亀の啓示

18禁漫画イラスト小説多数、大人のラブコメです。

とにかくイチャイチャハロウィン小説版(47)

2018-02-18 07:55:24 | とにかくイチャイチャハロウィン小説版
賞平と美雪が来てくれた、翌日。
朝から大粒の雨が窓ガラスを打つ。

美月は洗濯物を乾燥機に入れる。
赤ちゃんが生まれる前に奮発して
買ったのだが、これは良い買い物だった。

雨の日は何故か、赤ちゃんたちが不機嫌だ。

「え?何が気に入らないの?」

渉がいつもの掛け布団を蹴り飛ばす。

「今日は肌寒いから。掛けてないと
風邪引いちゃうから。」

隣のベッドでも卓がむずがって布団を
バタバタと足でめくり上げる。

「もしかして、暑い?」

美月は朝起きて自分が寒いからと
エアコンの設定温度を少し上げたのだ。

「あたしが着よう。」

部屋の温度を下げると布団にくるまって
大人しくしている。渉はえぐえぐと
ぐずるが、卓は良い子で眠り始めた。

「ほら。弟はちゃんとねんねしてるよ。」

「お兄ちゃんなのに、おかしいよ?」

「こんなに何でもしてるのに。他に何を
してほしくて泣いてるのさ。」

オモチャであやしても
抱っこをしても
いっこうに機嫌の治らない渉に
美月はつい愚痴を言ってしまう。
途中で気づいては、自分を責める。

「この子は悪いことしてないのに。
あたしってダメな母親だよ。」

やっとのことで渉を寝かしつけ
乾燥機から洗濯物を取り出して畳む。
暖かくてふわふわに乾いた肌着を広げる。
思わず顔を埋めて頬擦りする。
ミルクの匂いがした。

「ミヅキ、ドウシタ?」

「グアイ、ワルイノカ?」

アルファとベータが美月の肩にとまる。
頬に頭を擦り付けて甘える。

「ミヅキ、イツモヨリアッタカイ。」

「ネツガ、アルヨ?」

アルファが額に、ベータが首筋に
張り付くようにして言った。

「そう?風邪引いちゃったのかな?」

体温計を脇の下に挟んでため息を漏らした。
こんなときに母親が風邪だなんて。
しっかりしなくちゃいけないのに。
不甲斐ない、本当にダメな母親だ。

電子音が鳴り、液晶に37.8と数字が浮かぶ。

「中途半端な熱。」

十分高熱だと思われるが
他に症状もないのでマスクをして
解熱剤を飲んだ。
寒気がしたが、布団に入り寝る訳にもいかず
肩からストールを掛けてしのぐ。

寝室から渉の泣き声がする。
時計を見れば、一時間と寝ていない。

美月は寝室のドアを荒っぽく開ける。
バタン!と大きな音がして
泣いていなかった卓までもが泣き出した。

「んもう!悪かったから泣かないで!!」

「ミヅキ。オムツノニオイ、シナイカラ
ミルクカ?ツクルカ?」

「…お願い。いつもの量でいいよ。」

アルファとベータが台所に飛んでいくと
美月はあまり頬を寄せないように
気をつけながら、まず渉を抱き上げた。

「お母さん、風邪引いちゃった。
ごめんね。いろいろ遅くなるかも。」

寝かしつけで長い時間抱っこしたわけでも
ないのに、渉を抱っこした腕がだるくて
持ち上がらない。すぐ渉をベッドに
下ろすと、気に入らなそうに泣き出した。

「ごめん。いま抱っこ出来ないよ。
落っことしちゃう。」

渉は火がついたように泣き出した。

「無理言わないでよ!!」

美月は膝を折ってベッドサイドに座り込む。

「もう、嫌…」

今まで我慢していたものが
堰を切ったように溢れた。
でも、心の中ではなんてひどい母親なんだと
自分を責め続けている。
気がおかしくなりそうだ。

『美月ちゃんが本当に困って
助けを求めたいときに開くと、その問題が
解決するように出来てるのよ。』

昨日、美雪がそう言って置いていってくれた
魔法の掛かったジュエルボックスを思い出す。

「こんなどうにもならない母親、
どう問題を解決してくれるんだろう。」

美月はジュエルボックスの蓋に手を掛け、
中を覗くように開けた。

何も起きない。

体調は悪いままだ。
相変わらず腕が重い。
呼吸も苦しかった。
側で渉と卓が泣いている。

何も変わらない。

「美雪ちゃんの魔法、人間には効かないの
かもしれないね。教えてあげなきゃ。」

美月は床に寝転がり、回らない頭を
仕方がなしに働かせた。
このままじゃいけないのはわかる。
どうしよう。

「ミヅキ!」

「ダイジョウブ?」

ぼやけた目の焦点を必死に合わせる。

アルファとベータだ。
ヒト形に変身している。

あ、こういうことか。
美月はそのまま気を失った。











「アルファがミヅキをベッドにハコンダ。」

「ベータがワタルとスグルのオムツを
カエてその後はフタリデダッコして
ネカシツケタ。」

美月は自分のベッドで目を覚ます。
辺りはすっかり暗くなっていた。
三時間は寝ただろう。

アルファとベータは以前変身した時より
落ち着いて行動していた。
変身したことでどんなことが可能になったか
きっとそれをするために変身したのだと
理解しているかのようだ。

「ミヅキ。渉はね。」

アルファが眠っている渉の髪を撫でながら
美月に話しかける。

「ママのことが、ダイスキだよ。でも
それが伝わっていないと思ってるみたい。
時々不安になって、泣いて訴えてる。」

ダイスキダヨ。ママ。
キイテヨ、ママ。

笑ってよ。ママ。

「うそ。そんなことって。」

泣かれるのは、責められている。
美月はずっと辛かった。
自分はこの子達を幸せに出来ない。
そこまで思い詰めていたかもしれない。

「安心して。この子達はママがダイスキ。」

アルファは美月の枕元にやってきた。
ベータも反対側から寄り添った。

「ソシテ、ボクタチモダイスキ。」

ふたりは、同時に美月の左右の頬に
口づけた。