日本共産党いわき市議団の伊藤浩之、高橋明子、溝口民子の各議員は、7月25日から27日まで金沢市で開かれた第57回自治体学校に参加し、諸課題について学んできました。紙面を通じて報告します。
〈全大会報告〉
伊藤浩之
第57回自治体学校は、「戦後70年、憲法が輝くほんものの地方自治を学ぶ」をメインテーマに掲げ、石川県金沢市内の金沢大学などを会場に開かれました。
初日と最終日は開会式と閉会式をかねた全体会で、初日には地方自治のあり方について記念講演とパネルディスカッションで学びました。
記念講演では大阪市立大学の宮本憲一名誉教授が「地方自治の危機と再生への道」と題して、憲法と沖縄問題から地方自治のあり方を論じました。
現在、沖縄県民の反対にかかわらず辺野古沖に基地移転を強行する動きは地方自治の破壊につながりかねないとして宮本教授は、国が言っている地方分権論は、中央統治の分権論であり、国の承認のもとに地方自治が決まるものになりかねないと、その危険性を指摘しました。
続くパネルディスカッションでは京都大学の岡田知弘教授をコーディネーターに、金沢大学の武田公子教授、長野県阿智村の岡庭一雄前村長が報告しました。
岡田教授は、平成の大合併は、当時推進する側だった地方分権推進委員会の西尾勝氏が「結果を見ると大失敗」と参院の調査会で述べたように、政治的失敗は明白だったとして、道州制導入の動きは「戦争できる国」づくりに向けて地方自治を変質するものだと指摘。
現在の憲法体制はその体制づくりに不向きなため国→道州→市町村という垂直的な体制を定める明治憲法型の体制作りが考えられていると批判。
さらに地方創生は大資本や外国資本が地域の産業資源を活用してもうけを上げようとするものだとして、新潟市のローソンファームなどの実例を紹介しました。
武田教授は、石川県白山市の合併の事例研究を発表しました。
合併の後も、山麓部と呼ばれる村を中心とした地域では過疎化が止まらず、公共施設も集約される状況が広がっている一方、旧市を中心とした地域は人口は横ばいになり、公共投資も集中していることを紹介し、合併が地域の問題解決につながっていない実態を訴えました。
また岡庭前村長は、自治体消滅論など市町村淘汰の動きに抗して、地域の経済的資源を利用した発展を促そうとするのが「小さくても輝く自治体フォーラムの会」の活動だとして、福島県大玉村の宅地開発と子育て支援の充実で、人口の拡大をはかっている例などを紹介しました。
最終日は、金沢大学の中村浩二特任教授が世界農業遺産を活用した地域再生の取り組みについて報告しました。
里山と里海の破壊がすすんでいる現状のもとで、能登を世界農業遺産として登録。これを保存し活用するために「能登里山里海マイスター育成プログラム」(当初は「養成プログラム」)として研修制度を設け人材育成を図り、能登の里山と里海を保全する活動を展開している事例を紹介しました。
〈分科会報告〉
「地域循環型経済と地域づくり」
伊藤浩之
中央大学の矢幡一秀教授を助言者としてすすめられました。
矢幡教授は、中小企業が、大企業には果たしえない地域の潜在的需要を掘り起こしサービス等を提供する役割を果たしているとして、ヨーロッパでは小企業憲章の制定で、各国が職人などを保護・育成する施策を展開していることを紹介しました。
また日本では中小企業振興条例がこの役割を果たし、近年、特段に、小規模事業者や金融機関の役割を位置づけるなど、条例が充実する傾向にあることを紹介しました。
また金沢大学の佐無田光教授は、石川県七尾市での産業連関の分析と産業活性化策の検討状況を報告。
同市は一次産品を直接流通に乗せるために、地域産品による域内での生産誘発効果が低いとして、農産物や水産物の六次産品化の検討がすすめられていると説明しました。
京都府与謝野町は、産業振興条例の制定について説明。
地域の中心産業は織物と農業であるために、条例が対象とする中小事業者に農民を含めるなど特性をだし、現在、産業プロモーションの一環として「織りなす人」というウェブサイトを活用したPR戦略をすすめていることを報告しました。
現在、TBS系列で放送中の「ナポレオンの村」のモデルとなった石川県羽咋市職員の高野誠鮮さんも講演しました。
ドラマのエピソードはだいぶフィクションが混じっていますが、人間像はだいぶ近い印象でした。
過疎地である羽咋市神子原地区のコメをローマ法王に献上することに成功し、ブランド米に仕立て上げるなど、農業所得を上げることと、当地に伝わる烏帽子親の伝承を利用して、学生を村に呼び、住民と交流をはかることで活性化させているなどの事例を紹介。現在、同地区で自然農法に取り組み農産品のブランド化を図っていることなどを紹介していました。
