祖父と二人暮しをしているレントン。彼は、決められた将来や、何も起こる気配のない単調な毎日にうんざりしていた。
そんなある日のこと。レントンに転機が訪れる。彼の家に、幻のLFO、ニルヴァーシュが落ちてきたのだ。
コクピットから現れたのは、エウレカという美少女。メカニック業を営む彼の家に、ニルヴァーシュの整備を頼みに来たというのだ。
ところが、エウレカを追って、塔州連邦空軍のKLF部隊が現れる。
レントンはエウレカを救うため、祖父サーストンから預かったアミタドライヴを手に、外へ飛び出していく。
そこへ、レントン憧れのゲッコーステイトも現れる。【公式あらすじ】
珊瑚の大地が広がるこの星は、穏やかな、浅い眠りについていた。
何百万、何千万という夥しい数の小さな生き物が表面にうごめき、この星のそこかしこで自らの権利を必死に主張していたが、星は意に介さず、ときおり寝返りを打っては、この小さな生き物たちの夢を見続けていた。
一方では常に太陽の暖かな光を浴び、もう一方では常に夜の宇宙のひんやりとした冷気を感じ、この星は依然として夢を見続けていた。
真空の海のただなかで、自分が一人ぼっちなことに気づいた珊瑚礁は、自分の背中にいる生き物たちと友達になれればいいのにと、同じ夢を何千年も、繰り返して見続けていた。
夕焼けに包まれた空。眠る星の息遣いの中に、人間が生み出した電波が紛れ、無数に飛び交っていた。
人々の欲望は、この星にとって何ら関係がなく、人々もまた、この星の気持ちなどは理解していなかった。
「・・・なあ、聞いてるか?」ストナーは、前方の操縦席に座っているマシューに向かって言った。
「何がだよ・・・」効果的なポイントを探して視線をスクリーンのあちこちに移していたマシューは、いい加減うんざりしていた。が、反射的に答えてしまったことにすぐ後悔した。
相変わらず後部座席の男は訳の分からないことを言っては、彼を煙に巻いていた。答えたことで、彼──カメラマンのストナーは、またさらに訳の分からないことを言い出すだろう。
しかし、マシューが無視したところで、ストナーは構わず訳の分からないことを延々としゃべり続けることには違いなかった。マシューは苛立ちを感じた。
操縦桿を引き、自分と相棒のストナーが搭乗する、前後式複座LFO「ターミナスtypeR606」の高度をさらに上げた。惑星の大気に含まれるトラパー粒子が606のボードに干渉・反発して、緑色に輝く光の尾が606の航跡にそってたなびいた。マシューの苛立ちを気にもせず、ストナーは話を続けた。
「──音楽とか映画とかって、『その中身が』っていうよりも、『そのときの記憶』っていうかさ、『そのときの人と人との関係』を思い出すことが多いだろう?」
「あのさ、黙っててくんね? 集中できねえから」マシューはピシャリと言い放ち、ストナーの言葉を遮った。
「何だよ、これからいいこと言おうと思ってたのに・・・」
優秀なLFOライダーにして、DJでもあるマシューにとって、音楽はそのときの身体が求めるものを表現する手段であり、材料だ。膨大な数のバイナルを取り揃え、選曲し、必要に応じてミックスやイコライジングを施し、スムーズにつなげることでテンションを維持する。重要なのはライブ感であり、カメラマンのストナーのように、強制的に固定された一瞬に対する哲学は持ち合わせていなかった。
「お前も仕事に集中しろよ」そう言い捨て、マシューはインパネのソケットに取り付けてあるコンパクドライブに目をやり、異常がないことを確かめた。高度は十分なはずだ。ストナーが効果的な「絵」を撮れるよう、太陽の位置も計算済みだ。コックピットのスクリーンから見える、眼下の景色に向かって叫んだ。「・・・なあ、リーダー! まだ上がれないのかよ?」
「うっせえなあ! もうすぐだ!」すぐさまスピーカーからリーダーの声が返ってきた。マシューに劣らず、リーダーのホランドも苛立っているらしい。「目の前に大きな『波』が来ている。エンゲージまであと25秒!」
「ほぉ・・・やってる、やってる」マシューは眼下の雲の切れ間に爆発の火球が次々と開くのを確認すると、振り返ってストナーに声をかけた。「ストナー、そろそろだぞ」
ストナーは愛用のマニュアルフォーカス一眼レフに、36枚撮りの高感度フィルムがセットされているのを確認するとケースを閉め、巻き上げレバーをリズミカルに操作しながら、先ほどの話を再開した。
「そーう・・・つまり『記憶というものは、決してそれ単体で存在せず、それを取り巻く環境に支配されている』というわけだ・・・誰の言葉か知ってるか? マシュー」シートから身を乗り出して、キャノピー越しにカメラを構えるストナー。レンズの距離リングを調整し、眼下で暴れる光の先端にフォーカスを合わせる。
「知らねえよ」マシューがうんざりして答える。
「まったく、学がねえなあ・・・」
606のカメラセンサーが捉え、解析された光景がキャノピー内側のスクリーンに投影される。それはさらに一眼レフのレンズを通し、リフレックスミラーで反射され、ファインダースクリーンに二次投影される。そしてさらにストナーの眼の水晶体を通して、最終的に彼の網膜に焼きつく一瞬の絵が、彼の哲学そのものとなるのだ。戦場カメラマンであるストナーは、その一瞬を捉えるためならば、命の危険すら顧みない。
「・・・『俺』の言葉だよ」学のないマシューに、ストナーはそう言って聞かせた。
敵小隊と交戦中のホランド機、「ターミナスtypeR909」の機体の紫色が、ファインダーの中で急激にふくらみ、あっという間にフレームの外に抜けた。マシューとストナーの606の脇を通過し、そのままさらに上空へ突き進んでいく。それを追って、青い機体の敵機が3体、間をおかずに突っ切っていった。
すれ違いざまに起こった衝撃波に、606のコックピットが激しく振動する。「んんんっ・・・来たーっ!!」
踏ん張り、マシューは909と敵小隊をスクリーン上に捉え続けるよう、機体を反転させた。
「・・・いいもん拝ませてもらうぜ!」
3機の敵機に後ろを取られている909を前に、マシューの606は加勢をしようとしない。今の彼の役目は、ホランドの909が敵機を撃墜する瞬間をストナーが撮影できるように、効果的なポジションをキープし続けることだ。マシューやストナーはホランドが撃墜されるなどとは微塵も思っていない。
606のスクリーン上に、水色で表示されている「MS-10」の識別コードが3つと、オレンジ色の「909」の表示が狂ったように踊っていた。
3機のMS-10──ホランドが交戦しているKLF、すなわち軍用大型LFO「モンスーノtype10」は、両手に抱えているレーザー銃を乱射しはじめた。
ホランドの909は巧みにターンを重ね、連続してこれらの攻撃を回避した。銃が通用しないと知ると、敵モンスーノ小隊は、909に向け一斉に誘導ミサイルを発射した。
ホランドは909をトラパーの大波に乗せて大きく弧を描いて上昇させると、大胆にも反転してミサイルの群れに向けて909を巧みに操り、ミサイルが接触する寸前に激しくボードを切り返しては誤爆させ、一発も被弾することなく、この攻撃もかわしきった。
「うへえ・・・ノリノリじゃねえの」ホランドのテクニックに、マシューが軽口をたたいた。
「浮かれすぎるとLFOの電池が切れちまうぜ、ホランド」ストナーもそれにあわせた。
「・・・あぁ? うるせぇな、お前ら!」再び909にトラパーの波を駆け上がらせて、3機のモンスーノを引き連れて上昇するホランド。後ろを振り返って、モンスーノが思惑通りに追従してきて、有利な位置を取ろうとして揃って旋回行動に入ったことを確認すると、叫んで909をいきなり宙返りさせた。「それくらい・・・分かってんだよッ!」
ただの宙返りではない。直前に小刻みにジグザグ移動をすることでトラパーの波を力場としてボードにかき集め、それをバネにして爆発したような瞬発速度と、コックピットに襲ってくるGにも構わず、ホランドがかけた鋭いターンの回転半径の小ささも相まって、後ろから追っていたモンスーノのライダーにしてみれば、目の前を逃げていた敵機が一瞬にして自分に向かって反撃してきたという、信じられない悪夢のような光景として映ったことだろう。
すれ違いざまに、ホランドは909の前腕部に仕込まれていた接近兵器であるブーメランナイフで、モンスーノの1機を胴体から切断した。
爆発するモンスーノ。両脇の2機は分かれて回避行動をとり、そのままこの戦闘空域から離脱していった。
「さすがだなぁ・・・」その様子を見つめながら感嘆するマシュー。生身でボードにのるときですら、ホランドの見せたターンは離れ業だ。彼はそれを、人型大型ロボットのLFOでそれを戦闘中にやってのけた。
