高齢者の栄養問題
講演する柴田 博さん=撮影・高梨義之
きょうのテーマは「日本人の低栄養を改善するにはどうすればいいか」ですが、私の専門分野は高齢者の栄養問題で、40年間ほど研究しております。
高齢者の栄養に関しては、日本は世界で最も優れた水準にあり、従って平均寿命も世界のトップレベルにあるということは周知の事実です。
ところが、この四半世紀を見ますと、日本人全体の栄養状態はどんどん悪くなっています。特に、若い年代に関しては、栄養状態が非常に悪くなっており、これを何とかしなければならないのです。
最近ではグルメ番組も多くて、「美味(おい)しいものを食べることがいいことだ」と言う風潮もあるのですが、つい四半世紀前までは、「薬食同源」「良薬は口に苦し」という考え方があったため、一般的に「薬はまずいから、食べ物も多分、まずい方が体にいいのだろう」という思い込みがありました。
つまり、「まずいものでも食べよう」という考え方があったわけですが、実はそうではないということがわかってきました。
百寿者の食事に「目からウロコ」
私が高齢者の栄養問題を本格的に研究し始めたのは、1970年代に東京大学から東京都の機関に移ってからです。
「取りあえず、長生きしている人を片っ端から調べよう」ということで、百歳を超えた「百寿者(センチナリアン)」と呼ばれる人たち(写真)を調べることにしました。百寿者は最近の40年間で100倍以上に増えて、現在では5万8000人になりましたが、1972年当時には本土復帰した沖縄県の方々を含めてわずか405人しかいませんでした。
私たちは、百寿者の方々を約100人選び、家庭訪問して食生活などを調べたのですが、そこでわかったことを流行(はや)りの言葉で表現すると、まさに「目からウロコ」でした。
当時の私は、長生きする人は、玄米や菜っ葉、豆腐を食べるような生活をしているのではないかという漠然とした予感を持っていました。
ところが、百歳を超えた方々を調べた結果、1日の摂取カロリーのうちで、たんぱく質の摂取カロリーが占める割合が一般の日本人の平均と比べるとかなり高いことがわかりました
。
加齢によって体が小さくなっているのでカロリー摂取量は少なく、1日に1000キロカロリー程度しかとらないのですが、低カロリー、高たんぱく質の食事だということがわかったのです。
さらに驚いたことが、総たんぱく質に占める動物性たんぱく質の割合です. この割合は、当時の日本人の平均が48.7%で、現在の日本人でも52.5%です。ところが、当時の百寿者の割合は、男性が59.6%、女性は57.6%と、非常に高いということがわかりました。
当時は世界的に百寿者のデータがほとんどなかったので、ベジタリアンのような食生活をしている人がかなりいるのではないかという説があったのですが、そういう人は1人もいなかったのです。
私たちの研究から少し経って、今度は国の研究所が意識調査「長寿者の食事内容」を行いました。これは、たんぱく質だとか脂肪だとか、栄養素に絞った調査ではなく、食事の内容について調べたものですが、魚介類、肉、大豆製品、卵などの、質のいいたんぱく質を含む食品を1日に2回以上とる割合が、長寿者の場合は54.4%でした。
私たちと同じような対象の人を調べた結果、同じようなデータが出たということです。これで、私たちの調査が偏っていないことがわかっていただけたと思います。
それで、栄養問題に関する私の結論ですが、1日にとる食事のカロリー
の中のたんぱく質の割合を、年を取るに従って上げていただきたいということ。さらに、たんぱく質に占める動物性たんぱく質の割合も、年を取るに従って上げていただきたいということです。
この方の講演も統計学的でしかもプラス栄養学で、他の生き物が作った栄養という中古品を摂ればそのまま貼り付けたように自分の栄養になる、という単純な考え方であり人間という精密な生き物であることを無視したものです。
己に必要なものを他から摂るなんて考え違いもひどいものです。自分の力で摂取した食べ物を咀嚼分解し消化酵素によって作り出すとは思っていないようです。これがプラス栄養学なんです。
それでもあなたは現代栄養学を信じますか?