いわき市は、今年度中に中小企業振興条例の制定に向けて検討をすすめていますが、全国の先進例にも学びながら、より良い条例となるよう、学び、意見を届けていくことが当面の課題になっています。
また条例制定後の産業振興に向けた具体的な行動の中で、行政がどのような役割を果たすのかも、高野さんの講演の中で方向性が示されているように思います。
行政と住民の関係のあり方などを考えていくことが引き続き必要です。
〈分科会報告〉
「子どもの育ちを保障する」
高橋明子
雇用環境の悪化や格差拡大を受けて「子どもの貧困」が深刻化するなか、「子どもの貧困対策法」が成立しました。私は「子どもの貧困」の実態をより知るために、立教大学の浅井春夫教授の講演を聞くことにしました。
先生は、一人ひとりの子どもたちの幸せをどう保障するかは国の姿勢を示す「本物の目安」であり、国が子どもたちに対しどれほどの関心を払っているかで、子どもの貧困対策の中身が決まってくると述べました。
安倍内閣の経済政策のもとで非正規雇用者が増え、2014年7月の実質賃金は前年比で6・22%落ち込み、勤労者の生活は厳しくなり、国内市場が縮小し、国民の消費支出は抑制されました。結果として貧困は拡大され、子どもの貧困は改善されなかったのです。国連のユニセフが発表した「先進国における子どもの貧困」では日本はOECD35ヵ国中9番目に貧困率が高い国になっており、特に子どもの貧困が集中している世帯は母子世帯です。年間総所得が243・4万円のうち社会保障による子育て応援率は20・2%という現状です。
2014年1月の雇用統計では、1年間で非正規雇用が135万人増え、1956万人となっていることは、非正規雇用の人たちの多くは子どもを育て、またこれから子どもを持つ勤労者であることを踏まえると、日本の貧困のすそ野は確実に広がっていると話されました。
政府の「子どもの貧困対策法」は貧困が世代を超えて連鎖することのないよう、環境整備、教育の機会均等を図ることなど、すべての子どもたちが夢と希望を持って成長していける社会の実現を目指すとしています。方針として子どもの貧困の実態、指数を設定し改善に取り組むとしています。しかし最大の問題点は数値目標を設定しなかったことでした。
貧困対策の課題は、政府や地方冶自体で子どもの貧困対策の目標を設定し計画を策定し、貧困率の削減目標を明記することです。
政府は真剣に子どもの貧困問題を考え、イギリスなどの子どもの貧困根絶法などを参考にして日本から子どもの貧困を早急に根絶すべきです。
〈分科会報告〉
「社会保障解体の現局面―医療・介護を中心に」
溝口民子
5人の方がそれぞれの立場から講義をしました。
初めに、金沢大学横山寿一教授は「社会保障・税一体改革の概要や医療・介護の問題点等」について講義。「医療・介護を中心にしつつ、年金、生活保護、障害者福祉、保育・子育て新システムと社会保障全般にわたる制度改革であり、公的責任から自助・互助・共助・公助の仕組みに向けた大転換である」と語りました。
次に、大阪府立病院機構の看護師の山本桃代氏が、利用者と地域住民へのアンケートを紹介。寄せられた2221枚の中の「救急や急患に対応できる体制の充実」「医師・看護師の増員で医療・介護の充実を望む」等の意見が紹介され、本市にも見られる要望でした。これらの活動を踏まえ、「住民の要求をよく聞き、病院の役割を市民と積極的に議論することが大事であり、自治体病院を守ることは街づくり運動である」と結びました。
その他、足立区障がい福祉課の二見清一氏、大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員の日下部雅喜氏、特別養護老人ホームやすらぎホーム相談員の今宮洋之氏が、主に現場での実態から、障害福祉・生活保護の問題点、改定介護保険の影響・問題点を提示しました。
介護保険がスタートして15年が経過。「介護心中」「介護殺人」が起き、「介護難民」が増え、「介護漂流」という事態も発生し、早急に介護保険の立て直しが迫られています。
しかしながら、今年4月からの介護保険の主な改悪は、
①要支援者のホームヘルプ・デイサービスの「保険外し」(2017年4月までの猶予期間あり)
②特別養護老人ホームは要介護3以上に限定(今年4月から)
③利用者負担を所得によって「2割負担」に(今年8月から)
④低所得の施設利用者の「食費・部屋代補助の削減」(今年8月から)
こうした内容は、多くの利用者を切り捨てることで、「持続可能な制度」を目指すとしていますが、一層「制度あってサービスなし」が色濃くなっていくと痛感しました。本市としても国に撤回を求め、市の責任で充実を図ることが求められます。