「『カットバック・ドロップターン』・・・か」最高の成果を収めることができ、ストナーも満足げにつぶやいた。
戦闘が終わり、606と909は、並行飛行に入り、本来の目的地へと向かうことにした。
「こちらマシュー、606。敵機の撤退を確認!」無線に向かって報告するマシュー。
「こちら『月光号』、了解」スピーカーから、女性の声が返ってくる。
「・・・『ニルヴァーシュ』は予定通り、ポイント『イ-62』を通過。作戦続行中!」
「606、了解!」マシューが応答する。909のホランドは応答しない。
「909! ・・・ホランド! 返事は?」無線からは女性の催促する声が流れてきた。
催促とは関係なく、心底嫌そうに、ホランドがつぶやいた。「行きたくねえ」
606と909の母艦である最新鋭飛行戦艦「月光号」の操舵手、タルホ・ユーキは、呆れて物が言えなくなるというよりは、呆れて大声を張り上げる性格の持ち主だった。魅力的な美人で完璧なプロモーションを誇る彼女の、唯一と思える欠点が、その性格だった。
「はぁー!? 何いってんのよ! ・・・アンタが突然、『ベルフォレストに行く』っていうから、みんなついてきてんじゃない!」
909のコンソールディスプレイには、月光号の操舵席に座っているタルホの姿が映っていたが、ホランドは、ポケットから写真を取り出して、それに目を落としていた。老人と、少年と、女性の、3人が映っている写真。左側に立っている女性の顔だけが、マジックで黒く塗りつぶされている。
タルホの声が耐えられないレベルにまで甲高くなってきたので、ホランドは答えた。「へえへえ、行きますよ、行きますともっ! ・・・まったく・・・」
写真からコックピットの前方に広がる景色に視線を移して、ホランドはつぶやいた。
「・・・なんて月曜日だ・・・」
行く手には、沈む夕日に赤々と照らし出される、ベルフォレストの塔がそびえたっていた。
→(2)に続きます
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【第1クール】
第01話「ブルー・マンデー」
第02話「ブルースカイ・フィッシュ」
第03話「モーション・ブルー」
第04話「ウォーター・メロン」
第05話「ビビット・ビット」
第06話「チャイルドフッド」
第07話「アブソリュート・ディフィート」前編/後編
第08話「グロリアス・ブリリアンス」前編/後編
第09話「ペーパームーン・シャイン」前編/後編
第10話「ハイアー・ザン・ザ・サン」
第11話「イントゥー・ザ・ネイチャー」
第12話「アクペリエンス・1」
第13話「ザ・ビギニング」
第14話「メモリー・バンド」
【第2クール】
第15話「ヒューマン・ビヘイヴュア」
第16話「オポジット・ヴュウ」
第17話「スカイ・ロック・ゲート」
第18話「イル・コミュニケーション」
第19話「アクペリエンス・2」
第20話「サブスタンス・アビューズ」
第21話「ランナウェイ」
第22話「クラックポット」
第23話「ディファレンシア」
第24話「パラダイス・ロスト」
第25話「ワールズ・エンド・ガーデン」
第26話「モーニング・グローリー」
【第3クール】
第27話「ヘルター・スケルター」
第28話「メメント・モリ」
第29話「キープ・オン・ムービン」
第30話「チェンジ・オブ・ライフ」
第31話「アニマル・アタック」
第32話「スタート・イット・アップ」
第33話「パシフィック・ステイト」
第34話「インナー・フライト」
第35話「アストラル・アパッチ」
第36話「ファンタジア」
第37話「レイズ・ユア・ハンド」
第38話「デイト・オブ・バース」
第39話「ジョイン・ザ・フューチャー」
【第4クール】
第40話「コズミック・トリガー」
第41話「アクペリエンス・3」
軍との戦闘で、大きな損傷を受けた月光号は、低空飛行を余儀なくされる。
徐々に回復しつつあるエウレカだが、コーラリアンの現出によって、その謎は一層深まりを見せていた。
コーラリアン現象に、自らの解釈を提示するストナー。そして、同じ頃――。
ドミニク少尉もまた、エウレカとニルヴァーシュに関る世界の謎に、思考をめぐらしていた。【公式あらすじ】
私の名前は「観察者」。
現象と心象の中間に位置する存在。あらゆる自然現象は、何者かによって観察されねば、その事象が記録されることはない。
私の名前は「観察者」。
あらゆる現象は、私のような中間に位置する者の目によって、観察されることでのみ、その存在を未来に残すことができる。
君はコーラリアンを知っているか。
「コーラリアン」と呼ばれる存在について、我々が語れる言葉はすくない、誰もがそれをまるで幽霊か化け物のように語る。しかし、実際はいずれにも当てはまらない。コーラリアンを前にして、我々の持つ語彙は、圧倒的に少ない。
君はコーラリアンを知っているか。
もし我々に、今の我々以上の語彙が備わったとして、しかし、きっと我々にはそれを表現できないし、その感じ取ったことを分かち合うことさえできないであろう。
我々はコーラリアンの前では、圧倒的に無力だ。
言ってしまえば、それは砂漠の蟻が大空の先にあるものを語るに等しい。
しかし、伝わらないからといって、表層だけを語り、本質から逃げるという行為に満ち溢れたこの世界で、それにのっとって言葉をつむぐことに、一体どれだけの価値があるのだろうか。
伝わらないのなら、伝わる努力をするべきだ。その努力をしたくないのなら、永遠の沈黙をもってこの場から立ち去るべきだ。それを「彼等」は証明していた。
大波を待つライダーたちにとって、そこに存在していることが全てを言い表していた。
すべては体験を通して語られる。すでに用意された安易な言語でしか表現できない「彼等」は、その安易さのもとに持ち合わせた深い真実によって、それをあえて言葉として表現する。
何を語る? 真実。
・・・しかしそれは、あまりにも浅い言葉でしかない。それを人は陳腐な言葉の羅列と蔑むであろう。しかし、真実など誰がわかる? 目の前で起こった現象に対して高尚な言葉で語ること・・・それこそが現象を矮小化させている。
現象は現象でしかない。現象を語るには、現象になるしかない。しかし我々は、現象そのものになることはできない。現象は我々以外のところにあり、我々以外のところから発生するものだからだ。
・・・そうなのだ。現象は俺達がいなくても起こる。ただ、それを目撃したものたちには何かを残す。
それがその者たちにとって「傷」となるのか、はたまた「糧」となるのか。
・・・それすらも、波には関係ない。
サウスアイレスで私とアネモネが遭遇したこと。
これはもしかすると、この先々に向けてのターニングポイントであったのかもしれない。この二者の邂逅。アネモネとエウレカ。typeTHE-ENDとtypeZERO。そして何よりも、爆心地における、報告書にも記載されていなかった怪現象。
これこそがデューイ中佐・・・いや、大佐が話されていたことの証明でもある。しかし、あの爆心地で彼女たち以外に存在していた・・・確かレントンと呼ばれるあの少年・・・。
4課が入手した情報によると、ベルフォレスト会戦以後に、ゲッコーステイトに加入したとされる。それは「ray=out」18号の表紙からも明らかだ。
ベルフォレスト・・・そう、私がイズモ隊とともにtypeZEROを追い、そしてその発動を目撃したところ。
これら全ては、はたして偶然なのだろうか? それとも・・・。
typeZERO・・・それは、我々が最初に発見したLFOである。報告書によれば、発見したのは三人の科学者。ドクターヤウチ、ドクターダイアモンド、そして・・・後に世界を救ったとして有名になる、かのアドロック・サーストンである。
同行したのは、当時情報部主任であり、数名の部下を連れたデューイ・ノヴァク少尉。ある意味それが、我々人類が「未知なる存在」に接触した、最初の出来事と言われている。
アドロック博士の死後も推進された「アゲハ構想」は、しかし、思わぬことで廃棄されてしまう。
【今週のみどころ、ツっこみどころ】A-part
●OPが今週から変わりました。新キャラや見慣れない機体が登場していますが、こちらについては「OP/ED詳細」で。
●実は総集編だったりする今回。見逃した人は、この回だけで1クールのあらすじが分かるようになっています。
●もちろん、新規シーンも挿入されてるので、最後まで気を抜いてはいけません。しっかりツッコミどころを探すのだ(笑)!
