岳 (1) (ビッグコミックス) | |
石塚真一 | |
小学館 |
ふと読んでみたコミックですが、面白かったです!!
現在1~14巻まで出ています。
5月に映画化されたそうですね。主人公の三歩役が小栗旬さんらしいですが、ちょっとイメージと違うかなぁ。
ヒマラヤや北米、アルプスなどの海外での危険な登山をやり尽くして、日本に帰ってきた島崎三歩は、山に住み着きながら、長野県警の山岳救助隊の仕事をボランティアで手伝っていたり、夏場はフリークライミングの練習場のセッティングなどをしています。
遭難者が出ると駆けつけて救助したり、遺体を回収したりと言った仕事をしています。
県警の人たちとの交流や、海外で一緒に登山をした人たちとのエピソードなども、とても清涼な読後感をもたらします。
私は登山をする人が周りにいませんのでよくわかりませんが、以前から、命をかけてあることに打ち込む真摯さと、伝え聞いたことでしかありませんが、我こそがアタック隊に、我こそが頂上に、という生臭さとがどうも整合しない感じがしていました。命をかけて打ち込むということは、精神の漂白をもたらすような気がしていましたので、いきなりど~んと欲望ギタギタとくると、驚いてしまうのです。もちろん登山のための費用やらスポンサーやらいろいろなしがらみがあることも承知していますけど。
ところで、この本の中で、三歩がエベレストの頂上近くで遭難者を見つけて救助のために登頂を断念して下山する件があるのですが、そのとき三歩は「ベースキャンプだってどこだってエベレストじゃないか。頂上だけがエベレストではない」と言うのです。
なんかこれこそが私の思い描いていた登山家だぁ!?と思ったりします。きれいごとかもしれませんが。
また、この本は、昔読んだ夢枕獏さんの原作で書かれた神々の山嶺とは違って、シリアスのみではありません。
登山事故はいろいろな人に大変な迷惑をかけますし、ある程度の基礎的なトレーニングができて初めて入山の資格が得られるのかなと素人には思えます。とすれば、「山をなめるな」という考えに行きがちな状況ですが、三歩は、山が本当に好きらしく(本を読んできてそれは感じられる)、いろいろな人に山に来てほしいと願っているところが、この作品が山への疎外感を読者に持たさずにいられる原因なのかなと思ったりします。
しかし、絵はリアルで、滑落したり、雪崩に巻き込まれるとこういう風になるのね、と思いました。
自然が相手の行動は本当に怖い。
恰好だけじゃだめでしょうから、どの程度の登山にどの程度の力と装備が必要なのか、勉強してから山にはいるべきなのでしょうね。