◎清水市政を考える6『優先』
4年前、震災直後の復旧・復興事業に取り組んだ渡辺敬夫市長(当時)から市政を引き継いだ清水敏男市長。この4年間に多くの事業が完了期を迎えました。
市内最大の津波被災地・薄磯地区では、宅地造成事業が完了、今年7月15日の海開きに合わせて被災者に最後の宅地引渡しが行われました。隣の豊間地区も来年3月に宅地の引き渡しが完了する予定です。
一方、この4年間、いわき市では様々なイベント的性格を持つ事業が展開されました。
2015(平成27)年度の環太平洋首脳会議(太平洋・島サミット)、16年度にはWBC(ワールドベースボールクラシック)アンダー15ベースボールワールドカップ(U15)、また同年の市政50周年を記念した各種事業では、いわきサンシャイン博をはじめ50の事業が展開されました。
こうした事業の展開には懸念もありました。
例えば、U15の開催基準を満たすための改修で、南部スタジアムに約3億円が投じられました。また、いわきサンシャイン博は約1億円が投じられ、小名浜花火大会の例年900万円の補助金は3000万円に引き上げられました。
「ふるさと・いわき21プラン実施計画(3年間)」に、位置付けられていない事業も含まれていました。
実施計画は、当面3年間にすすめる具体的事業内容を定め、行財政運営の指針にするために策定されます。
計画のおおもとは2020年度までの20年間を実施期間とする総合計画(本市では「ふるさと・いわき21プラン」)で、総合計画の10年ごとの計画である基本計画をより具体的にする計画です。
先に書いたように、実施計画は行税制運営の指針です。計画外の事業実施は、財政に悪影響を与える恐れもあります。ですから、実行しようとする事業は実施計画に位置付け、財政の影響を検討しながら、計画的にすすめようとするわけです。
今年の2月定例会には、仮称・磐城平城城跡公園の用地取得や公園の基本設計にかかわる予算が計上されました。予算化される直前に実施計画に入った事業でした。同地区のまちづくり関係者の長年の要望事項であった公園整備はやむをえない側面があります。
7月31日に平地区のまちづくり懇談会が開かれました。清水市長は、いわき市にはこれはというシンボルがないとしながら、「磐城平城をシンボルにしていきたい」という趣旨で発言をしました。
いま、この整備構想に櫓(やぐら)の建設も盛り込むなど、より大きな事業費になりかねない内容になろうとしているのです。
ある市民は次のようにいいます。
「そのような計画があるということを全く知らなかった・・。私個人としては、目の前で日々重機が行き来している沿岸部の工事を見ているので、え?お城って何のこと!? と、狐につままれちゃってる状態です・・」
本市のシンボルにしようとするのに、市民が計画自体を知らない。そんなことで、本市のシンボルとして育て上げることができるのでしょうか。
また、14市町村が合併して誕生した広域の本市は、それぞれの地域が背負ってきた歴史的条件も、地理的条件も異なっています。
こうしたことを考えると、広範な市民の合意が得られるシンボル事業となるのか。その点も疑問です。
「ふるさと・いわき21プラン」は、めざすべき本市の姿を作り上げていく上での「まちづくりの姿勢」にこう書きました。「生活者起点」「将来世代への責任」の2点は、「私たち自身が共有すべき約束事」というのです。
こうしたまちづくりの基本姿勢を踏まえた時に、今後の市政で何が優先されるべきなのか。それは本市を支える未来の担い手を育てていくことです。
日本共産党市議団は、その一つの政策として、学校給食無償化の実現を市に迫ってきました。
また、生活が困窮する世帯の児童・生徒の学習の機会確保のための市の支援策の実現を求めてきました。
一部は、今年度から、生活困窮世帯の中学生を対象にした「子供の学習支援事業」として実現をしてきました。
しかし、全体をみれば、まだまだ十分な対応がとられているとはいいがたい状況があります。
「磐城平城」づくりという箱モノを優先するのか。それとも子どもたちが安心して学び、生活できる環境を充実して本市の担い手育成・人づくりを優先するのか。いま鋭く問われています。
