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ちまちま中間手続27

2024-10-29 21:44:41 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続27

【請求項1】砒素で汚染された土壌を、酸化剤を含む洗浄液およびアルカリを含む洗浄液で順次もしくは同時に洗浄することを特徴とする砒素汚染土壌の浄化方法。

拒絶理由通知
新規性・進歩性
 引用文献1には、砒素汚染土壌を浄化するに際し、酸化剤とアルカリを併用することが記載(特に段落【0019】参照)されている。そして、酸化剤とアルカリを同時に作用させること、洗浄後に中和処理をすること、洗浄温度を限定することは、当業者であれば必要に応じて適宜なし得る事項に過ぎない。

手続補正書
  【請求項1】 3価及び5価の砒素で汚染された土壌を、酸化剤を含む洗浄液で洗浄し、3価の砒素を5価の砒素に変化させ、次に、アルカリを含む洗浄液で洗浄し、5価の砒素のアルカリ金属塩とすることを特徴とする砒素汚染土壌の浄化方法。

意見書
 引用文献1には、酸、アルカリ、酸化剤、キレート剤の少なくとも1種を用いる砒素汚染土壌の浄化方法が記載されている。 
 しかしながら、引用文献1では、実施例1においてアルカリ処理を行ったもののみが記載されている。 
 したがって、引用文献1には、「3価及び5価の砒素で汚染された土壌を、酸化剤を含む洗浄液で洗浄し、3価の砒素を5価の砒素に変化させ、次に、アルカリを含む洗浄液で洗浄し、5価の砒素のアルカリ金属塩とする」ことは開示されていないので、本願発明は新規性を有する。
 また、引用文献1に基づいて、本願発明の上記構成に想到することは容易ではない。よって、本願発明は進歩性も有する。

拒絶査定
 引用文献1には、該通知書でも指摘した段落【0019】に、ヒ素が汚染物質の場合にはアルカリ剤で処理を行うが、ヒ素が3価の形態の場合には酸化剤で予め処理を行うことでヒ素を5価の形態と変化させてアルカリ剤による除去率が向上する旨記載されている。

本件については、有効な対応策がなかったため、非常に難しいものとなった。「引用文献1では、引用文献1では、実施例1においてアルカリ処理を行ったもののみが記載されている」点をもった追究すればよかったかな、とも思うが。。引用文献1の検討が十分でないので、もっと深く読み込めば、なんらかの他の方法はあったかもしれない。
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ちまちま中間手続26

2024-10-26 21:11:43 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続26

拒絶理由通知
新規性・進歩性・29条の2
 引用文献1には、還元剤添加と加熱処理の併用が記載されている。 
 また、引用文献2には、還元剤を含むヒ素化合物の除去薬剤が開示されている 。

意見書
 引用文献1の還元剤としては、炭素、硫安が例示されているが、水素化物、ヒドラジン、ジイミド、アルデヒドおよび糖類は、開示されていない。 
 引用文献2には、クロム等の有害金属を封入するための組成物が開示されており、その組成物中には、砂糖、セルロース、炭水化物等の還元剤が含まれることが記載されている。 
 しかしながら、引用文献2は、還元剤による有害金属の還元作用を一部に含んでいるが、最終的には、有害金属を封入するためのものであり、ヒ素を揮散させる本願発明とは全く異なっている。 
 したがって、引用文献1および2と本願発明とは全く異なっているので、本願発明は新規性を有し、特許法第29条第1項第3号の要件を満たしている。

 進歩性
 引用文献1で用いている還元剤としては、炭素、硫安が例示されているのみであり、この記載に基づいて、本願発明の「水素化物、ヒドラジン、ジイミド、アルデヒドおよび糖類」から選択される還元剤に想到することは容易ではない。 
 引用文献2の組成物は、還元剤を含んでいるが、最終的には有害金属を封入するための組成物ものであるので、本願発明のように、ヒ素化合物を揮散させることは引用文献2に基づいて容易に想到することはできない。 
 引用文献3には、アルミニウム精錬灰を還元剤として添加するとともに、このアルミニウム精錬灰の他に、木炭、石炭、コークス等の還元剤を用いる固形廃棄物の無害化処理方法が開示されている。 
 しかし、引用文献3の方法では、固形廃棄物中に含有される有害な6価クロムを還元剤の作用により還元して低原子価クロムにすることが記載されているだけであり、引用文献3の記載に基づいて、本願発明のように「ヒ素を揮散させる」ことは容易に想到できることではない。 
 引用文献4には、水素ガスの存在下、200~400℃で触媒と接触させることにより 芳香族ハロゲン化合物を処理する方法が開示されており、水素ガスの供給源として土壌中に添加されて用いられるでんぷんまたはショ糖が例示されている。 
 しかしながら、引用文献4の方法では、土壌から揮発してくる芳香族ハロゲン化合物と、同じく加熱による分解により土壌中から発生してくる水素とを気相にて反応させるものである。これに対して、本願発明では、土壌中に存在するヒ素を土壌中にて還元剤の作用により還元させ、その後に、還元されたヒ素を揮散させるものであり、還元剤を用いる点で共通していても作用機構は全く異なっている。すなわち、でんぷん等に水素を発生させる能力が知られていたとしても、「土壌中のヒ素を還元することができる」ということは引用文献4の記載から想到することは不可能である。 
 したがって、本願発明は、引用文献1~4の記載に基づいて容易に想到することができるものではなく、進歩性を有し、特許法第29条第2項の要件を満たしている。

