日本共産党いわき市議団

日本共産党いわき市議団に所属する伊藤浩之・溝口民子・渡辺博之・坂本康一各議員の日々の活動や市政情報などをお知らせします。

・教育費負担軽減し人口減少に歯止めを ・中山間地の生活基盤・施設を維持して集落の維持を

2019-02-28 14:41:27 | 議員だより
いわき市議会2月定例会
 21日に開会したいわき市議会2月定例会は、25日と26日に代表質問を行い、私は26日、代表質問に立ちました。主要な部分を紹介します。
           【渡辺博之】

代表質問に立つ渡辺博之議員

子育て支援を強めて少子化対策を

渡辺 今後、いわき市では、地域社会の維持が困難になるほど、少子・高齢化を伴う人口減少が急速に進みます。市は人口減少に歯止めをかける目標をいわき創生総合戦略で掲げています。しかし、その後も人口減少に歯止めはかかっていません。
 市長は、今議会で人口減少に対応した都市計画などについては提案要旨説明しましたが、人口減少に歯止めをかける具体策はほとんど触れていないと感じました。取り組む市長の決意は。
市長 成果や課題を検証し、主要な計画の見直しを進めながら、「明るく元気ないわき市」を目指して、「いわき新時代」を切り拓くべく、まちづくりに全力で取り組んでいきます。
渡辺 創生総合戦略では、「教育にあまりお金がかからないようにする」などの若い世代の希望を実現して出生率を上昇させると記しています。
 「教育にあまりお金がかからないようにする」ために、今後充実させる施策は。
 これまで、就学援助制度や奨学金貸付制度の充実などを行ってきました。今年10月からは幼児教育の無償化を実施していきます。
渡辺 国が進める幼児教育無償化では3歳児未満の児童では住民税課税世帯は無償になりません。市独自に軽減する考えは。
 国の方針で対応したいと考えます。
渡辺 学校給食費で本市は材料費のみを徴収していますが、全国的には一部補助や無償化の流れが大きくなっています。本市も無償にすべきでは。
 給食費の無償化は困難と考えます。
渡辺 教育にお金がかからないようにもっと力を入れるべきです。

中山間地の集落も維持できる都市計画を

渡辺 人口減少が進むので、様々な維持経費を小さくするために市街地をコンパクトにして、周辺の居住地域とつないでいくネットワークが計画されています。
 昨年6月議会で伊藤浩之市議は、「市街地を自ら輝く恒星として、周辺は自らは輝かない惑星と位置付けられているのは問題である。住民は、みずからの住む地域をみずから輝かせて、地域が存続していくことを願い、日々、努力を積み重ねている。地域に恒星や惑星という主と従の関係を持ち込むことは、住民の願いに反している」と主張しました。
 コンパクト化が進み、商業、医療、福祉などの施設が、周辺地域からなくなれば、そこは住みにくくなります。
 9年前に川前町振興対策協議会が発行した、いわき市川前地区の課題に係る調査報告書、の第3章には、「埋没町村『川前』の悲劇」のタイトルで以下のように書かれています。
 「人口減少と高齢化の進行に伴い、生活扶助機能の低下、身近な生活交通手段の不足、空き家の増加、森林の荒廃、獣害、病害虫の発生の増加、耕作放棄地の増加などの重大な問題が生じ始めており、今後さらなる高齢化の進行により、『人の空洞化』や『土地の空洞化』から『ムラの空洞化』へ突き進む恐れがある。さらには『誇りの空洞化』も深刻である。地域特性を考えると、川前地区、桶売り地区及び小白井地区を一つにまとめて地域振興策を図るのは難しく、小さな集落単位で『集落の維持』を前提とした地域振興を図るほうが効果的であると考える。多くの人に来てもらうような地区振興を考えるのではなく、集落単位で集落を維持するための地域振興策を考えたほうが、小さな地域資源を再発見しやすく、集落の団結もあるだけに1つの目標に向かって行動しやすい。」
 この報告書の考え方は、商業や医療などを集約しようというコンパクト化とは逆の考え方です。
 都市計画である立地適正化計画への人口減少の反映は。
 医療、福祉、商業等の都市機能を誘導する都市機能誘導区域及び居住を誘導する居住誘導区域の設定や、誘導施策を検討します。
 中山間地では、交通や飲料水を確保し、住み続けられるような政策を考えます。
渡辺 中山間地では、公共交通や飲料水の確保だけでは住み続けることはできなくなります。集落を維持できるような施設を維持すべきです。

