「再結晶焼成」の二段階の工程について詳細に説明する。
 本願の出願当初の明細書の段落[0003]に記載されているように、ケイ素と炭素の混合物に対して反応焼成(1400~1900℃)を行うことにより、炭化ケイ素が形成されるが、この場合に形成されるのは、β-炭化ケイ素である。本願明細書および平成18年12月25日に提出された意見書において説明されるように、β-炭化ケイ素は非常に緻密であり、フィルタの壁厚を非常に薄くした場合であってもディーゼルエンジンの排ガスをろ過するのに適していない。壁厚を薄くすると、ろ過体が不安定になる。その結果、1400~1900℃の温度に未焼成体をコーキングすることのみによって製造された排ガスフィルタは、不安定なフィルタをもたらす。
 本発明の特徴は、反応焼成後に、第二の工程として、少なくとも2100℃に昇温させられる「再結晶焼成」工程を行うことである。「再結晶焼成」の温度領域では、「反応焼成」工程により形成されたβ-炭化ケイ素をα-炭化ケイ素に転換する再結晶が起こる。α-炭化ケイ素に転換することによって、多孔度が大幅に向上し、その結果、焼成体が、大幅に薄い壁を有し、その結果として、より良好な機械的安定性を有し得るという利点を有する。したがって、ろ過体は、良好なろ過効果、低い流れ抵抗およびそれにもかかわらず良好な機械的安定性を有する。上述の方法によって得られたろ過体は、本出願の前に知られたSiCからの全てのろ過体と比較して大きな利点を有する。
 (a)引用文献2について
 引用文献2には、出発粉体を炭化後、窒素雰囲気下1400~2000℃で焼成する炭化ケイ素多孔質透過成形体の製造方法が記載されている。
 しかしながら、新請求項1における「反応焼成」は1400~1900℃で行われ、「再結晶焼成」は少なくとも2100℃で行われているので、引用文献2では、本願の「再結晶焼成」に該当する工程はなされていない。さらに、引用文献2の第2頁右下欄27行に「材料のβ炭化珪素成分が本体の電気抵抗に好ましい影響を与える」と記載されているように、引用文献2では、β-炭化珪素を形成することが目的となっているため、引用文献2には、本願の「再結晶焼成」を行ってβ-炭化珪素をα-炭化ケイ素に転換することの動機付けになるような記載はない。
 (b)引用文献4について
 引用文献4には、出発粉体を炭化後、窒素雰囲気下所定の温度範囲で2段階焼成する炭化ケイ素製多孔質透過成形体の製造方法が記載されている。
 しかしながら、引用文献4と本願発明では、その出発物質と実施される焼成の工程の内容が全く異なっている。すなわち、引用文献4では、その第2頁左上欄8~9行に「フィルタ材料としては炭化珪素の多孔質焼結体が選択される」と記載されているように、出発物質が炭化ケイ素であり、ケイ素および炭素の混合物を出発粉体とする本願発明とは全く異なっている。また、引用文献4では、第1の焼成工程が1900~2300℃の温度範囲でなされており、これでは、用いられる温度に応じて、2100℃未満ではβ-炭化ケイ素が形成され2100℃以上ではα-炭化ケイ素が形成され、しかも、第2の焼成工程が1600~2100℃のβ-炭化ケイ素が形成される温度範囲で行われており、本願のように「反応焼成」と「再結晶焼成」の二段階で焼成を行っていない。したがって、引用文献4の方法によってα-炭化ケイ素を一部に含むものが得られるとしても、本願発明のように二段階で焼成することにより透過特性に優れたものが得られることに想到することはできない。
(c)引用文献3について
 引用文献3には、内燃機関の排気ガスを精製するためのフィルタを製造する方法が記載されている。
 しかしながら、引用文献3では、フィルタは、α-炭化ケイ素およびβ-炭化ケイ素粉体および添加物(炭化ケイ素を除く炭化物)の開始混合物から製造されているのに対し、本願発明では、ケイ素と炭素の混合物を反応焼成(1400~1900℃)することによってβ-炭化ケイ素を形成し、次いで、再結晶焼成(少なくとも2100℃)することによって、α-炭化珪素を生じさせている。
 また、引用文献3では、1800~2200℃の焼成温度で焼成工程を行っており、本願発明で規定する「再結晶焼成」の温度範囲を含んでいる。しかしながら、引用文献3では、一段階の焼成工程である。本願発明では、β-炭化ケイ素を形成するための「反応焼成」の段階、β-炭化ケイ素をα-炭化ケイ素に転換させる「再結晶焼成」の段階の二段階を順次に行うことによって、明確に孔を成長させ、透過特性が事実上改良された状態の多孔性透過成形体を製造することができる。一段階で焼成する引用文献3の方法により、フィルタ中のα-炭化ケイ素を含むものが得られるとしても、本願発明のように二段階で焼成することにより透過特性に優れたものが得られることに想到することはできない。