(本連載は伊藤浩之が担当しました)
◎政活費 あいつぐ不祥事 適正運用のため本市議会の情報公開をさらにひろく
「せいかつひ」。政務活動費の略称で「政活費」と記述します。決して「生活費」ではないので、誤解のないようお願いします。本来、政活費は「議員の調査研究その他の活動に資するため」に支給される費用ですが、最近の神戸市議会での不正流用のように、不正使用の例が後を絶ちません。いわき市議会は大丈夫なのか。疑問の声もいただきます。本市議会の政活費はどのように運用されているのか、お知らせしたいと思います。
伊藤浩之
自民党の今井絵理子参院議員との不適切な交際が報じられた、神戸市議会自民党の橋本市議。市政報告チラシの架空発注による政活費の不正流用疑惑も持ち上がり8月29日に辞職しましたが、同市議会の政活費不正流用はこれにとどまりませんでした。
解散した会派「神戸自民党」の3議員も、合計約2310万円の不正流用による詐欺罪で在宅起訴され辞職しているのです。
ご記憶のことと思いますが、昨年夏には富山市議会で政活費の不正受給が発覚し12人が辞職、補欠選挙が行われる事態になりました。
しかも12人の辞職を受けて補欠選挙が執行された後に不正請求が発覚したケースもあり、結果的に38人の議員中14人が辞職する事態になっていました。
「号泣議員」で有名になった元兵庫県議は、約913万円の政活費をだまし取ったとして詐欺罪などで起訴され、懲役3年、執行猶予4年の判決が確定しています。
政活費の不正受給は、立派な犯罪行為なのです。
このお金の問題が政治の信頼を揺るがしてきました。
安倍内閣でも、3年間で計260枚520万円分の領収書を偽造して政治資金報告をしていたという稲田朋美衆院議員や甘利明衆院議員の現金を受け取っての口利き疑惑など、疑惑が発覚するたびに、政治に対する信頼が揺らいできました。
7月に日刊ゲンダイが、吉野正芳復興大臣の不適正使用疑惑を報道しました。
2014(平成26)年の政治資金収支報告書に、いわき市内の同じスナックでの1日2回の食事や、福島市のキャバクラで別々の日に2回の食事の記載があったというのです。
スナック等での食事は、通常は考えられません。疑問が残りますが、記者からの問い合わせに吉野事務所から回答がなかったとされ、真相はやぶの中です。
住民の代表である議員が“カネ”にまつわる犯罪行為に手を染める、あるいは“カネ”に対して不明朗な扱いをする。こんなことが続けば、政治と議会に対する信頼がさらに失墜してしまいます。
これを他山の石として、本市議会の運営に生かしていくことが重要だと思います。
■マニュアルによって厳格に処理
本市議会の政活費は、市議会で策定した「運用マニュアル」に従って運用されています。
マニュアルでは、視察等に活用する調査研究費、会場費等に活用する研修費、会派広報紙等に活用する広報費、
資料の印刷やパソコンのリース等に活用する資料作成費(資料印刷や事務消耗品費やパソコン等リース代等)等9つの費目を設け、それぞれに支出ができる場合、支出ができない場合の考え方を明確にしています。
例えば消耗品については次のような記述があります。
「私費で購入した自宅設置の事務用機器(プリンター、ファクシミリ等)に係る消耗品」の支出は、「政務活動目的の使用分と私的な使用分を証明することは困難であることからできない」
私的な支出と政務活動の支出を厳密に区別しているのです。
また、全ての支出に領収書をはじめ必要書類を添付した上で、それぞれの支出をマニュアルに従って厳格にチェックし、適正に執行するようにしています。
しかし、課題も残っていると考えています。
2016年度分の政活費から、議会のホームページ上で、それぞれの会派の費目毎の支出状況を公開しています。しかし、個別の支出内容が含まれていません。知るためにはお金と時間をかけて情報公開制度を活用するしかないのです。
政務活動費を、市民の監視と理解のもとに効果的に活用するために、領収書も含めてより詳細に公開することが必要です。
日本共産党市議団は、議会改革の一環としても、政務活動費のより詳細な公開の実現に力を尽くしていきたいと思います。