いわき市議会2019年2月定例会ー主な質問内容

2019-02-21 11:30:19 | 議員だより
 いわき市議会2月定例会は21日に開会し、市長から条例案67件、総額1363億2116万円の一般会計当初予算など113議案が提案されました。
 日本共産党市議団は渡辺博之議員が代表質問、溝口民子議員と坂本康一議員が一般質問に立ちます。
 主な質問内容を紹介します。

◎代表質問  渡辺 博之議員(120分)
  26日(火)午前10時予定

 市民の声に沿って人口減少対策を

 今後、いわき市においても少子・高齢化を伴う人口減少が急速に進みます。県のアンケートによると、市民は、子どもを産みやすくするには、働き方の改善、教育にお金がかからないこと、保育の充実が必要と考えています。また、高齢者福祉の充実も求めています。
 一方、いわき市復興ビジョンには、「被災した市民一人ひとりに寄り添い、住まいと暮らしの再建や安定に向けた総合的な取り組みを進めます」と書いてありますが、災害公営住宅では収入が基準を超えると大幅に値上がりします。
 さらに「原子力発電に依存しない社会を目指す」としながら、他県の原発の廃炉は求めようとしません。
 このような視点から市政を質します。
 また、いわき市内の外国人労働者は3年間で倍増しています。地域住民とコミュニティを作るために、市が力を尽くすことを求めます。

◎一般質問  溝口 民子議員(40分)
  28日(木)午前11時予定

■子どもの貧困対策にしっかり取り組むべき

 本市は、平成27年度から5ヵ年間計画で「いわき市子ども・子育て支援事業計画(いわき市こどもみらいプラン)」を策定しています。その計画内容・調査等を改めて確認します。
 一方で国は、子供の貧困対策を総合的に推進することを目的に平成25年(2013年)「子どもの貧困対策の推進に関する法律」、さらに「子供の貧困対策に関する大綱」を成立させました。
 昨年、市議団で視察した秋田市は「秋田市子どもの未来応援計画~子どもの貧困対策~」を策定しており、まずは調査の必要性を学びました。他に足立区の貧困対策を紹介しながら、本市の取組を質します。

■特別養護老人ホームの整備目標等について
 
 特別養護老人ホームへの入所希望者は、介護保険の改悪で介護度3以上に限定され、本市の平成29年4月1日現在では794人。しかし、施設整備が追いつかないその原因等を質します。

◎一般質問  坂本 康一議員(30分)
  4日(月)午前10時予定

■無料低額診療事業について
 
 無料低額診療事業は、生計困難者が経済的な理由によって必要な医療を受ける機会を制限されることのないよう、無料または低額な料金で診療を行う事業です。
 格差と貧困が深刻化する中、医療のセーフティネットとして、この事業の重要性は増しており、市民への周知状況について質します。
 また、無料低額診療事業は保険薬局では実施できず、薬代の負担が重いため、治療を中断してしまうケースもあります。
 薬代の自己負担分を助成する制度を設けている自治体もあり、本市でも独自に、保険薬局の薬代への補助を広げるよう求めます。

運転免許証を自主返納した高齢者の支援について
 
 本市では、高齢者の交通事故の未然防止を目的に、運転免許証を自主返納された方に対し、5000円相当の公共交通機関または公共施設の利用券を交付しています。事業の充実を求めます。


 

水道料金・公民館使用料など値上げ提案へー消費税率引き上げに伴い

2019-02-15 11:18:10 | 議員だより
 いわき市議会2月定例会は21日の開会予定ですが、提案する議案の説明がありました。議案は、消費税の転嫁のための改正等条例案67件、予算案30件、その他の案件が16件の合計113件、この他に人権擁護委員の推薦など人事案1件が追加提案される見込みとなっています。今号では主な議案等についてお知らせします。

◎条例案

■高額療養費貸付基金条例の廃止
 高額な医療費の支払いに困る人に対して、支払いに必要な資金を貸し付けるために基金が設置されましたが、高額療養費にかかる受領委任払い制度(高額療養費を受け取る権限を受任された医療機関等に保険者が高額療養費の全額を支払う制度)の創設に伴い、貸付制度を廃止するものです。

■消費税率の引き上げに伴う使用料等の改正
 消費税が今年10月から10%に改定されることにともない、行政財産や公民館・市民会館等の使用料や美術館の入館料、水道料金や下水道料金に転嫁している消費税を、10%に引き上げるために関連条例の48件の改定を図るものです。
 消費税関連ではこのほか、保健所の検査手数料の改正など6件が提案されています。
 施行はいづれも10月1日。

