金沢ミステリ倶楽部の例会を振り返ります。
第34回例会は2011年5月21日、参加者は12名で「とむらい機関車」(大阪圭吉)の合評でした。 作品は戦前本格作品ですが、現在の新本格物とは違い、話し言葉主体の作品ではなく、いわゆる説明文が多いのが特徴の作品です。
「初めて読む作家の作品。何故、機関車に轢かせて豚を殺すのかという謎から始まって、最後の落ちに意外性があり、探偵役の戸山助役の謎ときの過程も面白かった」
「読みやすかった。キャラクターも無理が無くわかりやすいので、話の展開も無理がなかった。作者が鉄道マニアということもあり、リアリテイーがあっていい。70年以上前の作品という古さは感じなかった」
「しっかりした話の構成だった。構成としては、江戸川乱歩や、横溝正史の「鬼火」にあるような、実はこんな話があって、不思議な殺人の死体がでて、ある程度条件をふっておいて、(略)」
「作品は古いが、現代表記でるびもふってあり読みやすい。謎の提示も、死体の描写(機関車に轢かれた豚や、人間の死体の描写など)もしっかりかかれていた。奥の障子から覗く犯人役の女性が、エロチックだと表現しておきながら、陰気な親子だとも書いてあり矛盾した表現になっていたのが気になった」
「読んでいて、懐かしさを感じた。これがCSIだったら、死体の破片ひとつひとつを拾いあげて、死体現場に番号札をおいて調べるだろうが、そんな時代と違う古きよき時代のミステリーというものを感じた」
「漢字が難しかった(みもちおんな=妊婦)。作者が電車好きなのがよくわかった作品。金田一耕助の作品のような情景が浮かぶ作品(実際もほぼ近い年代の作品です)。読みやすかった」
「70年以上前の作品というが、そんな古いものとは思わなかった。残酷なバラバラ死体や肉片のシーンは怖かった。親子の関係や描写もよく書かれていた。また、他の作品も読んでみたい」
「この作品については、久しぶりに読ませてもらった。本格ものとして、犯罪の証拠となる花屋のことや、豚を殺した動機など伏線も張られていていい作品。ただ、葬儀の習慣など、昭和初期の風俗や、風習を知らないとできない作品。
「作者は列車が好きで、列車の描写が好きという印象を受けた作品。豚の死体描写は難しく、起承転結がむずかしかった」
「江戸川乱歩以前の作家ということで、名前だけは知っていて、作品ははじめて読んだ。豚をどうやったらつないでおけるのかとか、何故、豚を殺さないといけないのか、何故豚でないといけないのか、ホワイダニットのミステリだが、今の新本格の作家なら登場人物の間でディスカッションが行われそう。最初黒豚で次白豚というのに何か意味があるのかと思ってしまった。動機が都市伝説となっている」
「動機が悲しさをそそる作品。都筑道夫さんによればホワイダニットがモダンミステリだが、「とむらい機関車」にはそれがある。ディスカッションこそはしていないが、「なぜか」をメインにしているのが良い。同じ動機の某ミステリを昔読んで感動したが、それと同じだと思った」
「何故殺したのが豚でなければならなかったか、豚を殺さないといけなかったのか。人を殺したのでは、足がつきやすいですし、警察の取り調べもあり、あとがやっかいです。動物の故殺なら昔も今も法律上は器物損壊罪程度ですみます。それと、何故先に豚を殺して線路に放置しておかなかったか、それでは、事故死というより、最初から作為的に轢かせたとわかり、足がつきやすいとも考えたからではないかと思います。では、何故、犬や猫ではなく豚でないといけなかったのか、これはひとつには、犬や猫では、体が小さく、よく見かける通常道路で轢かれて死んで転がっているのとは違い、列車でバラバラにさてもよくわからないこと。豚は、ある程度体も大きく、組織や肉は人間によく似ているとされ(CSIシリーズでも検視で、死体に傷をつける実験などで、吊るした豚の死体にナイフを指して傷口のできかたを見るシーンがでてきます。)実験に使われています。
◆近況報告
読んだ本 『絹靴下殺人事件』「偶然の審判」(バークリー)『七つの海を照らす星』『アルバトロスははばたかない』(七河迦南)『少女たちの羅針盤』(水生大海)『日本の書評』(豊崎由美)『名探偵に薔薇を』(城平京)『ドグラマグラ』(夢野久作)『隠蔽捜査2』『震度0』(横山秀夫)『シナン』(夢枕獏)『ダイスをころがせ』(真保裕一)『夜明けの街で』(東野圭吾)『悪人』(吉田修一)『クジラの彼』(有川浩)『八日目の蝉』(角田光代)『ルパンの消息』(横山秀夫)『沈むさかな』(式田ティエン)『少女たちの羅針盤』(水生大海)『阪急電車』(有川浩)『新日本の七不思議』(鯨統一郎)『白骨の語り部』(鯨統一郎)『プライド』(石田衣良)『ゴーストハント4巻』(小野不由美)『謎解きはディナーのあとで』(東川篤哉)『プリーストリーの問題』(A・B・コックス)
ドラマ「探偵Xの挑戦状」「CSI第10シーズン」
映画は「ボーン・シリーズ」「デイオブザデッド」「ソウザファイナル」「アリスインワンダーランド」「八日目の蝉」「パイレーツオブザカリビアン」「ブラックスワン」「遺留捜査」「英国王のスピーチ」
ドラマ「デスパレートの妻たち第5シーズン」「LOST」「CSI」「マルモのおきて」
ゲーム「ボンバーマン」「ぷよぷよ」