●ホランドが今更17号を見ていること。ヒマつぶし? 間抜けな寝顔も要チェック。
【今週のみどころ、ツっこみどころ】B-part
●この作品で何度も繰り返される対比手法。今回はストナーとドミニクという、異色の組み合わせです。
●ドミニクが見ているニルヴァーシュのPC用壁紙が欲しいと思う今日この頃。公式って、携帯の待受(壁紙)しかないんだよね。
●致命的なミスが。ドミニクがレントン表紙を「18号」って言ってるのに、ストナーが今作ってる最新号のゲラにも「18号」とある。ストナー、疲れてるんだね(笑)。
●前述のゲラに、しっかりクリエの広告枠がレイアウトされている件。しかも「プラスエイト」の予定。
●FAC-51、ハッシェンダだって! いや、いちいち引用にツッコミ入れてたらキリがないな。
●肝心の曲のタイトルは・・・「つづく!」 ・・・ウソです。知りたい人は、そのままEDクレジット見ててください。
【初登場人物】
●アホなDJ二人組(声だけ)。このラジオは今後も出てくるので要チェック!
【伏線とか】
●最古の発掘現場ですって! 何かありそうでワクワクしますね。総集編だったので、ムリヤリテンション上げてみました。
【判明した事柄・世界観】
●コーラリアン雲が消失するときには、周囲のトラパーを全部消滅させてしまうらしい。レントン君に教わりました。
●記事を書くときのストナーはチェーンスモーカー。
●ストナーは写真や記事の執筆だけでなく、ちゃんと紙面構成まで一人で全部こなしている。
コーラリアンのゾーンから帰還したレントンは、少女アネモネと再会する。
しかし、エウレカとアネモネは、共鳴しあうかのように、ひどい頭痛を訴えていた。
アネモネを守るように現れたドミニクとともに、レントンは薬を求めて駆け出していく。
辿り着いた町は、コーラリアンの影響で、混乱状態にあった。未知なるコーラリアン現象と、エウレカ、そしてアネモネの関係。
レントンは、世界の新たな謎を、目の当たりにするのだった。【公式あらすじ】
→近日追加予定です。
【今週のみどころ、ツっこみどころ】A-part
●医療バッグのかわいいシールが誰の趣味なのか。ドミニクの趣味でも全然不自然じゃないところが・・・。
●ヨダレだらだらのアネモネ。これじゃ、ツンダラだな。
●本編中にED曲が流れてきました! ロードムービー風の今回の内容にいやーん、マッチング。
●レントンの手癖がものすごく悪い事実。さすがメカニック、器用ですこと。じっちゃんにはナイショな。
●「んマフラーがぁっ!」と叫ぶドミニクに、貴族の血を感じました(笑)。MSに乗せたら、ステキな断末魔が聞けそう。
●ドミニクがクソ真面目にレントンの相手をしているとこ。ドミニク本を計画している貴女には今回、マスト・エピソードですね!
●ちょっと今回、ドミニクに対するツッコミが多すぎるので、のちほど別枠を設けさせていただきますね(笑)。
●サーストン家伝統のピーキーチューン、今回が初お目見えです。
【今週のみどころ、ツっこみどころ】B-part
●致死量だというのは医師の説明から分かったけど、まさかそんなに使うとは・・・。一人あたり4瓶も!? 一回分じゃないのかも。
●レントンたらクルマ泥棒もしちゃった。非常時だからね、しょうがないよね。んでまたピーキーにしちゃうし。
●typeZEROの無線は昔ながらのマイク式ですが、typeTHE-ENDのは、かわいい生き物が伝言してくれる方式です(笑)。
●前回からウォズが頭にPC-Engineにしか見えないものをかぶっている件。脳波操作かと思えば、ヘッドフォンらしいです、あれ。
【初登場人物】
●あっかんべェ三つ編み幼女
●町人(ヒゲハゲ、声はチョーさんだった)
●町人(ロシア系巨漢)
●町人(ホランド系やさぐれ男)
●医師
●絶望病の少女
●バイク泥棒
【伏線とか】
●アネモネとエウレカに共通する症状。ゾーンでの後遺症なのか?
●再び自律起動したニルヴァーシュ。またもや、レントンがエウレカを想って心から叫んだタイミングで起動。
●ニルヴァーシュの覚醒によって、引いていたトラパーの波がどこからか発生して高まったということ。セブンスウェルとは違ったパワーの開放のように見える。
●帰還したレントンの説明を聞いて、ホランドが満足げに笑みを浮かべたのは、ゾーンの中にダイアンの存在が残っていたからか。
【判明した事柄・世界観】
●ドミニクのものすごい方向音痴。
●地殻変動が最近活発になってきているということ。
●アネモネとエウレカの症状を緩和するには、致死量の薬が必要。やっぱり人間離れしてますね(笑)。
●絶望病という病気の存在。
●前回の冒頭に出てきた少年の名前。
タイプ・ジ・エンドの攻撃を受けたニルヴァーシュ。気を失ったレントンは、夢の中へと落ちていく。
悪夢の中で、エウレカとアネモネに遭遇するレントン。これは、レントンの個人的な夢なのか、それとも…。
その頃、コーラリアンの影響で、ゲッコーステイトはニルヴァーシュの安否を確認できずにいた。
そして、彼らは、イズモ艦との泥沼化した戦闘に、苦心を強いられるのだった。【公式あらすじ】
→近日追加予定です。
【今週のみどころ、ツっこみどころ】A-part
●いちいち「アミタドライブをつけたコンパクドライブ」っていうのも面倒なので、「アミテッド・コンパクドライブ」という名称はいかがでしょうか(笑)。
●精神攻撃を受けたレントンの表情が怖い。本当にあっちの世界に行っちゃってる。
●曲がるビーム。重力じゃなくて、トラパーの流れのせいで曲がるの。ビームとレーザーの違いは、また今度ということで(あ、逃げた)。
●クールな美人副官が再び登場! 興奮するドミニクに、冷静に状況判断を促すステキな役回り。
●レントンが外側から教室を除いてるシーンを見て、「Dr.スランプ」のエピソードを思い出しました。ジオラマに起こったことが、現実世界に反映されてしまう、恐怖のオチの回。
【今週のみどころ、ツっこみどころ】B-part
●タルホの乳揺れにすごいコマ数が割かれていた件。
●DEFCON-1。全門開放の一斉射撃モードらしい。先行障壁は使わなかったけど。
●「入ってます」「入ってんだよ」「入っておりますー」「入ってるにゃん」・・・メール着信音に切り出して使用してはいかが?
●ネタ元の映画で見たような巨大トイレ。心理学を引用すると、みんな同じような描写になるということで納得しましょう。
●生まれたままの姿のアネモネ。しかも冷蔵庫詰め。ああ、PTA(どこの?)から苦情が来そう・・・。
●裸見たさに、2度も冷蔵庫を開けたエロ少年。
●アネモネ魚。アネモネだけは精神世界の中で好き勝手やってるっぽい。
●OPのシーンが来ました! 伏線消化です! うーん、カタルシスうゥ・・・。
【初登場人物】
●今回はなし。
【伏線とか】
●typeTHE-ENDの精神攻撃を受けたレントンが、アミタ・コンパクドライブを取り外そうとしたこと。彼とエウレカ、そしてニルヴァーシュを結ぶコンパクドライブを外すことは、確実に戦闘力に影響を与えるものと思われる。ニルヴァーシュの無力化を精神攻撃で強いられたのか、レントンが悪夢の世界から逃れるために、エウレカ及びニルヴァーシュとの精神リンクを無意識に断ち切ろうとしたのかは不明。
●レントンの精神世界で行われていた授業の内容が、アゲハ蝶の生態的特徴に関するものだったこと。過去に実際にこのような授業が行われて、レントンの記憶が無意識にこのシーンを作り出してしまったのだろうか。では、なぜこのシーンからレントンの精神世界の探究がスタートしたのか。同時にその場にいた、エウレカとアネモネの波動(←メンタル・バイタル両方)を受けて、それに深く関連するこの授業のシーンをレントンが無意識に結びつけて作り出してしまったのだろうか。それとも、ゾーンの中にある存在(コーラリアン?)が、レントンの意識に働きかけてこのようなシーンを作り出したのか。
●アネモネが「バスクード・クライシス」を使っていなければ、ゾーンの中では何が進行するはずだったのか。レントンの精神世界にアネモネが出てこないだけで、結果はほぼ同じだったかもしれない。
● 帰還したレントンの説明を聞いて、ホランドが満足げに笑みを浮かべたのは、ゾーンの中にダイアンの存在が残っていたからか。
【判明した事柄・世界観】
●これまでにも月光号のメンバーはコーラリアン雲のゾーン内部への侵入を試みたようだ。ゾーンへはLFOでしか侵入できないのかは不明だが、過去にゾーンへ達することができたのは、エウレカただ一人らしい。
●typeTHE-ENDは外観だけでなく、蓋然性までtypeZEROと酷似している。アーキタイプこそ単座だが、月光号のレーダー識別ではtypeZEROと区別がつかなかった。タイプが異なるだけで、どちらもニルヴァーシュだから、とも考えられるが・・・。
●ゾーンの中でのできごとは、レントンの精神世界の中で進行しているかのように思われるが、月光号や戦艦イズモの無線で会話の断片を傍受できていることから、パイロットが寝言のように、精神世界内での会話を口走っていることが推測できる。
●コーラリアン雲は出現時に莫大なエネルギーの投射を伴うもよう。ニルヴァーシュのセブンスウェル発動時と同じように、周辺地域に壊滅的な破壊をもたらしている。
頭痛に悩まされているエウレカ。それが影響しているのか、ニルヴァーシュとの関係に変化が起こっていた。そんな中、月光号は未知なる現象である、コーラリアンに遭遇。エウレカは、無理にニルヴァーシュで出動する。ところが、同じく、連邦軍イズモ艦もコーラリアンに向け出動していた。コーラリアンのゾーンの中で、新たな敵、タイプ・ジ・エンドの強襲に遭うニルヴァーシュ。エウレカとレントンは、かつてないほどの危機に陥るのだった。【公式あらすじ】
→近日追加予定です。
【今週のみどころ、ツっこみどころ】A-part
●コーラリアン雲。アドロックの墓のオブジェはこれを模したもののようです。
●出たー、マスコット動物ー!! ペンギンじゃなくて、カモノハシでした。アメデオ+ペンペン÷2=ガリバー。
●アネモネベッドの天蓋は鏡になっている。
●一応、エウレカの血は赤色だった。これは安心していいのでしょうか(笑)。
●ホログラム通信。これは未来世紀のお約束ということで・・・。
●エウレカの自室に、やたらお子様グッズが多い件。子供たちと同室なんだろう。エウレカが少女趣味ならよかったのにぃ。
【今週のみどころ、ツっこみどころ】B-part
●入浴エウレカー!
