じょじょりん文庫

読書好きで雑読。ゴルフ好きでへたくそ。
気の向くままに本ネタとゴルフネタを書かせて頂いています。

東京島 桐野夏生

2010-04-28 | 小説
東京島
桐野 夏生
新潮社

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私は,行かれるときには週2回ほどスポーツクラブに行っているのですが,ジムでバイクを漕いでいるときに,いつも来ていて,私の前の列でバイクを漕いでいる中年のオジサンが,バイクを漕ぎながら2週間くらいに渡ってこの本を読んでいたので(どこかの図書館で借りてきたらしく,大きなバーコードがついていた),面白いのかなと思っていました。
先日,文庫化されたとのことで,買ってみました。

何とも気持ちの悪い本です。
どっか東南アジアの無人島に漂着した夫婦がいたのですが,その後,同じように23人の男性が漂着し,更に中国人の男性が10名余漂着します。
漂着者のうち,女性は夫婦の46歳になる妻の方だけという異常な状態の中で,女性の奪い合いが起こり,女性の夫,第二の夫が転落死体でみつかります。
その後女性の夫は1年交替でくじ引きで決められるようになり,それなりに島の秩序もできつつあったときに,女性は島を逃げ出そうとする。結局失敗して島に戻ってきてしまうのだが,そのあいだに島の実権を握っていたのが女性の4番目の夫になった男でした。
その後,女性は実権者となった夫から,妻と言うより皆の者となれ,と言われ,その後で誰の子かわからない子を妊娠し,出産の間際に,島には更にフィリピンの女性7人が漂着する。彼女らの力を借りて女性は男女の双子を出産する。
フィリピン女性のうちの幾人かが,島を脱出することを計画し,子供も一緒に女性にも来るように誘い,その誘いに乗ったところで話は概ね終わります。
エピローグのような形で,双子と女性のその後が書かれていますが,それがまたなんだか気持ち悪い。

そういえば,私の読んだことのある「OUT」にしても「グロテスク」にしても,「魂萌え」にしても,どれも気持ちが悪かったなぁと思い返したりして……
何が気持ちが悪いのだろうと思うと,たぶん,人間の持つ装飾的な要素,理性とか,知性とか,道徳とか……そういったものを根こそぎ取っ払って,言葉を話す獣のような世界をつきつけられることが,私には気持ちが悪いと受け取れる感じがします。
カッコつけているとかそういうことではなくて,そういう本能的な世界を受け入れやすい人と受け入れにくい人が世の中にはいて,私は受け入れにくい人なのだろうかと思います。

だけど,気持ち悪いのに,なんか読んでしまうんですよね。不思議です。

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伊藤博文直話 新人物往来社編

2010-04-22 | ノンフィクション
伊藤博文直話 (新人物文庫)

新人物往来社

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この本,なかなか面白かったです。
初代内閣総理大臣の伊藤博文公の語った事柄や人物評をまとめたものです。
坂本龍馬や西郷隆盛,大久保利通,木戸孝允といったあたりが,維新の推進・新世界の創業の人とすれば,伊藤博文はその後処理をして安定させた,平定の人という感じでしょうか。

とはいっても,伊藤公は,萩藩の生まれで,松下村塾で吉田松陰の教えを受けた塾生でもあり,維新前の長州藩の有名どころとの知己も深く,この本に書かれている人物評はとても面白いです。
この本の解説にも不思議なことと書かれていのですが,伊藤公は,この本の中の人物評の中では,松下村塾関係の人物は師であった吉田松陰と高杉晋作の2名しか語っていません(木戸孝允は厳密に言うと松下村塾には入っていなかった)。そのうちの吉田松陰についてはわずか1頁半,高杉晋作に至っては2行しか語っていません。
しかも吉田松陰については,批判的な文調で「過激で政府を苦しめている」と書いています。高杉晋作については,創業的才幹にはよほど富んでいた,と素っ気なく語っています。
ちなみに,逆に吉田松陰は伊藤博文のことを「周旋家になりそうな」と言っていたそうで,過激派と周旋家では相性が悪かったのかも知れません。関連の過去の日記はこちら

その他,西郷隆盛や水戸の藤田東湖の事なども書かれていますが,いずれもちょっと批判的で伊藤公は攘夷論が本当にお好きではなかったことがありありと窺えます。
西郷については「政治的識見は,ちと人より劣っていたかも」「創業の人で守成の人ではなかった」なんて感じです。
藤田については,なんとなく「薩人を(悪い方向に)たぶらかした」と言っているように感じます(それはその通りかもしれませんが)。

でも,けっこう大口叩きっぽいところもあります。
豊臣秀吉について,「無学の好漢」「学問があれば予を凌駕するであろう」
菅原道真について,「気魄に乏しい小輩」
なんて書いています。

