本日アップ分は、第五章 のp348からp399まで。
三好管理官の焼身自殺の知らせに動転した合田さんは、義兄の元へ駆け込む。警察という組織、それに潰された一人の人間。慙愧の念に耐え切れず、半田を追い込むのは自分しかないと、ある手段に出ることを思いつく。
半田さんにとっても、かつての上司の焼身自殺は衝撃だった。
そんな中で、バラバラになっていくLJのメンバーたち。在日の複雑な関係に縛られた高克己は、離脱。ヨウちゃんは工場を辞め、引越し。妻が植物人間状態になった布川淳一は、娘のレディを捨てて蒸発を考えているようだった。
城山社長は、再度倉田副社長と話し合いを。しかし「虚しい話し合い」と決意の固い倉田さんに一蹴される。
久保っちは、根来史彰と佐野純一の失踪に関する有力なネタを入手。ただ、それをどう扱っていいのかが解らないのだった。
倉田さんが地検と話し合っていることを知った城山社長は、白井副社長と面談。社長は城井さんにするが、自分も倉田さんと共に法廷に立つと宣言し、白井さんを慌てさせる。
物井さんは競馬場で、久しぶりに半田さんと会う。彼を尾行している刑事に気づくが、半田さんはどこ吹く風。楽しんでいるようにも見えた。
その後、布川さんの姿を見かけたが、レースが終わってもレディの傍にやって来ない。ついに布川さんは蒸発することに決めたのだった・・・。
***
今回のツボ、その1。三好管理官の死に対する合田さんの激しい怒りと悲しみを、加納さんは淡々と受け止めて、流しているようにも見えます・・・が! 義兄の意味深な発言が何とも言えないんですよ~! しかし合田さんは自分のことと半田さんのことで精一杯。後から思うと、発言のタイミングが悪いですよ、義兄(笑)
そしてここが、第五章で義兄弟が対面する最後の場面になったのでした。
今回のツボ、その2。破綻していくLJメンバー。唯一成長したといえるのが、ヨウちゃんくらいですね。高さんの吐いた言葉と物井さんの詠嘆が、全てを表しているでしょう。
今回のツボ、その3。半田さんの妄想、加速(笑) いや、もうそれしか楽しみがないんですよね、半田さん。しかもそれを知っているかのような、合田さんの挑発。定規で一文字ずつ文章を書いて、半田さんに送りつけてるんだから。そういう合田さんが、半田さんよりも一層怖いかもしれん・・・。
***
★☆★本日の名文・名台詞 からなのセレクト★☆★
★三好の死を悼む自分が、同時に自分を嫌悪するという混乱や、もう理屈も何もない悲痛に駆られて、合田は暗がりに向かって「祐介!」と大声で義兄の名を呼んだ。
「辛いんだ、何とかしてくれ! 辛くて、頭が変になりそうだ」 (『LJ』下巻p352)
★「納得する必要はない。辛いことが、辛くなくなることはない。自分の腹に収める場所を見つけるだけだ。俺もそうしてきた……」
「根来のことか」
「……いや。人生のいろんなことだ。君は、俺を聖人だと思っていたのか……?」 (『LJ』下巻p352)
ああ、義兄・・・ 人生の教訓にしたいくらいの義兄最高の名台詞なんですが、タイミングと言った相手が悪いですよ・・・(苦笑)
★単純かつ非生産的な回答が二つあるだけなのだ。一つは、ほかに何かやりたいことがあるわけでもないという現実であり、一つは、自分でも抑えられない半田修平一名に対する妄執だった。今、自分から半田修平を除いたら、金も家族も地位も名誉もない、人生の目標も見通しもない、神はおろか人間すら愛したことのない、三十六歳のオス一匹が残るだけだ。 (『LJ』下巻p353)
三十六歳のオス一匹・・・この表現、もの凄く好き。合田さんにふさわしいですわ。
★「実家の会社さえなかったら、俺はずっと、あんたらと競馬場にいたと思う。あのころが一番良かった」 (『LJ』下巻p357)
あのころが一番良かった。これは誰でも一度は思うこと・・・。高さんにとっては、これが過去への訣別であり、どうにも逃げられない、避けられない現実のしがらみに巻かれてしまったという事実を、示しているのですね・・・。
★「値段のつけられないものは、いっぱいある。たとえば、こうして蒲鉾食ってる、この生活」 (『LJ』下巻p364)
★ときどき、自分の周りの空気がピシッと音を立てて締まってくることがある。今もまた空気というか闇というか、何かがピシッと締まってきて、物井は独り慄然とした。彼岸に向かって緩やかに流れている時間の川が、こうしてときどき何かの拍子に変調をきたし、とうの昔に観念したと思っている本人に、お前はほんとうに分かっているのかと念を押してくる。ゆるゆると蛇行しつつ流れていく老いの時間とはきっと、誰にとってもそうしたものであるに違いなかった。 (『LJ』下巻p365)
★死者に抗議を突きつけられた者たちは、死者のためではなく、和解や弁明の機会を永遠に失った自らのために、涙しなければならないのだ。 (『LJ』下巻p367)
★「刑事さ。俺に惚れてやがるんだ」
(・・・略・・・)
「せいぜい遊んでやって、最後に地獄を見せてやる。……必ずな」 (『LJ』下巻p360)
★「辛いなあ……」物井は自分自身と、レディと、布川夫婦と、自分たちが生きているこの時代の全部の人間に向かって、そう呟いてみた。孫の孝之が亡くなったときと同じように、自分でどうにか出来ることではない辛さだった。 (『LJ』下巻p397)
★どこにも出口のない人生はほんとうにあったのだ、と物井は自分に呟いた。まさに今、ここに二つ。 (『LJ』下巻p399)
三好管理官の焼身自殺の知らせに動転した合田さんは、義兄の元へ駆け込む。警察という組織、それに潰された一人の人間。慙愧の念に耐え切れず、半田を追い込むのは自分しかないと、ある手段に出ることを思いつく。