〈全大会報告〉
伊藤浩之
第57回自治体学校は、「戦後70年、憲法が輝くほんものの地方自治を学ぶ」をメインテーマに掲げ、石川県金沢市内の金沢大学などを会場に開かれました。
初日と最終日は開会式と閉会式をかねた全体会で、初日には地方自治のあり方について記念講演とパネルディスカッションで学びました。
記念講演では大阪市立大学の宮本憲一名誉教授が「地方自治の危機と再生への道」と題して、憲法と沖縄問題から地方自治のあり方を論じました。
現在、沖縄県民の反対にかかわらず辺野古沖に基地移転を強行する動きは地方自治の破壊につながりかねないとして宮本教授は、国が言っている地方分権論は、中央統治の分権論であり、国の承認のもとに地方自治が決まるものになりかねないと、その危険性を指摘しました。
続くパネルディスカッションでは京都大学の岡田知弘教授をコーディネーターに、金沢大学の武田公子教授、長野県阿智村の岡庭一雄前村長が報告しました。
岡田教授は、平成の大合併は、当時推進する側だった地方分権推進委員会の西尾勝氏が「結果を見ると大失敗」と参院の調査会で述べたように、政治的失敗は明白だったとして、道州制導入の動きは「戦争できる国」づくりに向けて地方自治を変質するものだと指摘。
現在の憲法体制はその体制づくりに不向きなため国→道州→市町村という垂直的な体制を定める明治憲法型の体制作りが考えられていると批判。
さらに地方創生は大資本や外国資本が地域の産業資源を活用してもうけを上げようとするものだとして、新潟市のローソンファームなどの実例を紹介しました。
武田教授は、石川県白山市の合併の事例研究を発表しました。
合併の後も、山麓部と呼ばれる村を中心とした地域では過疎化が止まらず、公共施設も集約される状況が広がっている一方、旧市を中心とした地域は人口は横ばいになり、公共投資も集中していることを紹介し、合併が地域の問題解決につながっていない実態を訴えました。
また岡庭前村長は、自治体消滅論など市町村淘汰の動きに抗して、地域の経済的資源を利用した発展を促そうとするのが「小さくても輝く自治体フォーラムの会」の活動だとして、福島県大玉村の宅地開発と子育て支援の充実で、人口の拡大をはかっている例などを紹介しました。
最終日は、金沢大学の中村浩二特任教授が世界農業遺産を活用した地域再生の取り組みについて報告しました。
里山と里海の破壊がすすんでいる現状のもとで、能登を世界農業遺産として登録。これを保存し活用するために「能登里山里海マイスター育成プログラム」(当初は「養成プログラム」)として研修制度を設け人材育成を図り、能登の里山と里海を保全する活動を展開している事例を紹介しました。
〈分科会報告〉
「地域循環型経済と地域づくり」
伊藤浩之
中央大学の矢幡一秀教授を助言者としてすすめられました。
矢幡教授は、中小企業が、大企業には果たしえない地域の潜在的需要を掘り起こしサービス等を提供する役割を果たしているとして、ヨーロッパでは小企業憲章の制定で、各国が職人などを保護・育成する施策を展開していることを紹介しました。
また日本では中小企業振興条例がこの役割を果たし、近年、特段に、小規模事業者や金融機関の役割を位置づけるなど、条例が充実する傾向にあることを紹介しました。
また金沢大学の佐無田光教授は、石川県七尾市での産業連関の分析と産業活性化策の検討状況を報告。
同市は一次産品を直接流通に乗せるために、地域産品による域内での生産誘発効果が低いとして、農産物や水産物の六次産品化の検討がすすめられていると説明しました。
京都府与謝野町は、産業振興条例の制定について説明。
地域の中心産業は織物と農業であるために、条例が対象とする中小事業者に農民を含めるなど特性をだし、現在、産業プロモーションの一環として「織りなす人」というウェブサイトを活用したPR戦略をすすめていることを報告しました。
現在、TBS系列で放送中の「ナポレオンの村」のモデルとなった石川県羽咋市職員の高野誠鮮さんも講演しました。
ドラマのエピソードはだいぶフィクションが混じっていますが、人間像はだいぶ近い印象でした。
過疎地である羽咋市神子原地区のコメをローマ法王に献上することに成功し、ブランド米に仕立て上げるなど、農業所得を上げることと、当地に伝わる烏帽子親の伝承を利用して、学生を村に呼び、住民と交流をはかることで活性化させているなどの事例を紹介。現在、同地区で自然農法に取り組み農産品のブランド化を図っていることなどを紹介していました。
