昨日の朝日新聞ネット記事によると、厚生労働省は、特別養護老人ホームへの入居を「要介護3」以上に限定する案について、認知症など一定の条件を満たす場合は「要介護1~2」(軽度者)でも例外的に入居を認める方針とのこと。これは、一昨日の厚生労働省・社会保障審議会の第51回介護保険部会で提示された資料に掲げられている。
本件については先のブログ記事にも書いたが、そう遠くない時期に、特養の利用者構成は「要介護3」以上(中重度者)で占められることになるだろう。資料1〔=特養における要介護1・2の利用者の割合〕及び資料2〔=特養における要介護1・2の新規入所者の割合〕を見ると、全国平均では、特養利用者に占める軽度者の割合は1割程度でしかない。
だから、制度上は特養の入所基準が厳しくなったとしても、実態上は軟着陸であろう。いわゆる社会保障制度改革プログラム法案が今臨時国会に提出されているが、今回の特養入所基準厳格化の動きは、先のブログ記事で掲げた同法案の趣旨を踏まえた施策の一つだ。にもかかわらず、例外的な柔軟措置が提示されたのは、実際にはそう簡単に割り切れるものではないからだろう。
上記の朝日記事によると、「要支援向けサービスの費用総額は、今のままだと毎年5~6%増える見通し。これを75歳以上の「後期高齢者」の人数の伸び率(3~4%)に抑える。25年度時点で費用を約1600億円圧縮できるという」とのことだが、介護保険給付総額が10兆円に達しようとしている中での1600億円圧縮を軽度者向け介護サービス内容の見直しで賄おうとするのであれば、同様に、中重度向け介護サービス内容の見直しとそれによる費用圧縮額を示すべきだ。介護保険財政の配分の重点化シフトに当たっては、中重度か軽度かではなく、あくまでも介護保険財政を投入することによる費用対効果で測っていくべきである。介護保険制度の持続可能性を維持・向上していくには、それが唯一最善の途と思料する。
<資料1>
(出所:厚生労働省資料)
<資料2>
(出所:厚生労働省資料)