「地天泰」の特徴は「泰は通ずるなり」で上下の意思疎通が良いことでもある。各爻について言えば、初九と六四、九二と六五、九三と上六が全て正しく応じている。その意思疎通がより解るように、今回は初九と六四、九二と六五、九三と上六の順に説明することにする。
「初九、茅(ちがや)を抜くに茹(じょ)たり。其の彙(たぐい)を以てす。征きて吉。」
茅(ちがや)は草の一種。茹(じょ)は根が繋がっている様子。彙(たぐい)は同類。
初九は下位にいる若く、有能な人材である。六四と意思疎通があり、何でも意見を聞いて貰える関係にあるので、有能な人材があたかも茅(ちがや)を抜いた時に、後から後から続く様に集まって来る。「征きて吉。」どんどん前に進んで吉である。
「六四、翩翩(へんぺん)たり。富めりとせずして其の隣(となり)を以てす。戒めずして以て孚(まこと)あり。」
初九のところに、頻繁に顔を見せ、話を聴き、理解し、思う存分働いてもらっている。「翩翩(へんぺん)たり。」は気軽に出かける様子。「富めりとせずして其の隣(となり)を以てす。」本来は地位も高く富める立場ではあるが、そんなことは気にもしないで、上層部とも共にしている。「戒めずして以て孚(まこと)あり。」下の者と付き合うことを、互いに諫めたりもしないで、信頼し合っている。
「九二、荒(こう)を包み、憑河(ひょうか)を用ひ、遐(とお)きを遺(わす)れず、朋(とも)亡(うしな)はれ、中行(ちゅうこう)に尚(あ)ふを得(う)。」
九二は九五と意思疎通し、様々な仕事を任せられている、徳を備えた士分である。「荒(こう)を包み、」は荒くれ男たちを包容する。「憑河(ひょうか)を用ひ、」は大河を渉るように果断決行する。「遐(とお)きを遺(わす)れず」は遠くまで目が行き届く。「朋(とも)亡(うしな)はれ」は私することなく公平である。「中行(ちゅうこう)に尚(あ)ふを得(う)。」中行(六五)の思し召しにかない、信頼を得る。
「六五、帝乙(ていいつ)、妹(いもうと)を帰(とつ)がしむ。以て祉(さいわい)あり。元吉。」
その六五であるが、「帝乙(ていいつ)」は殷時代の帝王。九二を信頼し、「妹(いもうと)を帰(とつ)がしむ。」その証として自分の妹を嫁がしめる。「以て祉(さいわい)あり。元吉。」大いに吉である。
九三、平(たいら)かなるとして傾かざる无く、往くとして復(かえ)ざる无し。艱貞なれば咎无し。恤(うれ)ふる勿れ、其れ孚(まこと)あれ。食に干(おい)福(さいわい)有り。」
九三は位正しい陽爻、現場責任者の立場にある。現状は安泰だが、将来を心配し、応じている上六に悩みを打ち明けることがある。「平(たいら)かなるとして傾かざる无く、往くとして復(かえ)ざる无し。」平らなものはやがて傾く、行ったものはやがて帰って来るものである。「艱貞なれば咎无し。」危機意識をもっていれば、咎めはないだろう。「恤(うれ)ふる勿れ、其れ孚(まこと)あれ。」そんなに心配しないでも良い。心がけが正しいのならそれで良い。「食に干(おい)福(さいわい)有り。」美味しい食事が出来ることを幸福と思えば良いのだ。
「上六、城、堭(からぼり)に復(かえ)る。師(いくさ)を用(もち)ふる勿れ。邑(ゆう)より命(めい)を告ぐ。貞なるも吝。」
上六は引退した天子の位にいる。九三とともに将来を心配している。「城、堭(からぼり)に復(かえ)る。」立派な城も昔はただの堀だった。いつかは元の堀に帰るものだ。「師(いくさ)を用(もち)ふる勿れ。」又、戦争をすることになるかも知れんが、それは避けたいものだ。「邑(ゆう)より命(めい)を告ぐ。」邑(ゆう)は天子のいる都。都から命令を発しても、村々には届かない。「貞なるも吝。」いくら正しいとはいっても残念なことだ。
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