夜伽通算第３夜

さっきまで老人たちが口々に叫んで
賑かであったけれども、今は寝息だけが
聞こえる静かな病室。生き物はやっぱり
みんな夜は怖いんだね。

午後、昭和のスーパー銭湯で固まった身体を
ほぐす。たぶん、70年代くらいのスーパー銭湯。
ローマ風呂とか流行った時代の洒落た感じ。
金の飾りの灯り、酸ヶ湯かどこかと同じもの。
古くても高い天井と差し込む光が気持ちいい。
ミストサウナもついて420円也。電気風呂が
肩こりに効いた気がする。

それから駅まで25分散歩。父が戦前に住んで
いたり、二つめの赴任校区だったあたり。
私は初めて歩いた。

同室の人たちに比べると父はなんだか
目出度い。話しかけられたとき以外は、ずっと
自分の走馬灯の中にいる。でも、午前中に
一度だけ顔に精気がさして、私の顔を見て
「なんだ、おっただかん」と言ったその顔は、
いつもの照れたような優しい父の笑顔であったよ。
おとうさん、ありがとう。