●着替えエウレカー!!
●アネモネをその気にさせる、ヤバイ薬。ていうか、投与方法からしてヤバイ。気管・食道に貫通してませんこと?
●type THE ENDの異様なコクピット内部。ニルヴァーシュとは似ても似つかない。モンスーノよりも不気味。
●typeTHE ENDの有線ショットクロー。すごい長さのケーブルですね・・・。精神感応系の操縦はガチか。
●コックピットからは幽玄な景色なのに、外から見ると雲の周りを飛行しているだけな件。きっと、LFOのキャノピー裏側のフィルム・ビュワーに異常なトラパーが影響して、異様な光景が映し出されているに違いない。
●小清水嬢による、メルヘン過ぎるセリフの数々。「脳みそ溶けちゃえー」・・・声はナージャで、中身はローズマリーだな。安直な例えでごめんね、小清水嬢は頑張っているのに(笑)。
●次回は、「レントン地獄巡り編」です! 「・・・つづく」のセリフに趣が感じられますなぁ。
【初登場人物】
●ガリバー
●ヨルタ・パウストロ君(12歳)
【伏線とか】
●エウレカを拒絶するニルヴァーシュの意思。
●視聴者を代表するレントンの質問に、誰もまともな答を返してくれない件。コーラリアンって何なんですか(笑)?
●夢をみたことのないというエウレカ。夢はその人の深層意識を映し出すという。ならば、彼女の心はからっぽなのだろうか。
●「コーラリアンなんて、知らない」と答えるときの、あからさまに嘘をついていることが分かるエウレカの表情。
●危険を冒してまでゾーンに突入することの目的。突入した向こうに何があるのか。
●アネモネとエウレカの瞳が同じ色をしているということ。しかし、アネモネの瞳には赤い線が横切っている。これにも意味があるのかもしれない。不完全な紛い物?
●ニルヴァーシュと対にあるかのような、typeTHE ENDの存在。
【判明した事柄・世界観】
●突拍子ないシーンの連続ばかりで、今回は世界観の判明もクソもありますん。
【まとめ・補足など】
地上デジタル放送字幕より:
コーラリアン雲→「クテ級一〇二(ヒトマルフタ)」
月光号→「セの一二〇〇(ヒトフタマルマル)・乙」=SL-1200mk2(月光号の形式ナンバー)
地殻変動に伴って、トラパーの大量噴出が星の裏側で起こるという。
ゲッコーステイトは、リフを楽しもうと、弾道飛行を決行する。ところが、辿り着いたのは、連邦軍のマナアキ基地のあった場所。
そこは、タルホとホランドにとって忘れ得ぬ、宿命の土地だった。自らの過去の残影と、対峙せざるを得なくなるホランド。
一方、連邦軍内部では、デューイ中佐がアネモネという名の少女のもとへと出向く。
ある計画が、動き始めようとしているのだった…。【公式あらすじ】
→近日追加予定です。
【今週のみどころ、ツっこみどころ】A-part
●typeR 505(SOF機)が登場! ゲームしてないんで、「おおっ」という感動はなかったけど。足太いな、しかし。
●事後描写。タルホは全裸のまま寝ている。パンチラはダメで、生尻はいいらしい。
●「凡カレー」。きっと、それはそれは平凡なお味なんでしょうね。
●どっかでみたような戦略室。アルカディア号がモデルって、本当だったんだ。
●弾道飛行に備え、垂直になる月光号。医務室の資料とか、売店の陳列棚については想像しないほうが幸せ。きっと対策済みに違いない。
●弾道飛行中に自室でかけるレコードに悩むマシュー。レコード自体、ターンテーブルから浮きそうなもんだが。
●グレートウォール。あの様子だと、中心部には無尽蔵に物質を吸い込む何かがないとおかしいような。きっと、異界への門かなんかですね。
【今週のみどころ、ツっこみどころ】B-part
●軍上層部おかかえの床屋。それともPXから出張ってきたのか。いや、外部からカリスマ美容師を招いたのかも。
●黒塗り。見たい!見たいよ、ママン! さしずめプレジデントかデボネアか。意表をついて大紅旗だったらスゴいぞ。
●ついに出た! ピザーラ、堂々と番組内に登場です。ムリヤリな選手権開催には苦笑いするしか。四次元転送で配達されたのでなければ、業務用の冷凍製品が月光号に大量に卸されていた、という説明しかつきません(笑)。
●マシューとヒルダのボードがお目見え。なるほど、衣装に合った、そういうイメージカラーなんですね。
●エウレカが開けようとしていたのが、何のフタだったのか謎な件。ニルヴァーシュの冷却水タンクかしらん(燃料はトラパー発電らしいので)。
●軍籍時代のカップル。加古・・・じゃなかった、過去タルホ。しおらしくて良さげ。こんなにもやさぐれちゃうのね。
●メカニックコンビの絶妙なチャチャ。とくにジョブスが残酷。怖いよー。
●ついにアネモネ降臨。んで、いきなりのアネモネパンチ。ドミニクの顔面深くめり込んでます。
【初登場人物】
●理容師
●アネモネ
【伏線とか】
●グレートウォール。巨大な気象現象が常時起こりつづけているようだ。そこにあるのは常世への扉か、星の門か。
●レントンの独白。「あんな結末」とは何を意味するのか。
●首飾り、髪留め、瞳の色・・・エウレカと共通点の多い、アネモネという名の少女。
【判明した事柄・世界観】
●タルホはホランドが軍を離れるのを察して、一緒に連れていってと志願し、ともに脱走した。それまではマナアキ基地に配属されていた。
【まとめ・補足など】
●今回はとくになし。
ティプトリーの頼みで、ヴォダラクの聖地、シウダデス・デル・シエロに降り立った月光号。
その地は、かつて空の都と呼ばれたほど美しい街だったというが、今や廃墟と化している。
停泊中、レントンはリフを楽しむが、突然ホランドに殴りつけられ、泣きながら廃墟へと駆け出していく。
ニルヴァーシュを繰り、レントンを追ってきたエウレカは、そこで自らの過去を打ち明けるのだった
。そこへ、軍の定時爆撃を知らせるサイレンが響き渡る。レントンは、ニルヴァーシュで応戦しようと駆け出していく。【公式あらすじ】
ティプトリーは察していた。シウダデス・デル・シエロにゲッコーステイトを向かわせるということは、彼らにつらい選択を強いるということだと。ノルブという男を探すには、いつかは立ち寄らないわけにはいかない場所でもある。ホランドはたまたま寄るだけだと気遣うが、ティプトリーは激しくそれを拒否した。ヴォダラクにとって、かの地は、グレートウォールに向かうための「清めの地」ではあるが、同時に、訪れた全ての人間にとって「選択の門」であるという。
ゲッコーステイト、とりわけホランドに、それをうやむやにさせないために念を押すのだった。彼女の言葉は、この地に、決して逃がしてはいけない、何か大切なものが待ち受けていることをホランドに自覚させているようにも見てとれた。
荒れ果てたシウダデス・デル・シエロ空港の跡地に残る、滑走路の真ん中に月光号は着陸した。コンパク・インターフェアレンサーを作動させ、駐機中に州軍レーダーに引っかからないようにしてはいたが、周りに機体を隠す山はなく、上空を戦艦や偵察機が通過すれば目視されてしまうことには違いなかった。
機関室のジョブスは念のため、いつでも発進できるように備えていた。ケンゴーも、この地にそう長くは留まらないだろうと、ホランドの考えを予想していた。タルホはそれを認めた。「尻尾を巻いて逃げ出したいのもいるみたいだしね」彼女の言葉から察するに、ホランドには、何かこの地に長居したくない特別な理由があるのかもしれなかった。
ティプトリーが月光号を降りるときがやってきた。ホランドとハップが見送りに出ていた。別れ際にティプトリーは、黄金に輝く不思議な液体の入った、大きなガラス瓶をホランドに差し出した。「いらねぇよ、そんなモン」とホランドは断ったが、「いつか必要になるかもしれない。そのとき、これがないと困るでしょ?」とティプトリーが言葉を重ねたため、結局受け取ることにした。「こんなモンが必要にならないことを祈るよ」・・・ホランドも、この液体が何であるかは分かっているようだった。
空港の生きている設備を利用して、月光号に飲料水の補給をしているムーンドギーのもとに、レントンがうれしそうに駆け寄ってきた。ようやく完成した彼の新しいリフボードを披露しにきたのだ。周りを取り囲む廃墟の形状により、滑走路周辺には、いい波が来ていた。ホランドは、給水が完了次第すぐに出発するとムーンドギーに伝えていた。せっかくいい波がきているのに、と不思議がるレントン。給水に時間がかかりそうなので、二人はその間、リフをすることに決めた。
最高のリフスポットであるにもかかわらず、周りには誰もいない。レントンとムーンドギーは、この穴場でリフを思う存分満喫し、それでもまだ給水が終わっていなかったため、二人並んで寝転んで、心地よかったリフの余韻を味わっていた。
