「お母さん、来月頭にはあっちのアパート
引き上げて来るってさ!」
あれから、亮はちょっとした憂鬱に
襲われている。
なんというか、自分で自分の毒に
やられてしまったというか。
「どうしたの?元気ないよ。」
「や。うん。大丈夫だよ。」
自分で自分の気持ちさえ掴みかねて
いるのだから、言葉に出来よう筈がない。
「なんか、お母さんに向かって他人だって
連呼したんだって?」
美月はにこにこしながら言った。
「あ。それだな。今の鬱エピソード。」
「あれ?魔界の人たちはそういうの
当たり前じゃん。何ダメージ食らってんの?」
「そもそも、他人はこんなお節介しないよ。
あれほどお前らに禁句にしてたような
無遠慮な物言いも沢山しちゃったし。」
実は自分の軸がブレブレだったことにも
自己嫌悪になる。
「あれは悪趣味な論争、いや虐めだよ。」
「良心の呵責ってやつ?気がすまないなら
謝ればいいんじゃないの?」
「それこそ軸がブレブレじゃないか。」
亮はソファーに倒れ込んで、膝を抱えて
丸くなる。うううと唸りながら転げて
今度はラグに打ち上がって、海老のように
跳ねた。
「ごめん。美月。」
結果はどうあれ、絹江さんを傷つけた
ことには変わりがない。
全てが丸く収まったようにも見えるが、
思い返す余裕が出来て、どんどん自分の
悪行が心にずしりと重く足枷になってくる。
後悔とも違う。ひたすら、自分の愚かさと
傲りを思い知らされる。
これは自分が悪い。自分の落とし前を
自分でつけきれずに滅入っているだけだ。
「それいけ!」
いつのまにか、昼寝から目覚めた双子たちが
放牧されていた。
「放すなら放すって言って!」
ハイハイしながら襲ってくる息子たちに
あっという間に登られた。
渉は顔面騎乗、卓は鳩尾で胃を掴む勢いで
手をにぎにぎしている。
「ぐぶあ。ああへほ、おはへ!」
美月は二人を抱き上げて小脇に抱えた。
あぶう!と抗議をするも、
ママには敵わない。
「やり過ぎ。パパにはいい子いい子でしょ」
「そんな加減無理だよ!」
亮はいいように陵辱されゲフゲフと
咳き込み左右に転げた。
「鬱陶しいから起きて。」
にこにこしているわりに、物言いがキツイ。
「はあい。」
亮は起き上がるとまたソファでものを思う。
「お前たちはここで遊んどいで。」
リビング脇のプレイシートを敷いた一角で
二人はお座りしながらオモチャを噛み
飛行機を取り合い、ぬいぐるみをパフパフ
鳴かせる。最近は二人で、くんずほぐれつ
遊べるようになってきた。
美月は洗濯物を畳みながら、
亮に話しかける。
「あのさあ。」
「何?」
「こんなこと言って、嫌な気持ちにさせたら
ごめんだけど。」
「ん?」
「そんな風にじたばた悩む亮も好きだよ。」
「な…っ」
亮は不意打ちを食らって、顔が熱くなる。
さぞや赤くなっているだろうと
恥ずかしくて、また顔が熱い。
「大好きよ。」
美月は平然と言う。
当たり前のこと、と。
「や、やめて。美月。」
「どうして?」
「だって。恥ずかしい。」
「変なの。」
亮は、何としてでも夜までに体勢を立て直し
この女をベッドでお仕置きせねばと思う。
青臭い傷に出来た瘡蓋を剥がすのは
後回しにしよう。
「くそう。」
「降参ですか?」
美月は畳み終えた洗濯物を脇に積んで
改めて亮の方をみた。
「くそう、くそう。」
亮は美月の膝まで這ってきて、ごろりと
頭を乗せた。
「美月のおまた、いいにおい。」
アルファとベータのまねをしながら
美月の太ももを撫でた。
「よしよし。可愛いね。」
美月もコウモリ兄弟を迎えるようにして
