晴朗無上

日々の出来事など

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2009-09-28 17:42:18 | Weblog
『魔女たちの饗宴―現代ロシア女性作家選』 沼野恭子訳

 どれも読みやすい文章、というのは、きっと沼野さんの
 訳がすばらしいのだと思う。
 読みやすいのに、それぞれ作家によって文章の雰囲気が違う。

 最後のリュドミラ・ペトルシェフスカヤ著「身内」は
 とてもかわった長文が続くんだけど、
 リズム感があって、おもしろかった。

 ナターリヤ・バランスカヤ著「ライネの家」は
 エストニア(まだソヴィエト領だったころの話し)が舞台の
 戦争をあつかった短編。
 把瑠都のおかげでエストニアが身近にかんじられる分、
 なんだかつらいお話だ。
 エストニアがEUに参加したのは、
 これでロシアに脅かされることがないだろうと思ったから、
 という話しを思い出す。

 最初にふれた「身内」は、
 文章がおもしろいだけでなく、内容も良かった。
 はじめは、ひょうひょうとした文章に
 音楽を聴くようにひきつけられたんだけど、
 最後、自分の死を意識した主人公が大芝居で
 別れた旦那さんに子どもをひきとらせるところ・・・
 泣けたな・・・
 これは、日本人とかロシア人とか関係ない「母親の気持ち」だ。

 軽い気持ちで読んだのに、いつまでも「身内」のリズムが
 頭の中をただよっているかんじだ。