恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

12.雪

2005年12月02日 | ベストストーリー
 寒さもピークに達していた。道路で警備員の仕事をして今年で五年になる。印刷業を定年して、孫の小遣い程度を稼げればいいかなと思い、警備会社にバイトとして入社した。
 家で盆栽でもいじりながら、老いていくのも悪くはないと思うが、私は働くのが好きで、ボケにくいという理由もあって入社してもう随分と時間が過ぎた。
 今日は、近くの大学で音楽祭があっているので、交通の便が多い。
 ただ誘導棒を振るだけだが、65歳という歳とこの寒さじゃ手もろくに上がらなかった。
 しわれた手が棒を振るたびに手袋の下で真っ赤になっていくのが分かる。
 そんな中、孫の顔が目に浮かぶ。来年中学校に入る男の子でヤンチャ坊主だが、私に欲しいものをねだる時だけ、優しい口調になった。
 「じぃちゃん。ゲーム買って。」私は孫の顔を見ると、何でも許してしまう事が出来るのだ。ゲームといったら最近はテレビゲームだ。私達が子供の頃は貧乏で、頭で考えるゲームしかなかった。
 竹馬やかくれんぼをして遊んでいた。今は、物が溢れていて、お金さえあれば何でもできる時代だ。だから、最近の子は、犯罪に手を染めるのかもしれない。自分の孫だけは、人の気持ちが分かる様な大人になってほしいと心から願っている。
 私が何歳まで生きるかは分からない。元気に生きてさえすれば、きっと幸せになれるとおもった。
 そんな事を考えていたら、空から真っ白い雪がふわりふわりと落ちてきた。
 「どうりで寒いと思った。」こういう神秘的な物も幸せの中のひとつかもしれない。クリスマスも近いという事を肌で感じながら、絶え間なく流れてくる青や赤の車を誘導させていた。
 
 

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2 コメント

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相変わらず・・・沁みます・・・・・! (ぱぷ子)
2005-12-03 16:07:40
見事です、そうとしか言いようがありません。



若いあなたに、なぜこのようなお話が書けるのか

いつも不思議に思うほど・・・



今日も心に染み入りました・・・・・。



「生きる」・・・・・

その原点に、立ち返らせてくれるストーリーが



クリスマス近い、寒さを本格化した今日の冬景色に



彩りを添えてくれます・・・・・。



華やかなクリスマスもいい。



でも、そればかりではなく、



もっと本来の、「聖なる」意味が、あったはず。



・・・・・クリスマスを前に、



はっとさっせられた、ひとときに、感謝です。



背景も、本当に、素敵になって



これから、「華やか」でもなく

「甘く」もない

クリスマスを迎える予定のわたしにも



ハッピーな気分をもたらせてくれました。



誰よりも、そんなあなたに、



「メリー★クリスマス!!」って、

まだ早かったかな?(笑!!)
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いつもコメントありがとう。 (キーボーです。)
2005-12-04 01:39:15
 華やかなクリスマスとは別に、道路工事のおじさんやこの物語の警備員の人など、寒さをこらえて仕事をしている人たちがいる。

 寒い中、そんな人達にも何かしらハッピーになれる瞬間があるはずだと思い、雪という神秘的な美しいもので表しました。

 雪が降ると老いた人、若い人、男女関係なく人は立ち止まり、見入ってしまいます。

 クリスマスに雪が降ることを願いつつ、彼女が出来る事も少し願いつつ過ごすのも悪くないかなと思います。
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