ブラームス回想録集〈1〉ヨハネス・ブラームスの思い出 (ブラームス回想録集 (1))アルベルト ディートリヒ; ジョージ ヘンシェル; クララシューマンの弟子たち音楽之友社このアイテムの詳細を見る |
日本人はブラームスが好きな人が多いそうですね。
実を言うと,私は最近になるまでブラームスは余り好きではありませんでした。
ちょいと古くさい感じがして,好きな数曲を除いては,あまり聞いてもいなかったのです。
私の好みは,やはりマーラーとワーグナーです。
でも最近,のだめなんかでも取り上げられて,少しずつ聞くようになってきました。
聞いてみると,とっても良いですねえ。
マーラーの伝記に,ブラームスの悲観的なところがマーラーとは合わなかったなんて記載があったりしたのを読んでいました。ブラームスは,年のうんと違った両親(母親が父親より17歳上)の長男として生まれて,家が貧乏だったから子供の頃から酒場でピアノを弾いてアルバイトしたり,苦労したという生い立ち(生い立ちはこの本には書いてないですが),なかなかの美青年だったのに,女性に対してどこか壁を作っていたせいか独身であったことや,師匠のシューマン未亡人クララとの恋愛関係についてもちょっぴり優柔不断な結果になってしまったこと,皮肉家であったことなども相まって気むずかしい人だと思っていたりしました。
この本,面白かったです。
ブラームスは,皮肉家というより,無邪気な人という感じです。社交的ではないのでしょうが,本来はウィットに富んでいて面白い人なのかなと思います。
本当のことをズバリ言ってしまうゆえに,相手によってはそれが皮肉と取られてしまうみたいに感じます。
私がその場にいたら,手をバンバン打って笑ってしまう感じのお茶目な痛い感想を,ドーンと言ってしまう,こういう男性は好きですねえ。
もっとも,これだけの天才巨匠だからこそ認められる無邪気さではありますが。
本からの抜粋1
有名作曲家が,自作の新作をブラームスに聞いて欲しいと頼み,了承したブラームスの脇でピアノで大熱演をした。演奏が終わってブラームスはおもむろにピアノに近づき,
「この五線紙どこで買ったの。上物だなあ。」
抜粋2
とある音楽祭に呼ばれたブラームスは,そこである歌手兼作曲家と知り合った。ブラームスとその歌手兼作曲家は2人で酒場に行った。そこで音楽祭に呼ばれていた他の有名作曲家4~5人と合流し,話が弾んだ。
そのうちの宮廷楽長をしている者が,ブラームスのつれに「作曲も出来て歌も歌えていいよなあ。(ブラームスも含めて手で輪を描きながら)こちらは作曲だけだしなあ」と言うと,ブラームスは
「な~に。それもだめだろうが」
いやあ,本当のことをズバリ言えるには,自分も力量がないとだめなのですねえ。
ちなみにこの本は,ブラームス回想録集の第1巻です。他の2冊も面白そうです。