京香と警察と夫の間でどのような話し合いをしたのかわからないが、
私は自宅へ帰ることができた。
自宅に帰ると夫は罵詈雑言で私を攻撃した。
「まったく呆れたよ。一体何を考えているんだ。
娘と同じくらいの女性を追いかけて挙句に警察に通報されたなんて。
京香さんが穏便にしてくれるということで注意だけで済んだんだ。
もうおしまいだな、僕達」
うな垂れたまま私は動かない。
「気持ち悪くて一緒に住めないよ」
「気持ち悪い?」
「女が女に惚れるなんて考えられない。少なくとも僕には理解できない世界だ」
私は消え入りそうな声で呟いた。
「好きになっただけよ・・・ただ好きなになってしまっただけ」
「好きになったら本能丸出しで行動してもいいのか!君は逮捕されたかもしれないんだぞ。
それもストーカー。ああ、おぞましい」
夫が絶望的な表情で額に手をあてた。
その時、キリカの姿が視界に入った。
リビングの入口でキリカは怒りの表情で立っていた。
「キリカもパパと同じ考えだろう?母親失格だよな」
キリカの怒りは母親へのものだと勘違いしたのだろう。
同調を求める声で言った。
キリカの頬が濡れている。泣いているのだ。
「パパのことは好きよ。でも、でもパパにママを軽蔑する資格はない」
「何を言うんだキリカ、気持ち悪いと思わないのか?」
キリカは首を左右に振ると叫んだ。
「ママはただ人を好きになっただけじゃない!純粋に人を愛しただけじゃない!」
キリカの言葉に衝撃を受けた夫は無言で部屋を出て行った。
うなだれている私の身体をキリカは抱きしめた。
弱い小動物のように震えながら私は言った。
「ねえ、京香ちゃんはどうして私のこと嫌いになったのかしら?」
キリカは私を抱きしめながら泣いていた。
続く・・・