4年前、震災直後の復旧・復興事業に取り組んだ渡辺敬夫市長(当時)から市政を引き継いだ清水敏男市長。この4年間に多くの事業が完了期を迎えました。
市内最大の津波被災地・薄磯地区では、宅地造成事業が完了、今年7月15日の海開きに合わせて被災者に最後の宅地引渡しが行われました。隣の豊間地区も来年3月に宅地の引き渡しが完了する予定です。
一方、この4年間、いわき市では様々なイベント的性格を持つ事業が展開されました。
2015(平成27)年度の環太平洋首脳会議(太平洋・島サミット)、16年度にはWBC(ワールドベースボールクラシック)アンダー15ベースボールワールドカップ(U15)、また同年の市政50周年を記念した各種事業では、いわきサンシャイン博をはじめ50の事業が展開されました。
こうした事業の展開には懸念もありました。
例えば、U15の開催基準を満たすための改修で、南部スタジアムに約3億円が投じられました。また、いわきサンシャイン博は約1億円が投じられ、小名浜花火大会の例年900万円の補助金は3000万円に引き上げられました。
「ふるさと・いわき21プラン実施計画(3年間)」に、位置付けられていない事業も含まれていました。
実施計画は、当面3年間にすすめる具体的事業内容を定め、行財政運営の指針にするために策定されます。
計画のおおもとは2020年度までの20年間を実施期間とする総合計画(本市では「ふるさと・いわき21プラン」)で、総合計画の10年ごとの計画である基本計画をより具体的にする計画です。
先に書いたように、実施計画は行税制運営の指針です。計画外の事業実施は、財政に悪影響を与える恐れもあります。ですから、実行しようとする事業は実施計画に位置付け、財政の影響を検討しながら、計画的にすすめようとするわけです。
今年の2月定例会には、仮称・磐城平城城跡公園の用地取得や公園の基本設計にかかわる予算が計上されました。予算化される直前に実施計画に入った事業でした。同地区のまちづくり関係者の長年の要望事項であった公園整備はやむをえない側面があります。
7月31日に平地区のまちづくり懇談会が開かれました。清水市長は、いわき市にはこれはというシンボルがないとしながら、「磐城平城をシンボルにしていきたい」という趣旨で発言をしました。
いま、この整備構想に櫓(やぐら)の建設も盛り込むなど、より大きな事業費になりかねない内容になろうとしているのです。
ある市民は次のようにいいます。
「そのような計画があるということを全く知らなかった・・。私個人としては、目の前で日々重機が行き来している沿岸部の工事を見ているので、え?お城って何のこと!? と、狐につままれちゃってる状態です・・」
本市のシンボルにしようとするのに、市民が計画自体を知らない。そんなことで、本市のシンボルとして育て上げることができるのでしょうか。
また、14市町村が合併して誕生した広域の本市は、それぞれの地域が背負ってきた歴史的条件も、地理的条件も異なっています。
こうしたことを考えると、広範な市民の合意が得られるシンボル事業となるのか。その点も疑問です。
「ふるさと・いわき21プラン」は、めざすべき本市の姿を作り上げていく上での「まちづくりの姿勢」にこう書きました。「生活者起点」「将来世代への責任」の2点は、「私たち自身が共有すべき約束事」というのです。
こうしたまちづくりの基本姿勢を踏まえた時に、今後の市政で何が優先されるべきなのか。それは本市を支える未来の担い手を育てていくことです。
日本共産党市議団は、その一つの政策として、学校給食無償化の実現を市に迫ってきました。
また、生活が困窮する世帯の児童・生徒の学習の機会確保のための市の支援策の実現を求めてきました。
一部は、今年度から、生活困窮世帯の中学生を対象にした「子供の学習支援事業」として実現をしてきました。
しかし、全体をみれば、まだまだ十分な対応がとられているとはいいがたい状況があります。
「磐城平城」づくりという箱モノを優先するのか。それとも子どもたちが安心して学び、生活できる環境を充実して本市の担い手育成・人づくりを優先するのか。いま鋭く問われています。
