じょじょりん文庫

読書好きで雑読。ゴルフ好きでへたくそ。
気の向くままに本ネタとゴルフネタを書かせて頂いています。

ヨハネス・ブラームスの思い出

2010-03-30 | 伝記
ブラームス回想録集〈1〉ヨハネス・ブラームスの思い出 (ブラームス回想録集 (1))
アルベルト ディートリヒ; ジョージ ヘンシェル; クララシューマンの弟子たち
音楽之友社

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日本人はブラームスが好きな人が多いそうですね。
実を言うと,私は最近になるまでブラームスは余り好きではありませんでした。
ちょいと古くさい感じがして,好きな数曲を除いては,あまり聞いてもいなかったのです。
私の好みは,やはりマーラーとワーグナーです。

でも最近,のだめなんかでも取り上げられて,少しずつ聞くようになってきました。
聞いてみると,とっても良いですねえ。

マーラーの伝記に,ブラームスの悲観的なところがマーラーとは合わなかったなんて記載があったりしたのを読んでいました。ブラームスは,年のうんと違った両親(母親が父親より17歳上)の長男として生まれて,家が貧乏だったから子供の頃から酒場でピアノを弾いてアルバイトしたり,苦労したという生い立ち(生い立ちはこの本には書いてないですが),なかなかの美青年だったのに,女性に対してどこか壁を作っていたせいか独身であったことや,師匠のシューマン未亡人クララとの恋愛関係についてもちょっぴり優柔不断な結果になってしまったこと,皮肉家であったことなども相まって気むずかしい人だと思っていたりしました。

この本,面白かったです。
ブラームスは,皮肉家というより,無邪気な人という感じです。社交的ではないのでしょうが,本来はウィットに富んでいて面白い人なのかなと思います。
本当のことをズバリ言ってしまうゆえに,相手によってはそれが皮肉と取られてしまうみたいに感じます。
私がその場にいたら,手をバンバン打って笑ってしまう感じのお茶目な痛い感想を,ドーンと言ってしまう,こういう男性は好きですねえ。
もっとも,これだけの天才巨匠だからこそ認められる無邪気さではありますが。

本からの抜粋1
有名作曲家が,自作の新作をブラームスに聞いて欲しいと頼み,了承したブラームスの脇でピアノで大熱演をした。演奏が終わってブラームスはおもむろにピアノに近づき,
「この五線紙どこで買ったの。上物だなあ。」

抜粋2
とある音楽祭に呼ばれたブラームスは,そこである歌手兼作曲家と知り合った。ブラームスとその歌手兼作曲家は2人で酒場に行った。そこで音楽祭に呼ばれていた他の有名作曲家4~5人と合流し,話が弾んだ。
そのうちの宮廷楽長をしている者が,ブラームスのつれに「作曲も出来て歌も歌えていいよなあ。(ブラームスも含めて手で輪を描きながら)こちらは作曲だけだしなあ」と言うと,ブラームスは
「な~に。それもだめだろうが」

いやあ,本当のことをズバリ言えるには,自分も力量がないとだめなのですねえ。
ちなみにこの本は,ブラームス回想録集の第1巻です。他の2冊も面白そうです。

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超訳 ニーチェの言葉 フリードリヒ・ニーチェ

2010-03-25 | その他
超訳 ニーチェの言葉

ディスカヴァー・トゥエンティワン

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この本,売れているそうですね。
好きと言える分際ではありませんが,高校生の頃からニーチェは読んで,今書棚には「ツァラトゥストラ」「道徳の系譜学」「善悪の彼岸」「この人を見よ」なんてあたりを直ぐ読めるように入れてあります。
で,超訳ニーチェですが,ざっと読んでみると,まるでゲーテ格言集を読んでいるかのような,ごくまっとうな格言集になっている感じがしました。編集がまっとうすぎて,ニーチェではないみたいです。

私は,ニーチェといえば,リヒャルト・シュトラウスの有名な「ツァラトゥストラかく語りき」の音楽で表象されるようなちょっと常軌を逸した感じを持っていますので,この「超訳ニーチェ」はイメージがだいぶ違います。表紙の裏にも「明るいニーチェ」と書いてありましたが,明るいニーチェは既にニーチェではないのではないかという疑問はあります。

