亀の啓示

18禁漫画イラスト小説多数、大人のラブコメです。

とにかくイチャイチャハロウィン小説版(33)

2018-02-03 21:32:27 | とにかくイチャイチャハロウィン小説版
この産婦人科の入院期間は
3~5日だが、美月は純血の人間産婦なので
7日間の入院期間が与えられた。

「大丈夫です。5日で退院しますよ。」

回りのママさんたちが、バタバタと
3日で退院していく姿を見ていると、
呑気に7日間入院しているのが
申し訳なくなる。

「人間も人種や住む土地によって
違うみたいね。でもあなたは回復が遅い。
それは仕方のないことなのよ?」

助産師の松田さんは魔女と人間の混血。
お祖母ちゃんが魔女でお祖父ちゃんが人間。
間に生まれた男の子にまた、魔女のお嫁さん
が来た。松田さんは魔女と人間のハーフと
魔女との間に生まれた人間クォーターの
魔女という感じである。ややこしい。

「結婚してすぐに妊娠したんでしょ?
純血の人間と魔物の妊娠て
中々難しいのによく受胎したわよね。
とてもラッキーだったじゃない?」

「ありがとうございます。」

「それにかなり、元気な赤ちゃん。
しかもふたごちゃん。」

先程からビギャーと泣き続ける我が子を
もて余すが、あまりに叫びが真剣で
いっそ笑ってしまう美月。
彼らはとてもお腹が減っていて、早く美月の
おっぱいが飲みたいのだ。
二人いっぺんの授乳は母乳オンリーなんて
ほぼ無理で、美月は上半身をはだけながら
ミルクの準備をする。
双子の授乳用にあつらえられたクッションに
二人を乗せる。クッションを膝に乗せれば
双子が左右のおっぱいに丁度良く顔を寄せる
形になるのだ。
首さえ据わればもっと自由度が高まるのだが
二人の赤子を抱っこし、乳房をあてがうのは
疲れるものだ。この授乳クッションは中々に
良いアイディア商品であると思った。

美月は自分の乳房にかぶりつく
赤ちゃんたちの口の中に、かつっとした
固い粒を感じた。なんだろうと赤ちゃんを
乳房から離すと、上顎に小さな牙がころっと
二本、対になって歯茎からせりだしている。

「え!もう!?」

美月が人間にはあり得ないことに
のけぞって驚いていると、横から松田さんが
赤ちゃんの頭を撫でた。

「この牙は、ヴァンパイアの
アイデンティティーそのものだからね。」

「アイ、デン、テテー?」

「って。上川先生が言ってた。」

上川先生は、この産婦人科の
ベテラン女性医師である。
純血のヴァンパイアで、縁談も引く手
あまたなのだが、どんな話もお断りして
いるという。

「この牙はね。ヴァンパイアの血が
一回でも混ざれば、こうして生まれた時
からここに生えているんだって。」

美月は乳房から離されて、おっぱいを飲めない
ことに猛抗議をして泣き叫ぶ赤子を宥めつつ
指で牙に触れる。固くて艶々で真っ白な牙。
亮に血を吸われるのを思い出して、うっとり
目を閉じた。

「アイデンティティーかあ。」

「ブンギャアアアーッ!!」

実際のこの子達のアイデンティティーは
牙よりもおっぱいを飲む一点にしぼられて
いるようで、美月は慌てて乳房を含ませた。

しばらくたつと、赤ちゃんたちの
吸い付き方が変わる。
多分、母乳の出が悪くなったのだろう。
眉間にシワを寄せて必死に吸引する。
これはダメだと見切りをつけると
もっと出せー!
足らねえぞー!
と言ってるんだろうなと
痛いほど伝わる泣き方を始めた。

ビギャーヒビェーと甲高いが
まだドスがいまいち足らない泣き方なので
可愛いものだし、ここは病院だから
泣かれてもそんなに気にはならない。
でも、家に帰ったら隣近所に
ご挨拶に回らないといけないだろう。
美月は彼らの口に、今度は哺乳瓶を突っ込み
ため息をついた。

満足すると眠る。
お腹が減ると目覚める、泣く。
排泄と食事をほぼ一緒に済ませて
また、眠る。
生まれたばかりの二人は
とてもシンプルだった。

「ぬあっ!こっちの子は
美月そっくりだな!」

午後の面会時間になると美月の父、
正直さんと、弟の直樹が来てくれた。

「みつえちゃんは?」

「あいつは今日仕事抜けらんなくて。
また、退院してからゆっくり遊びに行く。」

みつえは直樹の妻である。
二人もずっと赤ちゃんを望んでいるので
あやかりたいと妊娠中にもよく遊びに来た。

みつえはコウモリ兄弟をとても気に入り
わざわざ胸の大きく開いたトップスを着て
胸に招き入れようとしたのだが、とうとう
アルファもベータもその胸に挟まろうとは
しなかったのである。
直樹はホッとしたらしいが、あとから亮に
何が不味かったのかなぁ、などと訊いてきた。

亮も気にはなったのだが
特に確認もしなかった。
そんなことを聞いて
ミツエチャンノオッパイモダイスキ!
なんて逆に積極的になられても困る。

美月はアルファとベータに
こっそり聞いたのだ。

「二人とも、偉かったね。みつえちゃん
おっぱいも、おまたも、気持ち良さそう
だったのによく我慢できたねえ。」

「ミツエチャン、オッパイコワイ。」

「ミユキノオッパイミタイニ、ユレテ
ブツカッテキテ、イタソウ。」

そういうとコウモリ兄弟は
美月の胸にとまった。

「ミヅキノオッパイ、ダイスキ。」






美月は病院のベッドの上、コウモリ兄弟を
思い出して少しセンチな気分になった。
横では赤子を見てはしゃぐ父と弟。
姉の洋子も明日、子どもたちをつれて
会いに来ると言っていた。

「母さん。どうしてるかなあ。」

「あれ?父さん美月に言ってないの?」

美月が遠くで暮らす母の話をすると
直樹と正直が色めき立つ。

「今日、帰ってくるんだよ?」

「えっ?!」

「遅くなったけど皆さんにもご挨拶
したいからってね。」

美月は嬉しそうだがすぐに表情を曇らせた。

「お祖父ちゃんは?大丈夫なの?」

美月の母、絹江さんは実父の介護のために
離れて暮らしているのだ。

「そうしょっちゅうお願いできる所じゃ
ないらしいけど、施設に臨時で長期滞在
という形で入れたらしいんだ。」

十日間だが、色々なところに顔を出して
来るので、家族で会えるのは三日間だと言う。

絹江さんは今日は夜に到着し
直樹夫妻と食事をし、正直さんと
夫婦水入らずで近場の温泉宿に泊まる。
明日、姉の洋子と合流して美月と赤ちゃんに
会いに来ると言う。

「やっと、亮に会ってもらえるね。」

「そうだな。亮くんはいい旦那だって
言ってあるから。」

正直さんが美月にウインクした。

「酒には弱いがね。」

正直さんと直樹がハモる。
弱くない!と美月は反論したが
まあ、確かに自分達から見たら
亮は小学生以下である。
たまに、親戚のおじさんが小学生の
子どもにビールなんか舐めさせて
奥さんに叱られたりする
そんな小学生の扱いが亮なのだ。
可哀想だとは思うが仕方がない。

その頃、家で仕事をしていた亮は
コウモリ兄弟にご飯をあげながら
くっしゃんとくしゃみを二回した。