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さそり座の愛~占い刑事の推理~第11章

2012-11-13 14:27:17 | ミステリー恋愛小説
占い刑事~推理の完結~

「突然にどうしたんだ?」
驚きを隠せずにいる藤木に麻生は挑むような口調で言う。
「少し時間をとっていただけますか。二人にとって大事な話です」
藤木と雪子は顔を見合わせた後、麻生を居間に通した。
ソファに座らせようと雪子が促すと、麻生は
「2階の雪子さんの部屋を見せていただけませんか?」と言った。
やはり、この男を甘く見すぎていたと藤木は思った。
部屋の中に入ると麻生は窓を開けた。田代雄太の部屋の窓が3人の視界に入る。
麻生は静かに話し始めた。
「昨日、隣のアパートに住んでいる田代雄太君に会ってきました。
そして、坂崎孝雄死んだあの日、田代君の部屋の窓の鍵が開いていたことを確認しました。
奥さんあなたは、雄太君にこう言ったそうですね。
いつも、どんな時でも窓の鍵は開けておいてと。それですべての糸が解れました。
あの日、あなたは伊豆に旅行に行きました。ホテルの館内ではなく、
コテージに宿泊したのは、夜中に誰にも見られることなく、部屋を抜け出せるからです。
ご主人は食事会だから、当然雪子さんが帰宅するから鍵はかけていなかった。
これで警察は他殺ではない方向に考えた。
もうひとつ、警察の捜査が自殺と誤った判断をしたのは玄関の鍵です。
鍵はドアノブの鍵と、鎖のチェーンの二重にかけられていた、
指紋も出てこない。荒らされた形跡もない。奥さんは旅行中で、完璧なアリバイもありました。
しかし、この窓の距離に僕は何かを感じました。
向側の雄太君の部屋の窓は1メートル程しかない。
手を伸ばせば、窓を開けられる、このように」
麻生は手を伸ばした。体を外に傾けながら、田代雄太の窓を開けた。
「奥さんはご主人を殺した後、この窓から雄太君の部屋へ飛び越えた。
その時1階に住んでいた男が偶然に上を黒い影がふわりと浮かんだのを見たのです。
殺害方法は、もう言わなくてもわかっていますね。
祖母の住む倉庫から発売禁止の農薬を調べたら、ご主人の死因の劇薬と一致しました。
坂崎孝雄さんは、自殺ではなく他殺、そして犯人は、妻である雪子さんあなたです。
「見事な推理だね、脱帽だよ」
「それと、二人のことです。始めから二人の間に何かあると感じました。
二人は高校時代恋人同士だったこと、そして雪子さんが先輩の子供を
身ごもりながら別れたこと。そして・・・その子供が生きていることも」
「何故知っているんだ?」
「先輩の後を追った日からずっと調べてました。
高校の時の雪子さんの恋人は藤木先輩ですね。そしてその子供である田代雄太君は
あなたたちの子供であるということもわかりました」
「ええ!!」雪子が大きな瞳を見開いた。
「嘘よ!嘘」
「雪子さんは知らなかったのですか?!」
「麻生やめてくれ!!そのことは僕から話そうとしていたんだ」
「私は、私はなんてことをしてしまったの!!」
雪子は倒れるように座り込んだ。
藤木の目はうるんでいた。
麻生の肩に手をかけた藤木は静かに呟いた。
「麻生、占い刑事健在だな。見事なほんとに見事な推理だ。
迷惑かけてすまなかった。これから警察に2人でいくよ」
「先輩!」
「僕は後悔していないよ。占い刑事君、僕は何よりも愛なくして生きていけない星座蠍座、
雪子の愛を取り戻したんだ。この愛は、すべてを捨ててもいい価値あるものさ」
確か坂崎雪子の星座も蠍座だった。
蠍座同士の愛は、魂と魂が結ばれる濃厚な愛。命がけの恋愛をする恋愛至上主義者
藤木は、静かに微笑んでいた。

続く・・・次週最終章