この人でなければ言えませんってかんじです。
スゴイですねえ~

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魯山人 美と食の天才 黒田草臣

2010-04-21 | 伝記
美と食の天才 魯山人 ART BOX (講談社 ART BOX)
黒田 草臣
講談社

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この間横浜に用があって行った際,時間が余ったので,そごう美術館に行ってみました。
そしたら川喜多半泥子の展覧会をやっていました。見る時間はなかったので,ミュージアムショップに行ったら,この本が売っていたので,つい買ってしまいました。
「東の魯山人,西の半泥子」と言われていることから,関連で魯山人の本がおいてあったのでしょうか。

私は陶磁器が好きで,専ら西洋陶磁器を気の向くまま買っていたのですが,最近年を取ったのか古伊万里なども好んでいるので,魯山人の陶器も素晴らしいと思う物があります。
この本は,魯山人の伝記と共にその作品についてもその魅力を余すところなく掲載しています。著者は渋谷の黒田陶園(40年ほど前,私の母はここでやたらに陶器を買っていました。どうせなら魯山人の作品でも買っておいてくれれば良かったのに……)を営むお家柄の生まれで,今は社長さんをされている方。幼少時から魯山人とは知己があったということです。

魯山人と言えば,マンガの美味しんぼの海原雄山のモデルと言われていますが,魯山人の方が激動の人生だと思います。本によれば,魯山人は4回結婚したもののいずれも離婚となり,晩年は一人だったということです。永続した人間関係を築くことが得手でなかった原因の一つは,魯山人が生まれる前に父が死去してしまい,すぐに他家に養子に出されたなどの生い立ちが影響していると思われます。

本では最初魯山人は,インテリアや書が主な仕事で,陶芸に目覚めたのが,九谷焼の青華窯の看板の制作をしたことがきっかけだったということで,私は最初から陶芸家として非凡な才能があったのかと思っていたので,驚きました。
だけど,最初に魯山人が青華窯で陶芸の洗礼を受けたことは,その後の作品を見るに納得的です。須田青華さんの作品も赤絵が多いですが,魯山人の作品も代表作の椿大鉢などにしても赤絵は素晴らしいですよね。
勿論,染め付けなどもありますし,色絵もありますが,どうも京焼風のようにも思えます。
もし,最初の看板の制作が,有田の柿右衛門とかだったら,魯山人のその後の作風も変わったのかも知れませんね。

しかし,銀彩や,織部などの作品の見事さには,ため息が出ます。
図鑑としても楽しめます。
願わくば,小品の一つも手に入れたいものですが,値段が古伊万里よりも高いとあっては,私は古伊万里の方を買いたいと思いますので,見るだけで終わりそうです。

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名張毒ぶどう酒事件 その2

2010-04-06 | その他
毒ぶどう酒事件,ついに再審の可能性が出てきましたね。

いままでの経過と事件の概要は,本のレビューとして以前こちらで述べました。

このあと,抗告審で再審決定が取り消され,これに対する特別抗告で最高裁が再審決定の取消を破棄して差し戻ししたとの流れのようです。
これで差戻審でたぶん再審決定が出て,これに抗告がされて,それを最高裁が棄却して再審決定,という運びになるのでしょうが,まだ数年かかるかもしれません。

しかし,事件から49年ですか。
どうしてこんなに時間がかかってしまったのでしょうかね。
この事件,私が大学で法律を勉強していた頃(ン十年前)から「冤罪」だと言われていたのですが,まだ決着していないなんて信じられませんね。
帝銀事件しかり,この事件しかり,やはり疑わしい事件の確定囚は執行されていないことからも,当局側も疑わしいとは思っていたのでしょうか。

代理人弁護士が,「84歳にもなって奥西氏は何のために生まれてきたのか」と意見書に書いたという話がありますが,本当にその通りですね。拘置所にいるために生まれてきたのかと思ってしまうのも無理ないことでしょう。
奥西氏の子供さんも,年代的には私とそう変わりはないはずですが,「父が母とその愛人他を殺した」,と言われてきたのでしょうから,どんな思いで今まで生きてこられたのか,考えるだに想像も付きません。

やはり,冤罪事件を見るたび思います。
やっていないならば,死んでも「やった」と言ってはいけないのですね。
自分だけでなく,家族をも巻き込んでしまうのですから。
それと,やはり犯罪に結びつきかねない環境は自分で気を付けて排除して行かなくては。
不倫等の対人関係,借金などの金銭関係,これはもう,気を付けなくてはいけないですね。

きっともう,真相はわからないのでしょうから,せめて一日も早く決着がつくことを祈っています。

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