そこに、険しい表情で現れたホランド。「何をやっている・・・何をやっている、って聞いてンだあぁッ!!」
いきなり怒鳴りだしたホランドの剣幕に、おろおろして説明の言葉を重ねるレントン。怖くて、自分でもおかしいと思うほど、しゃべるのが止まらない。愚かしい言葉がつらつらと紡ぎ出されるその様に、ホランドは怒りを爆発させた。
右の拳でレントンは殴り飛ばされた。
おろおろするムーンドギー。いきなり殴られた理由が分からないレントン。
「っ痛ぇ・・・なんなんですか、いきなり」「・・・うっせえ」顔をそむけ、ただ言い捨てるホランド。レントンは噛み付いた。
「いきなり殴ることないじゃないですか! ・・・理由、説明してくださいよ!」ホランドに詰め寄るレントン。
「うっせえんだよォ!」今度は左の拳で殴られた。
「なんだよ! いきなり2度も・・・ なんなんだよ!」理不尽な暴力に、レントンは恨みがましくホランドを見つめたが、彼は背を向けたまま黙っている。「・・・そうかよ、・・・そうかよぉぉ!」何度もそう叫んだ末、レントンは泣きながらボードをつかんで駆け出した。ホランドは自分のことが嫌いなのだ、今のレントンにはそれくらいしか理由が思い付かなかった。気の抜けた表情でレントンの後姿を見送るホランド。視線を地面に落とし、騒動の始末をつけるように「フン」と首を振った。
空港の端に腰をおろし、退屈そうに眼下に広がる廃墟を見ていた、エウレカの3人の子供たち。遠くに、ティプトリーの姿が小さくなっていくのが見えた。子供たちは遠ざかる彼女の姿を見ていたのかもしれない。
離れたところで、エウレカは無残に焼け落ちたデル・シエロの双塔を見上げていた。エウレカは、この地に着いてから様子が少しおかしかった。「ママ、怖い顔をしている」心配そうな表情のモーリス。
塞ぎこんで振り返ったエウレカの前を、ボードに乗ったレントンが横切った。レントンの目に涙が浮かんでいるのを見てとったエウレカは、どうしたのとレントンに声をかけるが、耳に入らないのか、レントンはそのまま行ってしまった。
荒れ果てた無人の街をボードで飛ぶレントン。涙を拭いながら飛行していたため、目の前の標識に気づかず、激突して転倒してしまう。起き上がったレントンの目に入ったのは、道路に転がっていた焼けた木炭だった。不思議に思って周囲を見回したレントンは、建物の廃墟に埋もれた不発弾を見つけた。「単なる廃墟じゃない」「真新しい・・・ってことは、爆撃があったのは最近」
そのとき、レントンは背後で人が動く気配を感じた。レントンが振り返ると、その人影は廃墟の奥へと駆け出した。思わずボードでそれを追いかけるレントンだが、干してあった布に視界を奪われ、廃墟の斜面を転がり落ちてしまう。
谷状の廃墟の最下層で、レントンはトレーラーハウスの集落にたどり着いた。そして住民の人々の中に、ティプトリーの姿を見つけた。
月光号では、レントンが廃墟に向かって飛び出したことを、エウレカがホランドに伝えようとしていた。しかし、ホランドは「悪い」と言ったきりで、動く気配を見せなかった。
ティプトリーのトレーラーハウスに招かれ、再びお茶をごちそうになるレントン。
「それは災難だったねえ」一通りレントンの話を聞いたティプトリーが相槌をうつ。レントンはトレーラーハウスの内部の雰囲気に、違和感を感じていた。祭壇に、高僧の姿を描いた絵画。ここは住居ではないようだった。
「ここは外見はトレーラーハウスだけど、中身は修道場だからねえ」レントンの感じていた疑問にティプトリーが答えた。
レントンは続けて、ヴォダラクが本当に反政府組織なのかと尋ねた。学校で先生やクラスメイトから聞いた話では、何を考えているのか分からない怖い集団という、漠然としたイメージしか浮かばなかったからだ。今まで、ヴォダラクについて何の関心もなかったせいもあるが。
「分からない、知らないものは『怖いもの』・・・それはみんな一緒」ティプトリーは紅茶のカップを置いて言った。
レントンは、ヴォダラクに属する彼女は怖くないと、素直に感想を口に出した。
「人は見た目では分からない、大地は見たまま、何も変わらない」「それをみんなが理解してたら、ここもこんなことにはならなかったでしょうね」
不定期にスカブが隆起する、怒れる大地。ティプトリーは、この大地が人間だけのものではないと言う。しかし、この惑星に移住してきた人々は、揺れる大地にパイルバンカーを打ち込むことで、この大地を制圧したつもりでいる。彼女の口調は、それがどんなに愚かなことであるかと、そうレントンに伝えたいようだった。
「でも、パイルバンカーがないと地殻変動が起こるって、教科書に───」
自分の知っていた世界が、実は別の姿をしていた・・・そんな未知の恐怖を無意識下で感じて、レントンは反射的にそう答えていた。
「それじゃ、なんでパイルバンカーがあると地殻変動がなくなるの?」
彼女の質問に、レントンは答えられなかった。そんなこと、誰も教えてくれなかった。いや、疑問にすら思っていなかった・・・。
「あなたはただ、誰かが記したことを読んだだけ・・・違う?」
エウレカは、ニルヴァーシュに乗って、デル・シエロの廃墟上空を飛行していた。レントンを探していたのだ。
あきらめきれない彼女に、タルホが無線で警告した。「ニルヴァーシュは・・・『危険』だわ。分かっているわよね?」
そのとき眼下に、エウレカはトレーラーハウスの集落を見つけた。
ティプトリーはレントンを連れて外に出ていた。「なんで、こんな何もないところに、わざわざ集まってくるの?」
レントンの問いに、テゥプトリーはため息をついて答えた。「それは『選択の門』だから」
・・・シウダデス・デル・シエロ、空の都。かつてその美しさで知られたヴォダラクの地。グレートウォールへの道を辿るべきか、それともこの大地に留まり続けるべきか。ここに来た全ての者に、何かを選ばせる・・・そんな街。
「なのに、ボロボロだ・・・」
レントンは素直に感想をもらした。塔は破壊されており、とてもじゃないがかつての美しかった光景など、彼には想像できそうになかった。
「そう、数年前のある日、軍がこの街を襲撃したの」「塔ごとこの街を破壊して、ただヴォダラクを信じていた人たちを、軍は虐殺していった・・・」ティプトリーは塔を見上げ、過去のできごとをレントンに語ったのだった。その瞳は強い感情に震えていた。
「ティプトリーさん!」突然、男が慌てて叫んでかけてきた。
「大変だ! ヤツがまた現れた!・・・『白い悪魔』だ!」男はそういって、ティプトリーとレントンを、トレーラーハウスの中へ隠れさせた。
すぐ外で、何か大きなものが着陸する音がして、トレーラーハウスに振動が伝わってきた。続いてキャノピーが開く音が聞こえた。
そして、先ほどのものより小さな物体が地面に降りた気配がした。
「レントン! いるのは分かってるの! ・・・みんな心配してるっていうから、はやく出てきて!」
エウレカの声だった。自分を探しに来てくれたのだと、驚くレントン。その直後・・・。
「きゃぁ」彼女は悲鳴を上げた。
レントンがあわてて外に出ると、エウレカに向かって、石つぶてが容赦なく次々と投げられていた。大勢の住民が、悪鬼を見るかの形相で、憎憎しげに少女へ石をぶつけていた。エウレカは両手で顔をかばっていたが、飛んでくる石の数があまりにも多く、全てを防ぎきれずに、綺麗な額に傷を受けていた。石をぶつけられながらも、エウレカはレントンの姿を見つけると、安堵した表情を見せる。
たまらなくなったレントンは飛び出して彼女を抱きかかえ、「この子が何をしたっていうんだ!?」と群集に向かって叫んだ。
「そいつは人殺しだ!」「私たちが何したっていうの!?」「軍の犬め!!」人々からは罵倒の声が返ってきた。
「何言ってんだ、エウレカは───」ただの女の子じゃないか・・・レントンがそう叫ぼうとしたとき。
「いいの」エウレカ自身がレントンの言葉をさえぎった。
「なんで!?」驚くレントン。彼女は反論しなかった。「私、本当に軍の犬だったから」
突然サイレンが谷間に鳴り渡り、人々は蜘蛛の子を散らすようにこの場から次々と逃げていった。
ティプトリーが二人のもとに駆け寄って、緊張した口調で叫んだ。「あなたたちも早く逃げなさい! 定時爆撃が来るわ!」
レントンとエウレカは空を見上げた。夕日を背に、接近する空中戦艦のシルエットが大きくなっていくのが見えた。
(後編に続きます)
【今週のみどころ、ツっこみどころ】A-part
●ドギー兄さんのリフる姿が、またもやおあずけになってしまった! ファンは第33話までガマンしましょう。
●ホランドの理不尽な暴力。内面的な深い理由があるんだろうけど、描写がキツイので、日曜の朝に子供が見れたもんじゃない。
●メーテルのウサギリュック! 商品化されたらキミは購入するか!? 親戚の幼女に背負わしてみたいか!?
