サファリは、スワヒリ語で旅行のこと。
国語辞典には、「特にアフリカへの猛獣狩りの旅行」とある。
しかし、サファリツアーとなると、「快適な専用ホテル」で寛ぎつつ、
「自然保護地区におけるアニマル・ウォッチング」を楽しむ旅行という感じであろうか。
もちろん、猛獣狩りは厳禁。
快適なロッジに泊まり、美味しいものを食べ、お湯のシャワーをあびて、窓からの景色を楽しむ。
そして、涼しい時間帯に、おもむろにサファリカーに乗って、動物を探しに出かける。
ガイド兼ドライバーが、遥か遠くにいる動物を見つけると、その名前を告げる。
指し示す方向に目を凝らすが、全く見えない。
望遠カメラを覗き込むと、何やら動いているものを確認する。
彼らの目の良さに驚嘆する瞬間だ。
サファリツアーのお目当ては、ビッグファイブ。
ビッグファイブとは、バッファロー、象、ライオン、ヒョウ、サイのこと。
これに遇えたら、ラッキーということになる。
ドライバーは、常にほかのサファリカーと連絡を取っている。
お目当ての動物の情報が入れば、そこに急行する。
木の上で居眠りをするヒョウの下には、サファリカーの先陣争いも。
観光客のカメラアングルに気を使って、割り込むケースもしばしば。
動物の前に位置取りをすると、暫くは沈黙の時間が続く。
動物の視線や振る舞いなどなど、シャッターチャンスが訪れるのをひたすら待つ。
動物同士が、睨み合っているときは、何かが起こる瞬間を待つことになる。
誰しも肉食動物が獲物を捕まえるシーンを目撃したいのだ。
でも、なかなか願い通りにはいかない。
ドライバーが「sawasawa?(=OK?)」と聞く。
「sawasawa!(=OK!)」と答えると、次のスポットへと動き出す。
ビッグファイブだけでなく、チーター、カバ、ハイエナ、ダチョウ、キリンも迫力十分。
イボイノシシの行進は微笑ましく、
シマウマ、ヌー、インパラの群れも絵になるシーンを演出してくれる。
マサイ族の村に行くと、奇麗に着飾って迎えてくれる。
土で作られた家の中を案内してくれる。
いろいろと説明を聞いたが、どうも生活感が感じられない。
ホントにここに住んでいるのかは怪しい限りだ。
サファリのホテルは、それぞれが村と契約しているようだ。
言ってみれば、観光マサイ村。
普段は、ホテルで働いていそうだ。
狩りだけでは、生計は立てられないのだから仕方がない。
踊りも踊ってくれるし、ピョンピョンと飛び跳ねてくれる。
跳躍力は流石だ。
一通り出し物が終わると、いつの間にか準備されているお土産屋さんが待ち構えている。
装身具の類だが、あまり出来栄えの良いものはない。
どれでも1ドルのようだが、購買意欲が湧かない。
仕方がないので、お土産用に持っていたポールペンと交換した。
それを見ていた周りの子供たちが集まってきた。
いつの間にか、10本のボールペンは、10個の首飾りに入れ替わった。
100円ショップで買った「中国製10本入りボールペン」は、
損したのか、得したのか、今でも良く分からない。
雨季のサファリは、あまりお奨めできない。
雨は、ずっと降っているのではなく、スコールのように降る。
降り始めると、一気にバケツをひっくり返したように多量の雨となり、
降り止むと、何事もなかったように、青空が広がる。
しかし、道路はドロドロとなり、アチコチにスタックした車が、脱出しようともがいている。
最終日に、ナイロビ空港に向かう日もスコールに遇った。
この時は、半端でなかった。
丘陵地から流れ出た水が、未舗装の道路に流れ込み、思うように前に進まなくなった。
道路も渋滞が始まり、対向車とのすれ違いも容易ではなくなった。
渋滞を予想して、早めにホテルを出たのだが、刻一刻と時計の針が進んでいく。
ドライバーも何とか先に進もうと、時折、道から外れて、少しでも前に進もうと奮闘したが、
捗々しい成果は得られなかった。
半ば諦めていると、渋滞の原因となっている所に到達した。
何と、大きなトレーラーが泥濘に嵌まって、大きく傾いたまま、そのまま放置されていた。
ヤレヤレ。
飛行機には、ギリギリ間に合った。
これで、日本に無事帰れると安堵した。
それのつかぬ間、簡単にはいかなかった。
搭乗したら、直ぐにトイレに駆け込んだ。
朝食として渡された弁当がどうも怪しい。
あまり火が通っていなかったようだ。
その後、成田に着くまでトイレを往復。
帰宅後、病院に行き、「ケニアで・・・」と伝えたら、笑われた。
笑い事ではない。
抗生剤を処方してもらったら効果覿面。
爾来、未開の地には、抗生剤を持参することにしている。