今日もお気に入りのサブちゃんの歌に合わせてトラックで道路を走っている。昔から演歌が好きだった。特にサブちゃんは大ファンだ。
バックミラーにはサブちゃんのストラップもついている。今年十二歳になる娘洋子からもらったものだ。俺がサブちゃんのファンと知っていてプレゼントしてくれた。携帯につける物だと言ったが携帯なんて持ってないから、バックミラーにひとまずつけていた。
ハンドルの所には愛しの家族の写真が貼ってある。毎日眺める事が出来るからだ。俺と幸子が肩を組んで真ん中には洋子がいる。みんな仲良く笑っている写真だ。
この頃が一番幸せだった。
幸子は病気で死んだ。今の科学では直らない病気で入退院の繰り返しで、とうとう最後は死んでしまった。
残された俺と洋子はどうすればいいのか。悔しくてまた涙が出てきた。トラック一筋の俺にはかまってあげられる時間がなかった。
幸子が危篤の時、丁度荷物が運び終わって一息ついた所で連絡が来た。
急いで高速道路を飛ばして帰ったが幸子の最後には間に合わなかった。
息をしてなくて、寝ているような感じだった。
俺が起きろと何度叫んでも起きなかった。心のそこから死ぬほど泣いた。洋子もポッカリと宙に浮かんでいるみたいな状態だった。洋子と抱き合ってずっと泣いていた。
それからというもの気もまぎれるからと仕事にずっと打ち込んでいた。俺がいない時、洋子はばぁちゃんの家にいる。
サブちゃんの演歌に乗せて、鹿児島まで走っていると、道路に二十歳くらいの女の姿があった。ミニスカートのデニムを履いて、タンクトップを二枚重ねて着ていた。下着のような格好をしていた。今流行りのファッションのようだ。
ヒッチハイクで、手を上げて止まれと叫んでいた。
俺は、急いでいたが彼女の笑顔を見たい為に止まった。
「ふぅーやっと止まってくれた。おじさん鹿児島まで乗せてってよ」目が大きな彼女は明るい笑顔を浮かべて目をパチパチさせた。
「別にええよ。今から丁度鹿児島まで行く所だから。乗りなよ。」
「やったー。ラッキー」彼女が助手席のドアを開けて乗り込んだ。俺は目のやり場に困った。トラックに乗るときスカートがめくれたからだ。
「よいしょ」彼女は何事もなくスカートを戻した。
「出発進行」大声で楽しそうに彼女が叫んでいた。俺は思わず笑ってしまって車を出発させた。
サブちゃんをずっと流していると、彼女が違うカセットがいいと言って、ゴソゴソと助手席のボックスをあさっていた。
「演歌しかねぇから、ラジオでも聞くか」と言ってカセットを取り出した。今流行っているポップスが流れてきた。
「この歌いいね」彼女はラジオから流れてくる歌を一緒に口ずさんでいた。綺麗な歌声をしていた。
「俺にはわかんねぇや」演歌しか聞いた事のない俺には今の歌なんてさっぱり分からなかった。
「ねぇちゃんは、どうして一人旅してる?」
「今、大学の夏休みだから、ヒッチハイクでどこまでいけるかなとおもって旅をしてるんだ。思い出旅行かな。」彼女は、ピンクのゴムで髪を一つに結んでいた。
「いいな。若い子は威勢がよくてぇ」ふと洋子が二十歳くらいになった時の事を考えた。隣の娘みたいに思い出旅行と言って、ヒッチハイクで行くと言いいだしたらどうしたものか。
薄汚いトラック運転手と一緒に走っているかと思うと虫唾が走る。洋子が心配だ。今頃、晩御飯でも食べているのだろうか。
洋子の事を一生懸命考えていたら、隣の彼女は、スヤスヤと寝ていた。ウサギみたいに可愛い寝顔をしていた。なれない旅に疲れたのだろう。後ろから毛布を取り出し彼女にかけた。