(d)引用文献5について
 引用文献5には炭化珪素質ハニカム状フィルタの製造方法が開示されている。
 しかしながら、引用文献5の方法では、炭化ケイ素粉末を主体とする出発原料からフィルタが製造されており、ケイ素と炭素の混合物を反応焼成(1400~1900℃)することによってβ-炭化ケイ素を形成し、次いで、再結晶焼成(少なくとも2100℃)することによって、α-炭化珪素を生じさせている本願発明とは異なっている。
 また、引用文献5では、2000~2500℃の焼成温度で焼成工程を行っており、本願発明で規定する「再結晶焼成」の温度範囲を含んでいる。しかしながら、引用文献5では、一段階の焼成工程である。本願発明では、β-炭化ケイ素を形成するための「反応焼成」の段階、β-炭化ケイ素をα-炭化ケイ素に転換させる「再結晶焼成」の段階の二段階を順次に行うことによって、明確に孔を成長させ、透過特性が事実上改良された状態の多孔性透過成形体を製造することができる。一段階で焼成する引用文献5の方法により、フィルタ中のα-炭化ケイ素を含むものが得られるとしても、本願発明のように二段階で焼成することにより透過特性に優れたものが得られることに想到することはできない。
(e)引用文献6について
 引用文献6には均質で多孔性の再結晶炭化珪素体の製造方法が開示されている。
 しかしながら、引用文献6の方法では、炭化珪素粉と場合による炭素粉と炭素バインダーとからなる混合物からフィルタが製造されており、ケイ素と炭素の混合物を反応焼成(1400~1900℃)することによってβ-炭化ケイ素を形成し、次いで、再結晶焼成(少なくとも2100℃)することによって、α-炭化珪素を生じさせている本願発明とは異なっている。
 また、引用文献6では、1900~2400℃の焼成温度で焼成工程を行っており、本願発明で規定する「再結晶焼成」の温度範囲を含んでいる。しかしながら、引用文献6では、一段階の焼成工程である。本願発明では、β-炭化ケイ素を形成するための「反応焼成」の段階、β-炭化ケイ素をα-炭化ケイ素に転換させる「再結晶焼成」の段階の二段階を順次に行うことによって、明確に孔を成長させ、透過特性が事実上改良された状態の多孔性透過成形体を製造することができる。一段階で焼成する引用文献6の方法により、フィルタ中のα-炭化ケイ素を含むものが得られるとしても、本願発明のように二段階で焼成することにより透過特性に優れたものが得られることに想到することはできない。
(f)引用文献7について
 引用文献7には導電性炭化ケイ素焼結多孔体の製造方法が開示されている。
 しかしながら、引用文献7の方法では、炭化ケイ素粉末を出発原料としており、ケイ素と炭素の混合物を反応焼成(1400~1900℃)することによってβ-炭化ケイ素を形成し、次いで、再結晶焼成(少なくとも2100℃)することによって、α-炭化ケイ素を生じさせている本願発明とは異なっている。
(g)引用文献8について
 引用文献8には炭化珪素質焼結体で構成されたフィルタが開示されている。
 しかしながら、引用文献8に記載された方法では、少なくとも60重量%のβ型炭化珪素よりなる炭化珪素を出発原料としており(第2頁左下欄10行)、ケイ素と炭素の混合物を反応焼成(1400~1900℃)することによってβ-炭化ケイ素を形成し、次いで、再結晶焼成(少なくとも2100℃)することによって、α-炭化珪素を生じさせている本願発明とは異なっている。
 また、引用文献8では、1700~2200℃の焼成温度で焼成工程を行っており(第4頁左上欄2~3行)、本願発明で規定する「再結晶焼成」の温度範囲を含んでいる。しかしながら、引用文献8では、一段階の焼成工程である。本願発明では、β-炭化ケイ素 を形成するための「反応焼成」の段階、β-炭化ケイ素をα-炭化ケイ素に転換させる「再結晶焼成」の段階の二段階を順次に行うことによって、明確に孔を成長させ、透過特性が事実上改良された状態の多孔性透過成形体を製造することができる。一段階で焼成する引用文献8の方法により、フィルタ中のα-炭化ケイ素を含むものが得られるとしても、本願発明のように二段階で焼成することにより透過特性に優れたものが得られることに想到することはできない。
(h)引用文献9について
 引用文献9には、炭化ケイ素製多孔質透過成形体の原料としてシリカ及び炭素前駆体材料のみを用いることが開示されている。
 しかしながら、補正後の本願発明は、ケイ素および炭素の混合物を出発物質としており、引用文献9とは異なっている。

