コロナが蔓延していた頃は、ほとんど鎖国状態だったようだが、
ようやく事前PCR検査が必要なくなったと聞き、出かけることにした。
竹芝桟橋から24時間。
WIFI環境のない世界は、一種の文化人病をリセットさせてくれると思いきや、
船内のカフェスペースや甲板デッキのベンチでは、早々に酒盛りが始まる。
随所に貼られているマスク着用のお願いポスターが空しく感じられる。
宴会は、日本人の伝統文化ではないようで、外国語も多く飛び交う。
気が付けば、自動販売機には、売切れの赤ランプが・・・
翌朝、重い頭に檄を飛ばし、甲板に出てみると、水平線から上がる朝日が眩しく光る。
この先の数日間の島旅を歓迎しているようだ。
父島の桟橋に着けば、そこはもうリゾート気分。
湿気を含んだ潮風が、肌にまとわりつき、むっとした熱気が襲い掛かってくる。
自分自身で、宿に荷物を運びこむと・・・
オーナーから、従業員の一人がコロナに罹ってしまったので、
「連泊中の部屋の清掃なし、シーツ交換なし」と告げられ、
希望すれば、タオルは交換してくれるという。
また、フロントは不在が多いので、鍵は持って出るようにと・・・
まさに、時期ずれの緊急事態なのかもしれない。
小笠原の手つかずの自然は、世界遺産にふさわしく、
むやみに開発されてしまったリゾート地と一線を画しているところが新鮮だ。
真っ白の砂浜に行けば、ウミガメの足跡が残っており、産卵場所注意の亀マークの旗も随所に。
オカヤドカリの行進、イルカの飛び跳ねる姿、羽を広げて滑空するオオコウモリなどなど、
非日常的な経験が、容易に手に入れることができる。
ウミガメのお刺身や煮込みなど、食文化も興味深い。
夕方から広場で、父島返還祭があるという。
地域で活動しているサークルが、それぞれ練習を重ねて、
様々なパフォーマンスを披露していた。
都会では、地域の繋がりが疎遠になっていると言われて久しいが、
ここでは、より一層結束力が増しているように感じる。
出航の日は、今では、お馴染みとなった小笠原の人々総出のお見送り。
想像していたよりも大迫力。
この瞬間に接すると、もれなく、再び足を運んでみたくなる自分を発見する。