俺はひたすら夜の道を走った。真っ直ぐな道をずっと走っていると眠くなるが、歌を歌って眠くなるのを誤魔化している。それでも駄目なら、熱いコーヒーを飲むのが一番だ。
眠さと格闘をしながら、一時走っているとやがて朝になった。
彼女が小さな欠伸をしながらどの辺か聞いた。もうすぐ鹿児島に入ると言った。桜島が目の前に見えていた。
彼女は桜島の大きさに驚いていた。
「ヤッホー」彼女は叫んだ。よほど鹿児島に来たかったのだろうか。俺は、荷物を降ろす所まで行き、彼女はここまででいいよっと言ってトラックから降りた。
「おじさんありがとう。いい思い出が出来たよ。」
「いや。こっちこそありがとな。君がいてくれて楽しかった。」
不器用に言うと恥ずかしそうに彼女がホッペにキスをした。
「おじさんはいい人だね。お礼だよ」彼女は、髪を揺らしながら降りて手を振った。俺は恥ずかしくて、彼女を見れなかった。
幸子に焼き餅やかれるなと思いトラックを夢中で走らせた。バックミラーの中の彼女はずっと手を振っていた。彼女の姿がだんだん小さくなってやがて見えなくなっていった。
その姿を見て涙が出てきた。彼女の姿と幸子の姿がダブって見えたからだ。もう二度と会えないような、いつでも会えるような悲しい気持ちがした。
涙を流しながら、ポップスを口ずさんで走らせていた。
バックミラーにはサブちゃんのストラップもついている。今年十二歳になる娘洋子からもらったものだ。俺がサブちゃんのファンと知っていてプレゼントしてくれた。携帯につける物だと言ったが携帯なんて持ってないから、バックミラーにひとまずつけていた。
ハンドルの所には愛しの家族の写真が貼ってある。毎日眺める事が出来るからだ。俺と幸子が肩を組んで真ん中には洋子がいる。みんな仲良く笑っている写真だ。
この頃が一番幸せだった。
幸子は病気で死んだ。今の科学では直らない病気で入退院の繰り返しで、とうとう最後は死んでしまった。
残された俺と洋子はどうすればいいのか。悔しくてまた涙が出てきた。トラック一筋の俺にはかまってあげられる時間がなかった。
幸子が危篤の時、丁度荷物が運び終わって一息ついた所で連絡が来た。
急いで高速道路を飛ばして帰ったが幸子の最後には間に合わなかった。
息をしてなくて、寝ているような感じだった。
俺が起きろと何度叫んでも起きなかった。心のそこから死ぬほど泣いた。洋子もポッカリと宙に浮かんでいるみたいな状態だった。洋子と抱き合ってずっと泣いていた。
それからというもの気もまぎれるからと仕事にずっと打ち込んでいた。俺がいない時、洋子はばぁちゃんの家にいる。
サブちゃんの演歌に乗せて、鹿児島まで走っていると、道路に二十歳くらいの女の姿があった。ミニスカートのデニムを履いて、タンクトップを二枚重ねて着ていた。下着のような格好をしていた。今流行りのファッションのようだ。
ヒッチハイクで、手を上げて止まれと叫んでいた。
俺は、急いでいたが彼女の笑顔を見たい為に止まった。
「ふぅーやっと止まってくれた。おじさん鹿児島まで乗せてってよ」目が大きな彼女は明るい笑顔を浮かべて目をパチパチさせた。
「別にええよ。今から丁度鹿児島まで行く所だから。乗りなよ。」
「やったー。ラッキー」彼女が助手席のドアを開けて乗り込んだ。俺は目のやり場に困った。トラックに乗るときスカートがめくれたからだ。
「よいしょ」彼女は何事もなくスカートを戻した。
「出発進行」大声で楽しそうに彼女が叫んでいた。俺は思わず笑ってしまって車を出発させた。
