亀の啓示

18禁漫画イラスト小説多数、大人のラブコメです。

とにかくイチャイチャハロウィン小説版(51)

2018-02-22 06:44:07 | とにかくイチャイチャハロウィン小説版
「あら。」

エリザベスは見たこともない
女の赤ちゃん二人に首をかしげた。
同時に自分の体の違和感にも気づいた。
視界のど真ん中に手をかざす。
白くてふっくらとした手が目に入る。

「んまあ。」

再び赤ちゃんたちに目を落とした。

「ヒト形になってもなかなかの美人さんね。」

エリザベスは深く頷き、二人の娘の頬を
指先でやさしく撫でた。

「ママっ!ママーっ!!」

奥の部屋からデルタが走り込んで来た。

「なあに、デルタ。静かにして頂戴!」

「あ、ごめんなさい。やっぱりママも。」

ヒト形に変身したデルタは二回目とは言え
よほど変身が嫌なのだろう、血相を変えて
飛んできたのだった。

「美雪の様子を見てきて。」

赤ちゃんはデルタの慌てぶりにか
お腹が減ったのか、二人で同時に
泣き出した。






「美雪!」

寝室では吐くものもないのに
吐き気が収まらず、ずっと洗面器に
顔を突っ込んで衰弱し切った美雪がいた。

「あ…デルタ…」

「美雪。お医者さんに行った方が
良くない?」

「うぶ」

美雪が白目を剥く。

背中をさすろうとしたデルタの手が
翼に戻ったり手に変化したりする。

「参ったなあ。お医者さんに連絡するわ。
回診してくれないか聞いてみる。」

「ご………めぇん…デル……タ」









「辛いでしょ。入院する?」

同じ魔女の女医が外来の合間だからと
家まで来てくれた。

「あれ?妹さん?」

家族構成は夫婦二人と聞いていたので
女医はデルタを見て首をかしげたのだ。

「なんか、あたしの具合が悪くて
制御出来ない魔法が出ちゃうみたいで。」

「それは?」

「彼女はうちのコウモリなの。」

女医はマジマジとデルタをみる。

「電話くれたのも、あなた?」

「はい。」

「あらら。」

「早くコウモリに戻して。」

デルタはこの姿が嫌いだ。
何でか分からないが、この姿になると
ガンマより小さくなる。
デルタはガンマがガンマじゃないみたいで
とても落ち着かない。
今日はガンマは出掛けているが
このままじゃ帰ってくるなり変身だ。

「美雪が入院すれば吐き気止めの薬も
点滴で入れられるし、無理に食べなくても
いいから楽になるわ。そして魔法が漏れる
こともないし、そもそも病室からでは
反応することもないと思うわ。」

デルタは美雪を見た。
美雪はこんなになっても
入院するのは嫌と言う顔だ。
デルタにはよくわかる。
美雪はそういう女だ。
賞平に心配をかけまいとしている。

「しないか。入院。」

女医にもわかったようである。

「吐き気止めは飲み薬で処方するから。
近所の薬局で出してもらって。」

「ごめんなさい。」

「いいわ。辛いのはあなただもの。」

女医はデルタに向かって手招きした。

「最近魔法を使ってないから自信ないけど
あなた一人くらいなら美雪の魔法から
ブロックしてあげられると思うわ。」

「戻れる?コウモリに?」

「えっと。このおうちにはコウモリ
たくさんいるんでしょ?」

女医は玄関から寝室に入ってきたから
奥の部屋のエリザベスとスミレ、スイトピー
には会っていないのだ。
だが美雪が複数のコウモリと暮らしている
ことは問診で聞いていたし、そのコウモリが
全員ヒト形になったらごちゃごちゃするかな
なんて考えたのだった。それに、この子は
コウモリの姿に戻りたいみたいだし。

「あと、私のママと生まれたばかりの
赤ちゃんがふたりよ。あ、私の兄もいる。」

「あー。ママと赤ちゃんは同じ姿に
しとかないとまずいわね。じゃあ、あなたか
あなたのお兄さんか。どちらかを。」

「あ、今兄は出掛けてて」

その時、隣の部屋から野太い叫び声がした。

「またかよ!美雪だろ!!」

どかどかと寝室に入ってきたのは
あの初めての変身のとき、確かにこういう
姿形だったガンマだった。

「ガンマ。」

「お前もか、デルタ。」

女医は新たな変身コウモリを見て
腕を組んだ。首を左右に傾けコキコキと
骨を鳴らす。

「あなたも嫌みたいね。」

「このおばさんは?」

「ガンマッ!」

女医の顔が般若に変わり
ガンマを睨み付ける。

「おばさんはおばさんでも
美しいおばさん。」

般若が聖母に変わる。

「どっちか1人、コウモリに戻してあげる。」

「マジすか?!お、俺俺俺戻してっ!」

「何よあたしが先に戻してもらう話に
したんだからズルイわよガンマはあっ!」

兄妹げんかが始まり、二人は掴み合いの
取っ組み合いで容赦ない戦いを繰り広げる。
コウモリの姿なら体格に差はなく
ほとんど互角の二人はいつもの調子で
やりあうが、ヒト形ではガンマの方が体が
大きいためあっという間にデルタに馬乗りに
なってしまった。

