ザ・サウンド オブ わんわん The sound of wan wan

ベルジアンシェパードグローネンダールのズースです。

八朔の雪・ニケとパールのふるさと

2010年01月27日 | 
八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)
高田 郁
角川春樹事務所

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ともだちに教えてもらうまで、この作家は聞いたこともありませんでしたが、本屋さんで時代小説のコーナーを探してみると、話題の作家扱いで他の作品も一緒に並んでいました。
帯には、2009年歴史・時代小説ベスト10、2009年最高に面白い本大賞(文庫・時代部門)、R-40本屋さん大賞、と書いてあります。
読んでみたら、ほんとうに、驚くほど面白かった!
ひさしぶりに、ああ、面白かった、と思った本でした。
水害で両親をなくした大阪の少女が、料理人として江戸で奮闘する人情もの。
大坂(大阪)と江戸の味の違いも細やかに描かれていて楽しいし、主人公の澪とまわりの人々の心根がとても心地よい。
ほろりとさせる人情ものでありながら、時代劇風痛快さもちゃんとあって、娯楽読み物として、最高。文、描写、会話がうまくて、面白い時代劇ドラマを見てるようです。
主人公の澪は「下がり眉」が特徴。
心が動くときに、眉がますます下がったりする描写がひんぱんに出てきます。
そういえば、最近の人は、みんな眉を剃って描くので、みんな似たような上がり眉。
下がり眉の人はいないなあと思いました。
続編の「花散らしの雨」も面白い。
デビュー作の「出世花」は江戸の女性おくりびとの話です。

昨年から、ドラマ「JINー仁」、ふーふーあびあびのとりアタマさんに借りた「JIN」原作16巻(これもとても面白かった)、大河ドラマの「龍馬伝」、それに高田郁さんにはまって、すっかり江戸づいています。



お散歩のときに、すれ違ったおじいさんが「ベルジアンシェパードですね、めずらしいですね、日本で買われましたか?」と話しかけてこられました。
アメリカ、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパなとあちこちでドッグショーを見に行ってこられたそうです。
ドッグショーのジャッジもされていたとのこと。
ニケを見て、「この子はバランスがいいですね」とおっしゃいました。
「でも、ベルジアンはもう少し大きいというイメージがある、少し小さいですね」と。
確かにニケとパールは小ぶりです。
もっといろいろお話をきいてみたいかたでした。

三宮で、岩国観光大使という女性が、パンフレットを配っていました。
岩国がニケとパールのふるさと。(うららも)だからついもらってきてしまいました。
錦帯橋を横目で見ながら、うららを連れに行き、ニケに初顔合わせに行ったのでした。
いつかゆっくり観光に行きたいものです。

犬のいる暮し

2009年05月21日 | 
犬のいる暮し (文春文庫)
中野 孝次
文藝春秋

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「ハラスのいた日々」の続編といえます。
ハラスの死後、5年間は犬を飼う気になれなかった著者が、2代目、3代目と犬を迎え、その3代目のメス柴には、子犬も産ませます。
老年にはいっての犬たちとの生活と考察がつづられています。
志賀直哉が犬好きで、「米」という名のイングリッシュセッターを飼っていたとか、谷崎潤一郎はグレーハウンドを飼っていたとか知りませんでした。
それにしても、柴犬への偏愛が徹底している著者、その上「かわいい」という言葉は若者的価値観で、未熟性と幼児性の賞賛にすぎないから好まない、「ポメ、マル、ヨーキー」の御三家犬への愛好がその象徴で嫌悪感が犬にまで及ぶとか、北国の橇犬のシベリアンハスキーを飼う人まで軽蔑するとか、昔流行ったスピッツは飼い主まで安っぽく見えたとか、はてはゴルフをする人が国賊だ、とか、いやはや相当の頑固じいさん、偏屈じいさんだなあ・・・とおかしくなりました。
でも、犬への愛情、犬との生活との喜びについての文章には、犬を飼っている人なら、深く共感し、うなづけることでしょう。
飼い犬の死は、「われわれの魂をくじくように作用する」という文にはまさにそうだったなあ、と思いました。
最終章の、老年が犬を飼う、ということへの考察もよかったです。
この偏屈じいさんの他の著作「清貧の思想」なども読みたくなりました。