内容文についても,ニーチェの原文をわかりやすくアレンジしているのでしょうが,説明がちょっと多くて,文の美しさを損なう感じがします。
その例ですが,この本の記載158に以下のような文が載っています。
「158 愛が働く場所
善悪の彼岸。それは善悪の判断や道徳を完全に超越した場所のことだ。
愛からなされることはすべてその場所で起きている。だから,愛の行いは,いっさいの価値判断や解釈が及ばないものであるのだ。」

原文はたぶんこれでしょう。「善悪の彼岸」の第4篇153
「愛によってなされたことは,つねに善悪の彼岸にある。」

やはり,原文の方が遙かに美しいですね。ニーチェは短い言葉でズバッと言っているので,あまりこう説明文にしない方が,ニュアンスが伝わるように思うのですが……

ニーチェの中で私の一番好きな著作は「善悪の彼岸」(特に第4篇)なのですが,このほかの著作を見ても,「善悪」「道徳」「超人」なんて言葉がとても多く,ドイツ人をとても嫌っているかのような記載が多いのです。
たぶんニーチェは当時のドイツ人社会の中の価値観に,自分との間に埋めがたい溝を感じていて,自分の価値観が良いのか悪いのか,許されるのか許されないのかに悩み,許されないもしくは受け入れられないと思った段階で,それをも超越する「超人」とか「彼岸」「永遠回帰」なんていう方向に思想が行ったのではないか,なんて素人ながら思ったりしています。

結局ニーチェの満たされなさは解決しなくて,最終的には彼の精神も彼岸に行ってしまったわけですが,そうした苦悩や悩みが,この本からは感じられません。編者の方が意図的に削除しているのだと思いますが,いままでニーチェを読んでいない人や,あまりニーチェの苦悩が好きでない人をターゲットにしているのだとすれば,良いかも知れません。
でも,ニーチェのニーチェたる由縁と言うところからは,外れていると思います。

この本でニーチェも良いかなと思われたら,是非ニーチェの著作そのものを読んでみて頂いて,(自分の精神状態の良いときに)苦悩を実感して頂きたいと思います。
岩波文庫とか,光文社古典新訳文庫などで出ていますよ。

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マキアヴェッリ語録 塩野七生

2010-03-24 | その他
マキアヴェッリ語録 (新潮文庫)
塩野 七生
新潮社

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マキアヴェッリの君主論は有名な本ですが,原文は1513年頃ロレンツォ・デ・メディチ(有名なロレンツォ・イル・マニフィコではなく,その孫で,フランス王妃カトリーヌ・ド・メディシスの父親であったウルビーノ公ロレンツォを指す)のために書かれたもので,当時の人間を例に挙げて書かれているので,注釈がとても多くて読みにくいです。
そうした事への配慮から,この本は例をほとんど省いて,エッセンスだけを述べているので,読みやすいのです。
何度も読んだ本ですが,昨今読み返してみると,現在の政権与党の総裁や,幹事長をしている方々に当てはまる記載が多く,驚きました。政治問題は普遍なのでしょうか。

抜粋
「君主にとっての最大の悪徳は,憎しみを買うことと軽蔑されることである。…(略)…一方,軽蔑は,君主の気が変わりやすく,軽薄で,女性的で,小心者で,決断力に欠ける場合に,国民の心中に芽生えやすくなる。……」

う~ん……お小遣いもらって脱税して,兄弟揃ってうにゃうにゃやっている感じを受けますねえ。

「君主が民集の憎しみを買うのは,どういう理由によるものであろうか。…(略)…理由の第二は,君主の尊大で横柄な態度にある。このまずいやり方は,特に抑圧された民よりも自由な民に対してなされる場合,非常にまずい結果をもたらさずにはおかない。」

手当ばらまいてやるからなと言って,票をお金で買った上,「オレ様の党を選んだんだから,どいつもこいつもオレ様の言うことを聞けよ」と言われているよう思えてなりません。まだたいした活動もしていない段階から偉そうだと思います(対立与党も同じようなものなんでしょうが)。前回の選挙は結果が見えているので行きませんでしたが,次回はちゃんと行こうと思います。少なくとも支持不支持はきっかり考えないといけないかなと。