「いたあいっ!苦しい!!」

ジタバタとデルタがもがいていると
女医が呪文を唱える声がして
ふっと体が軽くなった。

「ごめん。あのままじゃあなたが
怪我をしてたわ。」

今までデルタを組み敷いていたガンマは
コウモリの姿でちょこんとデルタの胸に
座っていた。

「ガンマ。」

「ヤッタヤッタ!もとに戻ったア!」

嬉しそうに飛び回るガンマ。

「ったく。」

デルタは膨れっ面で立ち上がった。
改めてコウモリのガンマを見た。

「ちっちゃいのね。」

もちろんヒト形に変身してから
コウモリを見れば小さく見えるわけだが
ガンマとは同時に変身し同時に元に戻って
いたので、冷静にコウモリの小ささを
実感する暇はなかったのだ。

「うわっ何すんだよデル……キュウ~」

デルタはガンマの耳の裏を指の腹で
コスコスと撫でてやる。

「可愛い顔しちゃって。」

「キュウキュウ。」

ガンマはすごく気持ちよさそうに
鳴いている。だが、必死に自分を
取り戻そうともしていた。

「デルっ…や、やめ…キュウ~」

恍惚とした顔と怒って照れる複雑な顔とを
交互に出しながらデルタに撫でられる。
ガンマはデルタの手のひらでコロコロと
転がされる。

「仲良くなったわね。んふふ。」

処方箋を書き終わった女医が席を立った。

「先生。ありがとうございました。
なんかガンマまでお世話になっちゃって。」

美雪はまだゼエゼエと呼吸が浅い。
吐き気は依然として治まってはいないのだ。

「とにかく、吐き気止めが効いたら
その間に飲み食いして眠ること。
他のことはあんまり構わずにね。」

「ええ。」

デルタは女医から処方箋を受けとる。

「一番近い薬局、わかる?」

女医は家から近くの調剤薬局の場所を
教えてくれた。

「まあ、この薬局まで行ったら
あなたはコウモリに戻ると思うんだけど。」

コウモリは個体差として能力に幅がある。
それは訓練の有無や育つ環境も左右するが
ヒト形になったときのやり取りを見ていて
薬局で薬を受けとるくらいなら、問題なく
出来るだろうと判断した。

「請求はこっちに回してって伝えて。」

「はい、ありがとうございました。」

デルタは家を出て、路地を何度か曲がり
大通りに出た。アーケードを突っ切り
西側のブロックの端のテナントに
調剤薬局がある。デルタは人並みを縫って
先へ進んだ。

「お、可愛いね彼女ぉ。」

「俺たちと遊ばない?」

獣人(これは狼系だろうか)の男二人組が
デルタに絡んできた。

「今、忙しいの。またね。」

「そんなこと言うなよ~」

「俺たち暇で気が狂いそうなんだ。」

「交尾しようぜえ。」

スカジャン姿に耳にじゃらじゃらと
音がするほどピアスを着けた男が
デルタの手首を掴んで引っ張った。

「キシャーーーーッ!!」

男は、自分が掴んでいた女の手首が
いつの間にかコウモリの爪に変わって
思い切り毛皮に食い込んでいるのを見て
痛いと感じるより先になにが起こったのか
脳がどちらの情報を処理したものか
選びかねている様子だった。

「離してよッ!」

そこへ命令が発せられたので
脳みそが安心したのかもしれない。
男はハイハイと手を離した。

デルタは呆気にとられる獣人どもを尻目に
歩き出した。ん?