 以上において説明したように、本願発明は、引用文献2~9に記載された発明と同一ではなく、また、引用文献2~9に基づいて容易に想到することができるものでもない。したがって、本願発明は、引用文献2~9に対して、新規性および進歩性を有している。

特許査定

2回の拒絶理由までは、ぼろくそにやられてた。通常は、この段階でギブアップでも仕方ないかな。。最後の意見書で総力を挙げて仕上げたところ権利化に成功した。

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ちまちま中間手続52

2025-04-02 21:55:49 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続52

拒絶理由
 刊行物1には、軽油を水素化脱硫する方法であって、触媒に触媒の2倍量のカーボランダムを組み合わせて接触させることが記載されている(実施例1)。これは実質的に本願発明の固体粒子S1と固体粒子S2に相当し、それぞれの好適な粒径は当業者が適宜規定する事項であるし、同1では向流で軽油と水素を接触させることについて明記されたいないが、水素化反応を向流で行うか並流で行うかは当業者が適宜規定する事項である。
 そして反応系に含有させる触媒等固体粒子の形態は当業者が適宜規定する事項である。
 また軽油の水素化脱硫技術をケロシン留分や減圧軽油やホワイトオイルの脱硫に適用することはよく行われることであるので、同1の方法をこれらの原料油に適用することは当業者が容易になし得る事項である。

意見書
 ここで、出願当初の明細書の記載を参照しながら、上記本願発明の請求項1の構成に至った経緯について概略的に説明する。
1)従来のこの種の炭化水素処理方法においては、仕込原料が水素に富むガスと混合されて水素化処理反応器を通過する並流式が一般的であった(段落[0013])
2)炭化水素の水素化処理方法においては、固定床方法を用いることが一般的であるが、上記1)の並流式で処理を行う場合、ガス相および液相が、反応器の軸方向に沿って同一線速度で流れることに起因して、いくつかの問題が生じていた(段落[0020])。
3)上記2)の問題点を回避するために、並流ではなく向流式で水素化処理を行うことが提案されている(段落[0021]~[0022])。
4)しかしながら、向流式で水素化処理を行う場合にあっては、触媒床を通過し得る相の各々の可能な流量範囲を制限するフラッディング現象が生じるおそれがあるという問題があった(段落[0008])。
5)このフラッディング現象が生じるリスクを制限するために、触媒床の内部での圧力損失を最小にすることが検討され、小サイズの触媒が大きな圧力損失を引き起こすことは公知であったことから、固定床の担持触媒のサイズを増大させることが考えられた(段落[0008])。
 ところが、触媒粒子のサイズが大きくなると、大きなサイズの粒子中の圧力の、制限される粒子内拡散に起因して、反応床の内部で触媒活性の低下が引き起こされるという問題があった(段落[0008])。
 このように、「向流式」での水素化処理方法においては、フラッディング現象を制限するために大サイズの触媒が求められる反面で、触媒活性の低下を回避するために小サイズの触媒が求められるという問題点を有していた。
 本願発明の請求項1は、このような問題点を解消するために、上記B)に示すように、粒径の小さい(平均直径0.5~5mm)固体粒子S1と、これよりも平均直径が大きい固体粒子S2との2種の均質な混合物を固定床に用いることを提案した。本発明では、以上のような構成を有することにより、向流式の水素化処理方法においても、触媒活性を低下させることなくフラッディング現象の問題を解消することができる。

