介護人材政策に関する考え方(8) ~ 介護事業に係る『労働者』と『使用者』

2013-11-08 22:55:15 | 日記
厚生労働省「介護人材確保の推進に関する検討委員会」でも検討が進められているが、確保すべき『介護人材』とはどういう職種のことを指すのか。厚労省・社会保障審議会では、介護人材の確保に関して、次のような論点提起がなされている。

○ 団塊の世代が75歳以上となってくる2025年度に向け、地域包括ケアシステムを構築し、在宅サービスを充実していくにあたり、介護人材は、237~249万人が必要と推計されており、現在の149万人から毎年6.8~7.7万人の人材を確保していく必要がある。
○ そのためには、学卒就職者やハローワークなどを通じて新たに入職してくる者を維持・増加させるとともに、離職して他産業へ流出していく者が介護分野に定着するよう取り組むことが重要。
○ そこで、介護人材の確保にあたっては、人材の新規参入の促進と定着を図る取組が必要であり、他の産業に比べて離職率が高いことや平均賃金が低いことなどの課題を踏まえ、以下の視点で取組を推進していくことが必要である。
  1)参入の促進 2)キャリアパスの確立 3)職場環境の整備・改善 4)処遇改善

およそ殆どの介護サービスや医療サービスは、公的保険制度を資金源とする社会保障サービスであると同時に、事業(ビジネス)である。介護事業は雇用の場であり、使用者と労働者がいる。『介護人材』と言うと、介護事業に係る労働者の離職問題や賃金問題に関する論点がばかりに見受けられる。厚労省が提示する介護人材関係資料は数多あるが、直近での代表例は資料1~3のようなものだ。

これらも含めて、介護事業に係る労働者に焦点を当てることは常ではあるが、介護事業に使用者に焦点を当てることはあまり見たことがない。介護事業の経営の在り方に関しては、これまで方向性を示す主張が少なくないが、政府・審議会レベルで大きく取り上げていくべきだ。例えば、先のブログ記事(☆1☆2)でも書いたように、社会福祉法人の特別養護老人ホームに巨額の内部留保が貯まっていることが問題視されているが、これは介護事業経営の在り方を問う契機になるはずだ

介護人材政策に関しては、労働者の確保・育成だけでなく、使用者(経営者)の確保・育成についても、今後積極的に提起していく必要がある。



<資料1>

(出所:厚生労働省資料


<資料2>

(出所:厚生労働省資料


<資料3>

(出所:厚生労働省資料


《参考》
介護人材政策に関する考え方について書いた先のブログ記事(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)