■病院事業の設置等に関する条例の改正
 いわき市医療センター(旧総合磐城共立病院)の診療科のうち、神経内科を脳神経内科に、放射線科を放射線診断と放射線治療科に改め、緩和ケア内科を加えることで、医療体制の強化及び専門性の明確化を図るものに加え、手数料等の消費税率を10%に改定するものです。

■幼稚園条例の改正
 園児数の減少等に伴い湯本第二幼稚園を廃止するものであり、保護者等への説明と合意を得て提案されるものです。

◎予算

■平成30年度2月補正予算案
 小中学校空調設備設置事業費として62億1901万円など総額114億2626万円を補正する内容。

■平成31年度当初予算案
 一般会計1363億2116万円、国民健康保険事業特別会計をはじめ4特別会計で合計852億5359万円、水道事業会計・病院事業会計など3企業会計で合計634億8070万円で予算規模は総計2850億5546万円。競輪事業特別会計のオールスター特別競輪開催経費や新病院の本体工事の終了などの影響で、前年比で約82億円のマイナスとなりました。来年度予算案には以下の内容が盛り込まれました。

○診療所開設支援事業
 診療所を確保するため、市外の医師が市内に新規開設、あるいは診療所を承継する場合に、開設費用の一部を補助する。
予算額3000万円。

○子育て短期支援事業
 保護者の疾病等により、家庭での養育が一時的に困難となった児童を、夜間や一定期間の宿泊をともない預かる事業。
予算額128万円。

○スポーツを軸とした地域創生推進事業
 スポーツ大会・合宿の誘致や将来的なスタジアムを中心としたまちづくりに向けた調査・研究を進める等の事業。予算額7754万円。

○海水浴安全対策事業
 海水浴場の開設と安全対策等を行う事業で、勿来、薄磯、四倉に続き本年度新たに久之浜・波立で開設する。
予算額4871万円

○ブロック塀等撤去支援事業
 災害時のブロック塀の倒壊等による災害を回避するために、道路に面して設置されたブロック塀等の所有者に、撤去費用の一部補助をする事業。
予算額500万円。

○動物愛護センター整備事業
 保護管理部門と愛護啓発部門の一体的整備を求める請願が前議会で採択されたことを受け、施設の検討を行うために整備検討市民委員会を設置し検討するためなどの費用。
予算額230万円。

※以上の金額の表記は1千円単位を切り捨てたものです。

いわき市議会行政視察Ⅱ

2019-02-07 11:26:10 | 議員だより
産業建設常任委員会  坂本康一議員

 産業建設常任委員会の視察で1月22日~24日の3日間、山口県宇部市の道路の整備・維持管理と、香川県高松市の多核連携型コンパクト・エコシティについて学んできました。

■協働の道づくりで維持管理費の削減

説明を受ける坂本議員
 
 東日本大震災の後、中央台北小学校の児童30名を、夏休みに宇部市へ迎える保養企画のため本市を訪れた山﨑議会事務局長に、常任委員一同より御礼を申し上げ、研修が始まりました。
 宇部市の道路の整備・維持管理は、五つの事業に分かれており、その中から、いくつかを紹介します。

〇わたしたちの道づくりサポーター事業
 工事に必要な材料代や建設機械レンタル料など、1地区50万円を上限として市から給付し、市道の拡幅等を行う事業です。
 市民は労働力や用地の提供(寄付)を行い、市は工事の設計・計画、技術的指導などを行うことで、生活に密着した地域特有の問題を解決しようというものです。

〇道路照明灯スポンサー事業
 スポンサーと市が協働で道路照明灯の新設・更新・維持管理を行う事業です。
 企業・団体は、照明灯にスポンサー名入りの表示板を設置することで、宣伝効果・企業イメージ向上などのメリットがあります。

〇道づくりサポート事業
 農閑期の2~3月に、1週間程度の範囲で地元住民約10名が労力を提供して、工費約3割を削減できた例があるといいます。
 宇部市の事業とは異なりますが、本市でも、地元自治会との協働で、市道の簡易な整備や維持補修を行う「いわき市共に創る道づくり事業」が実施されています。
 対象となる道路は舗装幅2m未満であり、工事の内容は簡易な舗装や側溝敷設です。
 地元自治会や区からの生活に密着した要望を解決するため、市民との協働を道路整備に導入していくことの必要性と、安全対策等を考慮した際の困難さを改めて感じました。