 引用文献1には、触媒とこの触媒の2倍量のカーボンランダムとを組み合わせた床を軽油が通過するようにさせることにより軽油を水素化脱硫する方法が開示されている。
 しかしながら、引用文献1の段落[0015]の「この原料軽油を・・・第1反応器1へ水素ガスと共に・・・供給する」および「第1気液分離器3で・・・留分は第2反応器4へ新たな水素ガスと共に供給される」および図1の記載を参照すれば明らかなように、引用文献1では、並流式により水素化処理を行っている。引用文献1には、向流式で水素化処理を行ってよい旨の記載はなく、それを示唆するような記載もない。
 引用文献2には、担体がフッ素を含有する水素化脱硫方法が開示されている。
 しかしながら、引用文献2の段落[0007]の「・・・ここでは、該軽油留分と水素とをして、・・・・を含む触媒上を通過せしめる」の記載から明らかなように、引用文献2の方法は、並流式による方法である。引用文献2は、向流式で水素化処理を行ってよい旨の記載はなく、それを示唆するような記載もない。
(3)本出願人が以上の本願発明の請求項1と引用文献1および2とを比較検討した結果、以下の3つの主要な理由により、本出願人は拒絶理由1に同意することはできない。
 1)引用文献1および2を組み合わせても本発明に想到することはできない。なぜならば、引用文献1および2には、向流式(これは工業的に通常の様式ではない)を用いることに至るような記載も示唆もないからである。
 2)向流式が周知の様式であったとしても、これを引用文献1の方法に組み合わせることにつながるような何らの理由および何らの教示も引用文献1にはない。引用文献1の方法は、その段落[0015]の該当箇所の記載および図1に記載されるように、工業的に通常の技術である並流式に限られており、向流式との組合せによってもたらされる技術的効果を教示するような記載が何もない。
 3)たとえ、引用文献1と向流式との組合せに想到することができたとしても、本願発明の請求項1のように特定の小さな粒径の固体粒子S1およびこれより大きな粒径の固体粒子S2との混合物を用いることに想到するのは困難である。引用文献1は「並流式」により処理を行うものであり、「向流式」で行うことによって生じる上記(2)の4)および5)の問題点は生じ得ず、異なる粒径の固体粒子を用いることの動機付けが引用文献1の方法では存在しないからである。
 以上のように、本願発明は、従来一般的方法であった「並流式」の処理方法から生じる問題点を考慮して、一般的でなかった「向流式」により処理することを選択し、さらに、「向流式」で処理を行った場合に生じる、フラッディング現象の問題を克服するために、異なる粒径の固体粒子を用いることとして、請求項1の構成を完成するに至ったものである。
 すなわち、本願発明は、「向流式で処理を行うこと」と、「特定の小さな粒径の固体粒子S1およびこれより大きな粒径の固体粒子S2との混合物を用いること」との組合せを特徴とするものであり、これにより向流処理においても圧力損失を最小化し床における触媒活性を保持することができる(段落[0009]~[0011])。
 したがって、本願発明の請求項1の構成は、「並流式」で処理を行っている引用文献1の記載に基づいて適宜規定することができたものではない。
 引用文献1の記載に基づいて本願請求項1を適宜規定し得るという拒絶理由1は、「帰納的」分析もしくは事後的分析によるものであり、引用文献1に基づいて本願請求項1の発明の進歩性を否定することは妥当性に欠けるものである。

拒絶理由
36条6項2号

補正書
上記を解消するための補正

特許査定

比較的まとまったかたちで反論できたと思っている件。
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ちまちま中間手続51

2025-04-01 21:58:07 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続51

拒絶理由
 焼却灰中に含まれる重金属をガス化して除去するにあたり、ガス状の塩化物を添加した後に加熱する技術は引用文献1に記載されているように公知である。
 上記文献には、ヨウ素化合物及び臭素化合物については開示されていない。
 ところで、重金属を揮発して除去するにあたり、臭素ガスと反応させて金属酸化物を臭化物として揮発させる技術は引用文献2に記載されているように公知であり、引用文献3には灰からの重金属の臭化物が蒸発し得ることも開示されている(【図4】「PbBr2」参照。)。
 さらに、引用文献3の【図4】には、鉛の塩化物と臭化物が共に蒸発し得ることが開示されているから、引用文献1記載の発明におけるガス状物質として塩化物に代えて臭素ガスを採用することは当業者が容易に想到し得たことである。

 現時点では、この拒絶理由通知書中で指摘した理由以外の拒絶の理由を発見しない。拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。

意見書
 引用文献1~3のいずれにも、本願請求項1のように、処理対象灰に「アルカリ金属またはアルカリ土類金属のヨウ化物または臭化物」を反応させることは開示されておらず示唆するような記載もない。
 また、引用文献1において採用されているのが塩化物のみであり、これに代えて本願発明の「アルカリ金属またはアルカリ土類金属のヨウ化物または臭化物」を採用することは、このような物質が開示されていない引用文献2および3の記載から容易に想到することができるものではない。 
 したがって、本願請求項1は引用文献1~3に対して進歩性を有している。