●レントンの壮絶すぎる階段落ち。ビル3つほどの高さから転げ落ちました。蒲田行進曲の銀ちゃんもビックリ!
●ヴォダラク教徒の生活、信仰の内容。また思わせぶりな設定をチラチラ散りばめてからに!
●ティプトリーおばさんが、レントンに対してやたらサバけた態度を取っている件。やっぱりこれが地の性格だったんだ。
●ヴォダラクのトレーラーハウスが集まっている、選択の門の入り口が、「シャドウハーツII」のとあるシーン(ギョレメの谷)に激似してました。
●白い悪魔。「(元・塔州)連邦(軍特殊部隊)の白い悪魔」ですな(笑)。
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レントンは納得できなかった。先ほどつかまえた婦人の家で、ゲッコーステイトのメンバーたちが料理をごちそうになっていたからだ。
平然と料理をふるまう婦人に、レントンは理由を尋ねた。婦人が捕まってしまったことで、この家にはもう戻れず、食材の数々が腐ってムダになってしまうからだという。「そういうことじゃなくて・・・」
「・・・『ヴォダラク』だから」料理の手を止め、婦人は、ただそう答えた。その一言に全ての理由が集約されているようだったが、レントンには分かるすべもない。
「あれは、あなたたちに捕まる『運命』だったのよ」婦人の説明に、レントンは婦人がさっきは逃げ出そうとしたことを指摘した。だがそれは、世の中には抗うための試練と、受け入れるべき運命があるのだという説明で片付けられる。逃げることが試練と感じ、必死に逃げる努力を続けたが、捕まってしまえば、それは抗えない運命だったと理解し、婦人はそれを受け入れているのだった。
「よくわかんないんですけど」実感できないレントンは、質問を止めることができない。「それは、あなたがヴォダラクの光を見る者たちではないから」
「じゃあ、なんで反政府運動なんか」「私たちは政府に逆らっているつもりなんてないのよ。軍がそう決め付けているだけ」
婦人は言った。「鳥がカゴに入れられれば、毎日大空を夢見るものでしょう?」
その言葉には、政府が人々の目から世界の真実を隠し続けていること、ヴォダラクはそれを人々に明らかにしようと活動を続けていること、その2つの大きな意味が込められていたが、今のレントンにはそこまで分かるわけがなかった。最後に婦人はレントンに言った。「あなたも大人になれば、いろいろ分かるようになると思うわ」
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婦人の監視をレントンと交替し、キッチンで婦人と二人きりになるホランド。その口から意外な名前が出る。「ノルブの居場所を教えてくれ」
その名前に、婦人はハッと硬直した。
「最初から手荒なマネはしたくなかったんだが、軍からは、アンタが危険な反政府分子と聞いていたんでな・・・悪かった」と続けるホランド。
ホランドのその言葉で、婦人は全てを理解した。ゲッコーステイトは婦人を捕らえるためにではなく、ヴォダラクの幹部であるノルブ師の居場所を知るために、婦人に接触してきたのだ。そういう形をとれば、接触を軍に邪魔されることはない。
「・・・『たった一つの冴えたやり方』だったわけね」婦人の名は、ティプトリーといった。
予定通り、ティプトリーを連れて引き渡し場所である郊外の廃墟で軍と接触するホランドとマシュー。州軍中佐を筆頭に、大勢の軍人が待ち構えていた。報酬の金塊を確認するが、その量の多さに驚いて、マシューは「アンタ、なにやったんだ?」とティプトリーに尋ねた。「・・・なにも」微笑んで返事するティプトリー。
交換が完了し、金塊の詰まったトランクを手にすると、ホランドは「よーし、取引成立だ!」と背後を振り返って叫んだ。
それを合図に、背後の建物の陰からニルヴァーシュが上昇して現れた。その手にはジャージ姿のレントンが乗っている。
レントンはニルヴァーシュの掌からティプトリーめがけて飛び降り、すばやく彼女の腰にフックをかけ、悪党の手からジェーンを取り返すターザンさながらに、一瞬にしてティプトリーをかっさらった。
「逃がすな!」州軍中佐が叫び、戦闘が始まった。上昇して逃げるニルヴァーシュに、待機していた軍のローランド級空中戦艦と、3機のKLFからなる一個小隊が追撃を開始した。しかし、すばやく発進したホランドの909と、マシューの606により、KLF小隊はあっという間に殲滅させられてしまう。ランデブー・ポイントに現れた月光号の主砲が火を噴き、空中戦艦も反撃することなく撃墜されてしまった。唖然とする州軍の面々を残して、ゲッコーステイトはやすやすとこの地をあとにしたのだった。
月光号に戻ったエウレカを、子供たちが出迎えた。「ママ、最高にかっこよかったよー!」
ブリッジでティプトリーに対し、ゲッコーステイトの台所事情に巻き込んでしまったと謝罪するホランド。罪滅ぼしに、彼女の望むところまで連れて行って降ろしてやる、というホランドの提案に、ティプトリーは「では、我らの巡礼の地、『シウダデス・デル・シエロ』へ」と答えた。
ティプトリーが退出したブリッジでは、主要メンバーが深刻な話し合いを進めていた。ゲッコーステイトよりもヴォダラクを重要視していたことから、軍の末端までゲッコーステイトの真の目的が伝わってないのでは、とハップが意見を述べるが、部隊異動に伴う軍内部の資金移動が活発なこと、コンパクドライブの量産が始まったことで敵新兵器の出現が予想されること、軍の穏健派将軍が不慮の死を遂げトップの首がすげ替わることなど、ゲッコーステイトを取り巻く事情が急速に深刻化していることがメンバーの口から次々と語られた。軍の再編は、本格的にゲッコーステイトへの攻撃が始まる前触れなのだろうか。「それだけならいいんだが」、ホランドはそうつぶやいた。「ネミの森の王だ・・・」
格納庫で、エウレカは子供たちに問題集を配った。「さっきはカッコよかったよ」笑顔でそう言い、レントンにも計算ドリルを手渡した。「レントンが笑うと、ニルヴァーシュも笑うもの」
皆が寝静まった夜。暗いブリッジには、ホランドとタルホの二人。「シウダデス・デル・シエロとはね・・・」タルホはつぶやき、「あれから・・・何年だっけ?」とホランドに問うた。「・・・忘れた」目を閉じて答えるホランド。
「うそつき」タルホも目を閉じた。今自分が思い出していることと同じことを、ホランドも思い出しているのだろう。
台所では、エウレカが一人立っていた。コップの水を飲んで、エウレカはつぶやいた。「なんだろう・・・アタマ・・・痛い」
【今週のみどころ、ツっこみどころ】B-part
●前回に続き、食べ物オンパレードなところ。調理の細かい進行まで描写して、さながらグルメ番組。
●パックンエウレカ。「あむっ」とか、勝手に擬音語つけたくなりますね。
●ごちそうこれ幸いと、ワインの味にうっとりするヒルダ。横目が色っぽい。っていうか、アンタ満喫しすぎ。
●ティプトリーおばさんが「たった一つの冴えたやり方」だと言いました。出た、決めゼリフ! ・・・ジェームズ・ティプトリー・Jrかよ。
●ついに月光号の主砲が火を噴いた! ぐったりするケンゴー(主砲使うと疲れるのか?)に対し、タルホのはしゃぎぶりが異様。今までよっぽど撃ちたかったんだね(笑)。
●とってつけたような、マシューの軍の裏事情説明ゼリフ。アンタがそんなシリアスな長ゼリフ言っても。中の人のご苦労がしのばれます(笑)。
●レントンに差し出される、計算ドリル。小学校5年生向けかよ! ・・・エウレカの眼力もなかなか鋭いな(笑)。
●タルホの「・・・うそつき」。ガセビアのアレを思い出しました。そんだけ。