やさしく亮の耳の後ろをカキカキした。
引き上げて来るってさ!」
あれから、亮はちょっとした憂鬱に
襲われている。
なんというか、自分で自分の毒に
やられてしまったというか。
「どうしたの?元気ないよ。」
「や。うん。大丈夫だよ。」
自分で自分の気持ちさえ掴みかねて
いるのだから、言葉に出来よう筈がない。
「なんか、お母さんに向かって他人だって
連呼したんだって?」
美月はにこにこしながら言った。
「あ。それだな。今の鬱エピソード。」
「あれ?魔界の人たちはそういうの
当たり前じゃん。何ダメージ食らってんの?」
「そもそも、他人はこんなお節介しないよ。
あれほどお前らに禁句にしてたような
無遠慮な物言いも沢山しちゃったし。」
実は自分の軸がブレブレだったことにも
自己嫌悪になる。
「あれは悪趣味な論争、いや虐めだよ。」
「良心の呵責ってやつ?気がすまないなら
謝ればいいんじゃないの?」
「それこそ軸がブレブレじゃないか。」
亮はソファーに倒れ込んで、膝を抱えて
丸くなる。うううと唸りながら転げて
今度はラグに打ち上がって、海老のように
跳ねた。
「ごめん。美月。」
結果はどうあれ、絹江さんを傷つけた
ことには変わりがない。
全てが丸く収まったようにも見えるが、
思い返す余裕が出来て、どんどん自分の
悪行が心にずしりと重く足枷になってくる。
後悔とも違う。ひたすら、自分の愚かさと
傲りを思い知らされる。
これは自分が悪い。自分の落とし前を
自分でつけきれずに滅入っているだけだ。
「それいけ!」
いつのまにか、昼寝から目覚めた双子たちが
放牧されていた。
「放すなら放すって言って!」
ハイハイしながら襲ってくる息子たちに
あっという間に登られた。
渉は顔面騎乗、卓は鳩尾で胃を掴む勢いで
手をにぎにぎしている。
「ぐぶあ。ああへほ、おはへ!」
美月は二人を抱き上げて小脇に抱えた。
あぶう!と抗議をするも、
ママには敵わない。
「やり過ぎ。パパにはいい子いい子でしょ」
「そんな加減無理だよ!」
亮はいいように陵辱されゲフゲフと
咳き込み左右に転げた。
「鬱陶しいから起きて。」
にこにこしているわりに、物言いがキツイ。
「はあい。」
亮は起き上がるとまたソファでものを思う。
「お前たちはここで遊んどいで。」
リビング脇のプレイシートを敷いた一角で
二人はお座りしながらオモチャを噛み
飛行機を取り合い、ぬいぐるみをパフパフ
鳴かせる。最近は二人で、くんずほぐれつ
遊べるようになってきた。
美月は洗濯物を畳みながら、
亮に話しかける。
「あのさあ。」
「何?」
「こんなこと言って、嫌な気持ちにさせたら
ごめんだけど。」
「ん?」
「そんな風にじたばた悩む亮も好きだよ。」
「な…っ」
亮は不意打ちを食らって、顔が熱くなる。
さぞや赤くなっているだろうと
恥ずかしくて、また顔が熱い。
「大好きよ。」
美月は平然と言う。
当たり前のこと、と。
「や、やめて。美月。」
「どうして?」
「だって。恥ずかしい。」
「変なの。」
亮は、何としてでも夜までに体勢を立て直し
この女をベッドでお仕置きせねばと思う。
青臭い傷に出来た瘡蓋を剥がすのは
後回しにしよう。
「くそう。」
「降参ですか?」
美月は畳み終えた洗濯物を脇に積んで
改めて亮の方をみた。
「くそう、くそう。」
亮は美月の膝まで這ってきて、ごろりと
頭を乗せた。
「美月のおまた、いいにおい。」
アルファとベータのまねをしながら
美月の太ももを撫でた。
「よしよし。可愛いね。」
美月もコウモリ兄弟を迎えるようにして
やさしく亮の耳の後ろをカキカキした。