eデモクラシーへの挑戦 ―藤沢市市民電子会議室の歩み―
金子 郁容,藤沢市市民電子会議室運営委員会 著
本書は、1997年2月より神奈川県藤沢市が開設している ▲市民電子会議室▲ の取り組みを通じて、ITによって民主主義がどのように進化していくのかを解き明かす手がかりを具体的に提示することが目的とされています。

(藤沢市HPより)
市民電子会議室やそれに類するものは、全国733の自治体(2002年調査)で開設されていますが、その中でうまく運営されているものは数少ないと言われています。
その中にあって藤沢市では運営体制やしくみをうまく工夫し、大きな成果をあげています。 ▲市民電子会議室設置状況▲

(藤沢市HPより)
藤沢市の市民電子会議室の運営面の特色は、会議室を「市役所エリア」と「市民エリア」に区分していること。
「市役所エリア」は市政に関するテーマが議論される場で、藤沢市の中では市民提案制度のひとつとして正式に位置づけられているそうです。ここで論議されて一定の合意が得られた意見については、運営委員会が取りまとめて市に提案し、市がそれに回答することになっいて、参加者は実名を登録し発言することになっています。
「市民エリア」は、市民同士の自由なコミュニケーションの場と位置づけられていて、ニックネームでの発言もできる設定となっています。
これらの運営が円滑に行なわれている背景には、市民有志からなる運営委員会の活躍があります。 ▲藤沢市市民電子会議室実施要領▲
軍隊や企業や行政組織のようなヒエラルキー組織の場合は、責任と権利、地位と権限という要素をチェックすればその運営方法を分析することができますが、この電子会議室の運営については、ルール、ロール、ツールという考え方に則して分析する方が理解しやすいと解説されています。
一般的には、ルールとは決まりや規則のことで、ロールとは役割や機能、ツールとは道具のことです。
しかし、市民電子会議室のルールは、コミュニティから自発的に発生した規則、ロールとはコミュニティのメンバーに承認されることによって果たすことが期待されている役割、ツールとはメンバー間のコミュニケーションと情報共有のメディアだとされています。
電子会議室の運営において、様々な問題点もあったようですが、単なるシステムとしてではなく、コミュニティのマネジメントということに視点を置いて運営されているからこそ、他の自治体のように掲示板を設置し、問題が生じてすぐに閉鎖するということが起こらないのだと感じました。
次に、eデモクラシーの可能性を知る上で、ITによる電子的コミュニケーション媒体を利用することによって、行政や政治プロセスへの参加がどのように進展したかが興味のあるところですが、市役所エリアでまとまった提言が市に提出され、それに対して市が回答するというルールが確立されています。
1997年に市民電子会議室がスタートしてから、2005年現在まで、正式な提言とその回答は4回行われ、約6割が最終的に政策に反映されているとされているそうです。
市民電子会議室は、誰でも自由に参加できるオープンな議論の場であり、市政への参加が直接できる場でもあります。しかも、インターネット上では無責任で有害な情報が氾濫しがちですが、藤沢市の電子会議室には一定のルールが設けられるなど、コミュニティとしての秩序が保たれています。
こうした中で形成される民主主義の特徴は、直接性、オープン性、参加性、協議制ということにあります。
民主主義の一番分かりやすい方法は、みんなが集まって議論し結論を出すことだと思いますが、ITを活用することによって直接民主主義的な方法も可能になるのではないでしょうか。しかも、選挙で候補者を選択したりYES・NOということを表明するだけでなく、相互に内容を深め合うコラボレーションの関係が構築されます。
本書は、市民電子会議室を実際に導入しようとする自治体にとっては、そのノウハウを学ぶ上で非常に役立ちます。それと同時に、インターネットを民主主義の発展との関連で活用しようとする人にとっても、本書では単なる理論ではなく実践的なプロセスに沿って示されているので一読の価値があります。
金子 郁容,藤沢市市民電子会議室運営委員会 著
本書は、1997年2月より神奈川県藤沢市が開設している ▲市民電子会議室▲ の取り組みを通じて、ITによって民主主義がどのように進化していくのかを解き明かす手がかりを具体的に提示することが目的とされています。

(藤沢市HPより)
市民電子会議室やそれに類するものは、全国733の自治体(2002年調査)で開設されていますが、その中でうまく運営されているものは数少ないと言われています。
その中にあって藤沢市では運営体制やしくみをうまく工夫し、大きな成果をあげています。 ▲市民電子会議室設置状況▲

(藤沢市HPより)
藤沢市の市民電子会議室の運営面の特色は、会議室を「市役所エリア」と「市民エリア」に区分していること。
「市役所エリア」は市政に関するテーマが議論される場で、藤沢市の中では市民提案制度のひとつとして正式に位置づけられているそうです。ここで論議されて一定の合意が得られた意見については、運営委員会が取りまとめて市に提案し、市がそれに回答することになっいて、参加者は実名を登録し発言することになっています。
「市民エリア」は、市民同士の自由なコミュニケーションの場と位置づけられていて、ニックネームでの発言もできる設定となっています。
これらの運営が円滑に行なわれている背景には、市民有志からなる運営委員会の活躍があります。 ▲藤沢市市民電子会議室実施要領▲
軍隊や企業や行政組織のようなヒエラルキー組織の場合は、責任と権利、地位と権限という要素をチェックすればその運営方法を分析することができますが、この電子会議室の運営については、ルール、ロール、ツールという考え方に則して分析する方が理解しやすいと解説されています。
一般的には、ルールとは決まりや規則のことで、ロールとは役割や機能、ツールとは道具のことです。
しかし、市民電子会議室のルールは、コミュニティから自発的に発生した規則、ロールとはコミュニティのメンバーに承認されることによって果たすことが期待されている役割、ツールとはメンバー間のコミュニケーションと情報共有のメディアだとされています。
電子会議室の運営において、様々な問題点もあったようですが、単なるシステムとしてではなく、コミュニティのマネジメントということに視点を置いて運営されているからこそ、他の自治体のように掲示板を設置し、問題が生じてすぐに閉鎖するということが起こらないのだと感じました。
次に、eデモクラシーの可能性を知る上で、ITによる電子的コミュニケーション媒体を利用することによって、行政や政治プロセスへの参加がどのように進展したかが興味のあるところですが、市役所エリアでまとまった提言が市に提出され、それに対して市が回答するというルールが確立されています。
1997年に市民電子会議室がスタートしてから、2005年現在まで、正式な提言とその回答は4回行われ、約6割が最終的に政策に反映されているとされているそうです。
市民電子会議室は、誰でも自由に参加できるオープンな議論の場であり、市政への参加が直接できる場でもあります。しかも、インターネット上では無責任で有害な情報が氾濫しがちですが、藤沢市の電子会議室には一定のルールが設けられるなど、コミュニティとしての秩序が保たれています。
こうした中で形成される民主主義の特徴は、直接性、オープン性、参加性、協議制ということにあります。
民主主義の一番分かりやすい方法は、みんなが集まって議論し結論を出すことだと思いますが、ITを活用することによって直接民主主義的な方法も可能になるのではないでしょうか。しかも、選挙で候補者を選択したりYES・NOということを表明するだけでなく、相互に内容を深め合うコラボレーションの関係が構築されます。
本書は、市民電子会議室を実際に導入しようとする自治体にとっては、そのノウハウを学ぶ上で非常に役立ちます。それと同時に、インターネットを民主主義の発展との関連で活用しようとする人にとっても、本書では単なる理論ではなく実践的なプロセスに沿って示されているので一読の価値があります。