(本連載は伊藤浩之が担当しました)
◎政活費 あいつぐ不祥事 適正運用のため本市議会の情報公開をさらにひろく
「せいかつひ」。政務活動費の略称で「政活費」と記述します。決して「生活費」ではないので、誤解のないようお願いします。本来、政活費は「議員の調査研究その他の活動に資するため」に支給される費用ですが、最近の神戸市議会での不正流用のように、不正使用の例が後を絶ちません。いわき市議会は大丈夫なのか。疑問の声もいただきます。本市議会の政活費はどのように運用されているのか、お知らせしたいと思います。
伊藤浩之
自民党の今井絵理子参院議員との不適切な交際が報じられた、神戸市議会自民党の橋本市議。市政報告チラシの架空発注による政活費の不正流用疑惑も持ち上がり8月29日に辞職しましたが、同市議会の政活費不正流用はこれにとどまりませんでした。
解散した会派「神戸自民党」の3議員も、合計約2310万円の不正流用による詐欺罪で在宅起訴され辞職しているのです。
ご記憶のことと思いますが、昨年夏には富山市議会で政活費の不正受給が発覚し12人が辞職、補欠選挙が行われる事態になりました。
しかも12人の辞職を受けて補欠選挙が執行された後に不正請求が発覚したケースもあり、結果的に38人の議員中14人が辞職する事態になっていました。
「号泣議員」で有名になった元兵庫県議は、約913万円の政活費をだまし取ったとして詐欺罪などで起訴され、懲役3年、執行猶予4年の判決が確定しています。
政活費の不正受給は、立派な犯罪行為なのです。
このお金の問題が政治の信頼を揺るがしてきました。
安倍内閣でも、3年間で計260枚520万円分の領収書を偽造して政治資金報告をしていたという稲田朋美衆院議員や甘利明衆院議員の現金を受け取っての口利き疑惑など、疑惑が発覚するたびに、政治に対する信頼が揺らいできました。
7月に日刊ゲンダイが、吉野正芳復興大臣の不適正使用疑惑を報道しました。
2014(平成26)年の政治資金収支報告書に、いわき市内の同じスナックでの1日2回の食事や、福島市のキャバクラで別々の日に2回の食事の記載があったというのです。
スナック等での食事は、通常は考えられません。疑問が残りますが、記者からの問い合わせに吉野事務所から回答がなかったとされ、真相はやぶの中です。
住民の代表である議員が“カネ”にまつわる犯罪行為に手を染める、あるいは“カネ”に対して不明朗な扱いをする。こんなことが続けば、政治と議会に対する信頼がさらに失墜してしまいます。
これを他山の石として、本市議会の運営に生かしていくことが重要だと思います。
■マニュアルによって厳格に処理
本市議会の政活費は、市議会で策定した「運用マニュアル」に従って運用されています。
マニュアルでは、視察等に活用する調査研究費、会場費等に活用する研修費、会派広報紙等に活用する広報費、
資料の印刷やパソコンのリース等に活用する資料作成費(資料印刷や事務消耗品費やパソコン等リース代等)等9つの費目を設け、それぞれに支出ができる場合、支出ができない場合の考え方を明確にしています。
例えば消耗品については次のような記述があります。
「私費で購入した自宅設置の事務用機器(プリンター、ファクシミリ等)に係る消耗品」の支出は、「政務活動目的の使用分と私的な使用分を証明することは困難であることからできない」
私的な支出と政務活動の支出を厳密に区別しているのです。
また、全ての支出に領収書をはじめ必要書類を添付した上で、それぞれの支出をマニュアルに従って厳格にチェックし、適正に執行するようにしています。
しかし、課題も残っていると考えています。
2016年度分の政活費から、議会のホームページ上で、それぞれの会派の費目毎の支出状況を公開しています。しかし、個別の支出内容が含まれていません。知るためにはお金と時間をかけて情報公開制度を活用するしかないのです。
政務活動費を、市民の監視と理解のもとに効果的に活用するために、領収書も含めてより詳細に公開することが必要です。
日本共産党市議団は、議会改革の一環としても、政務活動費のより詳細な公開の実現に力を尽くしていきたいと思います。