333ノテッペンカラトビウツレ

 奇跡は 誰にでも 一度おきる だが おきたことには 誰も気がつかない

“パワポ”という怪物

2008-06-25 01:56:17 | SP(Standard Program)
●よく「テレビで喋っている言葉に全部、テロップが出るのは人間をバカにする」と言う意見を耳にしますが、今、この国をそれ以上の“バカの脅威”が襲いつつあることはあまり知られていません。日本の大人たちをジワジワとバカにさせる恐るべき怪物。その名は「パワポ」と言います。というわけで、本日もよろしくお願いします。

●ここ数年、企業の会議の場に出される資料が「文字だけの資料」から「パワーポイントを使った資料」に変わりつつあります。図やグラフが多用されたプレゼンテーション用の資料です。この種の資料を作るソフトはパワーポイント以外にもたくさんあるのですが、ここではひとまず“パワポ”と呼んでおきます。多くのオッサンたちは文字だけの資料を提出すると「こんなのはわかりにくい!もっと図とか使ってわかりやすいものでないと!」とか「ひと目で見て要点がわかるものを!」と怒り、その結果、パワポ資料の割合が少しずつ増えてきました。

●おかげで書店に行くと「プレゼンの方法」とか「パワポ資料はこう作れ!」などのマニュアル書が山のように並ぶようになりました。それらの書籍には「要点は簡潔に!」「図は大きく」「1枚の紙に掲載する要素は少なく」なんて標語がデカデカと飛んでいます。

●その結果、この国の企業で使われる会議資料はいつしか「絵」と「図」だらけになりました。文字は絵の隣に申し訳程度に並んでいるか、箇条書きのように短いセンテンスが並んでいるだけです。長い文章で概況を説明したり、業務で懸案に上がっている事項をコツコツと文書化したものはお目にかかる機会が減りました。先日、カフェで隣の席に座っていた会社員が読んでいた資料はパッと見では全てイラストでした。

●しかし、よく考えるまでもなくわかることなのですが、世の中の事象を何でもかんでも図とイラストだけで表現するのは無理があります。「とにかくわかりやすく!」「ひと目で見てわかるように」が実現できる事象だけであれば苦労しません。状況によっては事態は流動性が高く、複数の要因が錯綜しており、そもそも付与されている条件が多岐に渡っている場合があります。しかし、パワポ資料はそれらをすべて「絵」と「図」に還元します。正確には還元ではなく「絵になる程度に要素を切り捨て」ます。もちろん、要点を得ないだけのダラダラとした資料は困りものですが、延々と図だけが大きく掲載されたパワポ資料の山を眺め続けていると「この国の大人は文章を読解する能力が消滅してしまったのか?」と本気で心配になります。

●パワポは人をバカにします。「A4の紙1枚に全てをまとめる」というのは聞こえはいいですが、ある段階を越えると「A4の紙以上の情報はさばけない」人間を大量に生み出します。よく「パッと見てわかる資料じゃなきゃ」と部下を叱責する上司がいますが、実は単に上司がバカである可能性は捨てきれないと言っていいでしょう。ま、バカなのでバカにわかるように資料を作るしかなく、バカ用の資料に慣れてしまったバカはさらにバカが進み、いつしか資料を作っている人間もバカにとり憑かれてしまう・・・恐ろしい。本当に恐ろしい話です。

●パワポは携帯電話やインターネット、テレビ、コンピュータゲームなどと較べると、その危険性や影響があまり指摘されていません。しかし、これを読んでいる若い人たちに言いたい。あなたが考えている以上に日本の会社員はバカになりつつあります。あなたが学校で使っている教科書や、授業で書いたノートは日本の会社員には難解かもしれません。もっと図が多くて、もっと文字が少なくないと理解できないかもしれないのです。個人的には子供に「もっと本を読め!」と言う前に、大人のパワポ病を何とかした方がいいと思います。また、明日。

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1 コメント

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Unknown (ガサツ夫)
2008-07-02 17:43:16
パワポは便利です。
パワポは自分に都合のいい情報だけをきれいに並べて、さも事実であるかのように装うことの出来る、究極の兵器です。
アホな上司であればあるほど見事なまでに引っかかってくれます。
自分のやりたいことをやりたいように進めるためには必需品です。

上の方はアホばっかりですから(笑)