特許査定

引用文献にないものに限定して登録へ。年中、戦う中間対応であると、お互い疲弊するので、こうした対応もいいのかな。補正できるポイントを当初明細書に記載しておくことが大事な例ではある。
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ちまちま中間手続50

2025-03-31 21:32:52 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続50

拒絶理由通知
 引用例1には本願発明と類似の吸熱化学反応について記載されている。同1には熱交換器入り口での熱流体TFと熱交換器出口での流れSTの温度差が250℃未満であることについて記載されていないが、そのような事項は当業者が適宜規定する事項であるし、同1には熱交換器出口でのSTの温度が600~680℃であることからすると、熱交換器入り口でのTFが930℃未満あるいは800℃未満となっている蓋然性が高いし、そのようにTFの温度設定をすることは当業者が容易になし得る事項である。

意見書
 引用文献1には、本願発明と類似の吸熱化学反応について記載されているが、(a)「熱流体TFが圧力0.7絶対圧力以上の蒸気流である」点、(b)「熱交換器からの出口で熱流体TFの少なくとも一部が、動力、特に電力を発生するためにタービン内で減圧される」点、および、(c)「このタービンが水素に富むガスの再循環用の圧縮器を駆動させ、このガスが、水素圧力下に化学反応を行うために炭化水素に添加される」点が開示されていない。
 したがって、本願請求項1と引用文献1に記載された発明は異なるものであるので、本願請求項1は新規性を有している。
 また、本願請求項1は、(1)無駄のない段間加熱、(2)機械的な動力発生および(3)水素に富むガスの再循環という3つの機能的な技術的効果を組み合わせて含み、上記の(b)および(c)の特徴を有することによりエネルギーレベルで非常に性能が良いものになっている。すなわち、本願請求項1では、熱交換器における熱交換の役割が終了した熱流体TFの圧力を利用してタービンを駆動させ、さらに、このタービンの駆動により生じた機械的エネルギーが、水素圧力下の化学反応を行うための水素に富むガスの圧縮に利用されており、このように、使用済みの熱流体の有するエネルギーを、反応に供される前の水素に富むガスの圧縮に利用することによりエネルギーの利用が効率的でありコンビナートにおいて統合的に使用され得る。本願明細書に添付した図4に示されるように、本願の実際の適用は、非常に多くの構成を含み、エネルギー利用の効率化は非常に望ましくその効果は非常に大きいものであるので、本願請求項1のように、タービンを介して、エネルギーの伝達的利用を図ることは決して当業者が適宜設定し得るようなものではない。
 したがって、本願請求項1は進歩性も有する。

拒絶査定
 確かに、引用例1にはエチルベンゼンの熱源であるスチームに関して、(a)~(c)の点は記載されていないが、各種反応装置において排出されるガス流からタービンによりエネルギーを回収し、回収したエネルギーを再利用することは周知(必要ならば、特開平4-334703号公報と特開昭62-95385号公報の特許請求の範囲、特開2000-104078号公報の【0048】を参照されたい)であるから、引用例1記載の発明において、供給されるエチルベンゼンの流れに供給されるスチームの供給管にタービンを設けることは当業者が容易に想到できることに過ぎない。また、該スチームの圧力を0.7MPa以上とすることは当業者が必要に応じて適宜なし得ることに過ぎない。
 よって、上記(a)~(c)の相違点に関しては当業者が容易に発明できる事項に過ぎず、本願発明は依然として引用例1に記載された発明に基づいて当業者 が容易に発明できるものと認められる。

新たな相違点を持ち出したが、登録を引き出せなかった件。相違点に至るきっかけになるような記載もない、ことを根拠とともに意見書にて強く主張する必要がある。主文献の読み込み不足を反省する。
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ちまちま中間手続49

2025-03-30 21:38:41 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続49

拒絶理由
 引用文献1にはゼオライト結晶体の合成膜およびその製造方法において、90重量%以上のアルミナからなり、細孔径が0.1~3.0μmの細孔を有する基板を、シリカ源としてケイ酸ナトリウム粉末もしくは水ガラスを用いたゼオライト結晶前駆体を含むスラリー内に浸漬し、水熱合成しまたはそれを数回繰り返すことが記載されている。A型ゼオライト膜を形成する際には70℃~90℃の温度に15分から12時間保持するか、ZSM-5ゼオライト膜を形成する際は160℃~200℃の温度で約24~72時間保持するのが好ましい旨、該合成膜は空気分離用セルに応用した例が記載されている。また、実施例において、アルミナの平板に対し、ゼオライト結晶前駆体を含むスラリーを常温から200℃の操作を複数回繰り返し水熱合成させたものが記載されていることから、一度200℃まで上昇させた後、常温まで冷却した後、再度温度を上昇させているものと認められる。

