私は地球で楽しく遊ぶために生きている

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女達の恋愛事情 ~ユリの章~2

2016-05-08 16:18:24 | オムニバス恋愛小説
田島俊介と初めて会ったのは6歳時、幼稚園の帰りでした。
ファミリーレストランで待ち合わせていた田島に
田島俊介さんよ。ご挨拶なさい」と母は照れたような表情で言いました。
私はにこやかに笑う田島俊介に頭を下げました。
笑った唇から黄ばんだ歯が見えました。・・・煙草を吸っているんだわ・・・
と思いながらあまりいい気分はしませんでした。
何故か歯の汚れた感じと彼の奥の本性がリンクしたのです。
その日は三人でとりとめのない話をして食事をしました。
そうしたことが何回かあり、ある日の夜母が言いました。
「田島さんと一緒になるわ」
私がどう思うかなど聞かずに、母は田島と結婚することを決めているようです。
学生結婚をして私を出産したが、男は私と母を捨てて故郷に帰ってしまったこと、
すべての事情を知って結婚してくれると言うのです。
「彼ね、すべてを受け止めるって言ってくれたの。心の広さに感激しちゃった」
少女のように頬を赤らめています。おめでたい人です。
田島は親にも親戚にも一度も会わせてくれません。
子供の私でも不信感を感じるのに母は浮かれています。
田島は裏の顔がある、闇を抱えている、直観で感じました。
田島を観察していると柔和な笑顔、柔らかい口調は
嘘なんじゃないかと感じていました。
私は二人の会話を聞いている時に時折見せる田島の歪んだ表情を
見逃しませんでした。
母に笑顔を見せながら、時折見せる裏側にある闇がその歪んだ表情にみてとれました。
ある時、食事をしている時でした。
ふいに田島と視線がぶつかりました。
田島は私の顔をじっと見つめています。
不快な感情と、説明のできない不気味さを感じたことを今でも忘れません。
悪魔のような淫靡な日々はすぐそこまで訪れていました。

続く・・・