国民にとっても耳の痛い記載
「自らの安全を自らの力によって守る意志を持たない場合,いかなる国家といえども,独立と平和を期待することは出来ない」

好むと好まないとにかかわらず,アメリカに守ってもらっている現状で,自衛隊は違憲だと言ったりアメリカの基地を絶対国外に移転させるという考えを持つ政党の人は,徴兵を含めた自国の防衛についてアメリカに頼らずやっていこうと腹をくくっているのだろうか。もしそうでないのだとしたら,それは私には良いところ取りだとしか思えない……

テレビに出てくるような人ではなく,沖縄の一般的な大多数の人が実際どう思っているのかを知りたいと思います。色々思惑がありそうなテレビなどのマスコミではその辺,公平な報道がなされないように思いますし。

基地が国外移転すれば,けっこう莫大だという噂の交付金ももらえなくなってしまうと思いますし,基地の人を相手にしたビジネスもあるかと思うのですが,その辺も踏まえて,それでも基地は無くなった方が良いのか,それとも必要悪のような形で残っても良いと考えるのか……。まあ,名護市の人はNOなのでしょうけどね。

マキアヴェッリからとんだ脱線をしてしまいました。

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JAL崩壊 グループ2010

2010-03-18 | ノンフィクション
JAL崩壊 (文春新書 747)
日本航空・グループ2010
文藝春秋

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何気なく買ったのですが,久しぶりに面白い本に当たったという感じです。
JALのおかしな経営やおかしな社員の内部暴露本で,変なパイロットや変な客室乗務員の実態,ほとんど変質者のような客などの悪行が余すところなく述べられています。

私は常日頃JALを利用していたので,今回のJALの法的整理についても興味がないわけではなかったのですが,不思議だったのは,企業年金の減額にOBが最後まで同意しない人がけっこういたという点でした。
法的整理といっても,破産に始まり再生,会社更生など色々な形態があるのですが,企業年金減額に一定数の同意がなければ,再生・会社更生ではなく破産になると言われていましたよね。破産になると,会社は死んだことになりますので,終結(人間で言えば葬儀?)に向けて進むわけで,企業年金なんてゼロになるわけです。だとすればJALのOBは絶対減額に同意しなければ企業年金はゼロ!ということになりますよね(まあ,それでも厚生年金はもらえるわけですが)。
このくらいのことは,常識として自明の理だと思っていたので,なぜ同意しないのかがすごく不思議だったわけです。何か深遠なポリシーがあるのだろうかなんて思ったりして。

本書を読んで,少し分かるような気がしました。
JALのOBの一部の方には,スペシャリストであるが故に,世の中の仕組みについての常識というか知識に欠落した部分がある人がおられるのだろうと思います。

本書の中に,パイロットの人が,乗務のために移動するときはファーストクラスで移動するというくだりがあって,そのことについての批判なども述べられているのですが,私はそのことより(どうせ法的整理になればそういうことはできなくなるはずだ)「正規料金を払った客は自社の社員がファーストクラスで移動する事をどう思うのだろう(服装や態度で社員だとわかる)」と書いてあったことに,「まさしくその通り!」と手を打ってしまいました。

JAL便ではなかったのですが,一度見かけたんですよね~。
サンフランシスコからダブルブッキングでハワイ経由で帰ることになったとき(JALではなくアメリカの会社),席の関係でビジネスクラスになったんですが,ビジネスクラスの一番前の席にふんぞり返って座っている中年男性がいました(国内線だからファーストクラスはなかったんです。態度はでかかった)。
黒い革張りの小さいトランクくらいの大きさのパイロットバッグ(シールが付いていたのでJALの人とすぐわかる)を持っていたので,「ああ。異動の人だな」と思ったのですが,格好が,赤い短パンにゴム草履だったんですよね。
まあ,リゾート地に行くからなのかもしれませんが,まあ真夏の電車でも,若いあんちゃんでもない限り海の家に行くような格好では普通乗らないかなあなんて思ったりしました。ましてや飛行機には……。
私は不快に思うと言うことはなかったのですが,奇異な感じはしましたかね。
しかし,よその航空会社を利用するときでもビジネスとかファーストを利用するんですかねえ。お金かかりますね。ANAでは移動がファーストクラスなのか聞いてみたいですね。

マイレージのこともあって。私はずっとJALを利用していますので,まあ,再生支援機構(厳しいはずだ)の指導で頑張って頂いて,組合活動でしのぎを削る余裕もないくらいに仕事に邁進して頂いて,立て直しを図って頂ければと願ってやみません。

