じょじょりん文庫

読書好きで雑読。ゴルフ好きでへたくそ。
気の向くままに本ネタとゴルフネタを書かせて頂いています。

将棋の子

2017-02-20 | ノンフィクション
映画になった「聖の青春」を読んだ後で,この本を読みました。

将棋の子 (角川文庫)
大崎善生
KADOKAWA / 角川書店


将棋,といっても私はぜんぜん門外漢で,テレビの将棋の時間とかを見たり,新聞に載っている詰将棋などっをちらっと見たり,階級が厳しく決まっているよ,なんてことはうすうす知っていましたが,それ以上の実情は知りませんでした。
この本を読んで,想像以上の厳しさに驚きました。

ほんの子供のころから,試合に明け暮れて,地元では天才と言われて奨励会に入れたと思っても,天才同士のしのぎ削りで,プロの棋士といわれる4段以上にあがれるのはほんのわずか。
4段になっても,C級から始まって,テレビで放送されたりするタイトル戦に名前が出るようなB級やA級で上がれるのは,ほんの数十人のみだとか。
しかも,年齢制限があって,26歳までに4段に上がらないと奨励会は退会,というのが,本当に厳しい制限になっているということです。

この間,職場の将棋同好会の掲示が貼り出してあって,勉強会に将棋連盟3段の〇〇先生を講師にお招き,なんて書いてあるのを見て,「この先生,奨励会なんだな。4段に上がれるのかな。26歳未満なのかな」などと考えてしまいました。余計なお世話ですが。

この本は,奨励会に入りながらも,棋士にはなれずに終わってしまった人にスポットを当てています。
こういう人のほうが圧倒的に多いのですね。
あと少し寿命があったらタイトルに挑戦できただろうにという,トップ棋士でありながら,病で早逝した「聖の青春」の村山聖9段のような人もいるし,奨励会で終わってしまった人もいるし。将棋の世界は厳しい。
人生も厳しい。

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蜜蜂と遠雷

2017-02-15 | 小説
kindle本ではなく,ひさびさに紙媒体の本を買いました。今年度の直木賞の受賞作です。

蜜蜂と遠雷
恩田陸
幻冬舎


なかなかおもしろかったのですが,なんか,コミックの「ピアノの森」とそっくりな印象を持ちました。
いずれも天才のピアニストが出てきて,いずれもピアノの英才教育を全く受けていないのに,すばらしい演奏をする。
いずれもコンクールで物議をかもす時代の先端を行く演奏をする。
審査員がその演奏を認める認めないでもめたりする。
なんて点が共通しています。

ピアノの森はショパンコンクール,蜜蜂と遠雷は芳ヶ江国際コンクール(これは浜松国際コンクールがモデル?)を舞台にしています。
芳ヶ江コンクールの優勝者は,のちに世界的なコンクールの優勝者になることが続いているので,登竜門的な扱いになっているとの設定です。あと,芳ヶ江はうなぎが名産だとも。
実際,浜松国際で数年前優勝したチョ・ソンジンはその後2015年のショパンコンクールで優勝しましたし,うなぎは有名な名産ですから,やっぱりそうですかね。

この本は,天才少年のほかに,正統派天才が2人出てきます。コンクールの中の演奏者の精神状態などいろいろ書いてありますが,本当のところは経験者ではないのでわかりません。あと,取り上げられている曲がけっこうマニアック。
のだめなどで出てくる曲に比べても新しい時代の曲が多いかなという気も。バルトークとか,スクリャービンとか?
私はラフマニノフの前奏曲音の絵などは好きで聞いていましたが,普通はマイナーですかね?
バルトークのコンチェルトはきいたことありません。
聞いてみようかな,という気になります。

何事も生業のレベルにまで習得するというのは,大変ですね。
普通の人は,才能がなくても,長く勤勉に続ける素質があればそこそこの仕事ができるようなると思いますが,芸術の場合,長く勤勉だけでは絶対無理で,生来の才能がないとだめでしょうね。
厳しい世界です。

ちなみに,上で述べたチョ・ソンジンのショパンコンクールでの演奏は,私は素晴らしかったと思います(2位のアムランのほうが好きという人が多いように感じますが)。
ピアノの森のように,いずれ日本人でも優勝者が出てくれると良いのですが。




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