亀の啓示

18禁漫画イラスト小説多数、大人のラブコメです。

とにかくイチャイチャハロウィン小説版(32)

2018-02-02 09:41:12 | とにかくイチャイチャハロウィン小説版
美月はぐったりして
ストレッチャーで病室に運ばれてきた。

「旦那さんは?」

シンは自分だと冗談を言おうと思ったが
喉元で押さえた。

少し出血が多く、明日まで母体を
休めることを優先するので
赤ちゃんはナースステーションで
預かりますと説明された。
ご主人にお伝えくださいと言われて
黙って頷いたシンだった。

美月は泥のように、いや泥だな
こいつが目を開けて笑うとは思えなかった。

吸うだけがヴァンパイアだと
人間は思っているが、人間よりも
生命力の強いヴァンパイアには
精気を与え合う能力がある。
人間の血が吸えなくなっても
余力のあるものが衰えたものに
力を分け与えることが出来るのだ。

ヴァンパイアはそういった出入口が
牙になるので、血を吸うときのように
牙を刺して注入する。
或いは、口と口で。
あら。キスに似てるじゃない?
厳密に言うと違うんだけど
その流れでキスにしたって
差し支えないというか。
しちゃう?
美月、ぐったりしてて
かわいそうだし、な。
しちゃおう。うん。
シンは美月にゆっくりと
唇から近づいた。
あと10cmというところで…

「あ、シンちゃん?」

美月はパッチリと目を覚まし
シンに満面の笑みをみせた。
シンはがくりと肩を落とす。
迷ってないでしとけばよかったと
ちょっぴり後悔した。

「いやあ、参ったよ。出産大変!!
亮は。電話しに行ったかな?」

「ああ。俺隣の病院にいたんだよ?
そしたらお前の赤ちゃんたちの泣き声が
聞こえたんだよ。来てみたら本当に
生まれてたんだ。」

「マジで聞こえたのか?すげえな!」

後ろから亮の声がした。

「亮ぅ。」

「直樹とお義父さんに連絡した。
明日二人で会いに来てくれるって。」

亮は迷うことなく美月の枕元に行き
美月の唇を吸う。美月はうっとりと
鼻から吐息を漏らす。
しばらく普通にキスをしていたが、
亮の首筋が少し緊張して、筋が立った。
亮が美月に精気を流し込んでいるのだ。

「んああんっ」

美月は頬を紅潮させ、熱い息を吐く。
先程までの疲れきって泥と化した
美月はもういなかった。

「お休み。」

「亮。ありがと。」

美月は目を閉じて、すぐに寝息を
立て始めた。
亮は病室を出る。シンが慌てて追いかけると
案の定、廊下の長椅子にぐったりと
座り込んでいた。美月にありったけの精気を
注ぎ込んだらしい。
亮は人間との混血である。
精気を流し入れるのも上手いとは言えないし
それだけ消耗する。
真っ青な亮の顎を掴む。

「無理しやがって。」

シンは亮の口に自分の口を近づける。
亮は一瞬にして何をするつもりか
わかったようで、目を剥いて必死で
首を捻った。

「や、やめろ!大丈夫だ、俺は!」

「いや。大丈夫じゃない。」

「う、あ、ぶあああ!!」

ガキンと牙がぶつかり合う。
位置的な問題で、いくら接触を減らそうと
工夫をしたところで唇が触れる。
舌だって絡まないようにするのは一苦労だ。

「むああああん!!」

ジタバタと暴れる亮。
そこへナースが数名駆け寄った。
助けが入ったと亮は思ったが。

「長内さん!ここは病院ですよ!
大人しくしてください!!」

よりによって亮はナースたちに
取り押さえられる形でシンとのディープキスを
続行せしめられたのだった。
ぴろん、と独特の電子音が鳴る。
誰か動画撮ってるだろう!
やめろ!
すべてはシンの牙に響くばかりで
言葉として外に聞こえることはなかった。




「これから見舞い客とか色々来るだろ?
お前が捌いてやらなくてどうするよ。」

「いや、分けてもらっといてなんだが
どうしてこっちにしなかった?」

亮は自分の首筋を差した。

「いや、襟が邪魔だったし。」

「それだけ?」

亮は半分わかっていて問い詰めている。

「やっかみ。」

「お前は鞠ちゃんとうまくやってんだろ。」

「あんないい女口説き落として
トントン拍子に子どもまで産ました
お前に、せめてもの罰を下したの。」

「勘弁して。」

亮ははたと気づいてシンの胸ぐらを掴む。

「してないだろうな!」

「しようと思ったけどしなかったよ?」

「お前がそういうつもりなら、こっちにも
考えがあるぞ。お前の素行の悪さ、全部
まとめて鞠ちゃんにバラすからな。」

シンの顔から血の気が引いた。

「美月と鞠ちゃんとは、メールのやり取り
くらいはあるんだからな?」

「お許しください。」

「もう二度とするなよ。」

なんか色々と、二度としたらダメなことが
思い当たるシンだったが、すべてに深く
頷いたのである。