サブちゃんをずっと流していると、彼女が違うカセットがいいと言って、ゴソゴソと助手席のボックスをあさっていた。
「演歌しかねぇから、ラジオでも聞くか」と言ってカセットを取り出した。今流行っているポップスが流れてきた。
「この歌いいね」彼女はラジオから流れてくる歌を一緒に口ずさんでいた。綺麗な歌声をしていた。
「俺にはわかんねぇや」演歌しか聞いた事のない俺には今の歌なんてさっぱり分からなかった。
「ねぇちゃんは、どうして一人旅してる?」
「今、大学の夏休みだから、ヒッチハイクでどこまでいけるかなとおもって旅をしてるんだ。思い出旅行かな。」彼女は、ピンクのゴムで髪を一つに結んでいた。
「いいな。若い子は威勢がよくてぇ」ふと洋子が二十歳くらいになった時の事を考えた。隣の娘みたいに思い出旅行と言って、ヒッチハイクで行くと言いいだしたらどうしたものか。
薄汚いトラック運転手と一緒に走っているかと思うと虫唾が走る。洋子が心配だ。今頃、晩御飯でも食べているのだろうか。
洋子の事を一生懸命考えていたら、隣の彼女は、スヤスヤと寝ていた。ウサギみたいに可愛い寝顔をしていた。なれない旅に疲れたのだろう。後ろから毛布を取り出し彼女にかけた。
俺はひたすら夜の道を走った。真っ直ぐな道をずっと走っていると眠くなるが、歌を歌って眠くなるのを誤魔化している。それでも駄目なら、熱いコーヒーを飲むのが一番だ。
眠さと格闘をしながら、一時走っているとやがて朝になった。
彼女が小さな欠伸をしながらどの辺か聞いた。もうすぐ鹿児島に入ると言った。桜島が目の前に見えていた。
彼女は桜島の大きさに驚いていた。
「ヤッホー」彼女は叫んだ。よほど鹿児島に来たかったのだろうか。俺は、荷物を降ろす所まで行き、彼女はここまででいいよっと言ってトラックから降りた。
「おじさんありがとう。いい思い出が出来たよ。」
「いや。こっちこそありがとな。君がいてくれて楽しかった。」
不器用に言うと恥ずかしそうに彼女がホッペにキスをした。
「おじさんはいい人だね。お礼だよ」彼女は、髪を揺らしながら降りて手を振った。俺は恥ずかしくて、彼女を見れなかった。
幸子に焼き餅やかれるなと思いトラックを夢中で走らせた。バックミラーの中の彼女はずっと手を振っていた。彼女の姿がだんだん小さくなってやがて見えなくなっていった。
その姿を見て涙が出てきた。彼女の姿と幸子の姿がダブって見えたからだ。もう二度と会えないような、いつでも会えるような悲しい気持ちがした。
涙を流しながら、ポップスを口ずさんで走らせていた。
この前に「せつない・・・」と嘆く青年の囁きを詩的に綴ったかと思うと、今度はあの、「男」を象徴するかのようなお仕事の、トラックの運ちゃんが、演歌を聴きながら登場!
女子大生のヒッチハイカーを乗せての、心の描写が、「そんな危ないことしちゃいけません!」で終わりそうな状況から、美しくファンタジックで感動的な展開へと読者をいざなう・・・。
それはこの男が、旅立った妻と、残された幼い娘への、深い深い愛情を、いつも支えに真面目に真剣に生きているからなんですね・・・・・。
場面、人物設定は違えど、根底に流れる、キーボーさんのあたたかで誠実な人柄は・・・いつどんな時でも、変わりませんね・・・。
★=あなたの幸せも、近いかも!
暖かで誠実はあてはまるかよく分かりませんが、そういう男になりたいという願望はありますよ。
あなたの幸せも近いっていうのがチョットひっかかります。
本当かな。