 本願発明では、水素化物、ヒドラジン、ジイミドおよび糖類からなる群より選ばれる還元剤を用いており、固形体であるので、引用文献5の水素等の還元性ガスとは異なっている。 
 したがって、本願発明と引用文献5に記載された発明とは同一ではないので、本願発明は特許法第29条の2の要件を満たしている。

拒絶査定
 出願人は平成18年2月1日付け補正書により還元剤を特定しているが、先の拒絶理由で示した引用文献1に記載の発明では特に還元剤を限定しているわけではなく、さらに糖類が還元剤となることは引用文献2及び4により公知であるから、引用文献1に記載の発明において、当業者が還元剤という観点から公知の糖類を採用することに特段の困難性があるとは認められない。 
 また、本願明細書の記載を検討しても、出願人が特定する還元剤を採用したことにより格別予期し難い顕著な効果が奏されているとも認められない。 
 したがって、先の拒絶理由は撤回しない。

まだまだ力不足だった時代の失敗例

発明者視点からの相違点を発明者から示してもらいながら、実務専門家視点からの攻略ポイントを示せなかった。

本件の進歩性のポイントは、文献の組み合わせによる進歩性否定

このような場合は、主文献との相違点を徹底して検討することが大事

本件の場合、主文献と本件の選択すべき還元剤に相違点があった。主文献の立場から本件の還元剤を選ばないだろう、という観点から追及すべきであった。

具体的には、本件の特徴は、還元処理後の「ヒ素」を飛散させる点にある。

本件により選択した澱粉等ならば、還元処理後に残ったもの未反応のものも加熱処理によって分解して気化するので、ヒ素の飛散の邪魔にならない。

主文献にはそういった観点はないのではないか。それならば、副文献を組み合わせる動機付けはないだろう、と結論づけることもできたのではないか。


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ちまちま中間手続25

2024-10-22 21:43:21 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続25

拒絶理由
新規性・進歩性

意見書
 本日同時提出の手続補正書にて、拒絶理由が通知された旧請求項1を削除した。新請求項1~6は旧請求項2~7に対応しており、旧請求項1を削除したことに伴い、請求項番号に関する補正のみを行った。 
 新請求項1および2は拒絶理由1および2に該当しない。新請求項3は拒絶理由を有しない新請求項2を引用しているので当然これも拒絶理由を有していない。さらに、新請求項4~6についても同様に、拒絶理由を有しない請求項をそれぞれ引用しているので、これらも拒絶理由を有していない。 
 よって、本願は拒絶理由1および2を解消している。

特許査定

請求項1が適度に広く構成されていたため、適切な引例がひかれた。

請求項2も適度に下位概念化されいたので、拒絶理由はないものとされた。

ある程度想定通りのうまいクレームの立て方だったため、請求項1を補正して、拒絶理由の対応を・・・としていたら、かえって、ややこしい方向に行っていたかもしれない。

ということで、なるべく無風のうちに登録されるべきものとして、こちらは、ほぼなにもしなかった。
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ちまちま中間手続24

