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女達の恋愛事情~ユリの章1

2016-05-02 01:40:32 | オムニバス恋愛小説
その始まりは小学1年生の初夏が幕開けでした。
私は義父田島俊介とテレビを見ていました。
バラエティ―番組で人気俳優は誰かという、街頭でインタビューをしていました。
待ち行く人呼び止めて女性レポーターが聞いています。
「福田良晴最高!」二人のOL風の若い女性が叫ぶように言っています。
福山良晴は歌手、俳優と活躍する人気アーティストで、
甘いマスクと饒舌な口調だけど愛される特異なキャラクターです。
「私も大好き」私は小さな声で言いました。
隣で酒を飲んでいた田島はぺたりとした視線を向け、
「あいつのどこがいいんだ?」と聞くのです。
「ハンサムだし、お話も上手だから」私は素直に答えました。
すると田島の表情が変化しました。
「あんな奴のどこが良いんだ。裏じゃ何をしているかわからないんだぞ。
本性だって隠しているさ」私は黙ったままテレビの画面をみていました。
早くこの会話が終わることを願っていました。
しかし、田島はねちねちと福田良晴の罵詈雑言を捲し立てるのです。
「あんな奴の何処が好きなのか?」
私は観念したように「そんなに好きじゃないよ」とかぼそい声で言った途端
田島の表情が又変化しました。
「そうだろう!そうだよ。たいした男じゃないよ」
一生会わないであろう人気芸能人なのに、まして、
彼とどうなるわけでもない相手に異常程にこだわるのです。
何故なのかわかりませんでした。
しかし、その答えは数年後わかりました。
田島にとって私は既にその頃から「おんな」だったのです。
「俺の女」だったのです。俺の女だから嫉妬したのです。

お母さん、私はあなたを恨みます。
何故田島と結婚したのですか?何故田島を愛したのですか?
シングルマザーでは生きていけないほど弱い人間だったのですか。
それとも田島に心底惚れてしまったのですか。
多分あなたの答えは後者でしょうね。
あなたはいつでも、どこに行っても田島の顔色だけを見て過ごしているから。
でも、でもあなたのいない時に田島が
私に牙を向けていることがわからなかったのですか?
いえ、もしかしたら知っていたのでは、と思います。
知っていて知らぬふりをしていたのならあなたは母親よりも
「おんな」を選択したのです・・・

続く・・・