■多極連携型コンパクト・エコシティ
 
 高松市は、本市の約3分の1の面積で、約8万人多い42万の人口を抱える市ですが、2015(平成27)年の高齢化率は、本市とほぼ同じ約28%となっています。
 将来的な高齢化と人口減少が予測される中、2013年に設定された、高松市が目指す将来都市構造(都市計画マスタープラン)の見直しが必要になりました。
 それには二つの理由があったといいます。
 一つは、都心地域は人口減少、郊外では人口が増加し、さらなる拡散を抑制する集約型のまちづくり、コンパクト・エコシティという考え方が出てきたためです。
 もう一つは、計画の策定当初は、立地適正化計画がなく、明確なまちづくりの区域設定が決まっていなかったため、効果的施策が実施できなかったことでした。
 コンパクト・エコシティ推進計画は、都市計画マスタープラン・立地適正化・総合都市交通の3つの計画と一体となって、実現に取り組む位置づけとなっています。
 集約型のまちづくりに反対はなかったが、居住誘導区域外の住民から「ここには住めなくなるのか」などの意見が多かったといいます。
 そこで新たな計画の実施にあたっては、区域外でも住み続けられる環境整備と、移動手段を確保していくことに配慮し、2~3世代後を見込んだまちづくりに理解を得るために努力したといいます。
 本市の第二次都市計画マスタープランでは、将来都市像(キャッチフレーズ)「海・まち・山に輝く星座型都市」の変更が検討されました。
 2018(平成30)年度に行われた、住民懇談会や市民意見募集アンケートの結果、約1割の市民が「あまり良くない」を選択、「わからない」を合わせると「星座型都市」が約3割の市民に理解されていないことが分かり、市議会の質問もあり、「ネットワーク型コンパクトシティIwaki」と都市像が変更されました。
 香川県に匹敵する面積を持つ本市において、都市機能のコンパクト化には多くの困難が想定されます。効率化を進めながら暮らしやすさを向上させるためには、地域住民に寄り添った計画の策定が重要だと強く感じました。

いわき市議会行政視察Ⅰ

2019-02-07 10:30:50 | 議員だより
 いわき市議会は1月、各常任員会が行政視察を実施しました。内容の一部を、今回は伊藤議員から紹介します。

政策総務常任委員会  伊藤浩之

 政策総務常任委員会は、1月23日から25日までの日程で、長崎市の公共施設マネジメントの取り組み、北九州スタジアム「ミクニワールドスタジアム北九州」(以下、ミクスタ)の建設経緯や運営管理の状況を視察しました。

◇公共施設マネジメント
 ―住民の声の反映を十分に―
  長崎市の地区管理計画策定に学ぶ


長崎市から説明を受ける政策総務常任委員会

 地方自治体では、更新期等を迎える公共施設のため、多額の財政需要が生じかねないとして、公共施設の管理や統廃合に向けた計画づくりがすすんでいます。
 本市でもこれまで、市民アンケートを受けて昨年2月に総合管理計画が策定され、現在、個別の施設の管理計画案を部ごとに策定しています。
 視察した長崎市では、2015年度に公共施設等総合管理計画を策定・公開し、現在、地区別管理計画の策定をすすめていました。

■住民と市民対話重ね

 長崎市は、地区別管理計画を策定するために、17の地区別に住民との市民対話を開催しています。
 対話は、①公共施設をめぐる状況、②地区の施設に対する市の考え方、③前回出された住民の意見に対する市の考え方、④前回出された意見等を踏まえた市の検討結果――と4回開催し、回ごとに集まった住民を班ごとに分け、意見交換を実施しています。対話が、市の方針の市民への伝達の場だけにされていないことが特徴と言えるでしょう。


■住民創意の反映も

 対話では、旧炭鉱地区でほとんどの住居が市営住宅で風呂がない地区にある2ケ所の市営公衆浴場に関して、住民から市営の宿泊施設の風呂の活用で公衆浴場を1ヵ所にする意見が出されるなど、住民の意見が計画に活かされる動きがあったといいます。
 本市では、個別管理計画策定後――すなわち、市の各施設の管理方針が明確になった後に、市民の意見を聞く機会が設けられるようです。公共施設への住民の思いは千差万別であることを考えた時、大切な点は、市の方針を理解させることではなく、住民の意思を十分汲んだ計画にすることだと思います。
 こうした観点から見た時に、長崎市の市民対話の取り組みを参考にしながら、今後の本市の取り組みに活かすべきと思います。