意見書
 本願発明は、調節された厚みを有する複合連続ゼオライト/担体層によって構成された担持ゼオライト膜であって、ゼオライト相は、主として細孔内に局在化させられたものの調製に関するものである。
 これに対して、引用文献1の請求項1等には、多孔質のアルミナ基板と、この基板の細孔内および表面に形成されたゼオライト結晶体とからなるゼオライト結晶体の合成方法が記載されてはいるが、実際には、引用文献1には、ゼオライト相が主として細孔中に局在化させられている担持ゼオライト膜は、全く開示されていない。逆に、引用文献1には、細孔中ではなく外表面上に形成されたゼオライト膜の合成膜が教示されている([図面の簡単な説明]等参照)。さらに、引用文献1にはその段落[0018]に、「本発明によれば、所定のアルミナ基板「上」にゼオライト結晶体を水熱合成により形成させた・・・」ことが記載されている。すなわち、引用文献1には、多孔質担体の表面上にゼオライト結晶体を形成させた旨の記載があるが、細孔内にゼオライト結晶体を形成させた旨の記載はない。また、引用文献1には、細孔内にゼオライト結晶体が局在化させられた担持ゼオライト膜を調製し得るような何らの教示も見出されない。したがって、引用文献1を参照しても、当業者は、ゼオライト相が主として細孔中に局在化させられた担持ゼオライト膜を調製することができない。
 したがって、引用文献1には、ゼオライト結晶体が担体の細孔中に形成されるゼオライト結晶の合成膜を調製することを十分に開示したものではないので、引用文献1は、本願請求項1とは異なっており、本願請求項1は新規性を有する。
 一方、引用文献1の記載に基づいても、当業者は、本願請求項1のような担持ゼオライト膜を調製することは容易に想到することができない。したがって、本願請求項1は進歩性も有する。また、請求項1が進歩性を有するので、請求項1を引用する請求項2~12も当然に進歩性を有する。
 補正により、請求項13~19が削除されたので、引用文献2および3は、本願発明とは全く関連性を持たなくなった。引用文献2および3には、本願請求項1において規定されたようなゼオライトの結晶化のための非等温性昇温プログラムが開示されていないからである。
 また、引用文献2および3には、本願請求項1において規定されたゼオライトの結晶化のための非等温性昇温プログラムが開示されていないので、引用文献1~3を組み合わせても、本願請求項1に想到することは容易ではない。
 以上のように、本願請求項1は、引用文献1の発明と異なるので、新規性を有する。また、請求項1が新規性を有するので、請求項1を引用する請求項2~12も当然に新規性を有する。
 また、本願請求項1は、引用文献1~3に基づいて容易に想到することができないものであるので、請求項1は進歩性を有する。また、請求項1が進歩性を有するので、請求項1を引用する請求項2~12も当然に進歩性を有する。

拒絶査定
 引用文献1には「本発明のゼオライト結晶体の合成膜は、ゼオライト結晶体の合成膜は、90重量%有情のアルミナからなり、細孔径が0.1~3.0μmの細孔を有する基板と、この基板の細孔内及び表面に緻密に形成されたゼオライト結晶体とからなることを特徴とするものである。」(【0006】参照)、「図より緻密なゼオライト膜がアルミナ基板の細孔内と表面に形成されているのがわかる。」(【0011】参照)、「アルミナ基板の細孔径を望ましくは0.1~0.3umとしたのは、・・・0.1μm未満であるとゼオライト結晶がアルミナ基板の細孔内にほとんどはいらずアルミナ基板にゼオライト結晶体の担持能力が少なくなるとともに」(【0009】参照)と記載されていることから、基板の表面のみならず、細孔中にゼオライト相は局在しているものと認められ、どの程度のゼオライト相を局在させるかは当業者が適宜決定することである。

失敗例
内と表面に形成されたことが、引用文献1に記載されている、との指摘ではあるが、明細書中の前半部分にあるだけで、実証例はないのではないか?「内および表面」であるので、「内」にのみ形成される場合は、引例1にはないのではないか?等。今なら、逆に、拒絶査定で指摘された部分を利用して進歩性の主張もできると思われる。
コメント
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