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母の伝言

2009-11-25 | 私と家族
さっき、母から電話が掛かってきた。


「さっき」というのは、午後8時半過ぎまで仕事をして、そのあとチャリンコ飛ば

して「鳥のカラアゲ」とコールスローサラダを買って、家に帰ってすぐにお湯を沸

かして、トリカラを電子レンジで温めてからのことだ。

つまり、午後9時20分頃。



私が出ると、母はいつものモッタリした口調で近況を話してから、言った。

「ブンちゃんよ。頼みがあるんだけどナ」

ブンちゃんとは、家族内における私の呼称である。

「あんちゃんが、とても苦しんでるんだ。電話を架けて励ましてやってくれないか

い?」

あんちゃんとは、私の兄である。大学を出て三十余年、ずっと同じ会社に勤めてい

る。根っからの理系人間で、キャリアのほとんどはシステムエンジニアだ。

でも、苦しんでいるって、何で?

「お客から仕事にクレームが入ってナ。この二、三日帰ってこれないんだ」

一瞬、ゾッとした。


私もクレーム処理の多い仕事についているが、「夜を徹して対応する」ということ

はほとんどない。たいがいは情緒的なクレームなので、相手が寝てしまえばこっち

も眠ることができるからだ。

しかし、兄の仕事はそうはいかない。クレームが入れば、一日24時間不眠不休で

対応しないわけにはいかないだろう。


母は兄の携帯番号を私に教えて、切った。

私は、二、三分息を整えてから、兄の番号を押した。



「…はい、モトイですが?」

兄の声は弱く、くぐもっていた。それは兄の体調もあるだろうが、恐らく携帯の電

波の通りにくいところで仕事をしているのだろう。

背景からは「ホタルの光」的な旋律と、帰りを促す録音放送が聞こえてくる。午後

十時になると社員に帰宅を強く奨励する職場なのだろうか。

私は、母からの伝言を聞いたことを伝えた。…大変なのか?


「まあ、ちょっとな」

兄は、ひどく無口で愚直なタイプだ。近代日本を作ってきた無名で優秀なエンジニ

アの、正当な直系だ。

その兄が「ちょっと大変」というのは、決して「ちょっと」ではないだろう。

「寝てるのか?」と私が問うと、「んー、あんまり寝てないナ」と、答えた。

「あんまり」どころか、ほとんど寝てないに違いない。

私は、それ以上何も言うことがなかった。仕事の大変さの質がまるで分からない

し、口先で励ましても、仕様がない。

「お前のブログ、たまに読んでるよ。電話くれて、ありがとな。じゃ」

そうだ。兄の仕事を邪魔してはいけない…。私たちは、そこで電話を切った。


兄は、四年前に倒れて、大きな手術をした。

持ち前の粘り強さで仕事に復帰したが、あれから四つ年を重ねている。

無理をしないで欲しいが、やらなければ、居場所を奪い取られてしまうのだろう。

強欲な鬼どもめ!!

私は歯噛みをしたが、むろん、兄には兄の矜持があるだろう。

何とか、乗り切って欲しい。



主よ!



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2 コメント

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なるほど… (松本浜子)
2009-11-29 19:53:40
ども!こんばんは!松本浜子です♪

お兄さんの事、こういうことだったんですね?

お兄さんの事を心配されて、弟さんの文七さんに電話をして励ましてやってほしいと言われたお母さんも素敵なお母さんですね。

同性のご兄弟には異性の兄弟にはない絆があるんだろうなぁ~って羨ましく思うことがあります。
私は弟と二人兄弟なので…

親御さんからの励ましも嬉しいと思いますが、兄弟の言葉はそれとは違った嬉しさがあったと思いますよ 

いいご家族ですね

お邪魔しました~

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ありがとう (元井文七)
2009-11-29 22:18:07
浜ちゃん、今晩は!

思わぬところで出会いましたね。

本当に、ありがとう。

また、寄ってみて下さい。

そして、ひと言書いていって下さい。

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