2024-10-18 21:26:39 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続24


【請求項10】請求項1~9のいずれかに記載の方法によって得られた・・・触媒。


拒絶理由通知
 新規性・進歩性 対象は請求項10のみ  上位クレームの方法により製造される物

意見書
 引用文献1には、活性炭担体にルテニウムとアルカリ金属等とを担持してなるアンモニア合成触媒であって、活性炭にルテニウムを担持後、水素還元処理を行って得られた触媒が記載されている。 
 これに対して、本願の請求項10は、本願請求項1~9のいずれかの・・・触媒の製造方法において、不活性ガス雰囲気での熱処理を300℃で行うことによって得られたものである。 
 引用文献1の触媒と本願請求項10の触媒との・・・合成の反応速度を単純に比較することはできないが、本願明細書の段落[0023]を参照して明らかなように、引用文献1の触媒に相当する本願比較例1と本願請求項1~9の方法を行うことによる実施例1とを比較すると、互いに遜色のない・・合成活性を有している。 
 さらに、本願明細書の段落[0024]~[0025]および図1には、本願請求項1~9による処理を行った場合においても、さらに不活性ガス雰囲気での熱処理を300℃で行ったものが、格段に優れたアンモニア合成活性を有することが示されている。 
 本願実施例1では、本願明細書の・・・に示されるように、110℃で不活性ガス雰囲気下の加熱処理を行っており、図1を参照すると、2mmol/g/g(触媒)程度の活性を有している。実施例1と比較例1との比較から両者が同等の活性を有していることを・・・で示したので、引用文献1の触媒も2mmol/g/g(触媒)程度の活性を有するとみなすことができる。これに対して、300℃の不活性ガス雰囲気下で処理を行った場合には、図1に示されるように、8mmol/g/g(触媒)以上の活性を有しており、これは、実施例1の場合の4倍以上に相当する。 
 引用文献1には、ルテニウムを担持した活性炭に対して水素還元処理を行った触媒が記載されているが、その製造方法は本願発明の製造方法とは全く異なっており、まして、300℃の不活性ガスで加熱処理を行うことによって、格段に・・・合成活性が向上した触媒が得られることは記載されておらず、そのような触媒が得られることを予想することもできない。 
 したがって、本願請求項10の発明は、新規性および進歩性を有する。

 本願の請求項10は、本願請求項1~9のいずれかのアンモニア合成触媒の製造方法において、不活性ガス雰囲気での熱処理を300℃で行うことによって得られたものである。

 その製造方法は本願発明の製造方法とは全く異なっており、まして、300℃の不活性ガスで加熱処理を行うことによって、格段にアンモニア合成活性が向上した触媒が得られることは記載されておらず、そのような触媒が得られることを予想することもできない。

拒絶理由
 特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない

 補正後の請求項10についても、平成17年10月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2は維持されることに留意されたい

意見書
本日同時提出の手続補正書により、請求項10を削除した。

特許査定

プロダクトバイプロセスクレームに対する新規性・進歩性の拒絶理由

今なら、36条6項2号の拒絶理由が来るところ。

製造方法の相違を主点として対応しているが、方針自体が間違っている。

「格段に・・・合成活性が向上した」触媒は、引用文献から得られないことをきっちり説明したうえで、優れた効果は、構造・特性の面から説明できない・・・からの方法により特定するほかなし・・・の流れにもっていくべきだったかな。
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ちまちま中間手続23

2024-10-13 21:54:35 | 仕事日記
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続23


拒絶理由
進歩性 36条

意見書
 本願発明の触媒は、・・・族の少なくとも一つの金属と、・・・族からなる群より選ばれる少なくとも一つの追加金属とを含有する担体を含んでおり、かつ、この担体は、リチウムおよびカリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの金属を、少なくとも一部アルミン酸リチウム(LiAl5O8および/またはLiAlO2)またはアルミン酸カリウムの形態で含有するものである。本願発明の触媒は、担体がリチウムおよび/またはカリウムの金属を、アルミン酸リチウム(LiAl5O8および/またはLiAlO2)またはアルミン酸カリウムの形態で少なくとも一部含有するので、酸素を含んだガス下に触媒を加熱する工程を含む燃焼により、金属性粒子の塊を形成するという問題を生じることなく、カーボンをほとんど全て除去することができ、これにより、炭化水素の転換操作等に使用された後の触媒を簡単に再生することができる。このような効果は、担体が含有するアルミン酸塩が他の形態であった場合には得られるものではない。また、このようなアルミン酸塩は、リチウムおよびカリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの金属を担体に担持させた後、・・・族金属および前記追加金属を導入する前に600℃超の温度でカ焼することが必須であり、この操作を行うことによってのみ得られるものであり、600℃に満たない温度でカ焼しても上記のアルミン酸塩の形態を得ることができない。