◇ホームチームがJ3でも厳しい運営
 -北九州スタジアム―
  夢実現は現実を変えてこそ


 本市では、いわきFCがJリーグ入りを目指していることを踏まえ、本紙既報のようにスタジアムを中心にしたまちづくりに関する可能性調査が続いています。

■ミクスタ整備


スタジアムを見学する視察団

 視察した北九州市では、地元のサッカーチームがJリーグに昇格する可能性が高くなったことを踏まえミクスタが建設され、2017年4月から運用されています。
 スタジアムの整備は、地元のサッカー協会とラグビー協会の要請を受けたもので、市スポーツ振興審議会の「Jリーグ規格を満たした球技場は優先的に整備すべき」との提言をもとに進められました。
 ミクスタはPFI(※)により建設・運営され、設計・建設に約99億円(うち30億円は、totoくじ助成金)、管理・運営に15年間で約15億円、合計約115億円の事業費となっています。
 グラウンドは天然芝、1万5300人(2万人以上に拡張可能)収容の観客席、小倉駅から徒歩7分の小倉港に面した民有地に立地しています。

ミクニワールドスタジアム北九州全景(パンフレットから引用)

ミクニワールドスタジアム北九州(観客席から撮影)

新幹線利用の来場にも便利な立地となっているミクニワールドスタジアム北九州(パンフレットから引用)

■きびしい財政状況

 ミクスタの財政状況は厳しい。
 グラウンドの利用は年間100日を目標とし、実績は106日で19万4000人の利用者となっていますが、収入はネーミングライツ(3年間で1億円)を含め年間5000万円にとどまります。
 一方支出は、指定管理料1億円と借地料5000万円で合計約1億5000万円。収支差で約1億円の赤字となり、その分は一般財源から補てんされています。
 公共施設を収支だけで語るわけにはいきません。しかし、ミクスタはそもそもJリーグ入りをめざすチーム「ギラヴァンツ北九州」のホームとなることが前提です。収支のありようはしっかり検証が必要です。

■運命共同体

 算段が狂った要因の一つは、ギラヴァンツのJ2からJ3への降格です。ミクスタの運用開始とJ3降格が重なり、観客動員数は1年目1試合約6000人、2年目で約4500人にとどまりました。観客動員数は施設の収入に直結します。プロスポーツで入場料を徴収する場合の施設使用料は、規定料金の3倍に加え入場料を含む総収入の4%とされています。
 例えば入場料を平均2000円として年間15試合がほぼ満席の1万5000人だったと仮定すると、規定料金と4%分の1800万円が確保されますが、4500人では360万円にとどまってしまいます。
 もう一つは、大規模なコンサート等の会場として使いにくいという事情があります。理由の一つは観客席が少ないため採算が難しい。加えて、近隣の福岡市に大規模な施設が多数あり、あえて北九州で開催する必要がないという事情があります。
 こうした状況の中、施設を管理・運営する指定管理者と市は施設の利用を増やす思案をめぐらせています。市民体育際等の市民スポーツでのグラウンドの活用、また会議室の利用なども推奨し、結婚式やウェディングフォト撮影に施設が活用された例もあります。しかし十分に活用を広げることはできていないようです。
 同市は、ミクスタ運用後1年間の経済効果を、チケットや交通費等の直接効果で8億円、間接効果で3億7000万円と見込んでいます。ギラヴァンツの観客動員数の減少は、この経済効果も尻すぼみさせてしまいます。ミクスタとギラヴァンツは運命共同体なのです。

■Jリーグは先の先

 本市を見た場合、いわきFCが、今後、目標とするJリーグ入りを果たすためには、①東北社会人リーグ1部で優勝、②各地域の1部リーグ優勝チームによる全国地域サッカーチャンピオンズリーグで2位までに入りJFLに昇格、③JFLで4位までに入りかつJリーグ百年構想クラブに認定されたチームのうち上位2クラブであること――を満たして、やっとJ3に加入することができます。
 また、Jリーグ入りしたとしても、一筋縄でいかないことは、人口約94万人の北九州市で活動するギラヴァンツとミクスタの例が示しています。

■前提は市民合意

 政策総務常任委員会は昨年、サガン鳥栖のホーム「鳥栖スタジアム」を視察しています。当時委員だった渡辺議員は報告で、サガンがJ1に昇格し、同市と周辺自治体の連携で支援を強めたことで、観客動員数が3000人程度から1万人以上になったと書いています。
 夢を実現するには、並々ならぬ努力が必要だということでしょう。
 こうしたことから、本市がスタジアム事業を検討する際に、最も必要なのは、サッカー競技への市民の理解と、スタジアム整備への市民の理解にあります
 本紙2217号でもお知らせしたように、事業の前提として市民的合意を何よりも大切にすることを求めていきたいと思います。

※PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)=民間に公共施設整備と公共サービスの提供をゆだねる手法の一つ。