いわき市は、今年度中に中小企業振興条例の制定に向けて検討をすすめていますが、全国の先進例にも学びながら、より良い条例となるよう、学び、意見を届けていくことが当面の課題になっています。
また条例制定後の産業振興に向けた具体的な行動の中で、行政がどのような役割を果たすのかも、高野さんの講演の中で方向性が示されているように思います。
行政と住民の関係のあり方などを考えていくことが引き続き必要です。
〈分科会報告〉
「子どもの育ちを保障する」
高橋明子
雇用環境の悪化や格差拡大を受けて「子どもの貧困」が深刻化するなか、「子どもの貧困対策法」が成立しました。私は「子どもの貧困」の実態をより知るために、立教大学の浅井春夫教授の講演を聞くことにしました。
先生は、一人ひとりの子どもたちの幸せをどう保障するかは国の姿勢を示す「本物の目安」であり、国が子どもたちに対しどれほどの関心を払っているかで、子どもの貧困対策の中身が決まってくると述べました。
安倍内閣の経済政策のもとで非正規雇用者が増え、2014年7月の実質賃金は前年比で6・22%落ち込み、勤労者の生活は厳しくなり、国内市場が縮小し、国民の消費支出は抑制されました。結果として貧困は拡大され、子どもの貧困は改善されなかったのです。国連のユニセフが発表した「先進国における子どもの貧困」では日本はOECD35ヵ国中9番目に貧困率が高い国になっており、特に子どもの貧困が集中している世帯は母子世帯です。年間総所得が243・4万円のうち社会保障による子育て応援率は20・2%という現状です。
2014年1月の雇用統計では、1年間で非正規雇用が135万人増え、1956万人となっていることは、非正規雇用の人たちの多くは子どもを育て、またこれから子どもを持つ勤労者であることを踏まえると、日本の貧困のすそ野は確実に広がっていると話されました。
政府の「子どもの貧困対策法」は貧困が世代を超えて連鎖することのないよう、環境整備、教育の機会均等を図ることなど、すべての子どもたちが夢と希望を持って成長していける社会の実現を目指すとしています。方針として子どもの貧困の実態、指数を設定し改善に取り組むとしています。しかし最大の問題点は数値目標を設定しなかったことでした。
貧困対策の課題は、政府や地方冶自体で子どもの貧困対策の目標を設定し計画を策定し、貧困率の削減目標を明記することです。
政府は真剣に子どもの貧困問題を考え、イギリスなどの子どもの貧困根絶法などを参考にして日本から子どもの貧困を早急に根絶すべきです。
〈分科会報告〉
「社会保障解体の現局面―医療・介護を中心に」
溝口民子
5人の方がそれぞれの立場から講義をしました。
初めに、金沢大学横山寿一教授は「社会保障・税一体改革の概要や医療・介護の問題点等」について講義。「医療・介護を中心にしつつ、年金、生活保護、障害者福祉、保育・子育て新システムと社会保障全般にわたる制度改革であり、公的責任から自助・互助・共助・公助の仕組みに向けた大転換である」と語りました。
次に、大阪府立病院機構の看護師の山本桃代氏が、利用者と地域住民へのアンケートを紹介。寄せられた2221枚の中の「救急や急患に対応できる体制の充実」「医師・看護師の増員で医療・介護の充実を望む」等の意見が紹介され、本市にも見られる要望でした。これらの活動を踏まえ、「住民の要求をよく聞き、病院の役割を市民と積極的に議論することが大事であり、自治体病院を守ることは街づくり運動である」と結びました。
その他、足立区障がい福祉課の二見清一氏、大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員の日下部雅喜氏、特別養護老人ホームやすらぎホーム相談員の今宮洋之氏が、主に現場での実態から、障害福祉・生活保護の問題点、改定介護保険の影響・問題点を提示しました。
介護保険がスタートして15年が経過。「介護心中」「介護殺人」が起き、「介護難民」が増え、「介護漂流」という事態も発生し、早急に介護保険の立て直しが迫られています。
しかしながら、今年4月からの介護保険の主な改悪は、
①要支援者のホームヘルプ・デイサービスの「保険外し」(2017年4月までの猶予期間あり)
②特別養護老人ホームは要介護3以上に限定(今年4月から)
③利用者負担を所得によって「2割負担」に(今年8月から)
④低所得の施設利用者の「食費・部屋代補助の削減」(今年8月から)
こうした内容は、多くの利用者を切り捨てることで、「持続可能な制度」を目指すとしていますが、一層「制度あってサービスなし」が色濃くなっていくと痛感しました。本市としても国に撤回を求め、市の責任で充実を図ることが求められます。