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ロストシンボル ダン・ブラウン

2010-03-17 | 推理小説
ロスト・シンボル 上・下
ダン・ブラウン
角川書店

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ダン・ブラウンの最新作です。
テーマがフリー・メイソンとワシントンDCだということで,期待して読みましたが……
ラングドン3部作の中では,天使と悪魔が一番面白かったように思います。

天使と悪魔では,1時間ごとに枢機卿が一人一人殺されていくという設定で,謎解きしないと人が殺されていってしまうという緊迫したものを感じたのですが,ロストシンボルでは,その辺がおとなしい。
本作では,謎解きの先にあるものは,フリー・メイソンの秘密が暴かれて大変なことになるということと,ラングドンの親友かつ恩人の命ということになっています。たぶん欧米ではピンとくるのでしょうが,フリー・メイソンの存在自体が希薄と思われる日本では,秘密も混乱もあまりこう,心の底から納得できるものではない事も,何はともあれ面白い!と私が思わない理由かもしれません。
もちろん,起こった事件と,そのペースの早さや意外な犯人などは十分面白く,一気に読めます。

更に,ワシントンDCの意外な描写は興味深いものがあります。
議事堂の天井壁画にワシントンが描かれていることは,今回この本を読んで初めて知りました。議事堂の中にも,本書に書かれている通りではないにしても,意味ありげなスペースが沢山ありそうなことも驚きました。ワシントンに行ったとき,時間がなくて議事堂を見なかったことが悔やまれます。
ワシントン記念塔も,中には入らなかったんですが,これも悔やまれます。

旅行者の場合,異動には徒歩かバスか地下鉄になることが不便ですが,ワシントンは観光地としてはNYよりも面白いと思います。
これからアメリカ旅行をお考えの方は,ロストシンボルを読んで,ぜひワシントンを行程に入れられることをお勧めします。

あと……
私の好きな画家の一人,アルブレヒト・デューラーについても,謎解きの一部分として出てきますので,デューラーがお好きな人もぜひ一読下さい。

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うさぎ幻化行  北森 鴻

2010-03-11 | 推理小説
うさぎ幻化行 (創元クライム・クラブ)
北森 鴻
東京創元社

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また少しさぼってしまいましたが……
なんだかずっと風邪気味なのと,これといって面白い本に当たらなかったなどのことで,つい御無沙汰してしまいました。

この本の作者の北森鴻さんは,私がとても好きな作家の一人で,旗師冬狐堂シリーズなど楽しみにしていたものでした。
今年の1月末,急逝されたと知ったときはけっこうショックを受けてしまって,もうこれで宇佐見陶子や蓮杖那智や香奈里屋といったキャラクターに会えなくなってしまうのだなと残念に思ったものでした。

この本は,その北森さんの遺作だそうですが……
あらすじですが,最上圭一という音響技師の男性が,航空機事故で死亡します。圭一から「うさぎ」という呼び名で呼ばれていた義理の妹は,圭一が機内で残した遺書の他に,自作の音響媒体の中に「うさぎ」宛のメッセージを見つけます。
ところが,その内容がどうも自分宛ではないと気が付いたところから,もう一人「うさぎ」と呼ばれていた人物がいたのではないかと捜し始めます。
もう一人の「うさぎ」も,機内で書かれた圭一の遺書が,事故についての本に掲載されたのを読み,自分宛に書かれたものではないと知って,もう一人の「うさぎ」を探し始めます。
最後はあまり後味の良い終わり方ではありませんが,疑似三角関係かと言った人間関係が動機になってきます。

本の構成は,ちょっと見にはばらばらに見える短編の集まりになっているのですが,だんだんとまとまってきて最後には全てが整合するというところはさすがに北森作品かなと思います。

ただ,もう一人の「うさぎ」が圭一を陥れる動機はわかるのですが,義理の妹の方の「うさぎ」がしでかしたことについては,兄の遺志を継ぐという感じとしてはちょっと納得いかない感じが私はします。
また,最後に二人のうさぎは,圭一の音響媒体の中に仕掛けられた音によって札幌に呼び寄せられるのですが,可聴音によって札幌に呼び寄せられたこととの説明が今ひとつ分かりにくい感じがします。
分かりが良くないのは私の読み方がいい加減なせいだと思いますが,話自体は良くできていて,退屈することなく一気に読めました。

しかし,北森さん,まだお若かったのに,残念なことです。

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