さわやか易

人生も歴史もドラマとして描いております。易の法則とともに考えると現代がかかえる難問題の解決法が見えてきます。(猶興)

「地天泰」(爻辞)

2024-10-07 | さわやか易・講座

「地天泰」の特徴は「泰は通ずるなり」で上下の意思疎通が良いことでもある。各爻について言えば、初九と六四、九二と六五、九三と上六が全て正しく応じている。その意思疎通がより解るように、今回は初九と六四、九二と六五、九三と上六の順に説明することにする。

「初九、茅(ちがや)を抜くに茹(じょ)たり。其の彙(たぐい)を以てす。征きて吉。」

茅(ちがや)は草の一種。茹(じょ)は根が繋がっている様子。彙(たぐい)は同類。

初九は下位にいる若く、有能な人材である。六四と意思疎通があり、何でも意見を聞いて貰える関係にあるので、有能な人材があたかも茅(ちがや)を抜いた時に、後から後から続く様に集まって来る。「征きて吉。」どんどん前に進んで吉である。

「六四、翩翩(へんぺん)たり。富めりとせずして其の隣(となり)を以てす。戒めずして以て孚(まこと)あり。」

初九のところに、頻繁に顔を見せ、話を聴き、理解し、思う存分働いてもらっている。「翩翩(へんぺん)たり。」は気軽に出かける様子。「富めりとせずして其の隣(となり)を以てす。」本来は地位も高く富める立場ではあるが、そんなことは気にもしないで、上層部とも共にしている。「戒めずして以て孚(まこと)あり。」下の者と付き合うことを、互いに諫めたりもしないで、信頼し合っている。

「九二、荒(こう)を包み、憑河(ひょうか)を用ひ、遐(とお)きを遺(わす)れず、朋(とも)亡(うしな)はれ、中行(ちゅうこう)に尚(あ)ふを得(う)。」

九二は九五と意思疎通し、様々な仕事を任せられている、徳を備えた士分である。「荒(こう)を包み、」は荒くれ男たちを包容する。「憑河(ひょうか)を用ひ、」は大河を渉るように果断決行する。「遐(とお)きを遺(わす)れず」は遠くまで目が行き届く。「朋(とも)亡(うしな)はれ」は私することなく公平である。「中行(ちゅうこう)に尚(あ)ふを得(う)。」中行(六五)の思し召しにかない、信頼を得る。

「六五、帝乙(ていいつ)、妹(いもうと)を帰(とつ)がしむ。以て祉(さいわい)あり。元吉。」

その六五であるが、「帝乙(ていいつ)」は殷時代の帝王。九二を信頼し、「妹(いもうと)を帰(とつ)がしむ。」その証として自分の妹を嫁がしめる。「以て祉(さいわい)あり。元吉。」大いに吉である。

九三、平(たいら)かなるとして傾かざる无く、往くとして復(かえ)ざる无し。艱貞なれば咎无し。恤(うれ)ふる勿れ、其れ孚(まこと)あれ。食に干(おい)福(さいわい)有り。」

九三は位正しい陽爻、現場責任者の立場にある。現状は安泰だが、将来を心配し、応じている上六に悩みを打ち明けることがある。「平(たいら)かなるとして傾かざる无く、往くとして復(かえ)ざる无し。」平らなものはやがて傾く、行ったものはやがて帰って来るものである。「艱貞なれば咎无し。」危機意識をもっていれば、咎めはないだろう。「恤(うれ)ふる勿れ、其れ孚(まこと)あれ。」そんなに心配しないでも良い。心がけが正しいのならそれで良い。「食に干(おい)福(さいわい)有り。」美味しい食事が出来ることを幸福と思えば良いのだ。

「上六、城、堭(からぼり)に復(かえ)る。師(いくさ)を用(もち)ふる勿れ。邑(ゆう)より命(めい)を告ぐ。貞なるも吝。」

上六は引退した天子の位にいる。九三とともに将来を心配している。「城、堭(からぼり)に復(かえ)る。」立派な城も昔はただの堀だった。いつかは元の堀に帰るものだ。「師(いくさ)を用(もち)ふる勿れ。」又、戦争をすることになるかも知れんが、それは避けたいものだ。「邑(ゆう)より命(めい)を告ぐ。」邑(ゆう)は天子のいる都。都から命令を発しても、村々には届かない。「貞なるも吝。」いくら正しいとはいっても残念なことだ。

次ページ:「天地否」(卦辞)


コメントを投稿