風に舞い上がるビニールシート

2009年05月15日 | 
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)
森 絵都
文藝春秋

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なんてうまい短編集なんだろう!と思いました。
趣の違う、6つの短編のどれもが、著者の下調べ、勉強のほどがうかがい知れる、専門知識の必要と思われるもので、重量感たっぷりなのに、読後感はひとつひとつが、さわやか、爽快なのです。
その爽快感、余韻の味わいが、ちゃんとそれぞれの小説のテーマとあっているという印象でした。
お寺を舞台にした仏像修復師を描いた「鐘の音」では、ミステリーのようにひねりが効いていて、最後の余韻は、お寺ではないけどやっぱり鐘の音です。
「ジェネレーションx」は大人になったかつての野球少年の話ですが、まるでタイムリーヒット、あるいは逆転満塁ホームランみたいに気持ちいい後味でした。
私は、少し不思議でかわいい余韻の残る「守護神」が一番好きでした。
6つめの短編、表題作の「風に舞い上がるビニールシート」は一番ドラマチック、NHKで5月の終わりにドラマ化されるそうです。

老いを照らす

2009年04月28日 | 
老いを照らす (朝日新書 89)
瀬戸内 寂聴
朝日新聞社

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瀬戸内寂聴さんの本を初めて読んでみました。
小説家のときの華やかなうわさと、おびだだしい中間小説の群れの印象が強く、なんとなく、遠ざけていたのです。
図書館で、手がのびたのがこの本。
家で読んでいたら、夫が「老いか~?」と笑いました。
まだはやいかな。
なんかすっかり老いの気分なんですけど、最近。
42歳と47歳はあまり違いはないと思うんです。
でも、47歳と53歳って大きい違いがあると思うなあ。30代なんて、まだ高校生のほうに気分が寄っていってたのに・・・。

瀬戸内さんが出家に至るときのお話から、仏道の修行、それから仏教に帰依するものの立場から、老いや死や病について語っています。
全体の印象としては、瀬戸内さんは、やはり、華やぎのあるかただなあと思いました。賑やかなんです、書いておられることも。あえて言えば静謐な感じはないです。
好みがあるでしょうが、こういう説法もあるのでしょう、と思いました。



春になったら苺を摘みに

2009年03月25日 | 
真剣な目・目。


「春になったら苺を摘みに」梨木果歩著 新潮文庫
パールが来てから、ゆっくり本を読む時間がなかったのですが、ようやく一冊読み終わりました。
これは、「西の魔女が死んだ」や「りかさん」の著者、梨木果歩さんのエッセイです。
軽快なタイトルがついていますが、これは著者がイギリスに滞在していたときに知り合った人々を通じて、異文化コミュニケーションについて考察している本といえます。さまざまな国籍の人、いろいろな文化をもつ人が登場し、すばらしい筆力によって、その外見、行動、人となりがくっきり描き出されます。そこに生ずる軋轢やトラブルも、さまざま。主要人物である下宿先のウエスト婦人の「理解できないが受け入れる」という信条がずっと流れています。
風景や情景、人々が詳細に描写され、面白く読めますし、ときには、日常を深く生き抜くことはどこまで可能なことなのか、というような心理的な深い考察も織り込まれています。
カナダのプリンスエドワード島を訪問したときの話にでてくる、「赤毛のアン」の作者モンゴメリが人種差別主義者の一面もあった、という記述はちょっと驚きましたが、考えてみればそれはあり得ることだなと思います。
アーサー・ランサムが好きな私は、イギリスの湖沼地方は行ってみたい地のひとつで、そのあたりの描写が印象的でした。