いわき市議会9月定例会は21日、閉会しました。議会の結果については、後日、報告いたします。今号では、前回に引き続き渡辺博之、伊藤浩之両議員の一般質問をお知らせします。
◎渡辺議員
子どもを産み育てやすい施策を
災害公営住宅の家賃引き下げを
(一般質問する渡辺議員)
進む少子化
国は2014年に、「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」を策定しました。ビジョンは、今後加速度的に人口減少が進み、経済社会が大きな影響を受け、地域経済社会の維持が重大な局面を迎えるなどとしています。そのうえで、人口減少に歯止めをかける積極戦略と、人口減少に対応するための調整戦略を同時に推進するとしています。
国の方針を受けて、福島県は2015年に人口ビジョンを策定し、本市もいわき創生総合戦略を策定しました。
市の総合戦略は目的を、①人口減少に歯止めをかけること、②将来にわたりまちの活力を維持していくこと、としています。
いわき市は、人口減少に歯止めをかけるため、合計特殊出生率(女性が一生涯で産む子どもの人数)と、出生数を増やすことを目標にしています。
問 現状をどのようにとらえていますか。
答 合計特殊出生率は震災前より改善しましたが、出生数は下がっています。
若い世代の希望「教育にあまりお金がかからないこと」の実現を
県が行った若い世代へのアンケート調査では、希望している子どもの人数は2・16人で、その実現のために必要なことは、①教育にあまりお金がかからないこと、②働きながら子育てできる職場環境であること、③地域の保育サービスが整うこと、となっています。
市の総合戦略では、若い世代の希望を実現することで出生数を増やすとしています。
問 市は様々な施策を行ってきましたが、出生数が下がっているということは、その施策が不十分だということです。これまで私たちは学校給食費の無償化などを求めてきましたが、市は前向きではありません。今後どのような施策を行うのですか。
答 国は幼児教育の無償化や高校教育の無償化などに力を入れていくこととしています。市は国の施策を注視しながら教育等に係る経済的負担の軽減のみならず、様々な事業を総合的・重層的に進めたいと考えます。
そもそも高い災害公営住宅の家賃の引下げを
市営住宅に入居可能な収入月15万8千円の世帯が支払う災害公営住宅豊間団地の2LDKの家賃は、同じ床面積で築37年の市営住宅比良団地(赤井)に比べて3割高い2万9200円です。
また、3LDKの家賃は3万6千円で収入の23%と非常に重い負担になっています。
災害公営住宅の薄磯、豊間、久之浜東団地では、被災していない市民も10月から入居対象にして募集しますが、利便性が低く他の市営住宅より家賃が高いので入居希望者があまりいないのではないかと心配する声も出ています。
問 収入が基準以内の世帯の家賃を引下げるべきではないですか。
答 家賃は公営住宅法施行令に基づき算出するので引き下げは困難です。
明け渡しを求める高額家賃にするな
収入が月15万8千円を超える基準以上の収入のある世帯は、3年以上経過して明け渡さない場合には近傍同種という高額な家賃になります。災害公営住宅豊間団地2LDKの近傍同種家賃は、同じ床面積の比良団地の2倍以上の9万8500円です。久之浜東団地戸建住宅では18万円にもなります。
本市では値上げを1,2年遅らせましたが、今年4月から1万円以上値上がりし、慌てて退去した世帯もあります。子育て真っ最中の共働きのある世帯は、適当なアパートがなく、夫婦それぞれが自分の実家に戻りました。再び生活設計が壊れてしまった被災者も出ています。
問 収入が基準以上の世帯の家賃を引下げるべきではないですか。
答 福島県は秋に県営災害公営住宅の家賃減免などの方針を出す予定で、その動向等を注視しながら、市独自の家賃減免の是非について検討しています。
◎伊藤浩之議員
太陽光発電設置に市も関与して適正設置を促せ
勤務時間の適正把握の仕組みづくりも
(伊藤議員の質問をきっかけに、法令違反の設備が報道に取り上げられる)
私の一般質問では、①条例制定で民間の太陽光発電事業に規制をかけ適正に誘導する、②アカシア風力発電事業への評価、③超過勤務等職員の適正な労働を確保する――の3項目を取り上げました。
条例は研究課題と市
太陽光発電事業の適正誘導は、6月定例会に続くもので、市は、国が太陽光発電に関して「事業計画策定ガイドライン」を策定しているので、適正に事業が進められると考えており、条例の制定は「研究する」と答えていました。
ところが、この質問後、問題がある太陽光発電施設に関する情報が寄せられ、改めて市がこの問題に能動的に関わり、事業を適正に誘導できるようにしていく重要性が浮き彫りになっていました。
崩落事故等発生
問題があった施設は、一つは内郷高野町に㈱アイラックが建設をすすめた施設です。高野小学校・内郷第三中学校の目前の施設をはじめ数ヵ所に施設がありますが、このうち通学路である市道脇で、住民が法面の「崩落が心配」と指摘していた場所で、8月13日、現実に崩落事故が発生しました。
また、小名浜上神白にエナジー電力㈱が設置した太陽光発電施設では、むき出しの法面がブルーシートだけで養生され、直下の住宅等に降雨のたびに土砂が流れ込む事態になっており、ここでも崩落等が懸念されています。
一般質問の答弁では、アイラックは開発に必要な森林法に基づき届け出た計画以上の区域を開発、その結果、法面が急こう配となり、土砂崩落が発生したといいます。
また、エナジー電力は、一部地域の伐採に必要な届けや小規模林地開発計画書を提出しないままに開発してしまい、排水対策も不十分な状態で工事を進めてきたといいます。
市は、これらに是正を「強く求める」としていますが、発電設備の設置は進みます。
違法に進んだ施設で開発が進められる。こうしたことを繰り返さないために、計画段階から市が能動的に関わり、施設が適正に設置されるよう誘導する必要があります。
市執行部は、これらの事業は、国のガイドラインの暫定措置が適用されるため、「一定の猶予期間の中で事業計画を提出して、ガイドラインを満足させるような形」で、事業を進めれば良いという考えをにじませます。
しかし、現に、事故等を発生させ、場合によっては人身や財産に危険を及ぼしかねない状況がある中で、それで良いのかということが問われています。
神戸市にも学んで
私は次のように求めました。
「西日本豪雨災害で太陽光パネルの崩落事故を受けた神戸市は、出力10Kw以上の事業用太陽光パネルの設置を届け出制にする条例制定の検討に入りました。同市長は『安全を守るためには既存の法令では不十分』と指摘しています。本市では住民に危険が迫る事態がすでに発生しており、スピード感を持って『研究』などではなく、条例制定に向けて動き出すことが求められており、市長の見解を伺いたい。」
市長は、「国県等の動向を注視し、その必要性についても研究してまいりたい」と、6月定例会と同じ答弁を繰り返しました。
この姿勢で、住民の安全と財産を守ることができるのかが問われる結果となりました。
最多残業年1253時間
財政部の職員が昨年2月に自殺した事件の関係から、適正な勤務確保に向けた取り組みを質しました。
質問の中で、2017(平成29)年度の最多超過勤務は年間1253時間にも上ると言います。単純平均で月100時間を超えています。
現在、超過勤務は、本人の届け出で把握する仕組みとなっているため、届け出のない超過勤務=サービス残業を把握できない仕組みです。
「職員を守るためには費用が掛かってもしょうがない、という観点」で、パソコンの使用履歴の活用など、客観的に勤務状況を把握できる仕組みを導入するよう求めました。
総務部長は、「他市の状況を注視してまいりたい」とだけ答えました。