東京島桐野 夏生新潮社このアイテムの詳細を見る |
私は,行かれるときには週2回ほどスポーツクラブに行っているのですが,ジムでバイクを漕いでいるときに,いつも来ていて,私の前の列でバイクを漕いでいる中年のオジサンが,バイクを漕ぎながら2週間くらいに渡ってこの本を読んでいたので(どこかの図書館で借りてきたらしく,大きなバーコードがついていた),面白いのかなと思っていました。
先日,文庫化されたとのことで,買ってみました。
何とも気持ちの悪い本です。
どっか東南アジアの無人島に漂着した夫婦がいたのですが,その後,同じように23人の男性が漂着し,更に中国人の男性が10名余漂着します。
漂着者のうち,女性は夫婦の46歳になる妻の方だけという異常な状態の中で,女性の奪い合いが起こり,女性の夫,第二の夫が転落死体でみつかります。
その後女性の夫は1年交替でくじ引きで決められるようになり,それなりに島の秩序もできつつあったときに,女性は島を逃げ出そうとする。結局失敗して島に戻ってきてしまうのだが,そのあいだに島の実権を握っていたのが女性の4番目の夫になった男でした。
その後,女性は実権者となった夫から,妻と言うより皆の者となれ,と言われ,その後で誰の子かわからない子を妊娠し,出産の間際に,島には更にフィリピンの女性7人が漂着する。彼女らの力を借りて女性は男女の双子を出産する。
フィリピン女性のうちの幾人かが,島を脱出することを計画し,子供も一緒に女性にも来るように誘い,その誘いに乗ったところで話は概ね終わります。
エピローグのような形で,双子と女性のその後が書かれていますが,それがまたなんだか気持ち悪い。
そういえば,私の読んだことのある「OUT」にしても「グロテスク」にしても,「魂萌え」にしても,どれも気持ちが悪かったなぁと思い返したりして……
何が気持ちが悪いのだろうと思うと,たぶん,人間の持つ装飾的な要素,理性とか,知性とか,道徳とか……そういったものを根こそぎ取っ払って,言葉を話す獣のような世界をつきつけられることが,私には気持ちが悪いと受け取れる感じがします。
カッコつけているとかそういうことではなくて,そういう本能的な世界を受け入れやすい人と受け入れにくい人が世の中にはいて,私は受け入れにくい人なのだろうかと思います。
だけど,気持ち悪いのに,なんか読んでしまうんですよね。不思議です。