【初登場人物】
●レントンを奇異の目で見る街の人々
●ティプトリー
●州軍中佐
●州軍地方部隊メンバー
【伏線とか】
●ヴォダラクという組織の存在。現時点では反政府組織であるという説明のみ。今回のエピソードの描写の中から、運命主義、自然との調和がその教義だと伺い知れる。
●ノルブ師という人物。ヴォダラクの幹部で、ゲッコーステイトが探している重要人物らしいが・・・。
●ゲッコーステイトには、反政府組織という漠然としたイメージとは別に、はっきりとした真の活動目的があるようだ。それは、軍の末端にまでは伝わっていないが、軍のトップにとってはただならぬことらしい。
●裏で進行する軍の再編。
●ホランドの「ネミの森の王だ」というセリフ。まんま金枝篇。イタリアのネミの村、アルバ山の麓にある聖なる森にあるヤドリギ(金枝)を守るべく、剣を携えて日夜聖なる樹の周りを歩き回る森の王(祭司)。森の王になれるのは逃亡した奴隷だけで、実際の王と同じほどの強大な権限をもつことができるが、聖なる金枝を折って現在の森の王を殺すことで、殺害した者が次の王となることができる。森の王は、金枝を折られないよう、剣を手にして日夜樹の周りをウロウロし続けるのだった。
●突然起こった、エウレカの頭痛。
【判明した事柄・世界観】
●ブナポーという都市には大規模な工場があって、コンパクドライブの量産がはじまったらしい。
【おまけ】ティプトリーおばさん奮闘記
※どうみても優しそうなおばさんにしか見えない彼女が、こんなにもアグレッシブなのには前世からの深い理由があったのだ!
※内容がよく分からない人は、おばさんの中の人についてしらべてみましょう。お父さんやお母さんに、聞いてみるのもよいでしょう。
地球のアルプス地方に生まれた彼女は、ロッテンマイヤーおばさんにキツいイジメを受け続けて不憫な少女時代をすごしたが、その持ち前の明るさで「クララが立ったー!」などとエピソードには事欠かなかった。しかしロッテンマイヤーさんの陰湿なイジメは、少女の心に深く癒えない傷を残していた。
成長した彼女は、子供時代の反動か、科学忍者隊の活動に身を投じ、華麗に破壊の限りを尽くして「白鳥のジュン」として名を馳せる。引退した彼女は禁断の悪魔合体にその身を献体し、その魂は2代目コロ助に宿って、「キテレツ、なんとかナリ」とほんわか人生を過ごすはずだった。しかし番組終了に従って、その魂は過去・現在・未来を漂う。
ピンクのニワトリモドキに転生したり、腹巻をしたデジモンに転生したり、ペンギン村の不良少女に転生したりと、不遇な生まれ変わりを幾多も経験させられるのだった。恐るべしロッテンマイヤーの呪い。
ようやくアムドライバーの世界で大金持ちに転生して、その天寿を全うできたかと思ったが、今度はよく似た世界で反政府組織に参加して、テロリストとして危険人物視されるのだった。因果応報って怖い・・・というお話(←違う)。
【絵で見るティプトリーおばさん奮闘記】
隙をみてテーブルのカップに手を伸ばし・・・紅茶を投げつけた!
防がれたと見るや、今度はでかい椅子を投げつけた(ひでぇ)!
チャンス! 扉を蹴破り、下敷きになったムーンドギーを踏みつけて外へ脱出(なおひでぇ)!
市街地チェイス! 乱暴な急カーブ、こっち曲がるよーウッソー♪なフェイントを巧みにまじえつつ、逃げまくる!
最後はテロリストホイホイの中へ。ちゃんと制動をかけて急停車するところが只者じゃない。
※ティプトリーおばさんへのファンレターは、地球の「青二プロダクション」へ送ろう!
エウレカに付き添って、街へ買出しに出かけるレントン。そこで、迷子になってしまったメーテルが、ティプトリーという名の女性に保護される。それがきっかけとなり、彼女の家で食事をご馳走になるレントンたち。しかし、そこに突如ホランドが攻め込んでくる。ティプトリーは、ヴォダラクという反政府組織の重要人物だったのだ。金のためなら、軍の片棒を担ぐことすら辞さないホランドに、反感を覚えるレントン。ところが、ホランドには真の目的があったのだ。【公式あらすじ】
月光号のブリッジで、レントンは浮かれていた。ついに、自分が「ray=out」の表紙を飾ることができたのだ。新人イビリの悪辣なイタズラではあったが、結果として月光号のメンバーとして一段と溶け込むことができたと同時に、こうして自分の姿が雑誌にのり、ひいては世界中の人々の目に触れることにもなるのだ。レントンを意識してか、ジャージ姿のムーンドギー。レントンは増長する。
嬉しそうに「ray=out」を抱きしめるレントンのもとに、エウレカが現れた。買い物をしに一緒に街に行かないかと、声をかけてきたのだ。デートの誘いかと、二つ返事で了承するレントンだったが、もれなく3人の子供たちというオマケがついてくるのだった。
レントンたちが街へ買出しに降下した後、月光号のブリッジでは、主要メンバーが今回の仕事について話を進めていた。「ヴォダラクだろ?」と呆れたように大声をあげるハップ。「気が進まないのか?」というホランドの問いに、タルホが「割りはいいのよ、割りは」とつぶやき、ヒルダも電卓をたたきながら、「背に腹は代えられないってね」と続けた。財政難を乗り切るべく、今回もゲッコーステイトは怪しい仕事を引き受けたようだった。
レントンとエウレカが街へ出かけたことをマシューから聞き、ホランドは「ちょうどいい」とつぶやくが、タルホが二人を今回の仕事に巻き込んでしまうことを危惧し、ホランドを責めた。説明がめんどくさいだけだ、と視線をそらせるホランド。
買い物リストに従い、レントンとエウレカ、そして子供たちは買い物を続けていた。人々の視線を感じるレントン。「ray=out」の表紙を飾ったことにより、有名人になった自分にみんなが注目しているのではと意識するが、実際のところは、少女と子供たちの後に続いて大量の買い物袋を運んでいるレントンに奇異の目が集中しているだけなのだった。
あらかた買い物を済ませ、あとは子供たちの勉強道具を残すのみとなった一行。エウレカはメンバーから、勉強は大事なことだと教わっていたらしく、教科書と参考書を手に入れようとする。メーテルがレントンを子供っぽいとからかったことからレントンとリンクが口論になり、ドタバタの追いかけっこがはじまる。その騒動の最中、エウレカはメーテルの姿がいつのまにか消えていることに気づき、血相を変えて突然駆け出していってしまった。
目の前からエウレカがいなくなってしまったことに、それまでおとなしかったモーリスが突然パニックを起こし、泣き出してしまう。「いなくなっちゃうの? ・・・みんな・・・いなくなっちゃうの!?」
リンクがモーリスに向かって、「あのときとはちがうだろー?!」と叫ぶが、モーリスは「みんな、みんな帰ってこない・・・」と泣き続けるばかり。強情に否定していたリンクも、それにつられ、言いようのない不安にとらわれて泣き出してしまう。子供たちの過去に何があったのかを知らないレントンは、両手に買い物袋を抱えたまま、途方にくれてしまうのだった。
そのころ、月光号から3機のLFOが発進し、彼らもまた街へと降下していくのだった。909のコックピットで、「さくっと済ませて帰っちまうぞ」と号令をかけるホランド。
「了解」と606、808が無線で応答した。その中には、ギジェットとムーンドギーの声が混じっていた。今回は彼らも作戦に参加しているようだった。
メーテルを探して、必死に街の中を走るエウレカ。レントンたちに合流するが、メーテルは戻っていなかった。泣き出しそうなエウレカにレントンは大丈夫だよと声をかける。その辺にいて、きっとそのうち自分たちを見つけて現れる・・・とフォローしたまさにそのとき、頭上からメーテルの声が降ってきた。見上げると、民家の窓から、メーテルが顔を出し、こちらに向かって手を振っていた。