半田さんにとっても、かつての上司の焼身自殺は衝撃だった。
そんな中で、バラバラになっていくLJのメンバーたち。在日の複雑な関係に縛られた高克己は、離脱。ヨウちゃんは工場を辞め、引越し。妻が植物人間状態になった布川淳一は、娘のレディを捨てて蒸発を考えているようだった。
城山社長は、再度倉田副社長と話し合いを。しかし「虚しい話し合い」と決意の固い倉田さんに一蹴される。
久保っちは、根来史彰と佐野純一の失踪に関する有力なネタを入手。ただ、それをどう扱っていいのかが解らないのだった。
倉田さんが地検と話し合っていることを知った城山社長は、白井副社長と面談。社長は城井さんにするが、自分も倉田さんと共に法廷に立つと宣言し、白井さんを慌てさせる。
物井さんは競馬場で、久しぶりに半田さんと会う。彼を尾行している刑事に気づくが、半田さんはどこ吹く風。楽しんでいるようにも見えた。
その後、布川さんの姿を見かけたが、レースが終わってもレディの傍にやって来ない。ついに布川さんは蒸発することに決めたのだった・・・。
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今回のツボ、その1。三好管理官の死に対する合田さんの激しい怒りと悲しみを、加納さんは淡々と受け止めて、流しているようにも見えます・・・が! 義兄の意味深な発言が何とも言えないんですよ~! しかし合田さんは自分のことと半田さんのことで精一杯。後から思うと、発言のタイミングが悪いですよ、義兄(笑)
そしてここが、第五章で義兄弟が対面する最後の場面になったのでした。
今回のツボ、その2。破綻していくLJメンバー。唯一成長したといえるのが、ヨウちゃんくらいですね。高さんの吐いた言葉と物井さんの詠嘆が、全てを表しているでしょう。
今回のツボ、その3。半田さんの妄想、加速(笑) いや、もうそれしか楽しみがないんですよね、半田さん。しかもそれを知っているかのような、合田さんの挑発。定規で一文字ずつ文章を書いて、半田さんに送りつけてるんだから。そういう合田さんが、半田さんよりも一層怖いかもしれん・・・。
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★☆★本日の名文・名台詞 からなのセレクト★☆★
★三好の死を悼む自分が、同時に自分を嫌悪するという混乱や、もう理屈も何もない悲痛に駆られて、合田は暗がりに向かって「祐介!」と大声で義兄の名を呼んだ。
「辛いんだ、何とかしてくれ! 辛くて、頭が変になりそうだ」 (『LJ』下巻p352)
★「納得する必要はない。辛いことが、辛くなくなることはない。自分の腹に収める場所を見つけるだけだ。俺もそうしてきた……」
「根来のことか」
「……いや。人生のいろんなことだ。君は、俺を聖人だと思っていたのか……?」 (『LJ』下巻p352)
ああ、義兄・・・ 人生の教訓にしたいくらいの義兄最高の名台詞なんですが、タイミングと言った相手が悪いですよ・・・(苦笑)
★単純かつ非生産的な回答が二つあるだけなのだ。一つは、ほかに何かやりたいことがあるわけでもないという現実であり、一つは、自分でも抑えられない半田修平一名に対する妄執だった。今、自分から半田修平を除いたら、金も家族も地位も名誉もない、人生の目標も見通しもない、神はおろか人間すら愛したことのない、三十六歳のオス一匹が残るだけだ。 (『LJ』下巻p353)
三十六歳のオス一匹・・・この表現、もの凄く好き。合田さんにふさわしいですわ。
★「実家の会社さえなかったら、俺はずっと、あんたらと競馬場にいたと思う。あのころが一番良かった」 (『LJ』下巻p357)
あのころが一番良かった。これは誰でも一度は思うこと・・・。高さんにとっては、これが過去への訣別であり、どうにも逃げられない、避けられない現実のしがらみに巻かれてしまったという事実を、示しているのですね・・・。
★「値段のつけられないものは、いっぱいある。たとえば、こうして蒲鉾食ってる、この生活」 (『LJ』下巻p364)
★ときどき、自分の周りの空気がピシッと音を立てて締まってくることがある。今もまた空気というか闇というか、何かがピシッと締まってきて、物井は独り慄然とした。彼岸に向かって緩やかに流れている時間の川が、こうしてときどき何かの拍子に変調をきたし、とうの昔に観念したと思っている本人に、お前はほんとうに分かっているのかと念を押してくる。ゆるゆると蛇行しつつ流れていく老いの時間とはきっと、誰にとってもそうしたものであるに違いなかった。 (『LJ』下巻p365)
★死者に抗議を突きつけられた者たちは、死者のためではなく、和解や弁明の機会を永遠に失った自らのために、涙しなければならないのだ。 (『LJ』下巻p367)
★「刑事さ。俺に惚れてやがるんだ」
(・・・略・・・)
「せいぜい遊んでやって、最後に地獄を見せてやる。……必ずな」 (『LJ』下巻p360)
★「辛いなあ……」物井は自分自身と、レディと、布川夫婦と、自分たちが生きているこの時代の全部の人間に向かって、そう呟いてみた。孫の孝之が亡くなったときと同じように、自分でどうにか出来ることではない辛さだった。 (『LJ』下巻p397)
★どこにも出口のない人生はほんとうにあったのだ、と物井は自分に呟いた。まさに今、ここに二つ。 (『LJ』下巻p399)
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