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女達の恋愛事情~理香子の章4~

2016-06-25 17:38:02 | オムニバス恋愛小説
帰ってくるだろうと思っていた。
しかし、1ヵ月が過ぎても田島は戻らなかった
田島はプライベートなことは語らない。親に紹介して欲しいと言った時も
「大人だろう俺たち、いちいち親に報告する必要ないよ」
とその場を濁されてうやむやになっていた。
引き出しの中を開けてみるが田島をしる物は何も出てこなかった。
あきらめ気分で、押入れの奥にある段ボールを出して開ける。
着なくなったセーターや、シャツ、不要になったパソコンの備品が無造作に入っていた。
その横にメモや宅急便の控え用紙が重なっていた。
何気なくその1枚を開ける。
依頼主は田島俊介届け先は中澤麻利絵となっていた。
初めて知る名前だ。届け先の欄に携帯番号が記されていた。
田島とどういう関係だろう?私は宅配便の控え用紙をポケットに入れた。
田島が行方不明になっても探す場所がわからない。
友人が何人いるのか、兄弟はいるのか、何も知らないのだ。
秘密主義の田島は自分から話すことはなかった。
数日後、考えたあげく宅急便の届け先の中澤麻利絵の携帯に電話をしてみた。
何回かのコール呼び出しの後、女性の声がした。
「はい」
「中澤麻利絵さんの携帯でしょうか?」
「はい、そうですけど・・・どちら様ですか?」
「突然のお電話ですみません。田島俊介さんをご存知でしょうか」
電話の向こうで躊躇した後「ええ」と小さな声が聞こえた。
「どうして私の電話番号を知っているのですか?」
「実は田島さんがあなたに送った宅配便の控えを持っていて」
「それだけで何故私に連絡してくるのかしら。正直不愉快です」
「ごめんなさい。田島さんを探す手掛かりが何もなくて唯一あなたの連絡先だけ見つけたんです」
「田島が又何か事件でも起こしたのですか?」
「またということは・・・」
「彼の精神構造まともじゃないですよ」投げやりな口調に変わる。
「何か被害にでもあったのですか?」
「最低の男ですよ。私の親友、妹手当たり次第やりまくって
人間関係をメチャメチャにして去って行ったわ」
「去って行った?」
「そう。彼は逃げる男なの。逃げるのが好きな男なの。宅急便は最後に私のものを
送ってもらった時のものだと思うわ」
逃げるのが好きな男。そうだったのか。
「あなたもあんな最低男といつまでもつきあっていない方がいいわよ。幸せになれないわ」
中澤麻利絵は哀れむような口調で言い、電話を切った。


続く・・・