メーテルの姿を認め、穏やかな表情をみせたエウレカだったが、再び厳しい目つきになり、レントンにこういうときの子供の叱り方を尋ねた。問われるまま、レントンは「やっぱり、みんなに心配かけたんだから、一発ひっぱたいて・・・」と途中まで呟くが、エウレカはもう走り出していた。
階段をかけのぼり、民家のドアを開けたエウレカ。出迎えに現れたメーテルに、すぐさま平手で打ち付けた。「メーテル! ・・・みんなに心配かけたことが、分からないの?!」頬を張られた音がこだまする。追いかけてきたレントンが「男の子を叱るときだけど・・・」と付け足すが、もう遅かった。
はじめて母親にぶたれたことに一瞬呆然とし、メーテルは激しく泣き出した。泣きながらも謝るメーテルに、エウレカは体をかがめて頭を優しく撫でてやるのだった。
「ごめんなさいね」奥から、年配の婦人が現れた。「この子が道に迷っていたようだから、お母さんが見つかるまでと思って、連れてきてしまったの」
優しい表情で婦人は続けた。「お詫びといってはなんだけど、お茶でも飲んでいかない?」
婦人の誘いに、喉が渇いていた子供たちは遠慮もなしに飛びつき、エウレカもあっさりそれに続いたので、レントンは仕方なしにごちそうになることにした。
メーテルが開け放した窓を閉めて、婦人はお茶の支度をはじめた。その様子を、離れた建物の上から双眼鏡で確認していたホランドとマシュー。ホランドは携帯無線で待機中のメンバーに確認をとった。「こちら『アリス』。『マッドハッター』はティールームにいる。表はおさえたか?」
「こちら『ウサギ』、表はおさえた」とギジェットの声が返ってくる。「こちらは『赤の女王』、配置についた」808のコックピットからヒルダも応答した。ホランドは「了解。『アリス』は裏口をおさえる」とメンバーに告げ、童話「不思議の国のアリス」になぞらえた作戦を開始した。
お茶をごちそうになるレントンたち。月光号ではゴン爺のドブ色の苦いお茶しか飲んだことがない子供たちは、婦人の出してくれた紅茶に目を丸くする。レントンもその香りと甘さに、エウレカに似た不思議な感覚を楽しんでいた。ゆったりとした時間が流れる午後のティールーム・・・。
静寂は突然破られた。ドアが蹴破られ、通路のほうから手榴弾のような物体が投げ込まれ、テーブルの足元に転がった。反応して、子供たちをかばうエウレカ。場違いすぎる突然の闖入物に、レントンは身を硬直させることしかできなかった。
パン!という音ともに物体の上部が爆ぜ、煙が少し漂い出たが、それっきりだった。どうやら不発の煙幕弾のようだった。
「だからバッタ屋で買い叩くなって、言ったろうが!」罵声とともに銃を持ったホランドが現れ、部屋の中にいる全員に「動くな」と声をかけた。「ホランド?」驚くレントンの声に、ホランドは部屋の中にはターゲットだけでなく、レントンとエウレカたちがいることに初めて気がついた。「何でお前がここにいる?」
「ホランドこそ、何で?!」レントンの問いにホランドが乱暴に説明した。「この女は『ヴォダラク』という反政府組織の重要人物なんだ。軍に引き渡せば金になる」ホランドの言葉に、疑問を感じたレントン。自分たちゲッコーステイトも反政府組織ではなかったか。金のためなら何だってするのか。敵であるはずの軍に、やさしくしてくれたこのおばさんを引き渡すというのか。
「するよ、金になるんならな」ホランドは表情を変えずにそういった。「よーし、両手を頭の上にのせるんだ」
隙をついて、婦人はティーカップをホランドの顔面めがけて投げつけた。銃で防ぐホランド。続けて椅子が投げつけられた。さすがにこれは防ぎきれず、ホランドは後ろに倒れ込んでしまう。婦人はドアを蹴倒し、外に飛び出した。入り口を固めていたムーンドギーは倒れてきたドアの下敷きになり、婦人の勢いに、ギジェットは何もできなかった。
起き上がったホランドは急いで窓から外を伺うが、すでに婦人はスクーターで逃走するところだった。
「こちら『アリス』、『赤の女王』へ! ・・・『マッドハッター』が逃げた」無線でヒルダに連絡をとり、マシューにLFOで追うよう指示し、エウレカにもニルヴァーシュで追いかけさせた。
レントンは納得がいかず、ホランドに説明を求めるが、そんな時間はないとつっぱられ、「納得できないのなら、ここでずっと茶でも飲んでろ!」と罵倒されてしまう。
不本意ながらも、事の顛末を見届けるべく、すでにエウレカが起動させていたニルヴァーシュのコパイ・シートに憮然とした表情で座り込むレントン。
婦人は、バイクで街中を逃走していたが、突如横に現れたビークルモードのニルヴァーシュに唖然とする。過去の忌まわしい記憶。その白い機体を目にし、「これは・・・ヴォダラクの試練」と呟く。
大型のLFOでは小回りがきかず、交差点のたびにギリギリで道を変えるバイクを追い詰めることは至難の業だった。ホランドの909と連携を取り、はさみうちにしようとするが、婦人は通行人にかまうことなく急カーブを切り、フェイントを交えつつ巧みに路地に逃げ込み、ゲッコーステイトのメンバーの手をやかせる。
市街地を走行しているため、軒先に渡してある洗濯物を次々と引っ掛け、視界を奪われるニルヴァーシュ。埒があかず、エウレカは人型モードにニルヴァーシュを変形させ、ブースターを噴射して上空から婦人のバイクを追いかける。ホランドの909とヒルダの808が絶好の位置にきているのが分かった。エウレカはバイクの前に着地して、ニルヴァーシュに進路を塞がせた。再び婦人は道を変えるが、909が回り込んでいた。「観念しろ、おばちゃん」それすらも振り切って、残されたもう一つの路地に逃げ込むが、そこには巨大なコンテナが口をあけて待っており、婦人のバイクはなすすべもなく、コンテナの中へと追い詰められてしまった。蓋が閉じられ、ヒルダの808がそれを確保した。「一丁あがり! ・・・『テロリストホイホイ』ってね」
3段構えのトラップの末に、婦人の大立ち回りはようやく幕を下ろした。
ホランドの作戦が成功し、嬉しそうな表情を見せるエウレカ。しかしレントンの表情は曇っていた。「・・・うれしく、ないの?」エウレカがレントンに尋ねるが、レントンは「これが・・・うれしいわけ、ないだろ」と、やりきれない答えを返すだけだった。
(後編に続きます)
【今週のみどころ、ツっこみどころ】A-part
●ドッキリの次の回で、早くも刊行された「ray=out」。レントンが表紙に登場。あまりの面白さに急遽、表紙を挿し代えしたとか?
●「ray=out」の裏表紙に「クリエ」の充電池マークが。スポンサーかな? 確かにボードのカタログでもあるし・・・。
●3週連続で「あそこの毛」談義。もう好きにしてくれってカンジ。いや、今回はワキの根元の毛なんですけどね・・・。
●迷子の幼女。それを必死に探す中学生ママ。むぅ、死角のない展開です。
●ヴォダラク経の意味不明な儀式。聖地の方角に向かって紅茶の雫を飛ばす・・・って、それっぽい雰囲気を出したかっただけとちゃうんか!
●煙幕弾すらバッタ屋で買い叩く、天下のゲッコーステイト一味。台所事情が伺えます。
●歳の割に元気すぎるティプトリーおばさん。感動したのでオマケコーナーで特集を組んでみました。
●ホランドのしてやられた、という珍しい表情。ひろし~、がんばれ~(笑)。
●美少女の顔にパンツが・・・! これまた宮崎アニメでよく目にする光景ですね。レントンはまたもやブラで赤面。
●テロリストホイホイ。ヒルダも言うことえげつない。ヴォダラクって、破壊工作もするわけ?