今回の日本300名山は黒法師岳(くろほうしだけ)。
静岡県にある南アルプス深南部の山(2,068m)であり、日本国内最南端の2000m峰。
山頂には×印が刻印された三角点が設置されていることで有名。
ただ、山頂へのアクセスが容易ではなく、決して展望が良い山とは言えないため、
間違いなく篤志家向けの山である。
山頂への最短ルートは、水窪ダムから戸中山林道をたどり等高尾根を登るコース。
他にも、天竜スーパー林道を経由して野鳥の森から登るルートや、
寸又峡からアクセスする方法もあるが、
いずれも歩行する距離と標高差が立ちはだかる。
今回は、迷わず最短コースを選択したのであるが、片道2時間の林道歩きがある上、
等高尾根は急登が連続し、やはり容易ではない。
そこで、登山口休憩小屋で前泊した上で、登頂を目指すこととした。
休憩小屋は、小さいものの綺麗で、トイレも設置されていて快適だ。
林道途中で、すれ違った軽トラックに乗ったオジさんから声を掛けられたので、
その旨を話すと、「それがいいよ。」とばかりに頷いてくれた。
朝6時過ぎに登山口をスタート。
尾根筋に取付くまでは、若干の急傾斜はあるものの、
南アルプス特有の苔むした樹林帯の中、徐々に高度を上げていく。
頂上までの標高差は1000m強。
約半分の1500m地点が「ヤレヤレ平」。
見事な命名に感心してしまう。
主稜線に向けた急傾斜は「弁当ころがし」。
山頂までは、笹藪をかき分けつつ、最後は、崩壊地を慎重に横切る。
展望もなければ、何の変哲もない頂ではあるものの、
儀式のようにお目当ての三角点の標柱を確認する。
何故にここを目指したのか。
300名山を登り始めた宿命と言っても良いかも知れない。
一方で、頂上直下の展望が開けたところからは、
富士山、御嶽山、光岳の日本百名山とともに、
かつて登頂した大無間山や池口岳等々の思い出深い山々が望めることが、
せめてもの救いである。