 引用文献1には、・・リチウムをアルミナ担体に担持させた後にこれを600℃超のカ焼工程に付すことについては全く触れていない。むしろ、引用文献1によると、第3頁右欄第34行には、約1000°F、すなわち538℃で加熱することが記載されており、これは、本願発明に規定する600℃超のカ焼温度よりも低い。さらに、引用文献1には、リチウムを担持させたアルミナ担体をカ焼工程に付してもよいとは教示されていない。このことは、引用文献1によると、第4頁左欄第2行~4行において「カ焼は、貴金属と錫化合物との両方が担体に適用された後に実施されるべきである」との記載から明らかである。この一文を読むと、当業者は、カ焼は、リチウム化されたアルミナを調製するために必ずしも必須ではないと理解し、リチウムが担持されたアルミナ担体を600℃超のカ焼工程に付せば非常に良好な触媒性能を得ることができることに想到することもない。本願においては、その比較例に示すように、600℃に満たないカ焼工程では、本願請求項1で示すようなアルミン酸リチウムが形成され得ず、このために、同じ元素が同じ量で存在した場合であっても、脱水素化において得られる触媒性能が600℃超でカ焼した(アルカリ金属を担持させた後のカ焼)場合に得られたものほどには良好ではないことを確かめている(本願明細書の実施例1および2を参照のこと)。これらの結果は、当業者にとって自明のことではない。

 引用文献2には、アルミナにアルカリ溶液を含浸させた後に空気カ焼することは開示されているが、本願発明の特徴である「600℃超の温度のカ焼工程に付す」ことについては記載されていない。本願発明においては、その比較例に示すように、600℃に満たないカ焼工程では、本願発明で示すようなアルミン酸リチウムが形成され得ず、このために、同じ元素が同じ量で存在した場合であっても、脱水素化において得られる触媒性能が600℃超でカ焼した(アルカリ金属を担持させた後のカ焼)場合に得られたものほどには良好ではないことを確かめている(本願明細書の実施例1および2を参照のこと)。これらの結果は、当業者にとって自明のことではない。

 引用文献3は、「アルミン酸塩」である点を教示しておらず、引用文献3のスピネルは、アルミン酸リチウムには相当しないので、引用文献3には本願請求項1と同一の組成物は存在しない。また、引用文献3は、当業者の立場からは、本願請求項1の触媒を示唆しているともいえない。

 引用文献4には、化学式LiAl5O8および/またはLiAlO2で表されるアルミン酸リチウムまたはアルミン酸カリウムを使用することが開示されていない。引用文献4で記載されている第II族金属はアルカリ土類金属に属する。したがって、引用文献4は、本願の触媒組成物を開示も示唆もしていない。

 引用文献1および引用文献2のいずれにも、アルミナにリチウムおよび/またはカリウムを担持させた後、VIII族金属および追加金属を導入する前に600℃超のカ焼工程に付すことは記載されておらず、したがって、引用文献1または2に記載された担体は、リチウムおよび/またはカリウムの金属を、アルミン酸リチウム(LiAl5O8および/またはLiAlO2)またはアルミン酸カリウムの形態で少なくとも一部含有するものではない。本願発明の触媒は、アルミナにリチウムおよび/またはカリウムを担持させた後、VIII族金属および追加金属を導入する前に600℃超のカ焼工程に付すことにより非常に良好な触媒性能を有することを得ることができる。このことは、本願明細書の実施例2において明らかである。また、併せて、本願明細書には実施例1において、上記のようなVIII族金属および追加金属導入前の600℃カ焼工程を経ない場合には、同じ元素が同じ量で存在した場合であっても、本願の触媒ほどには良好な性能が得られないことも明らかにしている。よって、VIII族金属および追加金属導入前の600℃カ焼工程を経ない引用文献1および2では、本願発明に記載するような、リチウムおよび/またはカリウムの金属を、少なくとも一部アルミン酸リチウム(LiAl5O8および/またはLiAlO2)またはアルミン酸カリウムの形態で含有する担体を有する触媒を得ることはできないので、引用文献1と引用文献2を組み合わせても本願発明に想到することは容易ではない。

36条について、省略

特許査定

「600℃超」の規定で押し切って登録を得た。数値限定は、登録可能性を下げるものであって、あまりお勧めはできないが、今回は、やむを得ない事情もあった。

本件は、物の構造的には、「少なくとも一部アルミン酸リチウム(LiAl5O8および/またはLiAlO2)またはアルミン酸カリウムの形態で含有するもの」により効果が得られるものであるが、「少なくとも一部」が明確でない、との指摘がされるおそれがあったため、温度600℃のほうが明確に限定できるだろう、との意図。プロダクトバイプロセスの考え方の適用でよいのかな、と思っている。

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