講演する柴田 博さん=撮影・高梨義之
きょうのテーマは「日本人の低栄養を改善するにはどうすればいいか」ですが、私の専門分野は高齢者の栄養問題で、40年間ほど研究しております。
高齢者の栄養に関しては、日本は世界で最も優れた水準にあり、従って平均寿命も世界のトップレベルにあるということは周知の事実です。
ところが、この四半世紀を見ますと、日本人全体の栄養状態はどんどん悪くなっています。特に、若い年代に関しては、栄養状態が非常に悪くなっており、これを何とかしなければならないのです。
最近ではグルメ番組も多くて、「美味(おい)しいものを食べることがいいことだ」と言う風潮もあるのですが、つい四半世紀前までは、「薬食同源」「良薬は口に苦し」という考え方があったため、一般的に「薬はまずいから、食べ物も多分、まずい方が体にいいのだろう」という思い込みがありました。
つまり、「まずいものでも食べよう」という考え方があったわけですが、実はそうではないということがわかってきました。
百寿者の食事に「目からウロコ」
私が高齢者の栄養問題を本格的に研究し始めたのは、1970年代に東京大学から東京都の機関に移ってからです。
「取りあえず、長生きしている人を片っ端から調べよう」ということで、百歳を超えた「百寿者(センチナリアン)」と呼ばれる人たち(写真)を調べることにしました。百寿者は最近の40年間で100倍以上に増えて、現在では5万8000人になりましたが、1972年当時には本土復帰した沖縄県の方々を含めてわずか405人しかいませんでした。
私たちは、百寿者の方々を約100人選び、家庭訪問して食生活などを調べたのですが、そこでわかったことを流行(はや)りの言葉で表現すると、まさに「目からウロコ」でした。
当時の私は、長生きする人は、玄米や菜っ葉、豆腐を食べるような生活をしているのではないかという漠然とした予感を持っていました。
ところが、百歳を超えた方々を調べた結果、1日の摂取カロリーのうちで、たんぱく質の摂取カロリーが占める割合が一般の日本人の平均と比べるとかなり高いことがわかりました
。
加齢によって体が小さくなっているのでカロリー摂取量は少なく、1日に1000キロカロリー程度しかとらないのですが、低カロリー、高たんぱく質の食事だということがわかったのです。
さらに驚いたことが、総たんぱく質に占める動物性たんぱく質の割合です. この割合は、当時の日本人の平均が48.7%で、現在の日本人でも52.5%です。ところが、当時の百寿者の割合は、男性が59.6%、女性は57.6%と、非常に高いということがわかりました。
当時は世界的に百寿者のデータがほとんどなかったので、ベジタリアンのような食生活をしている人がかなりいるのではないかという説があったのですが、そういう人は1人もいなかったのです。
私たちの研究から少し経って、今度は国の研究所が意識調査「長寿者の食事内容」を行いました。これは、たんぱく質だとか脂肪だとか、栄養素に絞った調査ではなく、食事の内容について調べたものですが、魚介類、肉、大豆製品、卵などの、質のいいたんぱく質を含む食品を1日に2回以上とる割合が、長寿者の場合は54.4%でした。
私たちと同じような対象の人を調べた結果、同じようなデータが出たということです。これで、私たちの調査が偏っていないことがわかっていただけたと思います。
それで、栄養問題に関する私の結論ですが、1日にとる食事のカロリー
の中のたんぱく質の割合を、年を取るに従って上げていただきたいということ。さらに、たんぱく質に占める動物性たんぱく質の割合も、年を取るに従って上げていただきたいということです。
この方の講演も統計学的でしかもプラス栄養学で、他の生き物が作った栄養という中古品を摂ればそのまま貼り付けたように自分の栄養になる、という単純な考え方であり人間という精密な生き物であることを無視したものです。
己に必要なものを他から摂るなんて考え違いもひどいものです。自分の力で摂取した食べ物を咀嚼分解し消化酵素によって作り出すとは思っていないようです。これがプラス栄養学なんです。
それでもあなたは現代栄養学を信じますか?