--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

橇デポ

2006-10-14 | 南極だより・野外オペ
最近、昭和基地WEBカメラ リアルタイム画像を見ていても、日差しの強さを感じます。
太陽がピカーッと輝いているのです。
オゾンホールができて紫外線が強烈に差し込んでいるはずなので、それはそれは皆さん真っ黒になられたことだろうと思います。
日焼け対策には十分にお気をつけくださいね。
それでは、渡井さんからの前回のS17オペ2日目の南極だよりです。
一部10/15に追記しています。
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2006年10月4日(水)地吹雪 橇デポ

朝から地吹雪となり、数100mほど離れた場所に止めてある雪上車も見えないほどの天候になった。
S17には何度か来ているが、作業ができないほどの天候は初めてだ。
SM100で風除けを作って作業すればできないことはないだろうが、今回の作業では車両の移動も行うので、こんな天候では作業もはかどらないし、なにより危険を伴う。
しばらく天候の様子を見ることにした。

地吹雪だとデポした橇やドラム缶がまた雪に埋もれてしまわないか心配だ。
なるべく橇が埋もれないように止める方法は3つある。
1つは橇をつなげたままデポする方法だ。
これは橇を風向きに対して直角に、橇の側面を風に向けるように止める。
こうすればドリフトは橇の風下側にできる。
ウィンドスクープも風上側にできるが、橇を真っ直ぐ引き出せばほとんどそのまま引いていくことができる。
数日程度であればこの方法が便利だ。

もう2つの方法は橇を1台1台切り離してデポする方法だ。
1台の橇を風に向かって頭を向けるように置くのは同じだが、橇を並べる方法が異なっている。
#橇には牽引ワイヤーのつなぎ方によって前と後ろがある。
#ワイヤーがY字型の方が前、V字型の方が後ろなのだ。
一つは碁盤の目状に橇を置く方法。
今回S16にデポしてきたドーム隊用の燃料橇はこのデポ方法だ。
もう一つは横一列に直線的にデポする方法。
日独航空機観測用のデポ地点S17ではこの方法をとる。

この2つにはそれぞれ利点・欠点がある。
碁盤の目方法は橇を再編成する時、繋ぎやすいというメリットがある。
横一列方法は風上側の橇によってできるドリフトの影響を受けないので、橇が埋もれにくくなり引き出しやすい。

S16とS17で橇のデポ方法を変えているのは、それぞれのデポの期間が異なることと、涵養量がS17の方が明らかに多いように感じるためだ。

S17での夏季オペレーションが始まるのは12月下旬。
11月の上旬以降は海氷の状態が悪くなるので、この間は訪れることができない。
除雪には多大な労力を必要とするので、48次隊がついたらすぐに作業に取り掛かれるよう、埋もれ方が少ない横一列方法を今回から取ることにした。


#橇の前 ワイヤーがY字型

#橇の後ろ ワイヤーはV字型でつなげられている。
Vの字の谷のところにはシャックルがつく。


#碁盤の目デポ
内陸旅行用S16のデポ方法


#横一列デポ
S17のデポ方法


-----10月4日本日の作業など-----
・午前中停滞
・燃料ドラム缶20本程度移設デポ

<日の出日の入>
日の出  5:16
日の入  19:08
<気象情報>
平均気温-12.9℃
最高気温-9.6℃(1346) 最低気温-18.5℃(0210)
平均風速7.5m/s
最大平均風速21.0m/s風向ENE(2050) 最大瞬間風速27.2m/s風向ENE(2043)
日照時間 0.9時間

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2月にS17の撤収をしたとき、雪上車は風に頭を向けて横1列でデポしていました。
S16の雪上車も、そのようにデポしてあるようでした。
ですから、デポするときには常にそうするのかと思っていたのですが、いろいろな置き方があるのですね。
写真と文を見ながら、簡単な絵にしてみました。
まずは橇の前後。

#絵を差し替えてあります10/15
右側が前で左が後ろです。
渡井さんからの解説では、後ろ側のV字の谷の部分にはシャックルがつくということでした。
シャックルはD型の環ですから、引っかけられる側ということになります。
橇同士をつなぐときは、前側Y字のほうは引っかける側になるということですね。
ということはY字の先にフックがついているということなのでしょうか?
写真では、ワイヤーが輪になっていて雪上車に引っかけられるようになっているようだけれど・・・。

10/15追記
渡井さんがメールで説明してくれたものを絵にしてみました。

ワイヤーはどちらも輪になっているようです。
そして、シャックルというD型の環(今、もう一度写真を見ていて気付いたのだけれど、シャックルはD型の環とは限らないようです)を使って、ワイヤーや橇を繋いでいくのだそうです。
橇の繋ぎ方も絵にしてみました。

上から見た絵なので、橇との繋ぎがおかしく見えますが、橇のスキー部分の下側にシャックルを通せる部分があり、そこにシャックルを掛けてそのシャックルにワイヤーを繋いでいるのだそうです。
写真からつなぎ目を切り出してみました。

#橇とワイヤーを繋ぐ
橇にはあらかじめシャックルがついている?


#シャックルを使ってワイヤーとワイヤーを繋ぐ

#雪上車にワイヤーを繋ぐ


数日程度であれば、橇を縦につないで風を側面で受けるようにして置いておくと書かれています。
こんな感じでしょうか?

風上には風で橇の手前が掘れてしまうウインドスクープができ、風下には雪が溜まるドリフトができるようですが、橇の前はどちらもできないので、スーッと引き出せるというわけですね。
10/15追記
渡井さんから、ウインドスクープが違っているという指摘を受けたので、もう一度描き直してみました。

風上の雪は掘れてしまうのではなく、風が物(橇)にあたって強くなるので雪がつきにくいのだそうです。
そういえば、昭和基地周辺で雪のあまり多くないときには、物の風上側は土が見えていて、少し離れたところから雪が積もっていたのを思い出しました。
あれも、ウインドスクープというのでしょうね。
見れば一目瞭然なのでしょうけれど、こうやって少しずつ分かっていくのも楽しみの一つです。


あとの2つはどちらも風に頭を向けて置くと書かれています。

こちらが碁盤の目に置く方法で、S16でのデポ。
S16の橇は今月にはドームふじに行くために、出動してしまいます。
置かれている期間はそれほど長くなく、すぐに出かけられるように繋ぎやすく置いてあるのだということが分かります。
一方、S17の橇は、横1列でのデポです。

S17は、その場所でのオペレーションなので、橇をたくさんつなげて出かけるのではありません。
また南極だよりにも書いてあるように、ドーム隊の出発した2ヶ月ほど後から始まるので、それだけ置いておく期間が長いということになります。
S17のほうが涵養量が多いとのことなので、同じ期間置いておいたとしても、S16よりS17のほうがさらに埋もれやすくなるのですね。
つまり、期間の長いときには横1列で置いておくのが最もいい方法なのだということですね。
だから、夏の終わりにS17やS16でデポした雪上車は横1列だったのですね。

どうして、S17のほうが雪が積もりやすいのでしょう?
そして、どれはどのくらい違うものなのでしょう?(たぶん測っていますよね?)

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