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新古今和歌集の部屋

美濃の家づと 四の巻 恋歌四5

 

經房卿家歌合に久戀   二條院讃岐

跡たへて淺茅が末になりにけりたのめし宿の庭のしら露

二三句は、後拾遺集に、√物をのみ思ひしほどにはかなくてあさぢ

が末に世はなりにけり。といふをとりて、庭のあれたるさまを

かねて、露も淺ぢが末におくやうになりたりと也。

摂政家百首哥に     寂蓮

こぬ人をおもひ絶たる庭の面の蓬が末ぞまつにまされる

すべては、√たのめつゝこぬ夜あまたに成ぬればまたじと思ふぞ

まつにまされる。とあるを本哥として、其歌の意なるを、三四

の句は、心得がたし。もしは庭の蓬の、いたく立ちのびて、

松よりも高くなりたる意にいひかけたるにや。もし其意

ならばいかゞ。すべて物を甚しくいひなすは、つねのことながら、

蓬の松よりも高くなれるとは、あまりなるいひざま也。

題しらず       通光卿

たづねても袖にかくべきかたぞなき深き蓬の露のかごとは

めでたし。 蓬生ノ巻に、√尋ねても我こそとはめ道も

なく深きよもぎの本のこころを、といへる哥をとれり。

尋ねるは、上にいへるごとく、昔の本をもとめ出て、いひ出る也。本

歌に、本のこゝろをとあるにても知べし。 蓬といいふから、露

といひ、露といふから、袖にかくべきとはいへるにて、二三の句は、

かこち恨むべきかたぞなきといふ意也。 深き蓬の露

のかごとゝは、深き蓬生の宿とあれて、露しげきことを

いひたてゝ、恨むるをいふ。 一首の意は、今は早く通ひし

跡もなく、蓬生となれる宿にて、其人はたえてとひもこず、

たよりも絶ぬれば、昔の契をいひ出て、君がつれなくなれるに

よりて、かく宿はあれはて侍りぬと、かこち恨むべきやうもなしと也。

           藤原保季朝臣

形見とてほのふみ分し跡もなしこしはむかしの庭のをぎはら

めでたし。下句めでたし。 二の句のほのは、三の句へかゝれり。

ほのかなる跡もなしの意なり。 むかしのは、昔になりしと

いはむがごとし。 一首の意は、人の通ひこしは、昔になりぬ

我庭の萩原なれば、ふみ分し昔の形見とて、ほのかにの

これる跡だにもなしと也。 萩原といへるは、上句に、古歌の

より所となどある歟。いまだ考へずもしさるともなくは、蓬生

とあらむぞまさるべき。

 

※√物をのみ思ひしほどにはかなくてあさぢが末に世はなりにけり
後拾遺集 雜三
 世中つねなくはべりけるころよめる
                 和泉式部
ものをのみおもひしほどにはかなくてあさぢがすゑによはなりにけり
 
※√たのめつゝこぬ夜あまたに成ぬればまたじと思ふぞまつにまされる
拾遺集 恋三
 題しらず            人麿
たのめつつこぬ夜あまたに成りぬればまたじと思ふぞまつにまされる
 
※√尋ねても我こそとはめ道もなく深きよもぎの本のこころを
源氏物語 蓬生
「更にえ分けさせ給ふまじき、蓬の露けさになむ侍る。露少し払はせてなむ、入らせ給ふべき」と聞こゆれば、
源氏
尋ねても我こそ訪はめ道もなく深き蓬のもとの心を
と独りごちて、 なほ下り給へば、御先の露を、 馬の鞭して払ひつゝ入れ奉る。
雨注ぎも、なほ秋の時雨めきて打注げば、
「御傘さぶらふ。げに、木の下露は、雨に勝りて」と聞こゆ。

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kunorikunori
Jikan様

郭公とほととぎす
https://www.dwc.doshisha.ac.jp/research/faculty_column/2016-07-15-15-15

ありがとうございました!
kunorikunori
Jikan様

はてなブログに移行することになりました。
kunorikunori’s blog で、またよろしくお願いいたします!
こちらでは、大変大変お世話になりました。
感謝の気持ちで、いっぱいです!!
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