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理科の素養

2006年06月11日 | 仕事
昨日、高校での出前授業を行った。今日の地元新聞に授業の様子が写真入りで紹介されていた。

ゼラチンにごま油を注射器で下から注入し、その上昇の様子を観察する・・・・・・マグマが上昇するアナログ実験

その高校は文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定された、いわゆる「科学エリート養成」校。理科の授業に年間2千万円弱もの予算が配分されるそうな。大学なんて、この1/100くらいの研究費しかないのに・・・


で、気になったことは生徒の「理科の素養」。
受講者は理数科の生徒だそうだが、理想的な結果にならないと「実験を失敗した」とすぐ考えてしまうこと。考えると言うよりも、むしろ、考えることさえ放棄してしまうこと。アナログ実験なので、注入の勢いなど、わずかの条件の違いでいろいろなマグマの貫入のパターンがあらわれる。これはむしろ当然のこと。答え(実験結果)は一つとは限らない。
実験の結果をそのまま受け入れ、「なぜそうなったのか?」「自然界にも同じような現象は存在するか?」などを考えていくことが大切なのに。全く理科の素養が培われていない。これも受験のための勉強の弊害か? もっと自分が出した結果を大切にして欲しいですね。なんですぐ放棄するの??

SSHは受験と学習指導要領による縛りで薄っぺらくなった教育内容と、いわゆる「理科離れ」に対処するために、重点校を指定して集中的に予算を配分し、「科学エリート」を養成しようとするものである。指定されると、学習指導要領を越えた内容まで教えることができるようになる。
いくらお金を投資しても、生徒の「科学する哲学」を身につけさせないと、研究者は育たない。理論通りの結果を求めるだけでは、科学の発展はない。

後もう一点は、物事をよく考えて行動しようということ。実験操作がいい加減すぎ。注射器を下から刺して注入するのだが、注射器がはずれると、中の液体が漏れてしまうことはすぐわかる。そのため、注射器の接続はきっちり完全にしなければならない。まあ、一回くらい失敗して、ここの重要性がわかることも大切なのだが、何度も失敗し、「接続はきちんとすること」と注意しても出来ない。

日本の理科教育は前途多難ですね。