気になる農業政策
11月議会が終わりましたが、今議会にかけられた議案は少なかったのですが、行く末が気になる議案がありました。
現在、農業委員は選挙によって選出され、議会の同意を得ることになっています。それを国の法律が変わり、市町村長による任命制に変更されることになったのです。また、その農業委員の中から農地利用最適化推進委員を選出することになっています。そのための条例改正案です。任命される農業委員の半数は認定農家で、市長が任命するとはいえ地域からの推薦による選出になります。また、女性・青年の選出も求められています。
これは、TPPを進める中、グローバル化に対応するために農地を集積し、大規模化を図ろうとしているのですが、もともと、日本の地形からして一定程度の集積が可能なところもありますが、大規模化はそんなに簡単ではありません。とてもアメリカなどの広大な大地のように高い生産効率の農業に対抗できるはずがありません。農家に対するささやかな、いや、ほとんどポーズのような対策ではないかと思うのです。
とはいえ、TPPを進めなくともほとんどの農家は「食える」農業規模でないことも事実です。公選という民主的な手続きで選出される農業委員制度ですが、現実はなり手がなく、松江市でも実際には選挙で選出されたのは1回だけで、後はそれぞれの地域で説得して農業委員候補に立ってもらっていたそうです。つまり「選挙」は成立しなかったというのが実態です。任命制にするというのは、現状を追認するだけの効果しかありません。新しい風を吹き込むためには、青年や女性の選出というのはぜひとも実行してもらいたいのですが、そのような人は個人農家ではないでしょうか。経済常任委員会での審査の場で、執行部にどのように女性や青年を選出するのかと聞くと、「掘り起こしをやります」との答弁。どこまで実効性があるのか心持たない感があります。
また、農業委員会から農業者、集落の声を行政政策に反映するため、農業者や地域の農業の立場に立ってその進むべき方向とこれを実現するための政策のあり方等を聞いていくことは極めて重要なことだと思うのですが、改正された法律では、農業者の代表としての「意見の公表、建議、諮問・答申」の規定が削除されています。「下から」の農業政策を重要視して創設された農業委員会制度の趣旨はどのように担保されるのか。これも気になり、執行部にどう担保するのか質問しました。執行部の答弁は『法律からは削除されているが、今後も「建議、諮問・答申」は行っていく』というものでした。
この条例改正案への私の疑問に対して、果たして実効性があるのか不明であるものの、執行部からは一応の答弁を聞くことができたので、賛成しました。ただし、「農地の集約化は必然的に大量に農薬の使用と機械化が増加することにつながる。一方で消費者は安全な食べ物を希望している。その安全な食べ物を求める消費者の願いとはかけ離れていく方向に進むのではないかと懸念している。安全な食べ物の供給を追求する農業者の方をぜひ選出していただきたい」という意見を付けました。
豊かな大地と市民の健康を守るためにも、ぜひ松江市でも有機無農薬農業を広めていただきたいと思うのです。市には、その後押しをやっていただきたいと思います。