「あ。戻ったわ。」

デルタは改めて人混みの上を飛び、薬局へ
一直線に進路を取った。

「やっぱり飛べないのは不便よね。」









デルタが家に戻ると、奥の部屋から
キュウキュウとガンマの鳴き声がする。

「ありがとう。デルタ。」

「美雪。ガンマは何いい気になって
アヘアヘ言っちゃってるの?」

グラスに水を入れて美雪に渡す。
美雪はすこし辛そうに、口に粉薬を
振り入れて水で飲み下した。

「あ、あれはエリザベスがはしゃいでるの。
自分がコウモリの気持ちいいところを
撫でてやるなんて新鮮でしょ?」

「まあ、ねえ。」

「エリザベスがガンマを撫でまくって。
ガンマはとろけ切っちゃってるのね。」

デルタはちょっぴり羨ましかった。

「たまにはいいと思うけど。
ガンマはママに撫でられる年じゃないわ。」

すこし強がった発言に美雪が笑う。
笑いながらも、まだ吐き気が上がってくるのか
口元に手を添えた。

「デルタもコウモリに戻ったら
あたしがたくさん撫でてあげるからね。」

「んもう。美雪は大人しく寝てなさい!」

デルタは美雪を強引にベッドに入れて
掛け布団で蓋をした。







「そうか。大変だったんだな。」

賞平が仕事から帰るとガンマ以外の全員が
ヒト形になっていたので、軽く驚いた。

「あたしが戻してもらう予定だったのに
ガンマはズルイのよ、いつもああして
いいとこばっかり持っていくんですもの!」

機関銃のように喋るデルタ。
これはコウモリの姿でも変わらない
ことだが、迫力が違うと賞平は思った。

「デルタ。よくやってくれたね。
ありがとう。」

いつも賞平は帰宅してから自分の夕食を
自分で作り、美雪の体調を見ながら
彼女の喉を通りそうなものを出してやる。
今夜はそれをすべてデルタがやって
くれたのだ。
賞平はデルタの肩を抱いて頬を寄せた。

「あたしがお腹減ったから作っただけ。」

ツンデレなデルタ。

「美雪が悪阻治まるまでずっとこのまま?」

賞平はいつコウモリに戻れるか分からない
四人の女性が家族に増えたと思い至る。

赤ちゃんにはオムツがいる。
普通にベッドも人数分いるし
衣料品も一通り揃えなければならない。
賞平は美雪に相談しに行った。






「ごめんなさい。賞平さん。」

薬が効いているうちに、買い揃えるものを
検討した。

「わかった。最低限だけど明日にでも
すぐに手配するからね。」

「ありがとう。賞平さん。」

「美雪。」

賞平は久しぶりに具合の良くなった
美雪にすり寄った。

「なあに?」

美雪も今は賞平を拒まない。

「そうか。俺の精気分けてあげたら
元気になるかな?」

「精気を?」

美雪はヴァンパイアと魔女の混血だが
実際にヴァンパイアと暮らすのは初めてだ。
彼らが精気を分け合うというのは知識では
知っていたけれども、具体的には分からない
ものだった。

「ねえ。キス、出来そう?」

「舌を絡めないでくれたら。」

「オッケイ。」

賞平は美雪に唇から近づく。
ふわりと彼女の百合のような匂いが
胸に流れ込む。あ、勃ってきちゃった。
股間を固くしながらも美雪の唇に吸い付き
なるべく舌が入らないような角度で
精気を流し込む。

「ん。んふう。」

美雪の頬がピンク色に染まる。

賞平は大きくため息をついた。
肩で何度か深呼吸をすると
美雪の頬にキスした。

「どう?」

「すてき。」

一時的ではあろうが、気分がすっかり
良くなった美雪は、久しぶりに夫の体臭を
嗅いでうっとりした。

「嬉しいわ。こうしてあなたと抱き合える。」

美雪は初めて夫が、自身を固く
立ち上がらせていることに気づいた。

「長いこと放っておいたから。」

「い、いいよ。自分で出すから。」

「お願い。触らせて。」

美雪は賞平の股間に手を伸ばした。
頭を撫でて、顎を弾いた。長い首を
やさしく握って上下に素早く擦った。

「くはあっ!」










「あら?」

エリザベスは可愛い赤ちゃんコウモリと
だいぶ大きくなったコウモリ男子に
目をやる。近づいて撫でると視界には
黒い翼が横切ってくる。

「戻ったわ。」

「本当だ。」

コウモリ男子は自分とさほど変わらない
サイズに戻った母親に、ヘソ天のポーズから
起き上がって寄り添った。
一緒に戻ったスミレ、スイトピーは
何事もなかった顔で、ご機嫌そうな
声を上げる。

エリザベスとガンマが美雪の様子を見ようと
寝室まで行くと、ドアの前で躊躇うように
飛んでいるデルタがいた。

「お前も戻ったんだ。」

「まあね。」

「美雪、元気になったみたいね。」

エリザベスがドアノブに手をかけようとすると
デルタが止めた。

「なんか、夫婦の時間みたいよ。」

「え?」

「聞こえる声がなんか。違うから。」

コウモリたちは部屋に帰ることにした。

今度はあたしが先に戻してもらうんだから!
わかったよ、悪かった。
兄妹も仲直りをした。