今回の日本300名山は景鶴山(けいづるやま)。
景鶴山は、尾瀬ヶ原の北に位置する群馬と新潟の県境の山(2,004m)。
登頂には藪漕ぎが必要で、「這いずる」から「けいずる」となったとか。
必然的に残雪期登山のターゲットとして多くの登山者を迎える。
最短の登山ルートは、鳩待峠からの入山。
コロナ禍のため、山小屋の定員が制限されていたため、至近の竜宮小屋の予約が取れず、
尾瀬ロッジでの連泊となった。
早朝の出発は、ガスが晴れつつあるものの雪原を吹き抜けてくる風は冷たく、
日中の気温上昇を見越しての薄着の出で立ちは失敗に終わった。
水量の多いヨッピ川を渡って、尾根に取り付く必要があるが、
ヨッピ吊橋は、冬季は板を取り外してしまうため、東電尾瀬橋へ迂回する。
この辺りが丁度、群馬、新潟、福島3県の県境にあたる。
この年は積雪量が多く、例年では露出している木道の大部分が雪の下に埋まっていた。
歩を進めるたびに生じる僅かな沈みが足腰に応える。
学生時代の春山合宿で、ジルブレッタのビンディングを駆使して、快適に雪原を横断したことが甦る。
尾根の取り付きからはアイゼンを装着する。
うっすらと前夜の新雪が積もっているが、思いの外、雪が締まっていて、快適に高度を上げる。
気が付いてみると、すっかりガスが晴れ、尾瀬ヶ原は勿論のこと、燧岳、会津駒ヶ岳、平ヶ岳、至仏岳、
そして遠くは、谷川連峰を見渡すことができる。
景鶴山も至近距離に迫ってくる。
頂上直下の鞍部にザックをデポし、ピッケルを片手にピークに向かう。
ヤセ尾根を登り詰めると、最後は大岩のトラバースが待ち受ける。
ブッシュに邪魔されながらも、積雪にピッケルを深く差し込んで、強引に身体を引き上げると頂上標識の脇に飛び出した。
同時に、上会越国境線の山々が目の前に広がった。
ただただ、奇跡的な好天をついての登頂に感謝するばかりである。
案の上、下山日は雨であったが、決して気持ちが沈み込むことがない雨中散歩となった。